工業化学雑誌
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62 巻, 6 号
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  • 大柴 孝
    1959 年 62 巻 6 号 p. 753-757
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    発煙硫酸にアンモニアを反応させてスルファミン酸を製造する方法を見出し, その条件を検討した。スルファミン酸生成の最適条件としては発煙硫酸のSO3濃度30%および反応温度60~70℃でこれ以外の条件ではアンモニアまたはSO3の利用率のいずれかが著しく低下した。この実験では約500gの発煙硫酸に対してアンモニアの流速0.44g/minが適当で,反応中にいったん生成したスルファミン酸が反応熱のために分解するのを防止するような条件が必要である。反応生成物は冷水または冷希硫酸で希釈して濃度70%の硫酸溶液よりスルファミン酸を析出せしめた。最適条件下でスルファミン酸に対するアンモニアの利用率は43%,SO3の利用率は35%を示し,100gの発煙硫酸に対して12gのスルファミン酸が得られた。
  • 山田 大十
    1959 年 62 巻 6 号 p. 758-760
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    活性炭の電気化学的性質がその吸着能に及ぼす影響は大きいものと考えられる。著者は賦活条件を異にする塩化亜鉛賦活炭について,その単極電位とイオン吸着を測定し,これと表面構造との関係を考察した。単極電位と溶液のpHとの間には,高温賦活炭(400~900℃)では直線関係があるが,低温賦活炭(140~315℃)では直線関係がない。そして高温賦活炭についてpH=0における単極電位を求め,これと酸素電極電位の値を比較し,その結果,活性炭表面は物理的吸着酸素よりなる陽極部と化学収着酸素よりなる陰極部をもつ二元電極であると考えられる。またイオン吸着測定より低温賦活炭は酸性酸化物で,高温賦活炭は両性酸化物であることを明らかにした。
  • 山田 大十
    1959 年 62 巻 6 号 p. 760-761
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    活性炭の細孔分布および比表面積はその吸着能の主要な因子であるが,またその界面電気化学的な性質も吸着能に大きな影響を与えるものと考えられる。著者は賦活条件を異にする塩化亜鉛賦活炭について,その界面動電位を測定し,これがイオン吸着能に及ぼす影響を考察した。その結果低温賦活炭はpH全域にわたって負の電荷を有するが,高温賦活炭はpH値3~4付近に等電点があることがわかった。これは前報で述べた低温賦活炭がアルカリのみを吸着するのに対し,高温賦活炭が両性吸着をするという結果と密接な関係を有するものと考えられる。また乾燥物の界面動電位(負値)が水和物のそれより大きいという結果が得られたが,これは乾燥物表面が水和物表面より緻密であるためであると考えられる。
  • 山田 大十
    1959 年 62 巻 6 号 p. 762-764
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    吸着剤による溶液中の吸着速度は溶質が吸着剤表面に拡散する時間および溶質と吸着剤との接触によって吸着が行われる時間に左右されるが,吸着剤の吸着能の大小とか,溶質分子の大きさも大いに関係があると考えられる。著者は塩化亜鉛賦活炭の本性を明らかにするため,その水酸イオンおよび酸性側におけるメチレンブルー吸着速度を測定レた。その結果,低温賦活炭の水酸イオン吸着速度は高温賦活炭のそれより大きい。これは水酸イオンに対する吸着能の大小によるものと考えられる。また低温賦活炭および高温賦活炭のメチレンブルー吸着速度は吸着初期において大きく, 時間の経過にともない次第に小さくなった。そして水酸イオンの吸着速度にくらべて小さいことがわかった。これはメチレソブルー分子の大きさが,水酸イオンのそれにくらべて大きいためであると考えられる。
  • 山田 大十
    1959 年 62 巻 6 号 p. 764-766
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化亜鉛節約の目的で塩化亜鉛と塩化アンモニウムとの混合物を賦活剤として活性炭を調製し,得られた賦活炭の性能試験を行った。その結果,このような賦活炭のメチレンブルー吸着能は塩化亜鉛賦活炭(原料と同量の塩化亜鉛を用いて1時間賦活したもの)のそれより小さく,そのメチレンブルー吸着能に及ぼすpHの影響は塩化亜鉛賦活炭のそれと類似していることがわかった。またそのヨウ素およびカラメル吸着能は大きく,塩化亜鉛賦活炭の比較的大きな吸着能に匹敵する。したがって,この賦活炭はメチレンブルー吸着より,ヨウ素およびカラメル吸着に有効であると考えられる。
  • 山田 大十
    1959 年 62 巻 6 号 p. 767-769
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報と同様に塩化亜鉛節約の目的で塩化亜鉛と塩化マグネシウムとの混合物を賦活剤として活性炭を調製し,得られた賦活炭の性能試験を行った。またこれと比較する目的で塩化マグネシウムのみを賦活剤として活性炭を調製し,この性能試験をも行った。その結果,塩化亜鉛と塩化マグネシウムとの混合物を用いて賦活した場合には,低温賦活炭(230℃)の吸着能が大きく,高温賦活炭ほどその吸着能は小さいことがわかった。そしてこの種の活性炭の吸着能は塩化亜鉛賦活炭(原料と同量の塩化亜鉛を用いて1時間賦活したもの)のそれより小さい。また塩化マグネシウムのみを賦活剤とした活性炭の吸着能は,前二者のそれより小さく,低温賦活炭ほどその吸着能が大きいという結果が得られた。
