工業化学雑誌
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64 巻, 7 号
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  • 千布 正雄, 山田 文夫, 小堀 淑
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1157-1162
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    東京都内の大気汚染の現状は環境衛生の点からみて甚だ重大な問題となっている。この大気汚染の主原因となっているものは煤煙と亜硫酸ガスである。東京都の場合燃料の大半は石炭および重油であるが,いずれも相当量のイオウを含むものである。これら燃料による降下煤塵量は月平均1km2当り20tを超え,これに対応して大気中に放散される亜硫酸ガス量も増加しており,その濃度は寺部の試算における恕限度3.0mg/day/100cm2PbO2(以下3.0と略す)に達することもまれではない。この亜硫酸ガスの地域的,季節的,分布を知ることは環境衛生の見地と工場行政上必要欠くべからざることである。著者らはこのためD.S.I.R.の分析法を採用し,昭和32年10月から東京都内に52カ所の測定点を設け,測定を行なった結果,亜硫酸ガスの東京都内の地域別分布および季節的な変動に関する知見を得た。地域別では江東工業地帯の汚染が最も著しく,1.5~2.0で1年を通じ約6カ月間は2.0以上の地点があり,大田工業地帯がこれにつぎ1.0~1.5であった。都周辺部の住宅地帯の汚染度は低く,0.2~0.3であった。注目される現象は大田区の一部で,時として隣接の神奈川県川崎市重工業地帯からの汚染を著しく受けるらしく4.0~6.0を示すことがある。高度による変動は冬期においては地上10mで約0.56~1.9であるが,約50m付近で1.11~1.28を示し,気温の逆転層と転層との関係を認めた。
  • 橋本 栄久
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1162-1166
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    温度730~950℃ , CO2圧力5~60cmHg の範囲で沈降性炭酸カルシウムの熱分解速度を測定した。分解率をα とするとその時間的変化は1-(1-α)1/3=ktnなる式で表わされ,初期にはn≒1.0であるが,反応が進むにつれて気体脱出抵抗が増すためにnは小さくなる。kは速度定数と見なされる因子であるが,これをそのままArrhenius plotに用いると活性化エネルギーとして300kcal/mol以上の異常な値が算出される。分解の駆動力が分解圧と直線関係にあればkから求められる活性化エネルギーば分解熱(40kcal/mol) に等しくなるのであろうが, 本実験結果によればk は次のようになる。
    k=k0exp(-bP/Pe)・(Pe-P)/Pe
    bは温度によって僅かに変化する定数で,k0P=0におけるkf・exp(-E/RT)と書くことが出来る。活性化エネルギーは31kcal/molが得られた。
  • 橋本 栄久
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1166-1169
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    方解石単結晶の熱分解速度を恒圧の炭酸ガス中で測定した。分解は全表面から進行し,内部に向って均一な厚さの生成物層が出来てゆく。厚さξ で表わした線速度dξ/dt(≡ν)は時間に無関係で,ξ の増大によるCO2分子の拡散抵抗の増加は速度に影響しない。同温度ではν はCO2の圧力(P)に鋭敏で,分解圧をPeとするど次式にしたがう。
    ν=A・eb(1-P/Pe)(1-P/Pe)速度から直接活性化エネルギーを算出すると,CO2圧力に依存して100~230kcal/molとなり,異常に高いが,上式によってP=0に外挿した速度ν0については39.4kcal/molとなり,分解圧に一致し,ν0は大略Polanyi-Wignerの式を満足する。
  • 中 重治, 野田 稲吉
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1169-1176
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フッ素金雲母-フッ化カリウム系の平衡状態図を明らかにするため,示差熱分析法によりフッ化カリウム分58wt%以下の組成の結晶析出の過程およびその温度を測定した。
