直接染料は水に易溶性であるにもかかわらず,水を展開剤に用いてペーパークロマトグラフィーを行うと染料の大部分は僅かに移動するか,あるいはほとんど移動しない。これは直接染料のロ紙すなわちセルロースに対する強い親和性によるもので,展開剤としてピリジン水溶液を用いれば染料のセルロースに対する染着力が弱められて,ロ紙上を移動させることが出来る。しかしながらほとんどすべての場合, 展開したスポットは尾を引き, さらにその
Rf値は同一染料でも原点に付着させる染料濃度によって異なり,再現性のある
Rf値を期待すうことが困難である。このため直接染料のぺーパークロマトグラフィーについての研究はほとんど見当らない。
そこで著者は展開剤としてピリジン水溶液を用いて,直接染料のペーパークロマトグラフィーを検討した。
はじめに原点に付着する染料濃度と
Rf値の再現性との関係を調べたところ, きわめて希薄濃度の試料液を原点に付着させれば再現性のある
Rf値をうることが出来るのを確かめ,文献によりそめ親和力の判明した数種の直接染料の
Rf値を測定し, それが親和力と密接な関係にあることを認めた。さらに本クロマトグラフィーにおける分離機構を固相- 液相間における分配クロマトグラフィーと考えて差支えないことを平衡論的に確かめ, 誘導した
Rf値と親和力との関係式は実験的にも満足されるのを認めた。また,ナフトールAS類の場合も同様に密接な関係があることを認めた。
抄録全体を表示