  • 日根 文男, 吉沢 四郎, 岡田 辰三
    1959 年 62 巻 6 号 p. 769-773
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    水銀法食塩電解が今日のように高電流密度で操業されることになると,塩水中に含まれる不純物の影響は著しく大となり,更に分解率を小さくしなければ電流効率低下が大きくなる。したがって,多量の塩水を出来うる限り十分に精製しなければならないが,これに反して,最近では種々の経済的な理由から不純物の多い台湾や中共等の近海塩の使用量が増加して来た。そこで,この塩水精製工程に関して再検討を試みた。
    なお,本研究は大阪曹達株式会社および日本ソーダ工業会の援助を得て,基礎研究は京都大学工学部工業化学教室において,また,工業化試験は大阪曹達株式会社尼崎工場において実施したものである。
  • 日根 文男, 吉沢 四郎, 岡田 辰三
    1959 年 62 巻 6 号 p. 773-778
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    水銀法食塩電解に用いる塩水の精製に際して,アルカリ添加によって生成する水酸化マグネシウムの沈降に対するかきまぜ効果について調べた。
    その結果,回分法にては出来るだけ短時間のかきまぜが有利であることがわかった。この無カキマゼ法沈殿の沈降方程式を求めたところ,従来の式はいずれも適せず,また,この沈殿を再び十分かきまぜれば,一般の沈殿と同様にRoberts-吉岡の式が適用出来る。
    また,この沈殿に対して,種々の無機物を添加したが,沈降助剤としての効果はほとんどなかった。
  • 日根 文男, 吉沢 四郎, 岡田 辰三
    1959 年 62 巻 6 号 p. 778-782
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    電解用食塩水の精製工程の一つであるカルシウムの除去について検討した。すなわち,カルシウムを含む粗塩水にソーダ灰を添加した時に生成する炭酸カルシウムの生成速度,沈降速度,結晶成長等に及ぼす操作条件の影響を調べるとともに,この沈殿の沈降方程式についても検討を加えた。
  • 舟木 好右衛門, 清水 義勝
    1959 年 62 巻 6 号 p. 782-787
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルミナ水和物を水熱処理して,不純分のより少ない,良好な結晶のハイドラルギライト,バイアライトおよびべーマイトを得てこれらの加熱変態経路を明らかにすることは重要なことと考え,X線,分光分析,炎光分析,電子顕微鏡などによりこれを調べ,つぎの諸結果を得た。
    (1)ハイドラルギライトは加熱によりγ→δ→θ→αとχ→κ→αの二つの系列を生成するが,ハイドラルギライトを120~200℃で水熱処理したものからは水熱処理温度をあげるにしたがい,次第にχ→κ→α系に減少し,160℃以上ではγ→δ→θ→α系のみとなる。
    (2)バイアライトは水熱処理したものからもγ →θ→α系は生成するが,δ 型はみとめられない。
    (3)アルミノゲルを水熱処理して生成したべーマイトはγ→δ→θ→αのほかに,γ→δ→αも存在すると考えられる。
    (4)ハイドラルギライトおよびバイアライトは水熱処理により含有ナトリウムが順次少なくなる。
    (5)ハイドラルギライト,バイアライトおよびベーマイトはいずれも1300℃2時間加熱でX線ではαアルミナを示すが,電子顕微鏡観察ではそれぞれの出発形態を維持する。1400℃2時間加熱によりはじめて通常のアルミナの形態を示す。
  • 舟木 好右衛門, 清水 義勝
    1959 年 62 巻 6 号 p. 788-793
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルミニウム塩を熱分解することにより生成する無定形アルミナを中心として,これをさらに加熱,またはこれを加水することによる結晶形の変化を追求した。
    実験結果はつぎのように要約される。
    (1)含水硝酸アルミニウム,含水塩化アルミニウムおよび酢酸アルミニウムを熱分解した場合,500~700℃において無定形アルミナが生成する。
    (2)含水硫酸アルミニウムおよびアンモニウムミョウバンを熱分解した場合,850~900℃においてγアルミナを生成するが,これには無定形アルミナを含む。
    (3)無定形アルミナおよび無定形アルミナ含有のγアルミナをさらに加熱することにより,γ→δ→θ→α系の存在を認めた。
    (4)無定形アルミナを水中室温放置の場合は直接バイアライトが生成し,ついですでに生成したバイアライトとは無関係にハイドラルギライトが生成するが, ベーマイトの生成は認められない。
    (5)無定形アルミナを水熱処理した場合は,ほぼ110℃からベーマイトに移行することを認めた。
    (6)アルミニウム塩を加熱して生成するアルミナの電子顕微鏡写真はアルミナ三水和物の場合のような特徴ある形態を示さない。
  • 間瀬 判蔵
    1959 年 62 巻 6 号 p. 793-797
