工業化学雑誌
Online ISSN : 2185-0860
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68 巻, 12 号
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  • 草加 俊竜
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2287-2292
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    従来の人造レザーと天然皮革を対比した場合,(1) 感触,(2) 吸湿性,(3) 透湿性(通気性),(4) 保温性,(5) 寸法安定性などといった点が相違し,これらの点が人造レザーの欠点とされていた。本研究は,この点にかんがみ人造レザーの合成樹脂皮膜層を多孔質化し,通気性を付与しようとしたものである。しかして,多孔質化の方法はいろいろ考えられるが,本法は可溶牲デンプンを使用し,溶出法の範疇に属する方法において研究から実用化試験まで行ない,従来の人造レザーの欠点を改良しようとしたものである。
  • 山田 富明, 宮川 久司, 天野 杲
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2293-2296
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ハロゲンによる炭化水素の脱水素反応は,その中間体としての有機ハロゲン化合物の熱に対する不安定性に基づくきわめて興味ある反応であるが,いまだ理論的解析は十分ではない。著者らはこの点に着目して,一連の有機ハロゲン化合物の熱分解特性を比較検討する意図のもとに,反応中の圧力ならびに吸光度の変化の両面から炭化水素-ハロゲン系の均一気相中の反応速度を測定するための静置式装置を試作し,ヨウ化エチルを試料として好結果を得た。
    試作装置は全圧60mmHg以下,温度50~500℃ の範囲で,±0.1μmolの測定精度を有するものである。310~360℃ の反応温度では,2分子のヨウ化エチルはそれぞ1分子のエチレン・エタンおよびヨウ素を生成し,その1次速度定数は1014.64exp{-52200/RT}sec-1と求められた。
  • 白崎 高保, 坂本 重顕, 北原 昭勝, 助野 敏雄, 森川 清
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2297-2299
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    金属ニッケル単結晶の電解研摩面と機械的研摩面に435℃ で常圧のエチレンを接触させ,接触脱水素分解反応をおこさせて,表面に生成した炭素薄膜を剥離し,その組織を電子顕微鏡で観測した。その結果,この反応に対する触媒活性表面組織がみられ,つぎのことがわかった。
    1)電解研摩面の炭素膜は,大体定方位性の規則的な二次元粒子の集まりからなるモザイク組織をもっていて,その粒界部分に炭素生成量がとくに多い。すなわち触媒活性表面組織は前報のニッケル圧延板のそれと形状がことなるが本質的には違わない。また, 上の二次元粒子の形状はほぼ正方形, 長方形, 正三角形などであって, 触媒活性表面組織は金属ニッケル表面の結晶組織に対応するものと解釈される。
    2)機械的研摩面の組織は局部的に非常にことなるが電解研摩面と同様の組織が少しくあるいは大きく変化したものとみられる。この場合粒界部分の一部だけが局部的に触媒活性を増すことがある。
  • 白崎 高保, 助野 敏夫, 坂本 重顕, 北原 昭勝, 森川 清
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2300-2302
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    金属ニッケルに400~450℃ で常圧のエチレンを短時間接触させると,ニッケル表面でエチレンの接触脱水素分解反応がおこって炭素薄膜が生成する。この膜を希硝酸に浸漬し剥離して電子顕微鏡で検鏡すると,金属ニッケルの触媒活性表面組織が観測されることはすでに報告した。またこのようにして観測される組織像は金属ニッケル表面の結晶組織に対応するものと解釈された。本報では上のエチレン接触分解炭素膜法を利用して電解ニッケル圧延板の表面結晶組織を観測してみようとした。その結果,検討したあらゆる試料面でいろいろな組織像が観測され,本法が金属表面結晶組織を調べるための一種のレプリカ法として有効であると結論された。なおエチレンのかわりにi - オクタンを用いて同様の炭素膜をつくり,同様に観測してみたが,ニッケルの表面結晶組織に対応する像は全くみられなかった。これは接触分解機構が異なるためであると説明される。
  • 井上 英一, 山口 隆司
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2302-2310
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    電着法による酸化亜鉛または酸化亜鉛に種々の物質を添加した系の光導電性(電着電流特性)は,一般的には電着面照射と裏面照射では特性が異なる。しかし, 電着銀量はいずれの場合でも光電流に対し1次であり, その電着効率は9 8 %であった。光電流( 電着電流) の“ 立ち上り” がn=n0tanh[(FR)1/2t]に従い, 光照射中止後の光電流の減衰( 回復特性)が2次過程に従うことから,これらの系の光導電性は主に表面酸素の吸着および脱離に支配されるが,この吸着および脱離は添加物質によって影響されると思われる。光電流の光強度依存性はj=α ×Iβ(α,β は定数)であった。酸化亜鉛の光電流の諸特性は, 添加物質種によって著しく異なる。これは, 表面酸素の吸着および脱離に影響を及ぼしているばかりでなく,電子に対する捕獲断面積あるいは易動度にも影響しているものと思われる。
  • 信岡 聰一郎
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2311-2317
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硫酸鉄(III)水溶液とカセイソーダ水溶液との反応によりえられる無定形水酸化鉄(III)沈殿を母液とともに熟成,および水熱処理を施すと,母液のpHの相違によりα-Fe2O3,あるいはα-FeOOHが生成する。これらの生成過程をX線回折,赤外吸収スペクトルによって検討した。
    1.母液のpH5~6において生成する沈殿は,X線回折では無定形であるが,赤外吸収スペクトルによると非晶質の塩基性硫酸鉄(III)と推定される。この沈殿は熟成,および水熱処理120℃ 以下では比較的安定であるが,水熱処理120~130℃ で分解し,立方形α-Fe2O3が晶出する。
    2.母液のpH12~13において生成する沈殿は,不安定であり,熟成により徐々に結晶化が起こり,針状形α-FeOOHが生成する。水熱処理により結晶化は促進される。3.α-FeOOHの赤外吸収スペクトルの測定において,摩砕,混合により赤外試料を作製するとき,波数3400cm-1付近に異常吸収帯が観察される。
  • 西野 忠, 茂木 今朝吉, 吉野 一道
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2317-2322
