工業化学雑誌
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61 巻, 8 号
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  • 香取 良一, 酒井彌 太郎
    1958 年61 巻8 号 p. 911-917
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    コッパースートツェク式微粉炭ガス化炉による常磐低品位炭の完全ガス化は灰が高溶融温度を示すために,1)スラッグトラブル,2)酸素原単位の悪化,3)耐火レンガの損傷,4)ジャケットボイラーのバードネスト付着等のトラブルを生じたが, 部分的な改善および炉能力の増大によってすべてを解決することが出来た。
    ガス化条件と発生ガスの関係については炭素-全酸素比の増加に伴なって,1)炭素効率,酸素原単位はそれぞれ低下し,2)炭素原単位は上昇し,3)発生ガス中のCO2%は低下することを図示するとともに,これらの関係から最経済運転条件を決定しうることを述べた。
  • 久保 輝一郎, 神力 喜一, 久高 克也
    1958 年61 巻8 号 p. 918-922
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酸化物粉末を成型して加熱すると, ある温度以上で粉末同志の固着によって密度の増加とともに収縮がおこる。この収縮は一定温度では最初速かに, ついで徐々におそくなって, ある時間後からほとんど収縮量は一定値となり, 変化しなくななる。この収縮を焼結の度合の一つの尺度として焼結速度式を導出しガラス,酸化チタン,酸化ニッケル,チタン酸バリウム等の粉末成型物について実験し,満足すべき一致をえた。
    今二つの接触している球状粒子を考える。加熱すれば互に固着し,その結果,中心間距離を短縮する。これが成型体のd収縮量であると考え, 粘性または塑性流動によって物質移動がおこると仮定すれば次式がえられる。
    〓粘性流動〓塑性流動
    ここにΔL/Lは線収縮率,Lは最初の長さ,ΔL線収縮量,tは時間,kおよびXは粒径およびその物質のもつ粘性係数,表面張力等によってきまる定数である。
  • 岡田 辰三, 西 朋太, 高橋 寛
    1958 年61 巻8 号 p. 922-925
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ガラス電極で塩濃度の小さい溶液のpHを流動下で測定する場合,しばしば測定pHの変動という障害に遭遇する。従来,専ら使用されているピンホール型およびスリーブ型甘コウ電極について,この原因を調べ,液絡部における流動電位と解した。このような点から,被測液を直接飽和塩化カリ溶液に接触させる比較電極を試作し,満足すべき結果をえた。なお,0℃で飽和塩化カリ溶液になる3.3N塩化カリ甘コウ電極の標準電位差を測定し,0.2551-0.00039(t-18)V(tは摂氏温度)なる値をえた。
  • 岡田 辰三, 西 朋太, 高橋 寛
    1958 年61 巻8 号 p. 926-930
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    pH制御の場合の制御対象の特性に相当する滞留槽中のpH反応速度を調べ,同時に,滞留槽のもつ性質について考察した。まず,強酸-強塩基系について,完全混合型とみなされる滞留槽中のpH応答性を調べ,最終平衡値の緩衝指数の大きい場合を除いて,ほぼ理論式で表わされることをみた。実験値と計算値の一致しなくなる限界は,pH-時間の計算曲線において,滞留時間の8~10倍の時間を経過してなお平衡値に達しない時である。pH反応速度が大きい時には,とかく滞留時間を大きくすることを考え勝ちであるが,被調節液のpH特性によっては,ほとんど滞留時間によって影響されないことがあるから注意を要する。このような時は,多段滞留槽を用いるのが望ましく,そのための設計上の指針を提出した。
  • 岡田 辰三, 西 朋太, 高橋 寛
    1958 年61 巻8 号 p. 931-935
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本報では,ガラス電極のアルカリ誤差に関して,定量的な解析を試みた。すなわち,ガラス膜表面のゲル相内のイオン活量係数が,ゲル相内のイオン濃度によって変化するものとし,Nikolskyの熱力学的取扱いにならって,理論式
    を導き,数十種類のリチウムガラスについてその実験検証を試みた。その結果,定量的にアルカリ誤差を説明することが出来,また金属イオンのゲル相内における吸着量およびアルカリ誤差を測定すれば,ゲル相内のイオン活量係数を計算しうることがわかった。
  • 岡田 辰三, 吉沢 四郎, 石川 忠夫, 谷川 清
    1958 年61 巻8 号 p. 935-940
