工業化学雑誌
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70 巻, 6 号
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  • 町田 和夫, 池上 裕夫, 堀 良万
    1967 年70 巻6 号 p. 799-809
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    内容積150lの重合槽を使用する中規模試験工場において,塩化チタン(III)-ナトリウム-水素-BCPT系の触媒を使用して重合実験を行ない,触媒組成と重合活性および得られるポリマーの結晶性との関係を確かめることができた。最適触媒組成はNa/TiCl3モル比2, BCPT/TiCl3重量比0.3~0.4であるが,ポリマーの結晶性はBCPTの配合の多い程向上し,ナトリウムの配合の多い程低下する。ポリマーの分子量は非常に大きく,触媒組成や重合条件が変化しても分子量はほとんど変動しない。重合の活性化エネルギーは7.3~9.4kcal/molで重合速度はプロピレン濃度の0.6次に比例した。重合の初期に重合速度が急激に衰退する現象を検討したが,この衰退速度は重合温度,プロピレン濃度,さらに触媒組成ともほとんど関係がなく,この現象の生ずる原因は明らかでない。
    溶媒を繰り返し使用する場合の変質について検討したところ,回収溶媒にはカルボニル,ペルオキシド,臭素価の若干の増大が認められるが,40~60段程度の精留塔で精留すれば,完全に元どおりに精製することができた。
  • 功刀 泰碩, 酒井 朝也, 大瀬 秀隆, 何 水玉
    1967 年70 巻6 号 p. 810-813
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    気液固流動床による一酸化炭素の水素化重合に用いられる100Fe:0.3Cu: 0.6K2CO3(重量比)なる組成の沈殿鉄触媒について,その活性試験を固定床反応器で行なった。このさい触媒は320℃の空気で6時間,270℃の一酸化炭素で24時間,続いて270℃の水素で十分処理した後,炭化水素合成反応に移る。前報で炭化水素合成反応の活性は水素処理時に生成するメタンの量が多いと大きくなるという事実が確認された。そこで本報では触媒の活性化過程を6段階に区切り,各段階で触媒の化学的組成およびその他の性状を測定した結果,一酸化炭素による還元で触媒は炭化鉄になり,続く水素処理ではいったん炭化した触媒が金属鉄に移行することを明らかにした。すなわち触媒は炭化鉄としてではなく金属鉄の状態で炭化水素合成活性を有することが確認された。他に活性化の段階ごとにX線回折像とBET表面積を測定した結果,炭化水素合成活性はこれらの結果から求められた触媒の幾何学的性状よりも,主として化学的組成に依存しているものと考えられる。
  • 白崎 高保, 坂本 重顕, 北原 昭勝, 森川 清
    1967 年70 巻6 号 p. 814-816
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    金属ニッケル圧延板常温または高温でわずかに空気酸化し,ついで水素還元し,その触媒活性表面組織をエチレン接触分解炭素膜法により観察した。このさい圧延板表面の組織と酸化され方との関連性についても知見をえようとした。つぎの結果が得られた。
    金属ニッケル表面はいったん酸化ののち還元されると一般に触媒活性が増大し,活性組織がいっそう不均一化する。常温湿潤酸化と高温酸化とでは酸化されやすい表面組織,したがって水素還元されたときの触媒活性組織がきわめて異なる。常温酸化はもとの圧延板表面のモザイク組織とは無関係に第一次結晶境界とみられるループに沿ってもしくはまったく不規則におこり,したがってその還元時の活性組織は綿屑様斑点がランダムに散在もしくはループに配列したものとなる。高温酸化はもとの圧延板表面の不定形粒子よりなるモザイク組織と深い関係をもっておこり,したがってその水素還元時の触媒活性組織像には,活性が一様に増加した粒子と不均一に増加した粒子(活性のやや低い表面に高活性な微小斑点が散在)とがみられる。この場合,酸化還元処理を受けた表面はいずれももとの圧延板表面よりいちじるしく高活性となり,もとの表面のモザイク組織像(粒界部分だけがとくに高活性)はみられなくなる。
    表面の酸化され方の温度によるちがいは,常温湿潤酸化が電気化学的に,高温酸化が純化学的におこるためとして説明されよう。
  • 谷 忠昭, 菊池 真一
    1967 年70 巻6 号 p. 817-821
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    色素の減感作用の機構を電子論的な立場から考察するために,シアニン色素とアザシアニン色素の写真乳剤中での電子親和力を,前報と同じ考え方で計算した。その結果,乳剤中の色素の電子親和力は,励起準位とゼロレベルとのエネルギー差にほぼ等しいことが明らかになった。したがって,電子の授受は,色素分子の励起準位と臭化銀の伝導帯との間で行なわれるものと考えられる。シアニン色素の乳剤中での電子親和力は臭化銀の電子親和力とほぼ等しく,メチン鎖の長い色素ではやや大きくなっている。これは,メチン鎖の長いシアニン色素が,増感作用と同時に減感作用を示す事実を,エネルギー的観点からよく説明している。また,アザシアニン色素のうちで,強い減感作用を示すものの電子親和力は,増感色素や臭化銀の電子親和力よりかなり大きいことが明らかにされた。これらの結果は,減感作用は色素が臭化銀に対して捕獲中心あるいは再結合中心として働くためであるとする考えを支持しているものと考えられる。
  • 清山 哲郎, 山添 昇
    1967 年70 巻6 号 p. 821-826
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硝酸アンモニウムのIV→II転移を偏光顕微鏡で観察した。試料としては,スライドガラスに平行な結晶面がそれぞれ(010),(011)および(001)である3種のうすい単結晶を用いた。II→IV転移では,単結晶がc軸方向は共通にしてa軸およびb軸方向を交換した関係にある2種類の小結晶に分裂する。そのため3種の試料には,それぞれに特徴的な3種の分裂模様が生じる。分裂小結晶の境界面は(110)で,双晶面になっていると考えられる。このような分裂は,格子定数の変化からおこる応力を相殺するためにおこるものである。逆にIV→II転移では,この分裂結晶が再び統合される。新相は,いずれの転移においても針状に成長する。それぞれの試料について成長方向を測定した結果,IV→II転移では,II相はIV相の(230)面内で成長し,逆の転移では,IV相は,正方晶系に属するII相の二つの等価な面(230)および(320)内で成長することがわかった。このような成長の異方性や,結晶の分裂,統合現象は,II相とIV相の結晶構造を比較することにより説明される。
  • 山添 昇, 清山 哲郎
    1967 年70 巻6 号 p. 826-829
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硝酸アンモニウムの薄い単結晶を用いて,IV→IIおよびIV→V転移に対するオクタデシルアミン(ODA)添加剤の影響を偏光顕微鏡で観察した。
    IIV→II転移に対して,ODAは比較的大きい結晶においてはII→IV転移による結晶の転移模様をいちぢるしく変化させ,小さな結晶ではII→IV転移を禁止してII→V転移をおこさせる。
    IV→V転移はIV→II転移ときわめて類似しているが,IV→V転移によりV相に2種類の結晶からなるうすい濃淡模様があらわれる。ODAは,IV→II転移の場合と同様にV→IV転移模様を変化させる。