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    炭酸カルシウム,酸化クロム(III)およびケイ酸の各種混合物を空気中で加熱したときの相変化および生成物を熱分析,X線分析, 化学分析などによって検討した。結果はGlasserらの報告とかなり異なり, クロム酸三石灰(Ca3(CrO4)2)のケイ酸二石灰への固溶による格子定数の変化はほとんど見られず(次報で発表予定),5CaO・Cr2O5・SiO2に相当する化合物が少なくとも1350℃ まで安定に存在することを見出した。5CaO・Cr2O5・SiO2のX線回折像はGlasserらの報告にある“New Compound”とほぼ一致するが,この“New Compound”はほぼ15CaO・5CrO3・2Cr2O3に相当する化合物で, Ca3(CrO4)2 のクロムが若干還元された状態と考えられる。
  • 日比野 泰三, 渡辺 紀, 谷田 光明
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2322-2327
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジルコニアとシリカよりジルコンが合成されるとき,五酸化バナジウム,フッ化ナトリウムなどが存在すると,その合成温度は低くなる。この反応機構を明らかにするため,その示差熱分析,各温度に加熱した試料のカラーアナライザーによる光の各波長に対する反射率の測定,およびX線回折,酸化および還元ふん囲気中で加熱した試料のX線回折などより次の結果を得た。
    (1)五酸化バナジウムが存在するときの反応機構は,まずジルコニアと五酸化バナジウムよりZrV2O7が生成し,それが分解しはじめ,それにつれてジルコンが合成される。
    (2)五酸化バナジウムとフッ化ナトリウムが存在するとき, まずバナジン酸ナトリウムが生成し, それの分解と同時にジルコンが合成される。
    (3)ジルコンの生成が認められる温度は,酸素ふん囲気中が最も低く,還元ふん囲気中では1200℃ でも認められない。
    (4)反応が始まるまで,バナジウムの酸化物は五酸化バナジウムの状態で存在し,合成反応と同時にその一部のバナジウムが5価よりも低原子価のものとなる。
  • 安藤 淳平, 大村 光彦, 秋山 堯
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2327-2331
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    湿式リン酸をアンモニア化する際に生成する各種の非水溶性塩類,すなわちゲル状のリン酸鉄アルミニウム,各種の結晶性リン酸鉄アンモニウム塩類,(NH4)3AlF6,(NH4)2NaAlF6などの性質や生成条件をしらべ,またこれらを含むアンモニア化スラリーの粘度を測定した。スラリーの粘度は酸の成分やアンモニア化条件に応じて10cpから1000cp程度まで著しく変化し,この変化は上述の各化合物の生成のしかたに関係しており,またリン酸鉄アルミニウムゲルの構造の変化によっても大きく影響されると思われる。
  • 安藤 淳平, 森 正枝
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2332-2337
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    半水二水セッコウ法で湿式リン酸を製造する場合の,半水セッコウの水和速度と生成するセッコウ二水塩の結晶の大きさ,形状,ロ過性,洗浄性の関係,およびこれらに影響する若干の因子について検討した。水和の速度は一般に酸の濃度(P2O5+SO3%)が高いほど遅く,酸濃度が同様の場合はP2O5が多くSO3が少ないと遅い。SO3が少な過ぎると水和は特に遅くなる。P2O525~31%程度の範囲では,一般に水和の遅い場合に結晶が粒状の良好な形状に成長し易く,50~100μ程度のロ過性の良い結晶が得られる。P2O5 31%以上になると水和が遅い上に結晶が大きくなり難い。二水セッコウの種結晶やケイソウ土,アルカリ塩類などの添加で水和は速くなるが,添加量が多過ぎて水和が速くなり過ぎると,セッコウニ水塩の結晶は微細となるかまたは長く伸びて厚みが少くなり,ロ過洗浄性が低下する。鉱石を90℃ 程度で分解する際に分解され残った部分は, 水和の際に徐々に分解し, この際鉱石粒子を中心としてセッコウ二水塩の結晶が集合した塊り(50~200μ 程度)を生じ,この塊りの量が多いとロ過は速やかであるが,洗浄してもリン酸分が比較的多く残り易い。水和の際のかきまぜが激しいと,このような塊りは壊れて細かい結晶となって分散し,ロ過性が悪くなる。モロッコリン鉱石,クリスマスリン鉱石の場合は水和は比較的速かであるが,フロリダ77鉱石の場合は水和が遅く,ケイソウ土添加による水和促進の効果が大きい。
  • 有森 毅, 片岡 三郎
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2338-2341
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ブラジル産リン酸アルミニウム鉱の完全化学分析を行ない,次いで単に力焼してク溶性リン酸の生成率を検した。その結果は5~10%程度の含有量であるので,商品価値のある肥料とは考えられないことを知った。次に乾式ソーダバイ焼法による本試料の処理について,ソーダ灰の配合割合,バイ焼温度などを変化して好適処理条件を探求した。その結果この方法によれば,Al2O3,P2O5ともによく抽出され有望な方法の一つと考えられた。
    さらにソーダ石灰法による処理について好適処理条件の探求を行なった。その結果この方法によると,P2O5分が抽出残分中のク溶性リン酸分と水溶性リン酸分とに分配される割合が,ソーダ灰と石灰の配合割合により,種々に変化するので,工業的操作がやや複雑になる欠点があると思われた。
  • 松下 徹, 鈴木 国幹
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2341-2347
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    合成雲母結晶の成長を最も阻害する元素はCrで,次がMn,Cuの順であることはすでに報告した。ここでは,これらの元素を添加した合成雲母結晶塊を顕微鏡下で観察した結果につき報告する。顕微鏡下で観察すると,雲母以外の物質としてスピネルが最も析出しやすい。このスピネルはCrにより桃色に,Mn,Cuにより緑色に着色される。これらの元素の中で雲母結晶の成長を激しく阻害するCrは原料中にごく少量添加してもスピネルが非常に析出しやすく,雲母の成長をそれほど阻害しないMn,Cuなどを添加した場合にはスピネルがかなり析出しにくい。以上のことから, 雲母の成長を阻害する物質は主としてスピネルではないかと考えられる。
  • 斎藤 肇, 田草川 信雄
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2347-2351
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    柔軟な長繊維のフッ素石綿を直接合成する方法の一つとして,溶融法による過去の実験から結晶化の良好な組成であるリヒテライト代表組成中のカルシウムイオンを,マンガンイオンで同像置換した組成に相当する原料混合物から固相反応によって石綿の合成を試みた。すなわち,原料混合物の大気下,および還元雰囲気下における反応状態を温度を変化させて,偏光顕微鏡観察およびX線回折などにより検討した結果,この反応は還元雰囲気中で900~1100℃ で行なうと,フッ素石綿の生成には好結果がえられることがわかった。しかし,このとき短時間反応では微晶しかえられないので,フッ化ナトリウム過剰組成について,その過剰量,反応時間および反応温度の最適条件を同様の手段で検討した結果,フッ化ナトリウム0.5mol過剰組成,1000℃ の条件下で約0.1mm/hrの生長速度で比較的柔軟な繊維を直接合成できることがわかった。このとき,同時に石綿結晶生成過程について検討した結果,この反応では固相と液相の反応も関与するが,固体間反応に近い固相と粘性が非常に大きい液相間の反応がその主体をなすものと推定した。