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    著者は蛇紋石の焼成による変化を解明する目的で,蛇紋石とそれを500~970℃ 間の適当温度に1時間焼成して得た焼成物について赤外線吸収スペクトルを測定し,その結果を解釈するためにズン岩,エンスタタイト合成品,滑石の940℃焼成物,およびマグネシオフェライト合成品の赤外線吸収スペクトルを測定して比較考察してみた。次に蛇紋石の焼成分解によって中間的に生成すると考えられる遊離MgOと遊離SiO2の関係を明らかにするために,蛇紋石の脱水分解生成物に組成上合致するMgO:SiO2=3:2(モル比)に相当する焼成物,および組成上アンチゴライト(蛇紋石の主成分)のMgにAlが置換して構造上は全く同形であるカオリナイトの焼成物の赤外線吸収スペクトルを測定して,両者の結果を比較検討した。本報文はそれらの測定結果とそれより考察して得た蛇紋石の焼成反応の機構についての知見を述べたものである。
  • 永井 彰一郎, 木野 達, 十倉 長久
    1959 年 62 巻 6 号 p. 798-801
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    永井彰一郎・木野達・十倉長久カリ石英粗面岩の難溶性のカリを,石灰との反応で可溶化して,カリ塩,またはカセイカリとして溶出することは,第2次大戦中に盛んに各方面で研究された。著者の一人永井は,数種の方法について研究した。そのうちで石灰とカリ石英粗面岩をオートクレーブ内で,塩基交換反応をさせることによって,高い溶出率をうることを確めた。今度の研究はカリ石英粗面岩は本邦のようにカリ資源にとぼしい所でも比較的豊富にあり,またカーバイド廃サイが現在非常に多量に副生されている。しかもその処理利用が大きな問題となっている。消石灰としての用途を十分に開くことはその処理の上からも大切なことである。そのためカリ石英粗面岩のカリをカーバイド廃サイを利用して可溶化する研究を更に進めるべきであると考えるので,表題の研究を行った結果,さきの石灰を使用した時と同等以上の効果をうることを確めた。
  • 矢田 直樹
    1959 年 62 巻 6 号 p. 801-806
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    鉱油留分からn-パラフィンを抽出するにあたり,尿素法を応用すれば簡単でしかも有効であることはすでによく知られている。著者は炭素数17~18のn-パラフィン分を含む軽油留分について尿素アダクツ法を応用したが,純粋n-パラフィンを得ることはきわめて困難であることを知ったので, 非n - パラフィン成分による汚染の原因を探索するために屈折率と融点の関係および紫外部の吸光度などを測定比較し,アダクツの洗浄条件,原試料軽油め性状などが著しく影響することを認めた。洗浄溶剤としてベンゼンは石油エーテルよりもすぐれるが, 芳香族類による汚染は軽油から直接n - パラフィン分を分別する場合特に顕著である。大まかな処理で得た粗パラフィン部をさらに分別すれば理想的であるが,前処理として硫酸と無水硫酸の混酸処理,またはシリカゲルによる吸着処理を行えば良好な結果を得る。
  • 矢田 直樹
    1959 年 62 巻 6 号 p. 807-811
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トランス油留分にあたる八橋系潤滑油原料を硫酸,フルフラール,フェノールおよびシリカゲルでそれぞれ処理し,得られる精製油は原試料油よりも尿素アダクツ生成能が向上するが,放置によってアダクツ生成の妨害が次第にあらわれることを観察した。精製油の芳香族含有量,残存芳香族の種類,およびレジン成分の残留率などがこの妨害作用に関係を持つことを推察し,肉眼による着色の判定または620mμ(赤色光)の透過率が,この効果を比較する目やすになることを見出した。アダクツ生成の前処理としてカセイソーダ水溶液で酸性物質を抽出除去すれば妨害効果が著しく減退し,一般にこのような酸性物質によるアダクツ生成能の低下が認められる。
  • 丸田 銓二朗, 鈴木 義仁
    1959 年 62 巻 6 号 p. 811-813
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    陰イオン交換樹脂を用いて油脂中のカルボニル化合物を分離した。カルボニル化合物の2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(以下DNPHと記す)をつくり,アルミナ管を用いて未反応の2,4-ジニトロフェニルヒドラジンを験去し,ベンぜン溶液にして吸光度を測定した。カプロンアルデヒドのDNPHの検量線を用い, カルボニル化合物をカプロンアルデヒドとして含有量を求めた。実験の範囲では油脂のカルボニル化合物含有量は360~3441mg/l00gであった。
    滴脂から分離したカルボニル化合物のDNPHを石油炭化水素を固定相とし,メタノール-石油炭化水素を展開溶媒とする逆相ペーパークロマトグラフィーで展開した。動物油脂にはカプロンアルデヒド,植物油脂にはブチルアルデヒド,カプロンアルデヒドの含有量が多かった。
  • 和泉 学
    1959 年 62 巻 6 号 p. 814-817
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アゼライン酸の需要は最近急激に増加してきているが,その製造方法はオレイン酸などの不飽和脂肪酸をオゾン分解する方法が現在最も有利とされている。しかし,この方法によれば,アゼライン酸と同時に必然的に相当量の非アゼライン酸部が副生する。この非アゼライン酸部の中でさし当り利用し易いと思われるものは,分子裂断の結果生じた低級一塩基酸類であろう。著者がさきに報告した氷酢酸法オゾン分解の工程にしたがえば, この低級一塩基酸は石油エーテルまたはヘキサンによる抽出部に含まれると考えられる。一方,オゾン化および分解においては,多くの副反応を伴なうものである上に,分解後の溶媒留去の操作においては,生成物の一部が溶媒と一緒に留出することは避け難く,氷酢酸法オゾン分解によって実際にえられる低級一塩基酸の種類ならびに量は不明であった。本報告はオレイン酸,米ヌカ油脂肪酸およびトール油脂肪酸から,氷酢酸法オゾン分解によってえられた非アゼライン酸部について,ガスクロマトグラフ定量分析を行い,おもに低級脂肪酸の存在を追求したものである。その結果,著者の場合と類似の条件で行われた従来の実験結果から当然生成を予測され,またすでに著者がペーパークロマトグラフ分析によって検出確認したペラルゴン酸のほかに,いずれの試料についても同様な種類の相当量の低級脂肪酸が生成している薪らしい事実を認め,Rt値からこれをカプリル酸であるとした。捕集されたものについて求めたその生成量は,いずれの場合にも,ペラルゴン酸の約1/5であった。カプリル酸の生成は副生したオレイン酸ヒドロペルオキシドの裂断の結果であると考えた。