    II→V転移は,約44~41℃でラムダ転移的に生起するが,II→V転移では結晶が分裂してIV→V転移の場合と同様な濃淡模様を与える。これらの現象を結晶構造に即して考察した。
  • 杉山 幸三, 高橋 武彦
    1967 年70 巻6 号 p. 830-834
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    表記の反応の温度による影響について熱天秤によって調べた。硝酸ナトリウムの場合, 480~500℃の迅速な段階を含めて三段階が認められ,亜酸化窒素を除く酸化窒素収率は90~95%となった。これは酸化クロム無添加の場合,酸化窒素収率74%であったのに比して高い。示差熱分析の結果から480~500℃の迅速な過程は液相中のクロム酸イオンの状態のなんらかの変化によるものとされた。亜硝酸ナトリウムの場合は,大過剰の酸化クロムが添加されたとき酸化クロムの脱酸素によって450℃以下で反応は終り,酸化窒素収率も90%に達した。しかしクロム酸ナトリウム生成に当量の酸化クロムを添加するときは亜硝酸イオンまたは酸化窒素からの脱酸素が遅く約67%の酸化窒素収率となった。
  • 野口 哲男, 水野 正雄
    1967 年70 巻6 号 p. 834-839
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ヘリオスタット式太陽炉を用い,Y2O3-Al2O3系の各組成の冷却曲線より凝固点を測定し液相線を求めた。温度測定は,鏡面反射法により輝度温度と0.65μにおける分光反射率を求めて,分光放射率と真温度を算出した。
    太陽炉による溶融試料では,37.5mol%, 50mol%, 66.7mol% Y2O3組成で3Y2O3・5Al2O3,Y2O3・Al2O3,および2Y2O3・Al2O3の単一相を得,前二者の格子定数はそれぞれa0=12.010±0.005Åおよびa0=5.180±0.006Å,b0=7.370±0.004Å,c0=5.328±0.006Åであった。
    液相線はY2O340~60mol%組成の間でゆるやかなピークを示し,またAl2O3-3Y2O3・5Al2O3間の共晶点およびY2O3側の組成では既発表の結果と異なった傾向を示し,これらの結果に基づいてAl2O3-Y2O3系の平衡状態図を推定した。
  • 加藤 誠軌, 久保 輝一郎
    1967 年70 巻6 号 p. 840-843
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    Y2O3とTiO2との固相反応を高温X線回折法によって研究し,反応の機作を検討した。この反応系では2種類の複酸化物,Y2Ti2O7とホタル石型の新化合物の生成が認められた。Y2Ti2O7はY2O3とTiO2との粉末混合物(混合比:1.0:2.0)を1000℃以上の温度に加熱して得られる。この化合物はPyrochlore型の結晶構造をもち,空間群:Oh7-Fd3m, Z=4, a0=10.091Åである。共沈反応体を加熱すれば600℃という低温度でこの化合物がえられる。新しいいま一つの複酸化物はホタル石型の結晶構造を有し,安定化ジルコニアのように酸素の欠陥をもっている。その組成はYxTi1-XO2-X/2X/2,x=0.62~0.80で,格子定数はa0=5.097~5.215Åである。純粋なホタル石型の化合物はY2O3:TiO2=0.8~2.0:1.0の粉末混合物を1400~1950℃に加熱して得られる。この反応でホタル石型の複酸化物は常に中間化合物のY2・Ti2O7を経て生成する。しかしながらホタル石型の化合物とTiO2との混合物を1100℃以上の温度に加熱するとY2Ti2O7を生ずる。
  • 加藤 誠軌, 久保 輝一郎
    1967 年70 巻6 号 p. 844-846
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高温X線回折計によってCuOとTiO2との固相反応を研究し,新化合物Cu3TiO5を得た。Cu3TiO5はCuOとTiO2との粉末混合物(混合比3:1)を白金ルツボ中で1000~1100℃に加熱して得られる。しかしながらCu2OとTiO2との複酸化物は生成しない。したがってこの化合物を純粋に得るためには反応体混合物中のCuOの高温での熱分解を防止する必要がある。Cu3TiO5は700~900℃の温度域に保持するとCuOとTiO2とに分解するから, 反応生成物はこの温度域を急冷する必要がある。Cu3TiO5の特徴回折線の面間隔値はd1=2.56Å,d2=2.39Å,d3=1.519Å,d4=2.87Åである。高温X線回折装置でCu3TiO5を融解後冷却固化させると結晶は白金ロジウム板上にd=2.87Å の面に配向する。Cu3TiO5の誘電率はε≒30(30℃)で250℃までの温度で異常は認められない。Cu3TiO5は電気抵抗の温度係数が極めて大きく(B≒7000),サーミスターとして利用できる可能性がある。
  • 久保 輝一郎, 加藤 誠軌, 藤田 恭
    1967 年70 巻6 号 p. 847-853
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酸化チタン(TiO2)と炭酸バリウム(BaCO3)との固相反応を高温X線回折計を用いて詳細にしらべ,反応の過程を明らかにし反応の機作について検討を行なった。
    反応体の混合比,相互の分散度,反応体粉末の粒径,焼成雰囲気等をかえて反応過程を追跡して,それぞれの複酸化物が段階的にいくつかの素反応を経て生成することを明らかにし,反応の機作を総括的に解釈することができた。
    この系の固相反応で生成する4種類の複酸化物Ba2TiO4,BaTiO3,BaTiO3O7およびBaTiO4O9のそれぞれの生成条件をしらべ,Ba2TiO4,BaTiO3O7およびBaTiO4O9がBaTiO3を経て生成することを明らかにした。BaTiO3,BaTiO3O7,BaTiO4O9の生成反応は反応体相互の分散度の影響を著しく受けるが,Ba2TiO4の生成反応はこの影響を受けない。粉末の反応では最初に検出される複酸化物は,反応体の混合比に無関係に常にBa2TiO4であり,反応体粉末の粒度はBa2TiO4の生成量および反応の完結温度に著しい影響を与える。Ba2TiO4の生成反応は加熱雰囲気中の炭酸ガスの影響を受ける。
  • 島崎 長一郎
    1967 年70 巻6 号 p. 853-859
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    結晶性縮合リン酸カリウム塩および種々の組成のナトリウム・カリウム縮合リン酸塩を製造し,分子量を光散乱法および粘度法によって測定し検討した。測定には上記のリン酸塩を0.35N臭化ナトリウム水溶液に溶解して用いた。光散乱法と粘度法で求めた分子量は大体において一致し,縮合リン酸カリウム塩の分子量は250000~270000程度であった。また分子量は縮合リン酸カリウム塩単独のものよりも,縮合リン酸ナトリウム塩を若干混合して溶融し,製造したもののほうが大になる傾向が認められた。
    なお,pH滴定曲線,赤外吸収スペクトルおよびX線回折を行なって,それら高分子の構造物性を検討し,ナトリウム・カリウム縮合リン酸塩の一部は環状リン酸塩であることが確認された。
  • 佐治 孝
    1967 年70 巻6 号 p. 859-863
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    65~85%P2O5を含む脱水リン酸(DPA)中で,白金電極を用いて電流-電圧曲線を測定したが,その結果によると,一般にこれら曲線上には1.7~1.8および2.0~2.2Vの2箇所にそれぞれ折点が出現する。水分解電圧の値に等しい前者は,P2O5を75%程度まで有する酸において見出され,その温度係数(150~250℃)は3×10-3V/℃と見つもられた。これに対して,後者は75%以上のP2O5を有するより濃厚な酸においてもなお見出され,またこの2.2V以上の高い電圧でオルトリン酸を電解すれば,ピロリン酸の生成が可能であった。これらの現象は,reorganizationによる遊離の水,および自己解離によるリン酸陰イオンの生成が,このリン酸の電解縮合に重要な役割をはたすことを示唆する。