  • 鈴木 幸雄
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2352-2354
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トリウムを除いた硫酸セリウム(IV)の0.7~0.8N硫酸酸性溶液を低圧水銀灯(100V,3A)で紫外線照射しつつ,メタ過ヨウ素酸カリウムの結晶を1回に25~100mgずつ,4~10回程度添加する。ゆっくり加温して,徐々に比較的ち密な類粒状でしかもロ過洗浄の容易なヨウ素酸セリウム(IV)沈殿を定量的に生成させる「均一沈殿法」を試み,その分離定量の可能な条件および均一沈殿法的特徴について検討した。
    酸性度(0.7~0.8N硫酸酸性) とメタ過ヨウ素酸カリウムの添加量( 酸化セリウム(IV)量の30~50倍) とを適当に選べば,酸化セリウム(IV)として2~110mg程度を満足に分離定量することができる。
    またこの方法における共沈量は,酸化セリウム(IV)の20~40mgに対して,倍量以下の酸化ネオジム(III)や酸化イットリウム(III)の共存では±0.1mg以内,3倍量以下の両者が混在した共存では±0.2mg以内であって,一般沈殿法と比較してその共沈量を半量以下にすることができた。
  • 岡田 浩子, 金子 啓二
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2355-2359
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    交流ポーラログラフ法によって,インジウムとガリウムを定量するため,20種あまりの支持電解質中における両イオンの交流ポーラログラムを検討した結果, チオシアン酸カリウム- 塩酸を支持電解質とする方法が良いことを知り, これについて基礎的な検討を行なった。インジウムとガリウムは1mol/lチオシアン酸カリウム- 塩酸(0.6N)溶液中で酸素溶存のまま良好な還元波を示す。ピークはインジウム,ガリウムそれぞれ-0.63V,-0.87V(対SCE)にあらわれ,各元素の濃度と波高との関係はインジウムにおいては0.1~1.0mmol/lにわたってゆるい曲線, ガリウムは0.1~1.2mmol/lの範囲で直線性を示した。インジウム, ガリウムと同量程度の銅, コバルト, 亜鉛など数種の金属イオンとスルホサリチル酸,EDTA,過酸化水素,チオ尿素他数種の物質が妨害する。本法をベリリウム銅合金中に添加されたインジウムとガリウムの分析に適用して満足すべき結果を得た。
  • 井野 司郎, 富沢 敏, 神谷 国雄
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2360-2366
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    人形峠ウラン鉱を塩素化してウランを塩化物として揮発,回収する際,ウラン以外の鉱石成分も同時に反応し,その一部が揮発する。そのため揮発塩化物をそのまま凝縮すれば得られるものの全金属成分に対するウラン濃度は低く,7%以下である。従って, 塩化ウランを濃縮する方法として, あらかじめ少量の塩化ナトリウムを凝縮器に添加し, 塩素化に直直結して分別凝縮法を適用すると, 塩素化条件との関連において650℃ 以上の温度域に揮発ウランの98%,が凝縮, 捕集され,ウラン濃度も約40%のものが得られる。塩化ウランを始め共存する塩化物の凝縮は,相互作用により塩化物単独の時の蒸気圧の傾向とは異なる結果を示す。
  • 長谷部 信康, 樋口 修一郎
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2366-2368
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1,4-ナフトキノン,無水フタル酸,無水マレイン酸,ナフタリン混合物中の各成分を簡便に定量するためにガスクロマトグラフ法を試みた。すなわち,202℃ においてシリコンSF96カラムを用いたガスクロマトグラフィーによれば,上記4成分はきれいな分離を示す。しかし,熱伝導度セルを検出器として用いた場合にはことに無水フタル酸と無水マレイン酸の感度がその濃度に対し非直線性を示すため普通の方法による定量は不可能であることが判明した。そこで,ニトロベンゼンを内部標準とし,感度補正係数を使用する定量法を採用し,おのおののピーク面積と感度補正係数の関係を求めておいてピーク面積に対応する補正を行なう定量法を確立した。本法によれば各成分の存在量が求まるので,各成分についての組成分析のみならず,溶液中の濃度等も測定できる。
  • 吉田 善一, 中川 公二
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2368-2370
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    液体亜硫酸中でシクロヘキセンに塩化ニトロシルを付加させると, ビス-(2-クロル-1-ニトロソシクロヘキサン)[I]が生成する。このものの水素化リチウムアルミニウム還元物より[I]の立体配置を決定し, またI の赤外吸収スべクトルよりその立体配座を決定した。
  • 阿河 利男, 南 享, 小森 三郎
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2370-2373
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    イソシアナート・マロン酸ジエステル付加体の熱分解反応を行なったところ,脂肪族イソシアナ・一ト・マロン酸ジエステル付加体( V I I ) は従来から認められているようにイソシアナートとマロン酸ジエステルに熱分解することが認められたが,芳香族イソシアナート・マロン酸ジエステル付加体(I)は融点付近の分解反応では,芳香族イソシアナートとマロン酸ジエステルへの分解がほとんど認められず,メタントリカルボン酸トリアニリド(II)やメタントリカルボン酸エステル(III)の生成が認められ,Iの熱分解反応は,ケテン中間体を通って進行していると考えられ,従来の熱分解反応とは異なることを見出した。
  • 武上 善信, 上野 徹, 坂田 武紀
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2373-2379
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    3種の触媒系,すなわち,(1)重金属水素化物-水系触媒,(2)Ni(Co)Cl2-Na-CH3OH系触媒ならびに,(3)NiCl2-NaBH4(ニッケルボライド)触媒のオレフィン水素添加活性について検討した。グリニャール試薬あるいはLiAlH4を用いて合成したニッケル(あるいはコバルト)水素化物は,それ自身高いオレフィン水素添加活性を有しているが,その活性はグリニャール試薬(あるいはLiAlH4)対MCl2モル比に依存しており,モル比の最適領域が存在する。本報では,モル比がこの最適領域からはずれた活性の低い触媒に対して多量の水を添加することにより,非常に活性な触媒系が得られることを報告し,この水を添加した触媒系は水素化物触媒よりはむしろラネーニッケルに類似した性格を有するものであることを示した。さらに,THF中での塩化ニッケルと金属ナトリウムとの反応混合物にメタノールを作用させることによって得られる黒色沈殿が, ラネーニッケルと同等あるいはそれ以上の極めて高い水素添加活性を有すること, およびニッケルボライド触媒の水素添加活性がNaBH4対NiCl2モル比に依存することなどを明らかにした。
  • 竹村 安弘, 森田 義郎, 山本 研一