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    従来使用されている天然イオウにかえて,パイライトのイオウを,二硫化炭素製造のイオウ源として利用する場合の,木炭との反応について検討した。すなわち,縦型の石英反応筒に木炭を充填し,種々の条件のもとで亜硫酸ガスを通じ,反応温度,木炭粒度,亜硫酸ガス流量などの最適条件を求めた。さらに,それらの条件のもとで,亜硫酸ガスを窒素で希釈した場合の効果,および触媒の効果を検討した。その結果,亜硫酸ガスの二硫化炭素への転化率96%をえたが,その最適条件としては,木炭粒度-1cm~+20メッシュ,亜硫酸ガス(窒素で希釈した場合には,亜硫酸ガスとして)の流量約140cc/min,反応温度1000℃,希釈ガスの組成は,窒素91.3%,亜硫酸ガス8.7%であった。また触媒としては,炭酸ナトリウムをナトリウムとして10%添加した場合に,最も良好な結果がえられ,700℃ において,触媒を使用しない場合の850℃での転化率がえられた。また炭酸ナトリウムと希釈ガスとを併用した場合,700℃において,それらを併用しない場合の930℃ での転化率がえられ,反応温度を230℃ 下げることができ,工業的応用への明るい見通しがえられた。
  • 永井 彰一郎, 藤谷 淳一, 色川 喜理
    1958 年61 巻8 号 p. 940-942
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    蛇紋岩,橄欖岩,ドロマイト,水マグなどを過リン酸石灰に加えた種々のマグネシア質過リン酸石灰について,貯蔵中の有効成分の変化,とくに水溶性リン酸の減少およびク溶マグネシアの増加の比較実験を行い,その反応性についての検討を行った。
    マグネシアの反応性は水マグが最もよく, ついで蛇紋岩, ドロマイト, 橄欖岩の順であるが, 一方, 水溶性リン酸の残存率はこれとは逆の順序で,橄欖岩では12週貯蔵後も水溶性リン酸を9~14%にくいとめることが出来た。またドロマイトの場合はそのマグネシア含有量が21%程度で少ないため,更に高度の過リン酸石灰の使用,またはリン酸液の添加を行い,同時にドロマイト配合量を増加する必要がある。ついで密封貯蔵および開放貯蔵の両者を比較した結果,開放貯蔵では貯蔵中に水分が4.5~5.0%も揮散するために反応性が悪くなり,水分の存在がマグネシア化に必須の条件であることを確かめえた。
  • 安藤 淳平
    1958 年61 巻8 号 p. 942-946
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    最近,溶成リン肥工業上の重要な課題となっているCP21~23%の高品位リン肥の製造に必要な諸条件を明らかにした。TP20%程度以下のリン肥では,リン肥中のフッ素はほとんどク溶率に影響しないが,TP22%程度以上ではフッ素がリン肥のク溶率を支配する主要な要素となる。これはリン肥中のリン酸石灰濃度が高くなるため,フッ素が多いと融液を水冷してもアパタイトの結晶が急速に生成するからである。ク溶率98%程度以上のリン肥を製造するためには,TP24,23,22%の場合にリン肥中のフッ素はそれぞれ0.7,1.0,1.3%程度以下であることを必要とし,またこの際リン肥の融解にはそれぞれ1410,1400,1390℃ を必要とする。これ以上高温に溶融してもフッ素が多ければ高ク溶率のものはえ難い。
    現在の脱フッ率30~40%の操業条件下では,フロリダリン鉱石(F=3.4~3.8%)ではTP22%程度,マカテアリン鉱石(F=2.5~3.0%)ではTP23%程度が高ク溶率のリン肥をつくりうる限度となる。フッ素を減少させるには融液が薄層になって水蒸気とよく接触するような機構が最も効果的であると思われる。
  • 田川 博章, 須藤 文明
    1958 年61 巻8 号 p. 946-948
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    炭酸カルシウムと炭酸ガス,酸化カルシウムとの間には平衡関係があるために,熱分解速度は雰囲気中の炭酸ガスの圧力に依存する。炭酸ガス圧が異なる場合に分解速度の受ける影響について研究した。
    約2gの立方体石灰石を温度750℃ から1050℃ の間で,炭酸ガス圧0,50,100,200,400mmHgの範囲で分解させ,重量減少量を熱天秤を使って知るとともに,その量から分解速度を求めた。
    分解率α,分解速度v,時間t,立方体試料の1稜の長さ2Rとの間に, ほぼvt=R{1-(1-α)1/3} の関係がなり立つ。この式から求めた速度はArrheniusの式を満足するが,logv-1/Tの直線は900℃ の近辺に折点が現われ,それより高い温度領域と低い領域の見掛けの活性化エネルギーの著しく異なることが見出された。真空中の場合に高温側で18.8kcal/mol,低温側で36.6kcal/mol,炭酸ガス圧が増した場合には活性化エネルギーは大きくなる傾向にある。
  • 田川 博章, 須藤 文明
    1958 年61 巻8 号 p. 949-951
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    石灰石から生石灰をうる場合に焼成温度,時間が異なると,生石灰の性質に著しい差異が現われる。この変化のようすを嵩密度,空孔率,結晶粒子の大きさ,水和反応性で調べた。
    焼成温度が900℃ 程度の比較的低い場合には,生石灰は収縮をほとんど起さないが,焼成温度が高くなると石灰石は焼成中に収縮を起して次第に嵩密度の高いものになる。この嵩密度の増大は特に1100℃ 以上の温度で顕著である。嵩密度とは逆に空孔率は1100℃ 付近で急激な減少が起る。これに対して結晶粒径と嵩密度との相関は少なく嵩密度が大きく変わる温度が1100℃ 付近であるのに,粒子の成長の目立ちはじめる温度は1200℃ 付近である。このように物理的性質の異なる生石灰では当然化学反応性にも影響を与え,一例として選んだ水和反応によって反応性を調べたところ,1100℃以上の焼成生石灰はそれ以下の温度で焼成したものにくらべて反応性が著しく低下することが見られた。
