ベンゼン,ナフタリン,アントラセンの各誘導体17種について,黒鉛化カーボンブラックに対する吸着等温線を測定し,吸着機構について検討した。
黒鉛化カーボンブラックに対するこれら溶質の吸着性は,シリカゲルやアルミナの場合と異なり,無極性溶媒系よりも極性溶媒系においてよく吸着し,また,極性基が置換したナフトールやナフチルアミンの吸着性はメチルナフタリンよりむしろ小さく,シリカゲルやアルミナの場合と比較して全く異なる結果を示した。黒鉛化カーボンブラック系において吸着熱を測定したところ,2kcal/molという価を得たし,また,吸着分子のすべてが,常温で容易に脱着されるという実験結果を得たことは,本系の吸着が「物理吸着」であることを強く示唆する。
アルミナやシリカゲルに対する芳香族化合物の吸着性が,分子化合物形成と類似の「化学吸着」として理解できるのに対し,黒鉛化カーボンブラックにおいて,このような電荷移動を伴う相互作用のないのは,前者においては,例えば表面シラノールのような電子受容性の基が存在するのに反し,後者においては,そのPz軌道が,網状高分子のために,互いに重なり合って吸着剤分子内で安定化しているために,被吸着分子と作用し難いことによるものと考えられる。
なお,このような物理吸着の系においても,立体効果の影響が認められた。
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