  • 中西 和美, 山田 大十
    1967 年70 巻6 号 p. 864-869
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    銅蒸着膜を2~3×10-5mmHgの空気中で種々な条件で作成し,大気中における膜の酸化および電気抵抗変化をしらべた。すなわち, 銅蒸着膜を膜厚および蒸着速度を変えて, 60℃ , 200℃ および330℃のガラス板上に作成した。得られた蒸着膜の酸化ならびに電気抵抗の経時変化を室温で測定した。また膜表面の構造を反射電子回折によってしらべた。
    その結果,銅蒸着膜はほぼ0.5時間以内で対数則的な急速な酸素吸着を示した。吸着量ならびに吸着速度は下地ガラス温度によって異なり, 下地温度330℃の場合においては, いずれも大きな値を示した。下地温度200℃で作成した膜の場合には, 膜の薄い領域では下地温度60℃の場合に似た吸着を示し,膜の厚い領域では下地温度330℃の場合に似た吸着を示した。60℃の下地上に作成した膜の吸着速度は膜厚の増大に伴って小さくなった。
    蒸着膜の電気抵抗は時間の経過に伴って薄い膜ほど増大するが,急速な電気抵抗の増大を示す膜厚は下地温度によって異なる。60℃の下地温度で作成した膜の電気抵抗は200℃および330℃の下地温度で作成した膜に比べて,経時変化が少ない。酸素吸着と電気抵抗の経時変化との間には直接的な関係は認められなかった。
  • 石黒 孝義, 鈴木 英雄
    1967 年70 巻6 号 p. 869-873
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ロダン銅錯塩溶液の電解において添加されたロッシェル塩の影響について検討した。まず比重,粘度および電導度の測定から電解液の電気化学的性質におよぼす影響を調べ,また比重の測定値から容積変化の計算ならびに吸光度の測定値から溶液中におけるロダン銅錯塩とロッシェル塩,すなわち酒石酸ナトリウム,カリウムとは互に独立に存在しており,両塩の間に配位子の置換平衡はほとんど成立っていないものと推定される。なおロッシェル塩の存在は電解液内を還元雰囲気に保たしめ,黒褐色の第二銅錯塩の生成を防止する効果のあることを認めた。次にロッシェル塩の添加量と平衡電位の移行とは密接な関連を有し,このことが電解に際し電着表面,電解条件および電流効率にどのように影響するかを検討した結果,添加量15g/lまではあきらかに有効であるものと考えられる。また,陽,陰極分極電圧の連続的変動の測定から電極界面におけるロッシェル塩の影響を考察し,その結果ロッシェル塩の添加は陽極銅の溶解促進あるいは陰極析出銅の表面状態の改良に役立っているものと解釈された。
  • 崎川 範行, 神谷 信行
    1967 年70 巻6 号 p. 874-877
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    溶融アルカリ炭酸塩を用いた高温燃料電池の燃料極の反応機構の解明と,その応用の可能性を調べた。実験は実際に電池を組立てて,酸素極を常に一定の状態に保ちながら,燃料極として数種の金属網電極を,また数種の燃料ガスを用いて行なった。反応温度は400~500℃で, 水素を燃料とした時, ニッケル電極で最もよい結果が得られ, 500℃の時の開路電圧は1250 mVに達し,115mA/cm2の電流をとりだした時600mVとなった。ニッケル,白金等の水素を強く吸着するものでは電池特性は送入した水素ガスの流速にあまり依存しないが,銅,銀等のように水素を吸着しないものについてはガス流速に強く影響され,一般にその電池特性は悪い。炭化水素, アルコール等を用いた場合, 電池特性はメタン< プロパン<プロピレン, エーテル<アセトン, n- プロパノール<エタノール,アセトアルデヒドの順になった。メタンは一番活性が低く,特に400℃ではメタンのかわりに窒素ガスを送入した時とほぼ同じになり,濃淡電池の機構だけが考えられ,Nernstの式はイオン化機構と濃淡電池機構の二つの項が同時に含まれると思われる。
  • 宮川 俊夫, 阪川 武志
    1967 年70 巻6 号 p. 878-881
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    パラアミノアニリン,パラアルキルアミノアニリンおよびその誘導体は,銀塩写真の現像主薬として利用されるが,これらの化合物が現像液中で持つ電荷をしらべるため,6種類の化合物をえらんでそのおのおのにつき,ロ紙電気泳動をおこなった。
    pH3~11の範囲で変化を与えた緩衝溶液を含浸させたロ紙上に,試料水溶液,または試料と亜硫酸ナトリウムを含む水溶液を滴下し,8.6V/cmで2時間泳動後,アンモニア性硝酸銀溶液で発色させたが,泳動距離についてロ紙の電気浸透に対する補正をおこなったのち,泳動度を算出した。
    a試料水溶液:およそpH3~10では,水素イオンと結合し,正の泳動によってカチオン的行動を示した。
    b試料と亜硫酸ナトリウムを含む水溶液:パラアミノアニリンは水素イオンと結合するほか,空気酸化の影響下にスルホン化され,その結果0に近い負の泳動によって両性イオンに近い行動を示した。パラアルキルアミノアニリンおよびその誘導体は,各試料とも大小二つのスポットを生じた。すなわち各試料について,大部分(大きいスポット)はpH3~8で水素イオンと結合し,正の泳動によってカチオン的行動を示したが,一部分(小さいスポット)は水素イオンと結合するほか,空気酸化の影響下にスルホン化され,その結果0に近い正または負の泳動によって,両性イオンに近い行動を示した。
  • 原 伸宜, 勝田 匡俊, 加藤 浩, 長谷川 恵之, 池辺 清
    1967 年70 巻6 号 p. 881-883
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報にひきつづいて, 水素をキャリヤーガスに用いた場合のアルキル芳香族炭化水素。アルコール類, エステル類, ケトン類,アルデヒド類,エーテル類のn-ヘプタンを基準成分とする熱伝導度型検出器の相対モル感度を測定した。また,これらの同族体にっいては前報と同様に相対モル感度Rと分子量Mとの間にぞ再それ直線関係が成立し,正確なR-M一次実験式が得られた。この一次実験式をヘリウムをキヤリヤーガスとする易曾およひ前報のパラフィン炭化水素の場合と比較すると,本報の各種有機酸素化合物は原点からの偏位が大きい。したがって重量比率による近似定量法を用いるとかなり大きい誤差を生ずることになり,正確な分析を行なうためには相対感度によるピーク面積の補正が必要であることがわかる。
  • 玉杵 滋富, 益子 洋一郎, 本田 英昌
    1967 年70 巻6 号 p. 884-888
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本邦産および外国産の16種類の石炭について熱分解ガスクロマトグラフィーを行ない,分解生成物中の一酸化炭素,炭酸ガス,メタン,エタン,エチレンおよび残分について分析して各試料の石炭化度と熱分解生成物の関係を検討した。
    本法による結果と質量分析法および赤外吸収スペクトル法などによる結果とは定性的によく一致し,方法の簡便さ等から石炭品位の検定法として本法が有用なものであることがわかった。
  • 玉井 康勝, 西山 誼行, 高橋 厳之助