  • 松井 清晄, 原納 淑郎
    1958 年61 巻8 号 p. 952-954
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩基性炭酸鉛とヒ酸との反応における塩素の影響をしらべた結果,塩素は安定な低ヒ素含有物,塩化ヒ酸鉛を生成して製品に混入するため,生成ヒ酸鉛のヒ素量を低下することがわかった。
  • 西川 邦夫
    1958 年61 巻8 号 p. 955-958
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    融剤に対するCaWO4の溶解度,結晶粒度の成長,および螢光輝度増大などの相互関係,また,融剤化合物使用によるCaWO4螢光体の持続残光と融剤化合物の安定性との関係を観察した。
    CaWO4螢光体の発光輝度を高めるためには,結晶粒子の成長を必要とし,結晶成長には,CaWO4の溶解度の大きく,かつ,融点が比較的低い無機塩融剤が適している。このような性質を有するものであっても,CaWO4と結合反応する融剤化合物は有害な持続残光を伴なうものが多い。熱分解により生成した酸化物の存在がCaWO4の結晶構造に変化を与え,電子遷移の遅延過程の因をなす電子捕獲トラップ生成に関与すると考えられる。
    LiCl,LiBr,CaCl2などはCaWO4の結晶成長ならびに螢光輝度増大に効果がある融剤であるが,強い持続残光を与え,KClなどのような比較的に熱的に安定な化合物は持続残光を与えない。第1図CaWO4の溶融無機塩に対する溶解度
  • 高木 克己, 古根村 賢之輔, 山田 雅美
    1958 年61 巻8 号 p. 959-962
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硫化亜鉛螢光体の焼成における場合のように,ZnSが不十分なO2の供給の下で,かつ生成気体の脱出困難な状態にあって加熱される時の反応の過程を明らかにした。
    すなわち,一般に純粋なZnSは約530℃(この温度は試料の状態等により相違する)より徐々に,また約620℃ より急激に下記反応にしたがってZ n O とS O 2 とになるが, SO2 およびO 2 の流通困難な状態ではそれぞれの発生と同時に反応は更に進んでZnSO4を生成する。
    2ZnS+3O2=2ZnO+2SO2
    2ZnO+2SO2+O2=2ZnSO4このZnSO4は約750℃で再びZnOとSO3とに分解する。
  • 高木 克己
    1958 年61 巻8 号 p. 962-966
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硫化亜鉛螢光体の製造に際し,基体と塩化物融剤との反応によりZnCl2の生成する機構を明らかにした。従来は,ZnCl2は基体と融剤との直接反応によって生成されると考えられていたが,著者の研究によれば,この反応には02が関与していることがわかった。すなわち,ZnSがO2によりZnSO4となり,このZnSO4と塩化物融剤とが反応してZnCl2が生成する。この反応は結果的には次式で表わされる。なお,この反応温度はZnSO4の生成温度によっ
    ZnS+2NaCl+2O2=ZnCl2+Na2SO4
    て定まり,したがって,試料の結晶状態あるいは水分等の雰囲気により異なるが約350~530℃より反応が行われる。
  • 和久 茂
    1958 年61 巻8 号 p. 966-969
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メモリー素子として使用できるような薄板状の大型チタン酸バリウム単結晶の製法としてはフッ化カリウム融剤法が最もすぐれているが,薄板状に広く延びるため結晶核が多すぎると相互にぶつかり合い完全な形の大形単結晶はえられないので,核の数を適当にコントロールする必要がある。チタン酸バリウム原料として炭酸バリウムと酸化チタンの当モル混合物を〓焼して反応させた粉末を使用する場合には,溶融時間を長くするほど,〓焼粉末中の微粉末の量を多くするほど結晶核の数は少なくなる。また結晶り半導体化を防ぐために加える酸化第二鉄をチタン酸バリウム原料中に均一に含有させず,必要量以上に含ませた原料と,含有しない原料とを混合して使用したほうが結晶核の数は少なくなるこどがわかった。これらの方法を組合わせて,使用するルツボに対してちょうど適するぐらいの核の数になるようにすることにより,一辺3cmぐらいの単結晶がえられた。
  • 滝 貞男
    1958 年61 巻8 号 p. 970-972
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アンモニウムチタニルサルフェートを熱分解してえられる酸化チタンは軽質であり, べルヌーイ法によるルチル単結晶合成原料にもっとも適している。この酸化チタンはまた軽質性のほかに,きわめて高純度であることも要求されるので,不純物イオンを含んだ溶液からアンモニウムチタニルサルフェート結晶を析出させ,不純物がどの程度混入するかを検討した。不純物の結晶に含まれ易さは大体Na+,K+,Mn2+,Fe2+,Mg2+,Fe3+,V4+,Al3+の順になっており, Na+ がK+より混入し易く,一水化物にFe3+が入り易いという異常性が認められたが,これはイオン半径の大ぎさの順にほぼ一致しており,これらイオンが主としてNH4+の位置に入っていることを裏書している。もっとも結晶に入り易いNa+の場合に結晶中の不純物は母液のそれの約1/4に,少ないAl3+では約1/800になっており,晶出過程において結晶の純度が向上している。一水化物は二水化物にくらべ,いくぶん不純物を多く含む傾向にある。
