実大材のベイツガ材に,所定濃度に調整した数平均分子量170のフェノール樹脂水溶液を注入し,熱硬化させた。この樹脂処理木材から所定寸法の試験体を作製し,オオウズラタケとカワラタケによる12週間の強制腐朽試験ならびに繊維飽和点,吸着等温線及び空隙率の測定を行った。また,同じフェノール樹脂を用いて別途に作製した試験杭により2年半の野外耐蟻性試験を行った。樹脂含浸率が14%で腐朽は約1%に抑制され,16%以上の樹脂処理材にはシロアリによる食害が全く認められなかった。樹脂処理木材の繊維飽和点と吸着等温線はともに無処理木材のそれより低く,また空隙率も減少した。これらの結果から,フェノール樹脂処理木材においては,細胞壁構成成分の親水性で反応性の高い水酸基がブロックされるとともに,細胞壁の一次空隙が樹脂の沈着により充填され,すぐれた耐朽・耐蟻性が発現することが示された。
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