  • 長久保 国治, 岩倉 義男, 藤井 勉
    1959 年 62 巻 6 号 p. 817-820
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    β-プロピオラクトンとアルキルメルカプタン(アルキル基はn-ブチル,t-ブチル,イソアミル,n-オクチル)との反応により相当するβ-アルキルメルカプドプロピオン酸を合成した。β-プロピオラクトンとβ-メルカプトプロピオン酸エステルあるいはチオグリコール酸エステルとの反応によりそれぞれβ,β'-チオジプロピオン酸あるかはβ-カルボキシメチルプロピオン酸を合成し,またβ-プロピオラクトンと水との反応によりβ,β'-オキシジプロピオン酸を合成した。これらのモノ-あるいはジカルボン酸をn-ブタノール,n-オクタノールおよび2-エチルヘキサノールでエステル化し,それぞれ相当するモノ-およびジエステルを合成し,これらのモノ-およびジエステルのポリ塩化ビニル用可塑剤としての性能を試験した。その結果これらエステルを混和した皮膜の伸長率,硬度はいずれもフタル酸ジオクチル(DOP)混和皮膜とほぼ同程度の値であるが,100%モジュラスはすべてDOP混和物より小さい値を示し,とくに脆化温度(-27~-51℃)は一般にDOP混和物(-8℃)より低い。
  • 斎藤 真澄, 三木 彦一, 遠藤 彰, 内海 正登, 伏崎 弥三郎
    1959 年 62 巻 6 号 p. 820-825
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    カンフェンの自働酸化を行い,その生成物ならびに反応速度を調べた。使用したカンフェンはα-ピネンより合成した。カンフェンは昇華性であるためB P O とともにオートクレーブに入れ, 酸素圧800mmHg,反応温度60~150℃の範囲で酸化を行った。
    生成物はヒドロペルオキシドの反応を示さないが,他のラジカル反応を促進することが出来る。生成物を蒸留し,各留分の赤外線吸収スペクトルをとった結果,未反応カンフェン,異性化テルペンの他にケトンが見出された。このケトレのセミカルバゾンはmp223℃を示し,この値は別法で得たカンフェニロンのそれと一致し,したがってこのケトンはカンフェニロンであることを確かめた。このカンフェニロンの量は反応温度の上昇とともに増加しており,130~150℃では35~38%に達する。カンフェニロン以外の酸化生成物たとえばアルデヒド,アルコールあるいは酸は認められなかった。
    次に反応機構をより明らかにするため,酸化速度を測定した。すなわち酸素吸収速度と酸素圧,カンフェン濃度およびBPO濃度との関係をしらべた。その結果速度の逆数と酸素圧の逆数およびカンフェン濃度の逆数とはそれぞれよい直線関係を示す。またBPO濃度についてはその1/2乗に比例することがわかった。したがって次の速度式が得られ,定数
    r=[BPO]1/2K=[RH] [O2]/(A[RH]+B[O2])
    ABの値を求めることが出来た。それから計算した活性化エネルギーはすでに行ったテルピノレンあるいはα-ピネンのそれよりも大きい。
    以上の結果からカンフェンの自働酸化では中間体としてポリマーペルオキシドが生成され,それが分解してカンフェニロンとなると推定して反応機構を考えると都合がよい。カンフェンが酸化されにくいのは,二重結合のα位の炭素がブリッジヘッドであるため,水素がとれにくいという構造上の理由によると考えられる。
  • 北尾 弟次郎, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1959 年 62 巻 6 号 p. 825-828
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アリール-β-クロルエチルスルホン類は対応するアリールメルカプタンにエチレンクロルヒドリンを作用せしめるか,あるいは活性ハロゲンを有する化合物にメルカプトエタノールを処理して得られるβ-オキシエチルスルフィドを塩化チオニルまたは五塩化リンで塩素化してクロルエチルスルフィドを得,更にこれを過酸化水素で酸化して得られる。また対応アリールスルフィン酸にエチレンクロルヒドリンを処理し, 後塩素化しても得られる。
    β-クロルエチルスルホンをアルカリ性で脱塩化水素化するとアリールビニルスルホン類が合成される。このように合成した置換フェニル-β-クロルエチルスルホンおよび置換フェニルビニルスルホン類はメタノール,エタノール,ブタノールなどのアルコール類と弱アルカリ性でミハエル様付加反応を行うことを確かめた。またアミンとしてモルホリンを用い,同様の付加反応がアミン類にも容易に行われることを確かめた。
  • 北尾 弟次郎, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1959 年 62 巻 6 号 p. 829-832