  • 吉弘 芳郎, 中村 亦夫
    1958 年61 巻8 号 p. 972-975
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ブドウ糖水溶液中に微量に存在する5-(オキシメチル)-フルフラールは分光化学的検索で知ることができるが,その簡易な定量法には適当なものがない。著者らはこの簡易定量を目的として,フルフラールの呈色反応試薬を応用した比色定量法を研究した。呈色試薬としてベンジジン-酢酸溶液を選び,反応条件について研究した結果,ブドウ糖水溶液中より5-(オキシメチル)-フルフラールを水飽和n-ブタノールで抽出し,所定の反応を行わせることにより,ブドウ糖と5-(オキシメチル)-フルフラールの濃度比が10000対1にいたるまで,誤差5%程度で簡易に測定することをえた。
  • 吉村 太
    1958 年61 巻8 号 p. 976-981
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    スピンドル油に20%発煙硫酸を90℃ で1時間作用させ,油層より油溶性スルホン酸,スラッジより水溶性スルホン酸およびベンゼン抽出有機物を分離した。更に水溶性スルホン酸はそのバリウム塩の溶解度の差によって,4個の群に分別し,ベンゼン抽出物はアルミナでクロマトグラフィーによって5個の群に分別して,おのおのの紫外線吸収スペクトル,分子量を測定した。これらの結果と試料油および未反応油の環分析による成分分析,あるいは試料油中に含まれる芳香族化合物とを比較して,鉱油に対する発煙硫酸の作用について考察した。その結果,発煙硫酸は鉱油中の芳香族化合物をスルホン化するほか,おもな作用はナフテンを脱水素して芳香族化合物を生成し,その一部を酸化あるいは重合させ,これらの大部分をスルホン化することを明らかにした。
  • 多羅間 公雄, 渡辺 昭二
    1958 年61 巻8 号 p. 982-983
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ラネーニッケル表面にアルカリを吸着させるとアセトンの水素添加速度が大になるが,これは水素の吸着量が多くなるためであることがわかった。このアルカリの促進作用を触媒表面における界面電気2重層の状態と関連させて考察し,アルカリが水素の吸着状態を静電気的に安定化させていると考えた。
  • 根本 嘉郎
    1958 年61 巻8 号 p. 984-985
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    綿布への非イオン活性剤水溶液の浸透の実験をハイドロメーター法を利用して行い,綿布の見掛け比重Dapが,Dap=1.00となるまでの時間を求め,その逆数を浸透速度定数として,浸透速度の20~50℃における測定を行い,浸透速度の温度依存性を調べた。その結果,測定した温度範囲では,用いた非イオン活性剤の種類,酸化エチレンの付加モル数,濃度に大体無関係に7kcal/molの活性化エネルギーがえられた。
  • 犬飼 鑑, 細川 研三
    1958 年61 巻8 号 p. 985-988
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    耐光性の良好な羊毛用酸性染料をうるため, 既報のフッ素置換ナフトールペースの中間体である2-ニトロ-4-トリフルオルメチルクロルベンゼンと, 12種の芳香族アミンのスルホン酸とを縮合させ, ジフェニルアミン骨格を持つ染料を合成した。羊毛布の染色結果はいずれも黄, 澄, 褐色を示し, 耐光, 耐洗たく堅ろう性は優秀であった。また4 - 位がメた。チル,ニトロ基で置換した同種構造の染料を合成し,その性質を比較してフッ素置換の効果的であることを明らかにし
  • 荻原 篤, 永井 芳男
    1958 年61 巻8 号 p. 988-991
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    加熱による有機顔料の脱水と分解は顔料の物理,化学的性質および実用上の諸問題を考える上にきわめて重要であると思われる。ここでは各種のアゾスルホン酸塩において,塩を形成する無機金属および有機スルホン酸をそれぞれに変化させた試料の加熱による重量変化を測定して,脱水,分解と構造との関連を求めると次のごとくであった。
    (I)陽イオンの効果塩をつくる金属の種類のみが異なって相手が同一のアゾスルホン酸基である場合は,金属イオンの原子価/イオン半径の値が大きくなるにしたがって,脱水の終る温度(脱水点)は高くなり,急激な分解の始まる温度(分解点)は低くなり,また脱水点と分解点との間の緩慢な分解の度合および水和分子数は大きくなる。(II)陰イオンの効果塩をつくる金属が同一でアゾスルホン酸基の種類が異なった場合は,塩をつくる酸基(スルホン酸,カルボン酸基)の増すにしたがって,脱水点,分解点は高くなり,この間の緩慢な分解は大きくなる。また塩をつくるとつくらないとにかかわらず,アゾ基の両側に酸基のある構造は片側のみにあるものにくらべて,かなり熱に不安定である。同一の核内においてもその位置によって影響がある。