    1967 年70 巻6 号 p. 889-891
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    炭化水素類の熱分解における一つの基礎過程である炭素析出現象について,もっとも単純なメタンが熱分解して炭素を形成する場合に壁の物質がどう影響するかを検討した。密閉型の熱天秤に各種の金属板を吊し,900または1020℃,圧力300mmHgでメタンを熱分解させて,金属板の増量速度を測定した。鉄,ニッケルでは炭素析出が著しく,その形状はすすまたは灰色の黒鉛であった。チタン,タングステン,ケイ素では,炭化が起こり黒鉛は形成しなかった。金,銀,銅では光沢のある黒鉛の薄膜ができたが,その成長速度はきわめて遅かった。これらの傾向は各固体物質と炭素との親和性があまり大きければ炭化物になってしまい,またあまり小さければ反応しないので,ともに炭素形成の触媒能はないが,その中間であまり安定でない炭化物を作る場合に大きい触媒能を示すとして説明できる。また鉄表面での炭素析出の形状は析出開始時温度によって著しく異なり,ある場合にはウィスカーも成長することを認めた。
  • 高木 徹
    1967 年70 巻6 号 p. 892-894
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    エルカ酸,ステアロール酸混合物のジイミド還元生成物の組成を,ガスクロマトグラフィーによって測定し,前者が速度定数比2.7で後者よりすみやかに水素添加されることを認めた。このように直鎖化合物において,ジイミドが三重結合より二重結合に対して反応性が大きいことは,不飽和結合に対し親電子的に付加することを示す。この付加機構は置換アゾベンゼンのジイミド還元における速度定数比より求めた置換基効果(ハメットのρ値:-0.95)によって確認された。ケイ皮酸置換体でジイミド還元において置換基効果が示されないのは, 二重結合のα 位のカルボキシル基の影響が大きいためと推定される。
  • 北原 雅夫, 坪山 薫
    1967 年70 巻6 号 p. 895-906
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アクロレインは接触気相酸化法によって,容易にかつ高収率にてアクリル酸に酸化される。MoO3:V2O5:Al2O3系触媒は300℃以下の空気処理と400℃における原料ガス処理からなる前処理を行なうことによって興味ある触媒活性を示すようになる。著者らは前処理法,配合重量比,担体の種類と粒度と付着率,触媒製法等について検討を行なった結果,最適触媒としてアルミニウムスポンジを担体としたMoO3:V2O5:Al2O3=8:1:0.1~0.4触媒(付着量:20g/100ml)を選定した。この触媒はアクロレイン濃度3.4vol%,酸素/アクロレインモル比1.65,水/アクロレインモル比16.5,接触時間1.64sec,空間速度1045hr-1,温度300℃の条件において,アクロレイン反応率97.3mol%,アクリル酸収率85.7mol%,選択率88.1%,アクリル酸純度95.4wt%の好成績を示した。この触媒の活性は28時間程度の連続使用によってはまったく変化せず,なお長時間の使用に耐えうるものと推定される。なお,副生成物としてはアクリル酸の2次的分解生成物以外にはほとんど認められず,さらに収率向上が期待できる。
    この触媒のすぐれた活性は,担体アルミニウムスポンジの溶出とそれに伴う原料金属塩の還元,300℃以下の空気処理による化合形態の規制,および400℃の原料ガス(還元ふんい気中)処理による安定化等によってもたらされたものと思われる。
  • 加々美 兼吉
    1967 年70 巻6 号 p. 906-911
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トルエンの液相空気酸化における各種金属塩触媒(ナフテン酸のコバルト,マンガン,ニッケル,クロム,銅塩,オレイン酸,リノール酸, カプリン酸のコバルト, マンガン, ニッケル塩およびそれらの2 種混合触媒) の異常濃度効果を調べた。異常濃度効果は単独触媒, 混合触媒のいずれの場合にも認められた。コバルト塩では酸基に関係なく濃度約50(金属g 原子/ mol・トルエン)×10-5以上の場合に,マンガンのナフテン酸,カプリン酸塩では濃度約100以上,オレイン酸,リノール酸塩では濃度約50以上のときに,ナフテン酸のニッケル塩,銅塩では濃度約5以上の場合に現われた。2種混合触媒(含有金属の原子比にて1:1)では単独触媒のときよりも一般に濃度の低いところから異常濃度効果が現われたが,活性には相乗効果が認められなかった。トルエン酸化の場合はある濃度以上の触媒を使用すると,最適濃度の場合よりも酸化反応が早く停止するようになり,この点は,p-キシレンの酸化の場合と異なる点である( ただしさらに濃度を増大すると酸化がまったく起こらなくなる点はp-キシレンの酸化の場合と同じである)。異常濃度効果により酸化の途中で酸化が停止した反応液をトルエンを追加して異常濃度効果のない濃度まで希釈して酸化したときは最初からその濃度で酸化する場合よりも誘導期がやや長くなるが,誘導期後は始めからその濃度で酸化したときと同様の速度で酸化反応が進行する。また異常濃度効果により始めからまったく酸化が進行しないものについて酸化実験と同一操作(処理)を行なった反応液をトルエンで異常濃度効果のない濃度まで希釈した場合も,上と同様の傾向が認められた。
  • 小方 芳郎, 伊藤 正則
    1967 年70 巻6 号 p. 911-913
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    o-クレゾールを窒素気流中でメチルアルコールで接触メチル化して2,6-ジメチルフェノールを主生成物としてうることに成功した。生成物は未変化o-クレゾール,2,4-ジメチルフェノールなどを副生成物として含むが,これらをガスクロマトグラフィーで分析定量した。反応温度,触媒組成の効果を検討した。そのよい数例はつぎのようである。5.1% -CdO-Al2O3触媒で,電気炉温度350℃,窒素流速30ml/min, o-クレゾール・メチルアルコール均質混合溶液(モル比で1:1.4)供給速度52ml/hrで o-クレゾール反応率76. 6%, 2, 6-ジメチルフェノールの収率29.8%, 2, 6-ジメチルフェノール選択率44. 3mol%, 2, 4-ジメチルフェノール選択率9.2mol%をえた。5.1%CdO-14.0%K2SO4-Al2O3触媒では350℃,窒素流速30ml/min, 原料供給速度52ml/hrでそれぞれ58. 9%, 34. 3%, 66. 9mol%, 6. 2mol%を得,またこれと同様の反応条件下で, 3. 0% NiO-14.0% K2SO4-Al2O3触媒ではそれぞれ57. 4% 32. 2%, 58. 5mol%, 10. 4mol%をえた。
  • 井藤 一良, 浜中 佐和子, 山田 冨貴子, 小川 雅弥
    1967 年70 巻6 号 p. 914-918
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    23種類のモノアルキルベンゼンのNMRスペクトルから,プロトンのいろいろの型による化学シフトを測定した。側鎖アルキル基のα,β,γ位の炭素についているプロトンの化学シフトは,ベンゼン環の環電流によって顧著な影響を受け,αとβのプロトンは低磁場の方向に,γのプロトンは高磁場の方向にシフトする。これらの化学シフトの範囲を,側鎖アルキル基のプロトンの型および位置について詳細に決定した。その結果,ベンゼン環に近いところに枝分かれしたアルキル基があると,化学シフトに対する環電流の影響はより強くなることが認められた。これらのデーターを組合わせると,アルキルベンゼンの側鎖の詳細な構造について多くの情報を提供するであろう。