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ビニルスルホン基を有する染料を合成し,繊維と化学的に結合せしめ,堅ろう度良好な染色物をうるために,-p-およびm-アミノフエニルビニルスルホンをジアゾ成分としβ-オキシエチル基を有するアミン類をカップリング成分とする二,三の分散染料を合成し,ビニロン,アミラン,アセテートを染色せしめた。またこのアミンをナフトールベースとして用い,市販ナフトールAS類とともに常法によりモメン,ビニロン上で,さらにビニロン,アミラン,アセテートを一浴法により顕色した。これらの染色物を弱アルカリ性で処理すると大部分の染料は繊維と結合するようである。たとえばモメン染色物を煮沸100%ピリジン液で抽出を試みてもほとんど抽出されず,抽出前後の布についての測色値の検討からも,このことが確かめられた。
    期待されたようにモメンはナフトール染料で,ビニロン,アミラン,アセテートは分散染料によって,鮮明,かつ堅ろうな染色物が得られた。
  • 北尾 弟次郎, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1959 年 62 巻 6 号 p. 832-836
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    先にビニルスルホン基を有する分散染料,ナフトール染料がそれぞれの繊維の官能基と共有結合し,堅ろう度良好な染色物をうることを知ったがこの際未結合染料が容易に繊維から除去されるためにスルホン酸基を有する酸性および直接染料型の染料の合成を行った。すなわちp-アミノフェニル-β-クロルエチルスルホン,m-アミノフェニル-β-クロルエチルスルホンおよび2-アミノ-4-トリフルオルメチル-フェニル-β-クロルエチルスルホンをジアゾ成分とし,スルホフェニルメチルピラゾロン,J-,γ-,フェニルγ-,H-酸およびその誘導体に酸性またはアルカリ性でカップリングさせ,黄~ 赤~ 紫~ 青~ 緑~ 黒色のほとんど全範囲の色にわたる染料を合成した。
    これらの染料を用い絹,アミランは酢酸酸性で,またモメン,ビニロンは中性,ポウ硝を添加して染色後,弱アルカリ性液で処理して繊維に固着させたところ非常に良好な堅ろう度の染色物が得られた。この固着率は予想以上に良好であり,未結合染料はきわめて少ないことは測色値からも確められた。また比較にProcion Brilliant Red 2 BS を用い,たいして差異のないことを観察した。
  • 今給黎 義之
    1959 年 62 巻 6 号 p. 837-844
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フェナントレンを各種のイソアルコールを用いて直接アルキル化し,得られる生成物の性質を明らかにし,その有効な利用法を開拓するための一助とすること,および生成物から出来るだけ純物質を単離してその構造を明らかにすることを目的とした。C3からC8までのイソアルコール8種をアルキル化剤,三フッ化ホウ素を主な脱水縮合剤として純フェナントレンをアルキル化した。イソプロピル,2-メチル-1-ペンチル,シクロヘキシル,2-エチル-1-ヘキシルの各アルコールから合成したモノ置換体留分は常温で液状を呈したが,イソブチル,t-ブチル,イソアミルの各アルコールを用いた場合のモノ留分からは結晶を析出し,特にt-アミルアルコールを用いた場合には一部2-t-ブチルフェナントレンを生じた。単離し得たアルキルフェナントレンは7種であって,これらは紫外および赤外分光分析によって構造の推定を行った。油状のモノ置換体についてはPVC可塑剤としての簡単な試験を行い,よい結果を得たものもあった。
  • 根来 健二, 檜山 八郎, 大島 敬治
    1959 年 62 巻 6 号 p. 844-845
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    タモールの生成反応について考察を加えるために,β-ナフタリンスルホン酸とホルマリンとを種々の反応条件で反応させて,生成したタモールのベンジルチウロニウム塩の分子量,収量,融点等を調べた結果,タモールの分子量は反応時間に比例して増大すること,硫酸濃度を大にし,ホルマリン濃度を大にするほど反応速度が大でかつ迅速に高分子量のものになることを認めた。さらに合成条件の異なった各種タモールの粘度と炭酸カルシウムについて分散性を調べ,タモール生成時の反応条件が分散性にどのように影響するかを検討した結果,十分に反応させたもの(反応後冷時固結するもの)は粘度が高く,また炭酸カルシウムの分散性もよいという結果を得た。
  • 根来 健二, 出原 正孝, 岸本 卓, 檜山 八郎, 大島 敬治
    1959 年 62 巻 6 号 p. 846-848
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    タモール生成反応における反応の進行状態を知るためにβ-ナフタリンスルホン酸とホルマリンとの縮合体のぺーパークロマトグラフィーについて研究を行った。すなわち反応途上の,硫酸を含むアルキルアリルスルホン酸類の溶液そのまま,あるいはアンモニア水で中和してできるスルホン酸アンモンの水溶液を用いてペーパークロマトグラフィーを行った結果,n-ブタノール-酢酸-水,または石炭酸-水の溶媒で展開し,クリスタルバイオレットで顕色させる方法が最もよい結果を与えることを見出した。この方法を用いてβ-ナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドとの反応の程度を調べた。
  • 笠原 文雄
    1959 年 62 巻 6 号 p. 849-851
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルギン酸ソーダの乾燥粉末を加熱した場合におこる諸変化について実験し,
    (1)pH値は加熱により酸性側に移行すること
    (2)遊離酸基酸度が加熱により高くなること