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2379-2383
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高温における炭化水素部分酸化反応用酸化ニッケル- 酸化マグネシウム(NiO・MgO)系触媒の性状と, そのヘキサン-水蒸気反応に対する活性について実験を行なった。NiOとMgOは高温で焼成されると固溶体を形成する。NiOを2~98wt%に変化させて固溶体の生成と固溶度をX線回折で調べた。また,焼成温度と被還元性状との関連性を追求するため,熱天秤で触媒の水素還元を行なった。一方,触媒を種々の条件で還元し,活性テストに供した。
    活性テストは次の条件によるn-ヘキサン-水蒸気反応で行なった。接触温度550~850℃,水蒸気/ヘキサンの容積比≒1.3,ヘキサンに対するLHSV≒1.0。
    NiOを10wt%含む触媒ではNiOとMgOとの混合がよければ,700℃ 前後で均一な固溶体を形成するが,混合が悪ければ1000℃ 以上の焼成でも2種の固溶体を形成する。このうち一つは水素によって容易に還元されるが,他の一つは還元されにくく, ヘキサン- 水蒸気反応で, メーク, ブローをくり返すうちに次第に還元され易くなる。NiOを10wt%含む触媒では750℃ 以上では反応気流中で容易に還元されて高い活性を示すが,これ以下の温度では,ほとんど還元されず, 活性が得られないが, 水素によってあらかじめ十分に還元しておけば高い活性を示す。しかし活性状態の触媒をX 線回折しても, 金属ニッケルの回折線は認められない。このことから酸化ニッケル- 酸化マグネシウム系触媒ではニッケル金属はきわめて分散がよく微細な状態でMgO中に存在しているものと推定した。
  • 宮沢 三郎
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2384-2390
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    既報のとおり, 酢酸ビニルの気相接触合成の際に副生するクロトンアルデヒドは, 酢酸ビニルの重合にあたり, 致命的障害を与えるので, その副生は小量でも忌避される。本報においてはこれに引続いて, 主としてクロトンアルデヒドの成因をなすアセトアルデヒドの副生を中心とした研究結果を報告する。
    まず,クロトンアルデヒドの成因は,すでに生成したアセトアルデヒドのクロトン縮合であることが実験の結果証明できた。
    つぎに,アセトアルデヒドの成因については,従来反応ガスまたは触媒中に存在する水分による酢酸ビニルの加水分解の説が有力であった。しかし, 本研究の結果, 酢酸ビニルはさらに酢化してエチリデンジアセテートとなり, この分解によリアセトアルデヒドが生成する,いわゆる加酢分解の経路もあることが判明した。
    つぎに,アセトンの成因については予想のとおり,酢酸および無水酢酸の脱炭酸分解の結果であり,この両者では無水酢酸の方がはるかに分解が容易であることが確認された。最後に,アセトアルデヒドの単独または酢酸との混合蒸気を,240℃ の触媒上に通じ,クロトンアルデヒドと水の他に,酢酸ビニルが生成することも発見した。
    なお,本研究で使用した,ガスクロマトグラフ固定相は前報と異なり,水分のピークを明瞭に分離し得た。
  • 今村 寿一, 平田 道正, 河瀬 厳, 太田 暢人
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2391-2394
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ナフテン酸マンガン触媒を用いるプロピレンの液相加圧空気酸化(ベンゼン溶媒)を行ない,プロピレンオキシド(PO)や,プロピレングリコール(PG)などの反応生成物と反応条件の関係につき検討し次の結果を得た。
    1.見かけ上の1次生成物はPO,アセトアルデヒド,低級酸,低級エステル,高沸点物(220℃ 以上)などであり,PG,160~220℃ のエステルなどは2次生成物である。また,220℃ 以上の高沸点物の選択率は反応率によりほとんど変動しない。
    2.反応温度(160~220℃)の上昇は,1.に記した1次生成物の2次反応を盛んにする。
    3.プロピレン濃度(C3H623~72g/C6H6150ml)の増大により,POおよび低級酸は生成しにくくなり,高沸点物の生成が有利に行なわれるようになる。その他の生成物は濃度にあまり影響されない。4.PO選択率を大幅に増大させるような添加物は見出されなかった。
  • 今村 寿一, 平田 道正, 河瀬 厳, 太田 暢人
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2395-2399
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ベンゼン溶媒,175℃ でのプロピレンの液相空気酸化で得られた生成物の組成を詳しく研究し, さらに1 次生成物の被酸化性を同様の条件で測った。
    プロピレン酸化ではアリルアルコールの生成はきわめて少なく,プロピレンオキシドはプロピレン酸化系で酸化に対してはかなり安定である。過酸化物はかなりの量存在し, その大部分は低沸点のジアルキルペルオキシドであった。“高沸点物” (湯浴上で1mmHgで真空蒸留した残留物) の平均分子式は, プロピレン反応率8%のとき(C6H10O)6,15~35%のとき(C3H5O)8であり,エステル結合,エーテル結合,過酸化物結合をもち,本酸化系で酸化分解を受けにくい。
    本報および第1,2報の実験結果は次の反応機構を支持した。すなわち, プロピレンオキシドはBrillの機構によって生成する。1次生成物である低沸点生成物( カルボニル化合物, 酸など) は, CH2=CHCH2O・(I)やCH2=CH-CH2O2・(II)がプロピレンの二重結合に付加して生成するラジカルの酸化分解により生成する。高沸点物は連鎖停止反応生成物の一種である。
  • 伊藤 健児, 酒井 鎮美, 石井 義郎
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2400-2403
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    イソ酪酸メチルの無触媒における酸素酸化を129~150℃,アンプル中でおこない,反応生成物から反応過程を検討した。酸素はまずカルボメトキシ基にたいしα 位の水素を攻撃し,通常の酸素酸化機構に従って,α-カルボメトキシイソプロポキシラジカルを形成する。生成物はこのラジカルの水素引抜き反応とβ-切断をおこす分解反応の相対反応性に支配される。両反応の相対速度は生成物のα-オキシイソ酪酸メチル,アセトンおよび原料残存量から計算し,その温度依存性から活性化エネルギー差は5.6(kcal/mol)で,分解反応の方が大きな活性化エネルギーを必要とする。生成物比におよぼす溶媒の影響から分解反応の遷移状態は極性をもつと推定される。分解で生じるカルボメトキシラジカルは二酸化炭素とメチルラジカルに分解し,後者は酸化されてメタノールとなる。壌緒言
  • 伊藤 健児, 酒井 鎮美, 石井 義郎
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2403-2407
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    イソプロピルメチルケトンの酸素酸化反応(77~130℃)を検討しつぎの知見を得た。まず第三級の水素原子が攻撃されα-アセチルイソプロポキシラジカルIを生じる。Iはただちに分解反応をおこし,アセトンとアセチルラジカルを生成し,アセチルラジカルは過酢酸をへて酢酸へ酸化される。また反応生成物中に相当量の酢酸イソプロピルが検出されたが, このものはα-アセチルイソプロピルヒドロペルオキシドの熱分解では生成せず, 原料ケトンの過酢酸による酸化で酸素酸化の場合とほぼ同量生成すること,およびピナコロンと原料ケトンとの混合物を酸素酸化したところ,酢酸第三級ブチルと同時に生成することから,反応中間体の過酢酸と原料ケトンがイオン機構で反応した結果生成したと考えられる。またイソ酪酸メチル酸化の場合と異なり,Iによる水素引抜き反応はほとんど起こらず,これはIの分解反応の活性化エネルギーが低いためと考えられる。