    (III)脱水点と水和分子数は水溶性に関係し,水和分子数,脱水点,脱水点と分解点との間の緩慢な分解の度合,分解点が加熱による変色に関係する。
  • 根来 健二, 檜山 八郎, 大島 敬治
    1958 年61 巻8 号 p. 991-992
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    クレオソート油から合成したタモール類似品の物理的諸性質について,従来のタモールおよびテキサトンのそれらと比較検討した。すなわち粘度,表面張力,湿潤試験,分散性,セメントフローおよび強度試験などを比較検討した結果,著者らの創製したクレオソートタモールが従来のタモールよりもいっそうよく表面張力を低下させ,ロ紙や繊維によく侵入し, セメントを流動させる能力および炭酸カルシウムを分散させる能力がいずれもすぐれていることが判明し, 染料, 農薬,医薬等の分散剤としての用途が考えられるほかに,セメント分散剤としてもとくに作業能率の向上が期待され,実用価値のきわめて大きいことが認められた。
  • 横手 正夫, 芝宮 福松
    1958 年61 巻8 号 p. 994-996
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    キノリン酸(1),尿素,モリブデン酸アンモン,塩化第二銅を銅・フタロシアニン合成のWyler法に準じて溶融して,銅・ブタロシアニンの窒素同構体(銅-テトラ-2,3-ピリジノ・ポルフイラジン)(II)をうるための反応条件と収率,精製方法を検討した。(ll)は青紫色,濃硫酸呈色緑青色,アルカリ性ハイドロサルファイトにより溶解度は小さいが,赤紫色の建浴をつくり,綿布を青紫色に染める。濃硫酸溶液の吸収スペクトル,顔料,染料として用いた場合の反射率曲線,耐光堅牢度等の諸性質を測定した。
    キノリン酸の代わりに無水キノリン酸(III)を用いても,また,ニトロベンゼンを加えての湿式法でも目的物(III)がえられた。
  • 大橋 実
    1958 年61 巻8 号 p. 996-1001
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    パン酵母の通気培養系の解析の一助として,廃糖蜜を基質としたときのパン酵母の呼吸および発酵作用をワールブルグ検圧計とポーラログラフで測定した。
    呼吸速度はかなり広い基質濃度範囲においてほぼ一定であり,N源添加量に応じたゆるやかな時間的増加傾向を示した。
    発酵速度は基質濃度増加に伴ない,いちじるしく増加し,その傾向はブドウ糖を基質としたときと異なることを認めた。また,基質濃度がさほど大きくないときでもN源が加わると発酵速度はいちじるしく増大した。
    酵母増殖培地(廃糖蜜+N源)の発酵促進作用は酸素供給の有無にかかわらず現われるため,えられた呼吸商(発生CO2/吸収O2)は一般に知られた値より甚しく高く,基質濃度が大きいときの通気による発酵阻止率はかなり低いと推定された。
    前記基質中の通気下の発酵作用は,呼吸速度も半減する程度に極度に基質濃度を下げたときにだけほぼ完全に阻止されることを観察し,このことから,酵母培養中の発酵作用を完全に抑制して最高収率をうるためには,酵母の生長速度に対してもかなりの制御が加わる飢餓的な栄養条件の保持が必要なことを推定した。
    米国製フライシュマン圧搾酵母は,国産酵母ほど外的条件によってその発酵能を変えず,その好気的発酵能は国産酵母にくらべて甚だ大きいことを見出した。
  • 大橋 実
    1958 年61 巻8 号 p. 1001-1005
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    パン用酵母培養のオートメーション化に役立てる目的で, ポーラログラフ法で培養醪の栄養欠乏を検出し, 栄養液を自動的に補給することのできる装置を組立て,半中間規模の培養試験を行った結果,対供与糖170%ほどの高収率でパン酵母を収穫することができた。
  • 鈴木 晴男
    1958 年61 巻8 号 p. 1005-1008
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    市販のトウモロコシ,小麦およびバレイショのデンプン各1種を1N-塩酸で30℃ において1~5日間可溶性化処理し,えられた製品の窒素およびリン含量,ヨウ素吸収能,0.1%溶液の混濁度について検討した。
    1)トウモロコシおよび小麦は酸処理(水洗も含む)により除去される窒素をかなり持っていたが,バレイショは窒素含量が最初から低くかつ処理によりほとんど変化しなかった。
    2)バレイショはリン含量が高いが酸処理によりほとんど変化しなかった。小麦は最初バレイショに匹敵するリンを持っていたが,酸処理が進むにしたがって著しく減少した。トウモロコシは最初からリン含量が低いが,小麦と同じ傾向を示した。
    3)小麦およびトウモロコシはヨウ素吸収能が高く,酸処理により少ししか変化しなかったが,バレイショは最初から値が低く,酸処理が進むにしたがってかなり低下した。このことはデンプン粒の微細構造またはデンプン分子の形状の差異を示している。