    (3)粘度がいちじるしく低下すること
    (4)構造粘性はいちじるしく失われ,また流動曲線は直線に近くなり,Newton-flow の状態に近づくこと
    (5)1分子反応として求めた分解反応速度定数は初期においていちじるしく高いが,4~5時間後,ほぼ一定値となること
    等の知見を得た。これらの知見に基いて次のような考察を行った。
    (1)加熱による分子崩壊反応は1分子反応である。
    (2)加熱の初期には重合度に関係のない粘度低下が起る。
    (3)加熱により未反応酸基,ラクトン結合酸基等に変化が起る。
  • 笠原 文雄, 黒岩 義盛
    1959 年 62 巻 6 号 p. 851-854
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    市販工業用アルギン酸ソーダについて,温度による粘性の変化を実験した。その結果
    1.高粘性のものはAndrade 式への適合性が悪いこと
    2.de Waele-Ostwald式へは低重合度のものの方が適合性がよいこと。速度勾配の小さい部分の方が適合性が悪いこと
    3.流動曲線は温度の高い方が直線に近づくこと
    4.温度履歴により相当に粘度差を生ずること
    5.濃度を一定とした場合,および濃度を異にした場合の温度による粘度変化率は共に複雑で,その相互の間に一定の傾向を認めにくいこと
    等の知見を得た。これらの原因について, 構造性, ラクトン結合酸基酸度, 微量Ca塩,Al塩の混在, 極低濃度域におけるイオン解離に基づく粘性挙動の変化等の点から考察した。
  • 林 和夫, 山口 久福
    1959 年 62 巻 6 号 p. 854-856
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    カプリル酸およびラウリン酸が添加されたメチルシリコーン油(25℃ の粘度:10cs,100cs,1,000cs)の動摩擦係数を測定し,メチルシリコーン油の粘度および脂肪酸の分子量の大きさが動摩擦係数に及ぼす影響をしらべた。高粘度のメチルシリコーン油ほど,カプリル酸の添加量が少量で動摩擦係数が一定になる。ラウリン酸はカプリル酸に比較して少量の添加量で動摩擦係数が一定になる。脂肪酸の添加量によって一定値を示す動摩擦係数は,メチルシリコーン油単独の場合とは異なって粘度によってほとんど変化をしない。温度による動摩擦係数の変化は,カプリル酸およびラウリン酸によって,またそれらの濃度によって異なる。
  • 林 和夫, 山口 久福
    1959 年 62 巻 6 号 p. 856-859
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フェニルメチルシリコーン油と二塩基性脂肪酸のジエステル(以下ジエステルど略す)との混合油について,曇点,粘度温度性状および動摩擦係数を測定した。フェニル基の含有率の低いフェニルメチルシリコーン油- ジエステル系では,ジエステルの混合量が増加するにしたがって曇点が上昇する傾向にある。一方フェニル基の含有率の多いフェニルメチルシリコーン油-ジエステル系では,ジエステルの混合率が大になるとともに曇点が低下する傾向にある。混合油の粘度温度性状は,フェニルメチルシリコーン油の粘度温度性状およびその混合量によって主として定まる。混合油の動摩擦係数はフェニルメチルシリコーン油およびジエステルよりも小さく,フェニルメチルシリコーン油(60%)-ジエステル(40%)の混合油の動摩擦係数が混合油中では最小値を示す。
  • 林 和夫, 山口 久福
    1959 年 62 巻 6 号 p. 860-862
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メチルシリコーン油およびフェニルメチルシリコーン油の銅一鋼間,アルミニウム-鋼間および黄銅-鋼間における動摩擦係数を曽田式振子型油性試験機II型によって25℃から250℃の温度範囲で測定した。銅-鋼間およびアルミニウム-鋼間では,メチルシリコーン油の動摩擦係数がフェニルメチルシリコーン油の動摩擦係数よりも各温度とも小さい。一方,黄銅-鋼間では,フェニルメチルシリコーン油の動摩擦係数の方が各温度とも小さい。メチルシリコーソ油では鋼-鋼間における動摩擦係数が銅-鋼間,アルミニウム-鋼間および黄銅-鋼間における動摩擦係数よりも25℃から200℃の温度範囲で大きい。一方フェニルメチルシリコーン油の鋼-鋼間における動摩擦係数が,非鉄金属-鋼間における動摩擦係数よりも大きいのは50℃,100℃および150℃の温度のみである。
  • 瓜生 敏三, 和田 正
    1959 年 62 巻 6 号 p. 862-865
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    シリコーンの撥水性を研究するために,シリコーンを処理したガラス上に水滴を乗せ,静かにガラスを傾けて水滴が転落し始める角度α を測定した。シリコーンの他にベークライト・ポリスチレン・パラフィン・塩化ビニル樹脂・メタクリル樹脂・有機塗料皮膜等についても同じような測定を行い,特に水滴の質量Wと転落角αとの関係を検討した。その結果,撥水性材料ではBikermanの提出したW・tanα=const.よりも,Wsinα=FW(Fとεは定数)の関係が実験によく合い,かつ合理的なことを示した。この式でα=π/2とおいて得られるWの値W0=F/(1-ε)は,これ以下の重量の水滴では,面を垂直に傾けても転落しないことを示す極限の水滴量で,この値もわれわれは臨界水滴重量と名付けむ。W0は表面の撥水性を表わすよい目安を与える。
  • 松崎 啓, 守屋 正夫, 祖父江 寛
    1959 年 62 巻 6 号 p. 865-869