    この系の状態図は液相線にフッ化カリウム分35.6wt%の組成(q)で,極大点(1285±5℃)を有する特徴を示し,フッ素金雲母-q系とq-フッ化カリウム系にわけて取扱うことができる。フッ素金雲母-q系では液相線はフッ素金雲母組成の1375 ± 5 ℃ からフッ化カリウム分約27wt% の組成の1200 ℃ まで低下し, 初晶として雲母を析出する。フッ化カリウム分2 7 w t % 組成からq 組成までは初晶としてK2O ・Al2O3・2SiO2を析出し, 液相線はフッ化カリウム分の増加により高くなる。フッ化カリウム27wt% の組成の1200℃ ではフッ素金雲母,K2O・Al2O3・2SiO2年および液相が共存する。さらに低温度では1113℃にK2O・Al2O3・4SiO2,995℃にKF・MgF2を析出する境界線が存在し,920℃にK2O・MgO・3SiO2およびK2O・MgO・SiO2を析出する包晶線が存在する。q-フッ化カリウム系では,組成qからフッ化カリウム分約48wt%までは初晶としてK2O・Al2O3・2SiO2およびK2O・Al2O3・4SiO2を析出し,液相線はフッ化カリウム分の増加により著しく低下する。この液相線とKF・MgF2を析出する境界線およびK2O・MgO・SiO2を析出する境界線がフッ化カリウム分約48wt%の915℃付近に集まる。さらに低温度ではフッ化カリウム分約45~59wt%の827℃に2KF・MgF2およびK2O・SiO2を析出する包晶線が存在する。
  • 和久 茂
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1176-1178
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    チタン酸バリウムに0.3および1.0mol% のLa2O3,Ta2O5を添加して育成した単結晶は,103Ω-cm程度の体積固有抵抗を示すが,磁器の場合に見られたようなキュリー点温度以上での顕著な正の抵抗温度変化は示さない。半導体になるのは正方晶系または等軸晶系の単結晶であるが,同時に六方晶系の単結晶ができる。このものは六方晶系のチタン酸バリウムと同型である。
  • 高倉 英太郎, 菊池 博男
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1179-1182
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酸化チタンの硫酸溶液に硫酸アンモニウムを加えると,溶液組成および硫酸アンモニウム添加量の広い範囲にわたり白色沈殿が生成する。組成分析ならび熱分解の結果から,この沈殿はアンモニウムチタニルサルフェート,(NH4)2SO4・TiOSO4・2H2Oであることが推定された。
    溶液中TiO2およびSO4濃度の大なるほど, TiO2: (NH4)2SO4の一定割合に対するこのものの沈殿率は大であり,TiO292g/l,SO4220g/lを含む溶液にTiO2:(NH4)2SO4(モル比)=2:5の割合で硫酸アンモニウムを加える場合,溶液中TiO2の90%以上を沈殿せしめうる。
    分離・精製したアンモニウムチタニルサルフェート試料について二,三の性質を明らかにした。すなわち,このものは比重2.007の白色粉末であり,X線回折により明瞭な一定の結晶構造を有することが示された。水,塩酸および硫酸に可溶であるが,水溶液は容易に加水分解して白濁を生ずる。加水分解性ならびに水・硫酸に対する溶解性について検討した。
  • 好野 雄, 木島 一郎, 杉山 岩吉, 金沢 正浩
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1182-1184
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アミンが共存した場合のモノクロルトリアルキルチタネート, Ti(OR)3ClR=sec - ブチル, tert-ブチル, tert-アミル,とこれに対応するアルコール,ROH,との反応によるテトラアルキルチタネート,Ti(OR)4の合成を行なった。使用したアミンのうちで, トリエチルアミン, モノ-n- ブチルアミン, ジ-n- ブチルアミン, モノ-tert-ブチルアミン, エチレンジアミン,ピペリジン,α-ピペコリンは反応によりアミン塩酸塩およびテトラアルキルチタネートを与えた。アミンとしてトリ-n-ブチルアミン,ピリジン,ジメチルアニリンを用いた時には,未反応のまま試剤が回収された。またモノクロルトリアルキルチタネートと各アミンとの反応熱の測定を行なった。テトラアルキルチタネートを与えるアミンの反応熱は,これを与えないアミンの反応熱にくらべて,いずれのモノクロルトリアルキルチタネートに対しても大きい値を示した。また同一のアミンを用いた場合の3種のモノクロルトリアルキルチタネート相互の反応熱の大きさはアルキル基がsec-ブチル,tert-ブチル,tert-アミルとかわるにつれて減少した。
