アルギン酸プロピレングリコールエステル(以下,PGAと記載する)の未反応部分の一部に-COONa基(以下,Na-PGAと記載する),-(COO)
2Ca基(以下,Ca-PGAと記載する),-(COO)
2Mg基(以下,Mg-PGAと記載する)を導入したPGAを合成し,その水溶液性状,すなわち粘性,毛管上昇性,透明度,乳化性,泡沫安定性等について検討した結果,次の知見が得られた。
1)粘性各PGAの還元粘度と濃度との関係は高分子電解質としての特性を失い,一般高分子と同じような挙動を示し,-COONa基,-(COO)
2Ca基,-(COO)
2Mg基の導入によりPGAの流動性はよくなりニュートン流動を示すようになる。粘性に対する電解質の影響はいちじるしく,各PGAに有機酸を添加すると,H,Ca-PGAは粘性の低下が,Na-PGAは粘性の上昇が認められ,Mg-PGAはなんらの変化も示さなかった。次に塩化ナトリウムを添加すると,H-PGAは粘性の低下が認められ,Na,Ca,Mg-PGAは若干の粘度低下の後,添加濃度の増加にしたがいかえって粘度上昇が認められる。
2)毛管上昇性H,Na,Ca-PGAは有機酸の添加により毛管上昇性の減少が認められるが,Mg-PGAは変化が認められない。毛管上昇性の減少の順序はシュウ酸> 酒石酸>クエン酸>酢酸となり,減少率は添加有機酸の解離定数の大きいものほどいちじるしい。
3)透明度各PGAに有機酸を添加した場合,H,Na,Ca-PGAは有機酸の添加により透明度の低下が認められ,Mg-PGAはかかる変化が認められない。透明度は酢酸>クエン酸>酒石酸>シュウ酸の順である。
4)乳化性未反応部分に結合する金属によっていちじるしい影響を受け,その順序は次のとおりである。Na-PGA>Mg-PGA>Ca-PGA>H-PGA
5)泡沫安定性乳タンパクの存在において各PGAの泡沫安定性は良好であるが,未反応部分に存在する金属の種類による影響は次の関係にあった。Mg-PGA>Na-PGA>Ca-PGA>H-PGA
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