海の研究
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11 巻, 3 号
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  • 鬼塚 剛, 柳 哲雄, 門谷 茂, 山田 真知子, 上田 直子, 鈴木 學
    2002 年 11 巻 3 号 p. 403-417
    発行日: 2002/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    現在,洞海湾で水質浄化の試みとして,ムラサキイガイの養殖を行うことが計画されている。そこで,海域浄化に必要な養殖量とその効果を定量的に把握するために,鉛直2次元の数値生態系モデルを用いて洞海湾における物質循環の再現を行い,ムラサキイガイ養殖の有無による湾内物質循環の違いを調べた。その結果,ムラサキイガイ養殖量1,000トン以上で表層のクロロフィルa濃度は減少,湾奥底層の溶存酸素濃度は増加し始め,10,000トン養殖すれば赤潮防止に効果があり,貧酸素水塊の状態にも改善が見られることがわかった。10,000トン養殖時に,ムラサキイガイによる植物プランクトン摂食量は基礎生産量のおよそ2割に達し,2次生産量より大きい値であった。また,養殖しない場合と比較すると湾内有機物濃度が2~3割程度減少していた。洞海湾では工場からのTN(溶存・懸濁態窒素総量)負荷量が大きいため,ムラサキイガイ養殖による窒素除去効果は小さく,TN負荷量の約2%ほどであった。洞海湾が国の定めるTN環境基準を達成するためには,工場からのTN負荷量を削減しなければならないが,ムラサキイガイ養殖と工場からの負荷量削減の両方を組み合わせることで,より効果的に赤潮や貧酸素水塊の発生を防止できる。
  • 金 慶烈, 金 〓, 姜 東鎮, Volkov Yuri Nikolaevich, 尹 宗煥, 竹松 正樹
    2002 年 11 巻 3 号 p. 419-429
    発行日: 2002/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    東海/日本海が劇的な変化をしている。国際共同研究CREAMS(Circulation Research of East Asian Marginal Seas)によって,過去数十年の間に全層の水温が持続的に上昇し,特に溶存酸素の極小層は1,000m以上深くなる等,東海では非常に急激な構造変化が起きていることが確認された(Kim and Kim,1996;Kim et al.,1999;Kim et al.,2001)。溶存酸素の解析結果はこういう変化が東海内の海水循環形態の変化に起因していることを強く示唆している。すなわち,過去に活発であった底層水の形成が弱まり,代わりに中央水の形成が強化されるに伴って現れた現象であることが示唆される。特に注目すべきは東海でのこのような海水循環形態の変化は将来の地球温暖化によって予想される全地球的な海洋循環系(グローバル コンベアーベルト)の変化の様相(Manabe and Stouffer,1993)に酷似していることから,ミニ大洋である東海は地球規模海洋の将来を予測するための絶好の実験場を提供していると思われる。
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