  • 井藤 一良, 倉重 力也, 浜中 佐和子, 小川 雅弥
    1967 年70 巻6 号 p. 918-921
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    4種のブチルベンゼンと8種のペンチルベンゼンについて,塩化アルミニウムによる脱アルキル反応を検討した。反応は,いずれも脱アルキルによって,わずかにパラフィンが生成する程度の緩和な条件で行なった。脱アルキルの難易は,中間体の反応性に依存し,つまり第一級アルキルベンゼンではアルキル基が弛緩した状態の,また第二級,第三級アルキルベンゼンでは,これから遊離したカルボニウムイオンの反応性によると考えられる。生成するパラフィンの骨格構造は,第一級アルキルベンゼンでは元のアルキル基の構造と同じであり,第二級,第三級アルキルベンゼンでは,それぞれ側鎖構造に関係なく,ブチルベンゼンはイソブタン,ペンチルベンゼンはイソペンタンになった。
    実験結果から,脱アルキルの過程では中間体が側鎖の水素陰イオンを攻撃し,脱アルキルはトランスアルキル化と競争反応になっていると考えられる。これらの反応機構を検討した。
  • 根来 健二, 小泉 久則
    1967 年70 巻6 号 p. 922-927
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    p-クレゾール(I),6,6'-ジオキシ-3,3'-ジメチルジブェニルメタン(II)および2,6-ビス(2-オキシ-5-メチルベンジル)-p-クレゾール(III) のそれぞれすべての水酸基をプロパンサルトンおよびγ - ブチロラクトンにより, γ - スルポプロピル化およびγ - カルボキシプロピル化を行なった。得られた6種の試料(I, II, III-PS-NaおよびI, II, III-BL-Na)を精製後,元素分析およびペーパークロマトグラフィーなどにより分析した。ついで,これらの化学的純粋な6種の試料について界面化学的性質を検討し,つぎの結果を得た。
    1)表面張力:I, II-PS-NaおよびI, II-BL-Naの少量添加によって表面張力をあまり低下しないが,III-PS-NaおよびIIIBL-Naはかなり表面張力を低下させる。
    2)電気伝導度:各試料水溶液の比伝導度と濃度との間には比例関係が成立し,ミセル形成が認められない。
    3)粘度:試料の濃度がIII-PS-Naのときには1%,III-BL-Naのときには0.5%以下であるとき還元粘度が増大し,高分子電解質的挙動を示す。
    4)分散性:6試料水溶液中における炭酸カルシウム粉末の沈降試験の結果,0.1% III-PS-Na溶液中ではかなりよい分散性を示したが,0.1% III-BL-Naおよび6つのすべての試料の0.01,水溶液は凝集的に働き,速やかにCaCO3が沈降した。
    5)乳化力:流動パラフィンに対する乳化性を沸騰水浴中で求めたところ,すべての試料のうちでIII-PS-Naのみがすぐれた水中油乳化持続性を示した。
  • 小川 利彦, 高瀬 福巳
    1967 年70 巻6 号 p. 927-930
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    水酸基,スルホン基を分子中に有する羊毛用アゾ染料の還元機構を知るため,塩化第一スズまたは亜硫酸ナトリウム水溶液中での還元速度を吸収スペクトル法で検討した。その結果,塩化第一スズで還元した場合,供試染料のアゾ基は切断されアミン類を生成する。この際ヒドラゾ化合物の生成速度が律速段階となり,その速度は次式で示される。
    v=k[SnCl-3][H2O][モノアゾ染料]
    また亜硫酸ナトリウムで還元した場合は染料の構造によって異なった過程をとり,直接アミンを生成するもの,およびヒドラゾ化合物を生成するもの等がある。これら還元の活性化エネルギーは電子供与性置換基の存在,水酸基とアゾ基との水素結合,およびスルホン基の立体障害により大となる。
  • 永井 芳男, 松尾 昌季
    1967 年70 巻6 号 p. 931-934
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    3,5-ジ-t-ブチル安息香酸アミド(I)のホフマン分解における中間体3,5-ジ-t-ブチルフェニル・カルバミン酸メチル(II)を,3,5-ジ-t-ブチルアニリン(III)とクロル炭酸メチルから別途合成し,構造の確認を行なった。
    III+ClCO2Me→II
    また,Iのホフマン分解における副生成物を単離・確認した。
    (1)Iのホフマン転位の際得られる副生成物は4-(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-1-(3,5-ジ-t-ブチルベンゾイル)セミカルバジド(VII)であった。
    (2)IIの加水分解反応の際副生する生成物はN,N′-ジ-(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)尿素(V)であった。Vは次の反応でIIより生成することがわかった。2II→V+2MeOH+CO2
    (3)Vを,構造確認のためIIIとホスゲンから別途合成した。
    2III+COCl2→V
  • 伊藤 健児, 加藤 陽之輔, 酒井 鎮美, 石井 義郎
    1967 年70 巻6 号 p. 935-938
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トリメチルシリルおよびトリアルキルゲルミルジアルキルアミンによるβ-プロピオラクトン(β-PL)の開環反応の速度論的研究を,β-PLの減少量を赤外吸収スペクトルで追求して行なった。両有機金属アミンの反応とも二次速度式が適用でき,また反応速度は母体第二アミンから推定される有機金属アミンの塩基性の増大とともに,かつ溶媒の極性の増加とともに大きくなる。トリメチルゲルミル体の反応性はトリンチルシリル体のそれよりも約10倍大きい。例えばエチレンジクロリド中65℃ のk2(l/mol・sec)は(CH3)3Si-N(C2H5)2で6.10×10-4,また(CH3)3Ge-N(C2H5)2で5.71×10-3である。
  • 辻 利哉, 中尾 一宗
    1967 年70 巻6 号 p. 939-943
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    織物の工業的な撥水加工には一般にメチルハイドロジエンポリシロキサン(MHPS)の水分散性エマルジョンが用いられている。これらの市販エマルジョンには,乳化剤,有機溶剤,安定剤その他が含まれている。しかしながら,今までMHPSエマルジョンの安定性に対する乳化剤のみの効果についての報告は見あたらない。この研究においては,種々のノニオン性,カチオン性,アニオン性乳化剤を用いてMHPSを乳化し,それらの安定性を比較した。ポリオキシエチレンラウリルアルコール型,ポリオキシエチレンノニルフェノール型の場合には,安定性はHLBの増大とともに向上した。
    ポリオキシエチレンラウリルアルコール(オキシエチレン25mol) およびポリオキシエチレンノニルフェノール(オキシエチレン40mol) は特に安定なエマルジョンを与えた。セチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドも安定なエマルジョンを与えたが,室温放置中,わずかずつのガス発生が認められた。アニオン性乳化剤の中には0.1%の低濃度でもMHPSの乳化に有効なものが若干あった。
  • 八木 徹也, 内本 建一, 志水 一宇, 中桐 泰雄
    1967 年70 巻6 号 p. 944-949