  • 三木 彦一, 斎藤 真澄, 遠藤 彰, 伏崎 弥三郎
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2407-2413
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルキリデンシクロペンタンとして,メチレンシクロペンタン,イソプロピリデンシクロペンタンをえらび,種々の条件で自動酸化の反応速度を測定し,それより自動酸化の機構を動力学的に調べ,すでに行なった不飽和脂環炭化水素の自動酸化について得られた結果と比較し,分子構造の反応性に及ぼす影響を考察した。メチレンシクロペンタン,イソプロピリデンシクロペンタンはα - ブロム酢酸エチルエステルおよびα - ブロムイソ酪酸エチルエステルと, シクロペンタノンをそれぞれ縮合させ,脱水,ケン化,熱分解を経て合成したものを使用し,装置ならびに反応条件はいままでに行なった場合に準じた。酸化は35~70℃ の範囲で酸素分圧を50~750mmHg,試料濃度0.47~1.66mol/l,BPO濃度を試料1mol当り,0~0.06mol, 紫外線強度を32~100%の間で変化させて行なった。得られた反応生成物からこの自動酸化反応では,いずれの試料においても主として2の位置にヒドロペルナキシド(HPO)が生成していることが明らかになった。そして, その生成量は酸化の初期では酸素の吸収量に比例することが認められた。酸化の速度式はBolland,Bate-manらの提出したオレフィンのそれと一致する。このものの反応中心における水素引抜きのエネルギーは,メチレンシクロペンタンは9kcal/molで, イソプロピリデンシクロペンタンは7kcal/molであり, 反応速度はテルピノーレンの場合より低いが,1-メチルシクロペンテンに比べ, イソプロピリデンシクロペンタンは高くなっていることがわかった。
  • 関口 自然, 高瀬 功, 松井 弘次
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2413-2416
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    三フッ化ホウ素エーテラートを触媒とし, エピクロルヒドリンとポリエチレングリコールモノエチルエーテル(C2H5 O〓CH2CH2O〓nH;n=1,2,3)およびエチレングリコールモノメチルエーテルの反応を検討し,反応機構について考察した。反応速度はn=1,2,3の順に減少したが大きな差はなく,活性化エネルギーおよび頻度因子にも大きな差を認めなかった。活性化エントロピーはn=1,2,3の順に-17.9,-16.7,-17.4であった。このことは本反応がSN2機構によって進むことを示している。
  • 井本 稔, 斎藤 実
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2416-2419
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩基性触媒によるシクロヘキサノンとホルムアルデヒドとの反応を水, およびジオキサン- 水, テトラヒドロフラン- 水,ジメチルスルホキシド-水系混合溶媒中で行ない,初期メチロール化反応機構および溶媒の影響を動力学的に検討した。その結果, 初期メチロール化反応速度は次式のようになり, ホルムアルデヒド濃度に関してはカセイソーダ濃度に依存する係数(α)を考慮する必要がある。
    R=-d[F]/dt=K[C]1.02~1.05[NaOH]1.0~1.15 [1/α・F]1.0
    α=A0{[NaOH]×102}a
    ここで, R:反応速度, K:反応速度定数, [C]:シクロヘキサノン, [F]:ホルムアルデヒド, A0:[NaOH]=1×10-3mol/lにおけるα 値, 25℃(水=83.2,混合溶媒系=51.3),a:α 値の[NaOH]依存性, 25℃(水=-0.83,混合溶媒系=-1.10)
    混合溶媒系において,反応速度は,あるホルムアルデヒド濃度で急激に変化し,また水の増加にしたがって小となる。上記反応の活性化熱はつねに10~11kcal/molとなり,反応速度の差は活性化エントロピーに依存している。
  • 山本 晃久, 増尾 富士雄
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2420-2423
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    クロム染料とクロム(III)塩との反応によって染料:クロム=1:1錯塩と2:1錯塩が得られるが, その生成機構の詳細を検討して,含金属酸性染料の製造の資料とする。
    予備実験としてo,o'-ジオキシアゾ染料とクロムミョウバンを水溶液中で加熱反応せしめ(以下クロム化反応とよぶ)その挙動を円形ロ紙クロマトグラフィーにより観察した。水溶性錯塩のみを形成する染料3種をえらび,そのクロム化生成物を粉末セルロースカラムを通して, それぞれの1:1錯塩と2:1錯塩を単離した。同じ3 種の染料について, そのクロム化反応を分光光度法により追跡した。
    クロム染料の構造によって,クロム化反応の初期から沈殿を析出するものと,水溶性錯塩のみを生成するものとに二大別でき,前者のクロム化反応については既報した。水溶性錯塩のみを生成するo,o'-ジオキシアゾ染料I,V,Xにおいて
    染料I4-クロル-2-アミノフェノール→ クロモトロープ酸
    染料V4 -ニトロ-2-アミノフェノール→ H 酸
    染料X2-アミノフェノール-4-スルホン酸→ β-ナフトール
    染料I,Vはその1:1錯塩の溶解度および2:1錯塩の酸加水分解度が大きいため, クロム化反応中, 常に1 : 1 錯塩と2:1錯塩が共存するが,染料Xは長時間のクロム化反応により,圧倒的に1:1錯塩が生成する。
  • 丸山 雄士, 橋本 雄吉, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2423-2427
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ピリジン環に活性メチル基を有する2-メチル-5-(5-メチルベンズオキサゾリル-(2))-ピリジン(MBP)と種々の置換基を持ったべンズアルデヒドおよびヘテロ環アルデヒドを無水酢酸中で縮合せしめ1 1 種の4 - ( 5 - メチルベンズオキサゾリル-(2))-スチルベン(A)のアザ同構体を合成した。また上記MBPを二酸化セレンで酸化し5-(5-メチルベンズオキサリゾリル-(2))-2-ピリジンアルデヒドとし, これを活性メチル基を有する2-メチル-5-エチルピリジンと縮合し同型の誘導体(12)を得た。これら誘導体のジオキサン溶液における吸収およびケイ光スペクトルの極大波長はAに比べて,一般に長波長側に移り, そのケイ光相対強度は吸光度が同程度であるにもかかわらず小さい。とくにサリチルアルデヒド, フルフラール,チオフェンアルデヒドからの誘導体のようにオキサゾール環の2-位に結合したピリジン環に対して電子供給性基を有する誘導体は深色移動ならびに強度の減少がいちじるしい。これらの化合物で各種合成繊維を染色した結果, カシミロンF上では黄色に着色しその増白効果は劣るが,一般にピリジン環に対して電子吸引的に働く置換基を有するものが良好であった。増白布をカーボンアーク灯退色試験機中で照射して布のケイ光強度の減少を測定することにより耐光堅ロウ性を試験した。増白結果とあわせてアミランに対しベンズアルデヒドおよび4-カルボキシベンズアルデヒドとの誘導体が, またテトロンに対してベンズアルデヒドおよび4-シアノベンズアルデヒドとの誘導体ならびに12がすぐれた結果を示す。