    4)トウモロコシおよび小麦の場合,単に水と煮沸して調製した溶液の濁りは未処理デンプンの方が可溶性デンプンよりもずっと強かった。この強い濁りはおもに膨潤粒子および未分散ミセルに基因すると思われる。アルカリに粒子を完全分散した後中和して調製した溶液の濁りは可溶性デンプンの方が幾分強かった。この溶液の濁りはデンプン・脂質錯化合体によるものが主であり,錯化合体の生成および集合に分子の大きさが関係しているように思われる。
  • 鈴木 晴男, 田村 正義, 武富 昇
    1958 年61 巻8 号 p. 1008-1011
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    バレイショデンプン粒を1グルコース残基当たり0.5当量の過マンガン酸カリを用い,30℃でpH3~11において酸化し,えられた各可溶性デンプンの性質をしらべた。(1)収率はpHが高くなるにしたがって減少した(95→75%)。(2)還元力(フェリシアニド数)およびカルボニル基含量はpH7以上で急に増加してpH10で最高に達し,pH11では低下した。カルボニル基含量は最高約5mol/100A.G.U.であった。(3)カルボキシ基含量はpHが高くなるにしたがって増加し,pH10で最高(7mol/100A.G.U.)に達し, pH11低下した。(4)水溶液粘度(1nηrel/C)σ =0.5はpHが高くなるにしたがって減少した(0.71→0.12)。(5)青価も同様であった(0.266→O.050)。(6)アミラーゼによる分解率も同様であった。(7)1%水溶液の紫外線吸収スペクトルは溶液をつくる時の加熱時間によって変化した(加熱時間が長いと240mμ 付近と中心とする吸収が大きくなる)。この変化は高pH試料ほど(すなわち酸化の進んだ試料ほど) 大であった。また試料をアルカリに溶解することによっても異なった曲線がえられた。糊化デンプンに1グルコース残基当たり6当量の過マンガン酸カリをpH10で作用させてえた冷水可溶性酸化物について二,三の性質を付記した。
  • 宇佐美 昭次, 武富 昇
    1958 年61 巻8 号 p. 1011-1014
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    黒カビの胞子を一定期間培養して発芽させた種( 菌糸を含む培養液) を使用する培養法について研究した。種および本培養とも振とう培養法で行い, 種の割合, 培養期間, 培地組成等が本培養におけるクエン酸生産におよぼす影響を検討した。その結果,種の本培養液に対する割合が比較的少なく(10~15%),種の培養期間が短い方が,本培養後期の酸生産割合が大きく,かつ実収率も高い。種の培地組成は後述の実験方法の基本培地を用いて検討したところ,本培養培地とは多少異なった組成がよいことがわかった。この培養法の生酸促進効果は窒素源の種類により影響され,塩化アンモニウム硫安等生理的強酸性の窒素源を使用した場合に著しい。またこの培養法は菌株により多少差異があるが,胞子を直接接種する通常の培養法では生酸能の減退した菌株では,顕著な生酸能の回復がみられる場合が多い。最高の対供与糖生酸率は結晶クエン酸に換算して96%にも達した。
  • 祖父江 寛, 福原 節雄, 守屋 正夫
    1958 年61 巻8 号 p. 1015-1017
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルカリ溶解量より求めたいわゆるラテラルオーダー(以後, ラテラルオーダーをL.O.と略す) 分布と重合度因子と の関係を検討するためラミー, ブナパルプを予備加水分解し平衡重合度になったものの重合度, 重合度分布曲線, 不均一度,回折X線図等を測定し比較検討した。この結果,ラミーの平衡重合度,不均一度等はブナよりも少なく,重合度分布曲線の大部分はブナと重複することを認めた。また回折X線図より求めた結晶化度はラミーの方が大であった。一方,溶解量より求めたL.O.分布ではラミーの方がブナよりもL.O.の高い領域に分布の山があった。以上の結果から, 溶解性に及ぼす重合度の影響は重要と考えられるが,本実験によれば重合度は比較的に2次的な因子と考えられ,1次的な因子は予期のごとく本質的な結晶性であると推定される。なお,べンベルグ,普通レーヨンについても同様な考察を試みた。また,タイヤコード用レーヨンの予備加水分解前後の重合度分布を測定し不均一度等を比較した。
  • 高山 雄二
    1958 年61 巻8 号 p. 1018-1020
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリ酢酸ビニルを種々の温度および加熱時間で真空熱分解した場合,生ずるガス状物ならびに揮発性物を質量分析により分析し,その定性定量を行った。
    生ずるものは水素,一酸化炭素,エチレン,炭酸ガス,酢酸,べンぜン,トルエンであることを知り,それらが熱分解条件でいかに量的変化をするかを研究した。その結果熱分解時間は熱分解物の組成に著しい影響を示さないが,温度の影響は大きいが,比較的温度の影響の少ない分解条件としては400℃がよいことを知った。次に測定されたデータのバラツキの原因につき言及した。
    この研究により,未知ポリマーの定性分析,さらに進んで酢酸ビニルを含む共重合物の分析が質量分析計でも可能であろうと思われる結果をえた。
  • 高山 雄二