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ホワイトオイルの製造を目標として,シリカゲルクロマトグラフィーによって潤滑油留分から飽和炭化水素を連続的に分離する方法について研究した。この方法は希釈油の吸着,n-ヘキサンによる展開,トルエンによる芳香族成分の脱離およびn-ヘキサンによるトルエンの置換の4段階より成る。
    60スピンドル油の吸着分離において,飽和炭化水素の収率および純度に影響を与える油分とゲルの比率,溶剤の種類および量,吸着剤の種類と粒度などの要因について検討し,最適条件を定めた。
    最適条件によって60スピンドル油の連続精製を行なった場合に, シリカゲルの活性は油中に含有する樹脂分の吸着により吸着回数に比例して低下した。
    90タービン油,500,700ニュートラル油の連続的分離により,原料油の平均分子量が高いほど得られた飽和油の純度が低下することを認めた。
  • 玉置 弥栄
    1967 年70 巻6 号 p. 949-952
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    果糖,ショ糖の分離に利用できる果糖カルシウム,ショ糖カルシウムと同様な化合物が,多価アルコールにも存在するか否かを知る目的で実験を行なった。塩基としてカルシウム,ストロンチウム,バリウムの水酸化物,多価アルコールとしてソルビットマンニット, キシリットをもちい, 20℃における水, 塩基, 多価アルコールの状態図をもとめた。ソルビットカルシウム, キシリットカルシウムについては,ソルビット濃度80%キシリット濃度70%までは,モル比1:1の化合物のみしか生成しなかった。ソルビットカルシウムの生成に必要なソルビット濃度は0℃で3%, 20℃ で6%, キシリットカルシウムについては20℃で23%で,果糖の0.3%に比してソルビットの分離にはやや不利で,キシリットカルシウムは分離には役立たなかった。状態図より見て,マンニットカルシウムは固相中に析出せず,バリウム,ストロンチウムは上記多価アルコールとの化合物は生成しなかった。
  • 畠山 兵衛, 中野 準三, 右田 伸彦
    1967 年70 巻6 号 p. 953-957
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    過酢酸分解における木材炭水化物の挙動を知る目的で, エゾマツホロセルロースを8%過酢酸溶液中でかきまぜつつ, 90℃で4時間保持した。
    (1)過酢酸によるホロセルロース組成分の分解程度はつぎのとおりである。セルロース:4%,マンナン:40%,キシラン:50%,リグニン:90%。
    (2)分解物を検索して,ホロセルロースは酸化反応のほかに加水分解反応を受けることを明らかにした。
    (3)ペントサンの場合,酸化反応は2位と3位の水酸基に起こり,さらに2位と3位の間の炭素-炭素結合が切断される場合もある。ヘキソサンの場合に最も酸化を受けやすいのは,6位の第一アルコール基であり,2位と3位の間の炭素-炭素結合も酸化によって切断される。
    (4)ホロセルロースの過酢酸分解において,コハク酸が生じるのは,加水分解反応とBaeyer-Villiger反応の結果であることを明らかにした。
  • 畠山 兵衛, 鈴木 金道, 中野 準三, 右田 伸彦
    1967 年70 巻6 号 p. 957-964
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    過酢酸によるリグノスルホン酸とチオリグニンの分解挙動を明らかにするため,(1)溶解性,(2)過酢酸の消費,(3)カルボキシル基,(4)カルボニル基,(5)フェノール性水酸基,(6)メトキシル基,(7)紫外スペクトル,(8)可視スペクトル,(9)分解物などについて検討した。その結果,以下の諸点が明らかになった。
    反応中に生成するカルボキシル基は,主としてリグニン芳香核の開裂反応に起因する。すなわち5%過酢酸溶液を70℃で3時間作用させた場合,芳香核の開裂に基づくカルボキシル基は生成する全カルボキシル基の50~60%に達する。過酢酸処理で生じるカルボニル基の一部は,リグニン側鎖部分のアルコール性水酸基の酸化によって生じる。フェノール性水酸基およびメトキシル基含有率の変化を検討した結果,脱メチル反応により生じたカテコール核は過酢酸溶液中では不安定であり,その大部分は直ちに分解する。紫外および可視スペクトルについては全波長領域にわたり,吸光度の著しい減少が認められる。とくに475mμの吸光度の残存率と芳香核の残存率との間に直線関係が認められることは興味がある。なお分解物としてシュウ酸,マレイン酸,プロトカテキュ酸およびバニリン酸などを検出した。
  • 石森 岐洋, 武田 信之, 鶴田 禎二
    1967 年70 巻6 号 p. 964-969
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジエチル亜鉛-水系につき赤外吸収スベクトル,X線回折,ガスクロマトグラフィーなどを用いて検討した。ジエチル亜鉛と水との主反応はつぎのようになると考えられる。
    ZnEt2+H2O→EtZnOH+EtH[I]
    nEtZnOH→(EtZnOH)n→Et(ZnO)nH+(n-1)EtH[II]
    Et(ZnO)nH+ZnEt2→Et(ZnO)nZnEt+EtHEt(ZnO)nH+H2O→HO(ZnO)nH+EtH[III]
    ジエチル亜鉛-水系によるプロピレンオキシド重合の開始剤は,Et(ZnO)nZnEt,Et(ZnO)nHまたはHO(ZnO)nHであり,これらはZn-O結合に関して酸化亜鉛の構造に類似したものとなっている。重合の初期反応生成物(加水分解後)として,2-メチル-1-ブタノール,2-ぺンタノールおよびプロピレングリコールが見いだされた。ジエチル亜鉛-水系によるプロピレンオキシド重合の主反応を,配位イオン機構として考察した。
  • 石森 岐洋, 平石 尹彦, 鶴田 禎二
    1967 年70 巻6 号 p. 970-974
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジエチル亜鉛-アセトン系につき,その反応を赤外分光光度計,ガスクロマトグラフィーなどを用いて検討した。ジエチル亜鉛とアセトンとの反応の第一段階は水素引き抜き(またはエタン生成)反応であり,ついでアルドール縮合型反応および亜鉛ジアルコキシド生成型反応などが行なわれる。ジエチル亜鉛-アセトン系によるプロピレンオキシドの重合では初期反応生成物として,2-メチル-1-ブタノール,2-ペンタノールおよびプロピレングリコールが見いだされ,エチル亜鉛メトキシドーアセトン系による重合では, さらに, メトキシプロパノールが見いだされる。ジエチル亜鉛- アセトン系はプロピレンオキシドの重合を開始する化学種という点において,ジエチル亜鉛-水系とジエチル亜鉛-アルコール系との混合系であると考察した。
  • 下村 猛, 土田 英俊, 篠原 功
    1967 年70 巻6 号 p. 975-980
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アミン(C2H5NH2, (C2H5)2NH, (C2H5)3N) 中でα, α'-アゾピスイソプチロニトリルを開始剤としてアクリロニトリル(AN)の低重合反応を行なった。モル比,[(C2H5)2NH]/[AN]が0.1~30の範囲の生成物は,重合度1~260となる。得られた低重合体は一般に赤系の着色を示すが,これは赤外および紫外吸収スペクトルの観測から,構造中の-C=N-または-C=C-C=N-の共役系に原因することが認められた。不飽和結合が3~5個以上連続すると着色するが,共役系の生成は重合鎖に存在するニトリル基がアミンの作用で反応し,次式のように環化が生起するためと考えられる。