  • 丸山 雄士, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2428-2432
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    α,β-ビス(5-メチルベンズオキサゾリル-(2)-)エチレン(A)において二つのオキサゾール環を連結するエチレン基をピリジン環を含む共役鎖で代えた5 種の誘導体を合成し, A およびベンゼン環を含む共役鎖によって連結された類似誘導体と溶液中における吸収およびケイ光スペクトルを比較するとともに, テトロンおよびポリプロピレンに対する増白効果ならびに耐光堅ロウ性を試験した。ジメチルホルムアミド中での吸収スペクトルは連結基がピリジン, ビニルピリジン, ジピリジルエチレン,ピリジルーフェニルエチレン,ジビニルーピリジルフェニレンの順に共役が長くなるに従って極大は長波長側に移り吸光度は大となる。ケイ光スペクトルの極大および相対強度も同様な関係がある。これらにそれぞれ対応するベンゼン誘導体は上記アザ同構体に比べ吸収およびケイ光の極大ともやや短波長側にあり,ケイ光強度はやや大きい値を示す。テトロン上では既知のようにAが最も増白効果はすぐれており,一般に比較的共役系の短いものが良好な結果を与える。ポリプロピレン上ではスチレンで連結された誘導体とビニルピリジン誘導体がすぐれた増白効果を示す。前者の耐光性は良好であったが後者はやや劣る。
  • 光井 信二, 吉村 太, 伏崎 弥三郎
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2433-2438
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    夕張炭を種々の条件で抽出した抽出残炭の540℃ までの熱分解について研究した。
    抽出温度が250℃ 以上になると,石炭質の一部が変化することが加熱重量減少量およびIRスペクトルから認められ,抽出温度は250℃ 以下で行なう必要があると思われた。また抽出によって石炭中の低分子物質は除かれるが, 選択的に完全な抽出が困難であることを加熱減量および動力学的考察から証明した。また石炭を減圧下で定温加熱すると,溶剤抽出よりも低分子物質の除去がより効果的であると思われた。
  • 中井戸 靖明, 大橋 春雄
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2438-2440
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    無機高分子原料合成の一環として,前報においてチタン,アルミニウム各イソプロポキシドのMe3SiO-による部分置換化合物の合成を行ない,それに引きつづいてバナジルトリイソプロポキシドの同様な置換化合物の合成を目的とし,次式に示される合成法を用いた。
    NH4VO3+3iPrOH→OV(OiPr)3+NH3+2 H2OI
    OV(OiPr)3+nMe3SiOAc→OV(OiPr)3-n(OSiMe3)n+niPrOAcII
    n=1~3
    この反応で得られた各生成物は狭い沸点範囲をもち, 分子量測定値, 元素分析値にそれぞれ満足すべき結果を与え, さらにまた赤外吸収スペクトルの結果から予想される置換基の存在が明らかとなり,またさらに1105cm-1に共通に吸収があり,V=Oに基づくものと判断した。
  • 長谷川 正木, 鈴木 靖三
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2441-2444
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    カルボン酸フェニルエステルが, 同アルキルエステルにくらべ, 熱安定性にすぐれ, かつ親電子的な反応性に富むことを確認し,この特性を重縮合用合成原料の立場から考察した。
    種々のカルボン酸フェニルエステルとヘキサメチレンジアミンの反応速度を,m-クレゾール中, 150℃ で比較測定し,また, これら化合物の赤外吸収スペクトルから, そのカルボニル基の吸収波数と前記反応速度の関係を検討した。さらに, フェニルエステルの特性を利用し, アルキルエステルからは十分に高分子量のものが得られていない2,5-ピラジンジカルボン酸や,2,5-チオフェンジカルボン酸からのポリアミドの合成を試み, 高分子量線状ポリアミドを得た。
    さらに, 一般には, カルボン酸フェニルエステルは, 同アルキルエステルにくらべ, 短時間に着色の少ない高分子量ポリマーを得るための実験室的製法としてすぐれ, 特に熱に不安定なジカルボン酸からのポリマーの合成, 高温固相重合による高融点ポリマーの合成に適していることを結論した。
  • 横出 正明, 紺屋 栄
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2444-2450
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    含リンポリアミドをうる目的で,塩化ホスホニトリルと種々の芳香族ジアミン類との重縮合反応を,溶液法,溶融法,界面法の三方法を利用して調べた。溶液法の場合は室温下,テトラヒドロフラン溶媒中で行なったが,高分子量のポリマーはえられなかった。
    極限粘度は大きいもので,0.07~0.13程度であって,300℃ 以下では明瞭な融点を示さない。溶融法の場合は不溶,不融の固形物をえた。界面法の場合は塩化ホスホニトリルが,加水分解を受けて,ほとんど反応しないことがわかった。重合体の赤外吸収スペクトル測定の結果から, 主鎖中にP-N環結合の存在が認められ, また示差熱分析, 熱天秤による加熱減量曲線から重合体の熱特性を明らかにした。反応モル比により多少の差はあるが,かなり良好な耐熱性を示した。
  • 紺屋 栄, 横山 正明
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2450-2453
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トリホスホニトリル酸アリルエステル(ATP)の重合と共重合について検討した。ATPは重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や過酸化ベンゾイル(BPO)を用いて容易に重合させることができる。初期重合体の極限粘度は小さく,0.05~0.06程度であり,高ポリマーは得られなかつた。これは破壊的単量体連鎖移動がおこることから説明された。変化率50%以上でゲル化がおこり,ポリマーはほとんどの有機溶媒に不溶となる。ポリマーの加熱減量曲線を窒素中および空気中で,室温から600℃ にいたる昇温過程で調べた。その結果,空気中では400℃ で10%,600℃ では26%の減量を示した。また窒素中では,空気中よりいくぶん高い減量を示した。これらのことからポリマーは熱に対して比較的安定であることがわかった。ATP(M2)とスチレンとの共重合実験を70℃ で行ない,単量体反応性比およびQ,e値を求めた。r1=0.510,r2=0.221,Q2=0.61,e2=0.70。このことからATPはスチレンよりも反応性は小さいが,他のアリル化合物の場合よりも活性であることがわかった。
  • 木下 雅悦, 井本 稔
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2454-2459