    1958 年61 巻8 号 p. 1021-1023
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリアクリロニトリルの真空熱分解温度とその生成物の組成とを質量分析計を用いて研究し,そのうちにはアクリロニトリルモノマー,メタクリロニトリル,アセトニトリル,青酸,窒素が存在することを明らかにした。その結果をさらにアクリロニトリル- 酢酸ビニル共重合物の質量分析計による分析に拡大適用し, m/e60,m/e53をそれぞれ酢酸ビニル,アクリロニトリル部分に起因する鍵ピークとして使用し,その分析ができることを示した。次に種々のビニルポリマーの熱分解生成物をその重合物の化学構造からある程度系統的に推定できることを述べた。
  • 鴨川 博美
    1958 年61 巻8 号 p. 1024-1027
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アクリル酸エチルとアクリルアミドの乳化共重合の初期共重合体組成は溶液重合のそれとは著しく異なり,単量体中のアクリルアミドが20%程度までは比較的アクリル酸エチルに富んでいるが,30%程度以上では急激にアクリルアミド量が増大する傾向が認められる。この原因について水層,油層における単量体組成より溶液重合にしたがうとして計算した理論値と,この共重合体組成との関係を検討した。その結果アクリル酸エステルのような単量体,重合体間の相溶性の高いものを使用する場合には,生成重合体粒子に対する両単量体の膨潤溶解性の差を考慮する必要が認められた。このような考えより水層中の単量体組成および生成重合体粒子の膨潤性を変化させるような添加剤,たとえばアセトン,低級アルコール, ジオキサン等を適量加えることによってかなりの範囲にわたって初期重合体組成を調節しうることを認めた。
  • 鴨川 博美
    1958 年61 巻8 号 p. 1027-1030
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アクリル酸エチルとアクリルアミドの乳化共重合における水溶性添加剤の影響を検討した。PVA,CMC等の保護コロイドを使用する場合,その初期重合体組成は水系重合の場合に近い。一般に高分子添加剤はエマルジョンの粘度を上昇させるが,単量体組成アクリルアミド10%付近で最も低粘度のエマルジョンがえられる。また添加剤量を必要以上多くすることは不必要なエマルジョン粘度の増大を来すことが認められた。高分子添加剤中とくにCMCは5%程度のエマルジョン濃度でも著しくnon-Newtonianの挙動を示し,FN=η′Gの関係式が適用可能である。凝析値は粘度の場合と同じく10%アクリルアミド付近に最大値があり,とくにCMCを使用すると他の2倍程度の値になる。添加剤量を多くすると凝析値の低下する例も見受けられた。また尿素等樹脂加工剤の添加は著しく凝析値を減少させることも認められた。
  • 長尾 英夫
    1958 年61 巻8 号 p. 1030-1033
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    水にある程度の溶解度を示すアクリロニトリルと, 非親水性の塩化ピニリデンを乳化共重合させる場合は, 既にアクリロニトリルースチレン系において示されたように,アクリロニトリルの水溶性のためにえられる共重合体の組成は,塊状重合からえられたものよりアクリロニトリルにおいて低い。この場合水相に分配されたアクリロニトリルは組成をいかに変化させるかをみるために,単量体に対する水量を種々変化し単量体の追加添加を試みた結果,水量が約6倍量以下では組成がほとんど変化しないのに対し,水量がこれ以上では連続的に組成がアクリロニトリルにおいて高くなり,最終重合率になるといずれもほとんど一致する結果をえた。これを重合前の油相と水相へのアクリロニトリルの分配およびその反応速度定数比より考察し, 重合体の生成にともない油相- 水相間のアクリロニトリルの平衡は油相, 水相, 重合体に転換し,重合体に吸着された単量体組成が共重合体組成を決定すると考えられるが,水量の増大による油相組成のアクリロニトリルの濃度変化は相当大きいが,水相の濃度変化は比較的小さいため,重合体の存在する場合でも水相の濃度変化が小さい(あるいは一定濃度まで重合体に吸着される)と考えれば,水量の多い場合は単量体追添にしたがってアクリロニトリルの増大が大きく,水量の少ない場合は水相に移行しているアクリロニトリルの総量も少なく,追添による濃度変化も小さく,単量体組成と共重合体組成が近くなるため共重合体組成変化も小さいと解釈される。
  • 住友 宏, 八浜 義和
    1958 年61 巻8 号 p. 1033-1035
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    60Co100cを線源とするγ線照射により,ポリアクリロニトリル(PAN)-アクリル酸エチル(EA)系のグラフト重合を行った。方法としてはつぎの二つを試みた。(1)真空封管内のPAN繊維-EA-アセトン混合物に照射した後メタノール抽出によってPEA単独ポリマーを除く。(2)あらかじめ,真空中でPANの粉末または繊維に照射しておき,照射後これにEAを添加してグラフトさせる。これらの系は不均一相であるが,いずれの方法でも室温で全線量1.4~4.9×106rep程度の照射で比較的高収率でグラフトポリマーがえられた。とくに(2)の方法は,(i)被照射PANはそれが繊維状である場合でも活性を比較的長時間持続すること,(ii)生成物は目的とするグラフトポリマーのみでPEA単独ポリマーの副生をみないこと, および(iii)室温でグラフト反応が進行するなどの特長がある。
