縮合型タンニンのミモザタンニンを化学修飾し,タンニンのみあるいはタンニン―アンモニア―銅複合薬剤の木材用防腐剤としての性能を検討した。タンニンとして未処理ミモザタンニン(MT),トリクロロ酢酸処理ミモザタンニン(TMT),レゾルシノール化ミモザタンニン(RMT),カテコール化ミモザタンニン(CMT)を準備した。
これらタンニンと銅との複合薬剤で処理した木材に対する耐候操作による薬剤の溶脱はほとんどなく,JISK1571:1998に準じたオオウズラタケ(F.palustris)を用いた腐朽試験の結果,化学修飾タンニン(RMT,CMT)―アンモニア―銅複合薬剤で顕著に腐朽は抑制され,防腐性能基準値(3%)を満たした。また,これらのタンニン―銅系薬剤で処理した木粉を入れた液体培地でオオウズラタケを培養したところ,菌糸体の成長が抑制され,タンパク質(酵素)の生成量はわずかで,培地のpH低下も抑制された。
RMTまたはCMT単独,あるいはこれらとアンモニア―銅複合薬剤によるオオウズラタケ腐朽に対する防腐効果は,オオウズラタケが産生する酵素の生成抑制,必須微量元素である銅のタンニンによる捕捉,アンモニア―銅によるシュウ酸の産生抑制と中和などによると考えた。
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