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ラジカル重合における極性置換基の効果を調べるために, 二, 三のパラ置換スチレンの相互共重合を行ない, 単量体反反応性比r1,r2を求めた。先に報告した単独重合の生長反応の速度定数と組み合わせて種々のパラ置換スチレンのパラ置換ポリスチリルラジカルに対する反応性,および種々のパラ置換ポリスチリルラジカルのパラ置換スチレンに対する反応性を計算した。共重合速度および一定ラジカルに対する置換スチレンの反応性は共にσ値に対して目盛ると両上りの曲線になり,一定モノマーに対する種々の置換ポリスチリルラジカルの反応性はσ値に対して目盛ると直線になることがわかった。これらは先に著者らが提出した置換スチレン類のラジカル重合での遷移状態における極性構造の寄与の大小で説明することができる。これらの結果から, 置換基の見かけ上の共鳴寄与の大きさを評価した。パラ置換スチレンの極性はパラクロルスチレン,パラブロムスチレン付近で最小になる。
  • 横田 健二, 鈴木 康史, 石井 義郎
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2459-2463
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トルエン中5mol%のアルミニウム第三ブトキシドを触媒とするグルタルアルデヒドの重合において,得られるポリマーの単位構造I,II,IIIを-60℃ ないし+40℃ の重合温度範囲について調べた。
    ポリマーはこの重合温度範囲でいつも良収率で得られる。ポリマーの各単位構造はグルタルアルデヒドの自然重合体,ポリ-ε-カプロラクトンおよびイソブチルアルデヒドの赤外特性吸収を標準として定量した。-60℃ ないし0℃ ではIがおよそ80%を占めるが,0℃ 以上でIは急激に減少し,その代りにIIが増加して主成分となる。IIIはいつも少ない。ケン化価の測定および2N塩酸による加水分解(IおよびIIIが切断される)もこれと平行した結果を与える。
    加水分解したポリマーの分別と熱分解の結果は,IとIIの構造が同一鎖中にあることを示唆する。
  • 岩月 章治, 井口 昌次, 山下 雄也
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2463-2466
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1,2-ジメトキシエチレン(DME)をBaganzの方法でグリオキザールから合成した。DMEは単独ラジカル重合しないが無水マレイン酸, アクリル酸メチル(MA)およびアクリロニトリル(AN)などのAcceptor型のモノマーとラジカル共重合する。

    DME-MAおよびDME-ANのラジカル共重合の共重合反応性はつぎの通りである。DME-MAr1(MA)=4.8±0.4r2(DME)=0.02±0.02DME-ANr1(AN)=0.65±0.05r2(DME)=0.01±0.01これらの値からDMEのQ,e値はそれぞれ0.04,-1.1が大体妥当な値として計算された。またDME-MMA共重合ではMMAの単独重合体のみが得られた。
  • 岡田 鉦彦, 岩月 章治, 山下 雄也
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2466-2469
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    環状ホルマール類のカチオン共重合反応性を調べる目的で,4-クロルメチル-1,3-ジオキソランをM1モノマーとし,4-メチル-1,3-ジオキソラン, 1,3-ジナキソラン, テトラメチレンホルマールおよび1,3,6-トリオキソケンをM 2 モノマーとするカチオン共重合を,三フッ化ホウ素エチルエーテル錯合体を触媒として0℃ で行なった。それぞれの共重合反応で得られたモノマー反応性比の逆数1/r1と,環状ホルマールの塩基性度の間にはかなりよい相関関係が認められ,環状ホルマールの塩基性度が, そのカチオン共重合反応性を大きく支配していることが確かめられた。さらに, 4-メチル-1,3-ジオキソランや4-クロルメチル-1,3-ジオキソランのように, 熱力学的に環状物質として安定で比較的単独重合しにくいモノマーでは,その共重合反応性は塩基性度から予想されるよりも小さくなることが認められた。
  • 津田 鉄雄, 清水 哲夫, 山下 雄也
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2470-2473
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    β-メチル-β-クロルメチル-β-プロピオラクトン(β-MCPL)およびβ,β-ビス(クロルメチル)-β-プロピオラクトン(β-BCPL)のカチオン重合および共重合について研究を行なった。ルイス酸触媒により, β-MCPLは容易に重合するが, 粘性の低重合体がえられる。一方,β-BCPLは融点が150~160℃ の固体重合体を生成した。SnCl4による単独重合速度およびβ-プロピオラクトンおよびβ,β-ジメチル-β-プロピオラクトン(β-DMPL)との共重合より, 次のカチオン重合性の序列が求められる。β-DMPL〓β-MCPL>β-BCPL。
    SnCl4によってえられたβ-MCPL重合体は,ほぼβ-DMPL重合体と同程度の二重結合を有することそしてスチレン-β-MCPL共重合体には, ケトン基がないことが明らかにされた。これらの結果から, β-MCPLは,β-DMPLと同様に, カチオン重合において, アルキル- 酸素開裂によるカルボニウムイオン末端で重合を行なうものと考えられる。
  • 津田 鉄雄, 清水 哲夫, 山下 雄也
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2473-2476
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    環状化合物のカチオン共重合において,これらの環状化合物の塩基性が,重要な役割を果たすことが期待される。そこでラクトンの塩基性とカチオン共重合性との関連を調べた。各種ラクトンの塩基性は, ラクトンとメタノール- d との間の水素結合を,赤外吸収スペクトルで調べることにより決定した。ラクトンの塩基性の序列は次のようになる。δ -バレロラクトン〓ε-カプロラクトン>γ-ブチロラクトン〓β,β-ジメチル-β-プロピオラクトン>β-メチル-β-プロピオラクトン=α-メチル-β-プロピオラクトン〓β-イソプロピル-β-プロピオラクトン=β-メチル-β-クロルメチル-β-プロピオラクトン>β-プロピオラクトン>β,β-ビス(クロルメチル)-β-プロピオラクトン〓α,α-ビス(クロルメチル)-β-プロピナラクトン。ラクトンの塩基性とカチオン共重合性との間に,定性的大小関係が見いだされ,ラクトンの塩基性が,ラクトンのカチオン共重合反応に影響する因子の一つであると考えられる。
  • 弘岡 正明
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2476-2481
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トリエチルアルミニウム- 塩化チタン(III)触媒によるプロピレンの重合反応において,各種の不飽和炭化水素化合物を加えてその影響を比較検討した。これらの研究から,モノオレフィン化合物は顕著な影響を与えないが,ジエン類,アセチレン類は微量の添加で著しく重合を阻害することがわかった。阻害作用の大きさはプロパジエンが最も大きく,メチルアセチレン, アセチレンがこれにつぎ, ブタジエンがこれらの中で最も小さい。これらの阻害作用は一時被毒であり,回復する。この阻害作用の大きさと速度の回復の速さとの間には相関性はなく,各成分に固有である。一方,添加成分によって重合が実質的に禁止されているような阻害の大きな条件下で,微量生成する重合体はプロピレンを主体とするものであることが認められた。これは重合の阻害が添加成分の独占的な重合によるものでないことを意味する。これらの重合の阻害の機作を共重合反応の概念で説明しようと試みたが,生長反応の速度恒数の関係からは十分解釈できないものと考えられた。