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    赤松グルコマンナン,アイボリーナットマンナン,コンニャクマンナンの精製による組成の変化,精製物のX線図および赤外吸収スペクトルを測定し,比較を行った。
    赤松グルコマンナンを17.5%カセイソーダとフェーリング液,イオン交換樹脂,銅アンモニア液,水,酸加水分解などによって精製することを試み,アルカリ抽出試料の場合のマンノース基/グルコース基(M/G)は2.3~2.9で大きな変化はないが,キシロース基が種々の程度に除去され,特に酸加水分解,イオン交換樹脂処理によりよく除かれることを認めた。銅アンモニア液により単離した試料ではM/Gが3.2~3.45に達したが,従来針葉樹から単離されているグルコマンナンのM/Gよりなお低い。酸加水分解試料はよい結晶性を示し,アイボリーナットマンナンとほとんど同じX線図を与えるが, 僅かの差異が認められる。コンニャクマンナンのM / G は約1 . 6 で, 加水分解物は桜田, 淵野[ 工化3 6 ,320,324(1933)]によって認められたのと異なる面間隔をあらわすX線図を示した。アイボリーナットマンナンとグルコマンナン酸加水分解物はよく似た赤外吸収スペクトルを示し,コンニャクマンナンはやや異なるスペクトルを与えた。
  • 松崎 啓, 守屋 正夫, 祖父江 寛
    1959 年 62 巻 6 号 p. 869-871
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トド松パルプ中の銅アン=モニア液に不溶な部分を精製し,グルコマンナンを単離した。そのマンノース基/グルコース基(M/G)は約4で,少量のギシロース基を含む。パルプをアルカリ抽出し,抽出したヘミセルロースをフェーリング液で精製をくり返すと,M/Gが3~3.5のグルコマンナンと,グルコマンナンおよびセルロースを混じているキシランを主成分とする部分が得られた。酸加水分解したグルコマンナンのM/Gは3.65で結晶性のX線図を示した。キシラン中のアルドバイウロン酸の構造につき考察を加えた。
  • 大谷 杉郎
    1959 年 62 巻 6 号 p. 871-874
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    黒鉛化困難な炭素質の代表例としてセルロース炭をとり,その炭化過程における変化を検討した。赤外吸収スペクトル,X線回折,示差熱分析等の結果から,窒素気相中における200~700℃ 間の変化を次のようなものと考えた。すなわち275℃付近までは繊維素分子の基本的な空間配置は崩されず,単位胞の僅かな変形と,炭素二重結合およびカルボニル基の発生が認められる。300℃に至り,分子間の脱水縮合に基づく芳香族構造の発生と,乱雑な3次元構造が現われる。その後400℃まではカルボニル基が減少するが,X線的構造は変化せず, 炭素一重結合の分解温度である450~500℃の温度範囲以上で徐々に変化が現われ,明確な転移温度を示すことなく炭素構造に移行する。この温度範囲における各焼成物は,酸化気相における反応性が異なり,焼成温度と関連した変化を示す示差熱曲線が得られた。
  • 林 邦一
    1959 年 62 巻 6 号 p. 875-877
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は酢酸繊維素がZnCl2水溶液に溶解する機構,酢酸繊維素がZnCl2とLiCl(MgCl2,AlCl3等)の混合水溶液に溶解する機構および酢酸繊維素がZnCl2水溶液に分散する濃厚溶液にNaCl(KCl,NH4Cl等) を添加する際に見られる粘度増加機構について説明するものである。酢酸繊維素がZnCl2水溶液に溶解するときは溶解の前提としてZnCl2の化学量論的収着がおこる。ZnCl2水溶液にNaClのような酢酸繊維素に対して親和性の小さい塩類が共存するときは,NaCl等は酢酸繊維素分子に結合することなく,水和層の上に対峙してその脱水作用のために水和量を減少させるから,分散系が3次元構造となって粘度が増加する。しかるに,ZnCl2水溶液にLiClのような酢酸繊維素に対して比較的親和性の大きい塩類が共存するときは, 当該塩はZnCl2同様酢酸繊維素に結合して,ZnCl2とLiCl等の複合付加がおこって分散する。かようにZnCl2水溶液中にどのような塩類が溶存しても必らずなんらかの形で酢酸繊維素の分散に影響を及ぼすものである。
  • 羽山 茂, 佐藤 清視
    1959 年 62 巻 6 号 p. 878-880
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    濃厚硫酸はナイロンに対して強い溶解力をもっている。常温では15d程度の繊維に対する作用は早すぎるため,その作用状態を観察することができない。そこで1100dのナイロンテグスを細い繊維のモデルとして選び,これに硫酸を作用させた。
    1)テグスを引き裂いて硫酸-メタノール-水(20,40,40wt%)の混合液中で観察すると,内部構造はフィブリル状組織の集合体からなり,その単位は15d繊維のものより著しく大きくなっている。
    2)硫酸はテグスの表面を膨潤させながら内部へ浸入する。同心的表面作用の進行速度は硫酸の繊維内拡散に支配され,拡散定数は20℃で1.12×10-3mm2/min,活性化エネルギーは20~0℃で8.33kcal/molとなった。
    3)表面作用を受けた試料をメタノールに移しかきまぜ洗浄すると,ただちに表面膨潤層は作用界面から離れて同心的剥皮試料が得られる。その剥皮表面は硫酸の侵食作用を受けて波形になっている。
  • 羽山 茂, 佐藤 清視
    1959 年 62 巻 6 号 p. 881-884