    〓(1)
    着色オリゴアクリロニトリル(分子量:800)を溶離型カラムクロマトグラフィーにかけ,分別区分について着色と構造の関連を主として紫外スペクトルから検討した。この結果,C=Nの共役数と鎖長の関係から環状構造は長く連続するものではなく,5あるいは6単位以下であると推定した。環形成により分子配列が乱れると融点が現われるが,環構造の長い連続または分子量の大きいものでは融点が無くなる。分子量5000以下の着色した分別オリゴアクリロニトリルのジメチルホルムアミド溶液について25℃で測定した極限粘度と数平均分子量の関係は次式となる。
    [η]=1.53×10-3Mn0.49(2)
  • 下村 猛, 土田 英俊, 篠原 功
    1967 年70 巻6 号 p. 980-985
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アミン中でアクリロニトリルをラジカル低重合させて生成する,赤系に着色したナリゴアクリロニトリルは,赤外吸収スペクトルでvC≡Nの吸収とみられる部位に2240cm-1,および2180cm-1の2本のピークが現われる。この二つの吸収ピークはいずれもニトリル基に帰属すると推定し,これが構造との関連をジエチルアミンとアクリロニトリルの1:1付加物の加熱処理物,アジポニトリルあるいはビスβシアノエチルアルキルアミン(アルキル:-CH3,-C2H5)から誘導して得られる環状化合物をモデルとして検討した。この結果ニトリル基のβ炭素位の二重結合に付加したアミノ基がニトリル基との関連で累積二重結合形になるときに2180cm-1の吸収が生起することを確認した。連鎖に連続してニトリル基が3個以上ある場合,条件によってはこれらが反応して環化するが,この時連鎖の末端に環が形成される場合には環に残るニトリル基のβ炭素位にイミノ基構造をとる場合があり,これが次のアミノ基構造と互変異性平衡により,vC≡Nが2180cm-1に移行する原因となる。さらにこの種のイミノ基構造はプロトン存在下の加水分解,あるいは空気酸化によって容易にカルボニル基に変化するが,窒素が脱離してカルボニル化した化合物では2180cm-1の吸収ピークは消失し,vC≡Nは2240cm-1のみとなる。
  • 寺町 信哉, 青木 亨, 永沢 満, 香川 毓美
    1967 年70 巻6 号 p. 985-988
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    スチレン-アクリロニトリル・ランダム共重合体を,メチルエチルケトン/シクロヘキサン系で,化学組成による分別を行なった。平均アクリロニトリル組成が31.2wt%および20.8wt%の二つの試料の等量混合物の分別結果は,それぜれの原試料の組成に相当する点に,二つのシャープなピークを持つ組成分布曲線を示した。
  • 高橋 彰, 田中 久夫, 香川 毓美
    1967 年70 巻6 号 p. 988-992
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1.アクリロニトリル(AN)-アクリルアミド(AAm)共重合体を組成比AN/AAm=0/100~100/0の間のほとんど全範囲にわたって合成し,得られた共重合体の組成分析を赤外および紫外吸収スペクトル法ならびに比重法で決定した。また組成分析結果よりモノマー反応性比を求めた結果は
    γAN=0. 94±0. 16, γAAm=1. 04±0. 27
    で,得られた共重合体はランダムコポリマーに近いことを明らかにした。
    2.共重合体の溶解性を検討し,各組成コポリマー混合物-60%NaSCNaq-エタノール系分別では組成は変化せず,重合度分別がおきることを確認した。コポリマー-DMF-H2O系およびDMSO-H2O系では相分離の限界組成と共重合体組成との間に密接な関係のあること,したがって共重合成分のおのおのに対して,互いに溶媒-非溶媒の関係にある溶剤を混合して使用すれば組成分別の可能性のあることを指摘した。
    3.相分離点における混合溶媒の限界組成よりP-ANおよびP-AAmの溶解性パラメーター(δ)を評価し,δ(P-AN)=13.4,δ(P-AAm)=19を得た。
  • 伊藤 浩一, 岩瀬 誠吾, 梅原 和夫, 山下 雄也
    1967 年70 巻6 号 p. 993-1000
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    共重合体のミクロ構造に関する知見を得る目的で,置換スチレン(S)と置換アクリレート(M)のラジカル共重合体の高分解能NMRスペクトルを測定した。共重合体中のMユニットのメトキシプロトンシグナルは,隣接Sユニットのフェニル基による反磁性しゃへいのため,3本のピークに分離される。その相対面積を著者らの最近のとりあつかいにより解析した結果,monomer sequenceの分布は通常の共重合理論と一致することが結論される。さらに,“Co-isotacticity”σ(隣りあうSとMユニットが同じ立体構造をとる確率)は,スチレン(St)-メチルアクリレート(MA)系で0.8,St-メチルメタクリレート(MMA)系およびα-メチルスチレン(α-MeSt)-MA系で約0.5,α-MeSt-MMA系で約0.25とα-置換により,減少することが認められた。またp-置換スチレン-MMA系では,St-MMA系と同じ結果となりp-置換基(メチル,クロル,メトキシ)の効果は認められなかった。以上の結果から,“Co-tactic”結合を生成するstericcourse,および異種モノマーの置換基間の相互作用に関して,共重合過程を考察した。
  • 麻生 忠二, 国武 豊喜, 渡辺 勝久
    1967 年70 巻6 号 p. 1001-1006
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリルとω-置換1-オレフィン類との共重合をAIBN開始剤,70℃で行ない,モノマー反応性比を求めた。γ1(アクリロニトリル)は相手モノマーによって3~6の範囲で変化し,γ2(オレフィン)は実験誤差内で0であった。γ1の比較より,分子内にベンゼン環を有するモノマーは,π-相互作用によりアクリロニトリルラジカルとの反応性が増大すると結論できる。核置換フェニルブテン類との共重合結果もこれを支持する。しかし,フェニルアルケン類において鎖長の影響が小さいことから,攻撃ラジカルとベンゼン環の相互作用は比較的弱いと考えられる。また,以上の結果がビニル化合物のラジカル重合に対して持つ意味を論じた。
  • 松本 昭, 庄田 昭三, 原田 恒哉, 大岩 正芳
    1967 年70 巻6 号 p. 1007-1010
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フタル酸ジアリルとメタクリル酸メチルおよびアクリロニトリルとの共重合を過酸化ベンゾイルを開始剤として種々の条件下で検討し,モノマー中のフタル酸ジアリルのモル分率が増加するにしたがって,重合速度がいちじるしく減少するとともに共重合度が低下し,また温度上昇により重合速度はいちじるしく増加し,共重合度は低下することを見出した。フタル酸ジアリルの鎖内環状化反応の割合は,共重合体中のメタクリル酸メチル,アクリロニトリル含量の増加とともに減少する傾向が見られた。フタル酸ジアリル(M1) と, メタクリル酸メチル(M2) およびアクリロニトリル(M2') の塊状重合での反応性比は60℃において, r1=0.070,r2=25.0およびr1=0.057,r2'=3.72となった。これらの共重合系において,反応性比の温度依存性はかなり大きい。
  • 伊藤 政幸, 九里 善一郎
    1967 年70 巻6 号 p. 1011-1012