    グラフトポリマー繊維の機械的性質および染着性を未照射および被照射PAN繊維のそれと比較し,切断荷重で示した強度,伸度および分散染料に対する染着性が向上していることを認めた。
  • 東 敬一, 北村 俊幸, 福崎 芳男, 井本 英二
    1958 年61 巻8 号 p. 1035-1043
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1)フェノールマンニッヒ塩基とフェノール類との反応は,フェノール性OH基の酸性度が大きいほど分解反応大でまたフェノール類添加により促進されるが,アニソールのようにOH基を有しないと促進しない。
    2)ニトロフェノール,アニリン等の添加により分解反応が促進される。また,これがオルトマンニッヒ塩基と,パラ,マンニッヒ塩基とにより大きく差を生じ,オルトマンニッヒ塩基において効果大で,パラマンニッヒ塩基であまり効果を認めなかった。
    3)オルトマンニッヒ塩基で,2,4-二置換フェノールを用いたものと相手フェノールを2,4-ジメチルフェノールとの,反応で, 発生ジメチルアミンの追跡により, 初期反応を2 次反応速度として取扱うことができる。マンニッヒ塩基の置換基RがCH3では活性化熱13.6kcal/mol,RがClでは10.1kcal/molとなる。以上の反応より,オルトマンニッヒ塩基ではキレート環の効果を考えに入れ,パラマンニッヒ塩基ではキレート環の効果を考えず,フェノール類OH基と-CH2N(CH3)2基とによるアンモニウム塩による分解を主とするという機構を明らかにした。
  • 東 敬一, 井本 英二
    1958 年61 巻8 号 p. 1043-1046
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    (1)2置換フェノール系マンニッヒ塩基とアセトフェノンとの反応において,トリブロムフェノール添加の効果を見た。その結果反応温度120℃,160℃では効果を示したが,202℃では効果なく添加しない場合よりも生成物の収率が悪い。(2)2置換フェノールマンニツヒ塩基と活性化メチレン化合物,マレイン酸ジエチルエステル,アセト酢酸エチルエステルとの交換連結反応を行い, それぞれ予期される生成物をえた。またアニリン,ο-トルイジン, およびピペリジン等のアミン類との交換連結反応をも行った。(3)1置換フェノールマンニッヒ塩基とアセトフェノンとの反応の場合マンニッヒ塩基同志の反応による樹脂化よりもアセトフェノンとの交換連結の方が起り易いことを認めた。
  • 古川 淳二, 鶴田 禎二, 三枝 武夫, 大西 章, 川崎 明裕, 笛野 高之, 陳 世冬, 山本 直樹, 松本 毅
    1958 年61 巻8 号 p. 1046-1050
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トリブチルホウ素(BBu3)と金属ハロゲン化物との混合触媒によるブタジエンの重合をしらべた。金属ハロゲン化物としては, 四塩化チタン, 四塩化ジルコニウム, 四塩化スズ, 塩化アルミニウム, 五塩化アンチモン, 塩化ニッケル( 水和物) , 塩化パラジウム, 塩化第二水銀および三フッ化ホウ素( エーテル錯合体) を用いた。BF3・Et2Oの場合, 高収率で重合体がえられるが, BF3・Et2O/BBu3 の比により, 生成物は液状から弾性ある固体まで変化する。TiCl4の場合, 粘稠な液状ポリマーが少量生成するが, ZrCl4 の場合は固体ポリマーが好収率でえられた。他の場合は重合体はほとんどえられなかった。
    次にB R 3(R=エチルまたはブチル) とBF3・Et2 O および前者とZrCl4との混合触媒によるビニルモノマーの重合をしらべた。BF3・Et2Oの添加により, メタクリル酸メチルの重合はその速度および生成ポリマーの重合度が減少し, アクリロニトリルにおいては重合速度は大となるが,生成ポリマーの重合度は減少する。スチレンの重合は著しく加速されるが,ポリマーの重合度は低下する。ブチルビニルエーテルは円滑に重合する。アクロレインはBF3・Et2Oの添加によって重合するようになり可溶性ポリマーを与える。酢酸ビニルはこの触媒系では重合しない。ZrCl4 を加えた場合スチレンおよびビニルエーテルの重合が加速されるが,他のモノマーの重合はおそくなる。
  • 水口 純, 鈴木 周一, 高橋 不二雄
    1958 年61 巻8 号 p. 1051-1052
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 笠原 文雄, 西出 英一
    1958 年61 巻8 号 p. 1052-1053
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 樋口 泰一, 井本 稔
    1958 年61 巻8 号 p. 1053-1054
    発行日: 1958/08/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
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