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硫酸とアルコールの混合液は純硫酸と同様ナイロンに対して強い溶解力をもち,その作用速度は迅速である。それ故1100dのナイロンテグスを試料として,これに硫酸とメタノール,硫酸とエタノールの混合液を作用させて表面作用の進行状態,洗浄液の効果および作用速度などを詳しく知ることができた。得られた結果は
    1)硫酸とアルコールの混合液はテグスの表面から内部へ同心的に浸入し,メタノール洗浄によって同心的な剥皮試料が得られる。
    2)その作用速度は硫酸の混合率によって著しい違いを示す。見かけの拡散定数はメタノール混合液で10-4mm2/min,エタノール混合液で10-4~10-5mm2/minのオーダーとなり,また活性化エネルギーは前者が6~10kcal/mol,後者は12kcal/molとなった。
    3)液の粘性とエステル化しない硫酸の存在率を考慮して,硫酸混合率がすくなくても作用速度が早くなる原因を説明できる。
  • 馬波 久, 西崎 俊一郎
    1959 年 62 巻 6 号 p. 884-887
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    耐熱性の電導性シリコーンラバーを製造するため, ビニルメチルポリシロキサン生ゴムと種々のカーボンブラックを配合して, D T B P またはD C P を用いて加硫し, 得られたシリコーンラバーにつき試験を行い, カーボンブラックの種類,配合量, 架橋剤, 加硫法, 再練時間, 成型圧, 生ゴムの種類等の諸因子が電導性その他の性質におよぼす影響を検討した。カーボンブラックはバルカンXC-72>アセチレンブラック>三菱力ーボンブラック>バルカンC>フィルブラックOの順に電導性良好で,シリコーンラバーの電導性は架橋剤,再練時間,成型圧には比較的影響されず,生ゴムのビニル基含有率に多く影響されることがわかった。得られたシリコーンラバーの性質の一例をあげれば体積固有抵抗10Ω-cm,抗張力30~50kg/cm2,伸び300%であった。
  • 馬波 久, 西崎 俊一郎
    1959 年 62 巻 6 号 p. 887-890
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メチルビニルポリシロキサン生ゴムにアセチレンブラック,三菱カーボンブラック,フィルブラックO,バルカンXC-72,バルカンCを充填したものの250℃ における加熱劣化と抵抗の特性を比較検討した結果,体積固有抵抗の変化率と加熱重量減少は大体同一傾向を示し, アセチレンブラック, バルカンXC-72,三菱カーボンブラック, フィルブラックO,バルカンCの順に耐熱性が良好であった。物理的性質の加熱劣化はアセチレンブラック,三菱カーボンブラック,フィルブラックO,バルカンXC-72,バルカンCの順に良好であるが, 充填量が増加すると劣化もはやい。体積固有抵抗と温度の関係は直線関係を示し,温度係数は正であった。屈曲により体積固有抵抗は約1.2培となるが,100℃,30分加熱によりもとの状態に復帰する。
  • 山崎 升
    1959 年 62 巻 6 号 p. 890-894
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々のアルキル金属触媒-主としてチグラー型およびアルキルホウ素-を用いてイソプレンの重合を試み,次のような結果がえられた。1)TiCl4-Al(C2H5)3型触媒にカーボンブラック,アルミナ,シリカーアルミナなどの担体を用いてもその活性をますことができない。2)TiCl3-Al(C2H5)3型触媒はAl/Ti=0.1付近において大きなcis-1,4重合活性を示す。3)TiCl2およびTiH2はAl(C2H5)3またはAlCl(C2H5)2と組合わせても0~40℃では重合開始能がない。4)アルキルホウ素は酸素または酸素化合物が存在してもイソプレンに対し重合の触媒活性を示さない。
  • 間瀬 判蔵
    1959 年 62 巻 6 号 p. 894-895
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 間瀬 判蔵
    1959 年 62 巻 6 号 p. 895-896
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 荻原 篤, 永井 芳男
    1959 年 62 巻 6 号 p. 897
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 林 和夫, 伊藤 光一
    1959 年 62 巻 6 号 p. 898
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 1959 年 62 巻 6 号 p. A49-A58
    発行日: 1959/06/02
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    These abstracts are prepared for the benefit of our readers abroad to assist them, to form a general idea of the contents of the present issue, written in Japanese by the respective authors. Readers are recommended to refer to the tables, the figures, the formulae etc. in the original papers.
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