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    無水亜硫酸(SO2),アクリロニトリル(AN),オクテン-1(Oct)を放射線により三元共重合を行なった。
    生成ポリスルホン中のOctとSO2の比はモノマー混合比によらず1 : 1 であり, その組成は(AN)x(SO2-Oct)yで示される。
    この系の重合反応をSO2とOctの1:1コンプレックス(C)とANの二元共重合として共重合組成式を求めると次式を得る。
    ここで[C]は仕込原料中の平衡コンプレックス濃度,(C)はポリスルホン中の(SO2-Oct)のモル%である。また生成ポリスルホンはDMFに可溶,アセトンおよびベンゼンにはAN成分の少ないものは可溶である。
  • 古川 淳二, 山下 晋三, 原田 都弘, 佐谷 肇
    1967 年70 巻6 号 p. 1013-1021
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フェニルイソシアナート(PI)とエチレンオキシド(EO)交互共重合体の構造を検討した。ポリマーの構造としてはアセタール型とウレタン型が考えられ,加水分解生成物をガスクロマトグラフ,比色分析などにより分析した結果,少なくとも64.5mol%はアセタール型であることがわかった。一方,ポリマーの核磁気共鳴スペクトル,還元生成物の赤外吸収スペクトルよりウレタン結合の存在も判明した。
    交互共重合の起こる機構としてはつぎの三つが考えられる。(1)単純な共重合,(2)環状中間体すなわちPIとEOの等モル付加物の開環重合,(3)PIとEOが連続的に交互配位して重合。まず第一の機構はモノマー仕込み比を大幅に変えても交互ポリマーが得られることから否定できる。第二の機構を調べるために環状中間体と考えられる3-フェニルオキサゾリドン-2と2-N-フェニルイミノ-1,3-ジオキソランの両化合物を合成し,共重合と類似条件下で重合を試みたが前者は全然重合せず,後者は重合して高分子量のポリマーを与えるがその構造はウレタン型のみであった。したがって第三の機構で交互共重合が進む可能性が最も高い。赤外吸収スペクトルよりPIはトリエチルアルミニウムに配位することを確認した。このことはPIとEOが交互に配位することにより交互共重合するという考え方の一つの傍証とみなし得る。
  • 箕浦 有二, 榎本 靖
    1967 年70 巻6 号 p. 1021-1025
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    各種のクロルシラン化合物(トリメチルクロルシラン,ジメチルジクロルシラン,メチルトリクロルシラン,テトラクロルシラン)およびテトラメチルシランの存在下でスチレン(St),メチルメタクリレート(MMA)のラジカル重合をアゾピスイソブチロニトリルを用いて50℃で行なった。シラン存在下のSt,MMAの重合速度はシランを加えないときの重合速度とほとんど変わらず,またシランの濃度が増加するにつれて,得られたポリマーの分子量は次第に小さくなった。50℃におけるSt, MMAの重合でのシランの連鎖移動定数をMayo式により計算した。その結果,StではMe4Si, Me3SiCl, Me2SiCl3, MeSiCl3, SiCl4の順に0.31×10-3,1.25×10-3,1.78×10-3,1.92×10-3,2.0×10-3となり,MMAでは0.13×10-3,0.22×10-3,0.245×10-3,0.27×10-3,0.30×10-3となって,多ハロゲン化シランほどその値は大きくなった。また,シランのQtr値は上の順序で,1.03×10-4,2.33×10-4,2.83×10-4,3.10×10-4,3.35×10-4であり,etr値け+0.58, +1.30, +1.50, +1.48, +1.43であった。
  • 箕浦 有二, 春藤 穂, 榎本 靖
    1967 年70 巻6 号 p. 1025-1031
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    各種のクロルシラン化合物の存在下でスチレンのラジカル重合を行ない,末端にクロルシリル基を有するポリスチレンを合成し,ついでそのクロルシリル基の加水分解,縮合反応によって,幹シロキサンポリマーを形成させるという方法によって,ポリシロキサン-スチレングラフトおよびブロック共重合体を合成した。
    用いたクロルシランはジメチルジクロルシラン((CH3)2SiCl2),メチルトリクロルシラン((CH3)SiCl3),テトラクロルシラン(SiCl4)およびメチルジクロルシラン(CH3SiHCl2)である。
    グラフトあるいはブロック共重合体を効率よく合成するには, 連鎖移動反応時のスチレンの重合率をなるべく高めることが必要でありまたクロルシランの仕込み量も多いほど良いが, メチルトリクロルシランやテトラクロルシランのような多官能性のものを使用した場合はゲル分が増大してくる。
    しかし,この場合も三次元網状化を防ぐために適当なストッパ(ブタノールあるいはトリメチルクロルシランなど)を用いるとゲルの生成を抑えうることがわかった。
    なお,ケイ素-塩素結合よりもラジカル反応性の高いケイ素-水素結合をもつ化合物(メチルジクロルシラン)を用いグラフト共重合体の合成を行なった。
  • 野口 順蔵, 栗原 世紀, 吉田 喜展, 西 則雄
    1967 年70 巻6 号 p. 1032-1036
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    カゼイン水溶液にγ-メチルグルタミン酸-N-カルボキシ無水物を作用させてマルチ-ポリ-γ-メチルグルタミル- カゼインを合成した。これは水に不溶であるが, ジメチルホルムアミド, ジメチルアセトアミド等のポリアクリロニトリル糸有機溶媒に加熱により可溶となり, ポリアクリロニトリルとよくブレンドすることがわかった。この変質カゼインを含むボリアクリロニトリル反膜ならびに繊維についてその性質を調べた。皮膜の染着性は変質カゼインの含量増大とともに著しく増加する。繊維はブレンドポリマー溶液のゲル化や紡糸性より考えてポリアクリロニトリルに対し変質カゼイン約5%含有が最適で,強伸度にあまり影響することなく染色性を高め帯電性を低下させ,タンパク質繊維のもつ風合を加味することができた。
  • 石橋 信彦, 鎌田 薩男, 松浦 正和
    1967 年70 巻6 号 p. 1036-1039
    発行日: 1967/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    銅(II),コバルト(II),ニッケル(II),亜鉛(II)および銀(I)形にした巨大網状イオン交換樹脂Amberlyst15に対する非水溶媒中からのメルカプタンやジアルキルスルフィドなどの配位吸着を検討した。非水溶媒としてはトルエン,n-ヘキサン,メタノールなどを用いた。n-プロピルメルカプタンの吸着について検討の結果,通常の樹脂よりはるかに吸着能が大であること,銅形樹脂の吸着能がもっとも大で銀形樹脂のそれは小さいこと, 溶媒についてはメタノール>10%含水メタノール>n-ヘキサン≅トルエンの順にメルカプタンの吸着が低下することなどを知った。銅形樹脂は樹脂内の銅イオン1mol当り2mol以上の上記メルカプタンを吸着し,メタノール溶媒では3mol以上に達するが,メルカプタン分子が大きくなれば吸着能は低下した。またメルカプタン吸着樹脂を110℃に加熱することにより樹脂からメルカプタンを脱離させることができ, 樹脂の再生も容易であることを示した。ジエチルスルフィドは銀形樹脂にもっとも多く吸着されるが,吸着量はメルカプタンにくらべて小さい。吸着機構についても推測を試みた。
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