  • 弘岡 正明
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2482-2486
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トリエチルアルミニウム- 塩化チタン(III)触媒によるプロピレンの重合反応におけるジェン類・アセチレン類の重合阻害作用について検討した。プロパジエンを添加した重合で, まずプロピレンとの添加順序の影響について明らかにした。また温度の影響から阻害は高温ほど小さくなることが認められ,阻害の機作が可逆的な物理過程にあることが示唆された。一方,各種ジエン類・アセチレン類の添加濃度と阻害作用の大きさの関係について検討し,阻害の機作は阻害モノマーとプロピレンの共重合あるいはMaxted型の被毒の式によって説明できないことが認められた。それに対し,Langmuir型の吸着により阻害が起こるとすると関係式がよく適合することが明らかになった。そして,これまでの実験結果はいずれも添加成分の活性点への選択的な吸着により阻害が起こるとしてうまく説明されることがわかった。各成分に対する:Langmuir式の恒数を求め阻害の大きさを比較するとともに,塩化チタン(III)の表面積との関係について考察した。また,イオウ化合物の阻害作用についても同様な吸着の機作が考えられ,興味が持たれる。
  • 新 祐治
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2487-2490
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化チタン(III)-ジエチルアルミニウム塩化物系触媒で4-メチルペンテン-1とヘキセン-1との共重合を行なった。Fineman-Rossの方法でMRRを求め,r1(ヘキセン-1)=5.4,r2(4-メチルペンテン-1)=0.62の値を得た。この場合,触媒成分および単量体の添加順序によって,重合体の収量およびMRRへの影響は認められなかった。重合体の融点はポリ(4-メチルペンテン-1)の235℃に対し, ヘキセン-1を19.3%含む共重合体では217℃ まで18℃低下した。これに伴なって,ポリ(4-メチルペンテン-1)の結晶化度は86%から約55%まで,またn-ヘプタン不溶部の比率は88%から38%までそれぞれ低下した。ヘキセン-1を40%以上含む共重合体は沸点におけるヘプタンに可溶であった。その他の溶媒に対する溶解性も検討した。
  • 新 祐治
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2491-2495
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    低圧法ポリエチレンとアイソタクチックポリプロピレンとの混合物について,主としてポリエチレンの融点以上におけるポリプロピレンの結晶化速度をデイラトメトリーによって観測した。重合体混合物中のポリエチレンの比率が増すと共に,ポリプロピレン結晶化の誘導時間は増大し,結晶化速度は低下する。結晶化のハーフタイムの逆数で表わした結晶化速度の相対比は組成(PP/PE)100/0,80/20,60/40および40/60において,それぞれおよそ100,70,65および50となった。しかし,Avramiの係数は130℃ 以上ではいずれの場合もほぼ同じであり,結晶化の機構はポリエチレンが存在するかどうかによらず変化しないと考えられる。また,結晶化終了後のポリプロピレンの結晶化度は組成によらずほぼ同一であった。これらの結果から,ポリエチレンとポリプロピレンとは溶融状態ではある程度相溶性があるが,結晶化の過程で完全な相分離をおこすものと考えられる。
  • 加藤 克彦, 吉崎 修, 長井 栄一
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2495-2499
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    6-ナイロンの光酸化を,紫外,赤外,ESRスペクトルを用いて検討した。紫外線照射により,紫外吸収スベクトルの290mμ とともに330mμ に新しい吸収があらわれた。照射停止後外気中暗所に試料を放置すると,290mμ の吸収強度は増加し,同時に並行的に330mμ の吸収強度は減少した。ESRスペクトルの挙動から330mμ の吸収はラジカル,290mμ の吸収は分子状化合物によるものであることがわかる。放置の雰囲気を変えた実験から,暗所反応はラジカルが水と反応して分子状化合物になる反応であることが推察される。反応の律速段階が拡散であるとして,290mμ の吸収強度の変化を(Qt/Q∞ )2=(16D/π) ・(t/l2)などの拡散式で解析するとよく適合した。得られた拡散定数の値, D=1~2×10-10cm2/secは常法によるナイロン中の水の文献値とよく一致している。
  • 江川 博明
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2499-2504
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンポリアミノ基を導入したアニオン交換繊維は, その導入されているポリエチレンポリアミノ基により, ある種の金属イオンとキレートを生成し,特にアンミン錯塩を生成し易い金属イオンを選択的に吸着できることが期待される。本研究では, 塩化ビニル- アクリロニトリル共重合体繊維を, ポリエチレンポリアミンでアミノ化したアニオン交換繊維について,各種金属イオンの選択吸着性を検討した。これらアニオン交換繊維はO->N配位の金属イオンは全く吸着せず,O-<N配位の金属イオン, たとえばAu3+,Hg2+,Cu2+,Ni2+,Zn2+,Cd2+,Co2+,Ag+などを選択的に吸着し,通常のアニオン交換樹脂ではみられない大きい吸着量を示した。また,これらO-<N配位の金属イオンもpHを変えて相互に分離することができ,吸着された金属イオンも容易に脱着できることが見いだされた。以上より,上記アニオン交換繊維が特定の金属イオンの分離,回収に有効に利用できることが明らかになった。
  • 武内 次夫, 村瀬 啓
    1965 年 68 巻 12 号 p. 2505-2508
    発行日: 1965/12/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    天然ゴム(NRと略す),NBR,SBR,BR,CRおよびそれらの中の二成分の混合物について,熱分解物を四塩化炭素溶液または二硫化炭素溶液として捕集し,赤外吸収スペクトルを測定することにより,簡便かつ迅速にゴムベースの定性および定量分析する方法を研究した。同一条件で熱分解したものは再現性ある赤外吸収スペクトルを与え,その特性吸収帯よりゴムベースの同定ができた。またNBR-NR,SBR-NR,BR-NRおよびSBR-BRの各ブレンド系加硫ゴムにおいて, それぞれ吸光度比A 2260/A1380 , A698/A1380,A965/A1380 およびA 698/A1380が配合比とよい関係を与え,相対誤差6%以内で配合比の定量が可能であった。CR-NR系においてもA1220/Al380が配合比の相対的な関係を示した。
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