  • 村長 潔
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1185-1188
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    著者はメタン-水蒸気反応における炭素析出研究方法として,炭素析出曲線付近のモル比でメタン水蒸気反応を行ない,20%酸素で触媒上の析出炭素を燃焼定量した後,装置内の触媒を水素還元し,次の実験をくり返して行なう方法を考案したが,触媒の連続実験可能回数を求めるため,触媒の酸化,還元をくり返して分解率の変化を新触媒のそれと比較し,触媒の性能低下を検討した。空間速度140,温度範囲426~982℃,析出曲線上の条件では触媒は連続18回酸化,還元により816℃ 以上では分解率の変化はほとんど認められないが,650℃ 以下での性能低下は顕著であった。モル比2,空間速度400での性能試験も行ない,この触媒の炭素析出実験の連続可能回数を低温部では5回以内,高温部では10回程度と推定した。
  • 根来 一夫, 八木 三郎, 工楽 英司
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1189-1192
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    一般に一定温度において尿素付加物を生成するには,必要な最小限度の炭素鎖の長さがあり,その最小限の炭素数は尿素に付加する反応体の化学的構造と物理的な形状によるものと考えられている。パラフィン系炭化水素の場合には,常温では炭素数6個のヘキサン以上のものが尿素と付加物を生成することが明らかにされているが,ケトン類の場合には,最小の炭素数のアセトンから尿素と付加物を生成するといわれている。しかも, アセトンはメタノールと同じように賦活剤とされているが,アセトン自体も尿素に付加してくるといわれているので,アセトンがどのような挙動をするのか検討を加えた。著者らは固体尿素あるいは尿素飽和水溶液とアセトンとの反応について検討し,尿素1molに対してアセトン5molが存在するときに,アセトン-尿素付加物の収量が最大を示すことを見出した。さらに,Fischer合成油を尿素処理する際に, アセトンが存在すると, アセトン- パラフィン- 尿素付加物を生成し, かつパラフィンの付加は直鎖状パラフィンだけにとどまらず,多量のイソパラフィンが付加してくることを認めた。
  • 阿部 芳郎, 渡辺 昭一郎
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1192-1195
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリエチレングリコールクロルヒドリンとカリウムアルコラートまたはフェノラートとの反応によりエチレンオキシド鎖の長さが一定であるポリオキシエチレンエーテルを合成することができるが,その原料であるポリエチレングリコールクロルヒドリンの合成について実験を行なった。過剰のエチレンクロルヒドリンにエチレンオキシドを吹き込み,これに触媒を加えると反応がおこり,ポリエチレングリコールクロルヒドリンが得られる。本反応は濃硫酸のような酸触媒の存在で進行するが,水酸化カリウム,ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒では所期の反応は起らない。そしてさらにジ,トリエチレングリコールクロルヒドリンにエチレンオキシドを加え,同様な反応を行なうとより高重合度のものが得られる。これらの反応はいずれも重量比でクロルヒドリン:エチレンオキシド=4.5:1の場合,反応率が最もよく3.6:1以下になると分解が著しくはげしくなる。またエチレンオキシドをくり返しふき込み,かつ触媒を補充することによっても高重合度のポリエチレングリコールクロルヒドリンが得られる。これらの方法で得たテトラ, ペンタエチレングリコ ールクロルヒドリンを元素分析,分子量測定,赤外線吸収スペクトル,屈折率から確認した。
  • 服部 健一, 小西 一生, 前田 洋
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1195-1199
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    非イオン活性剤( 高級アルコール, またはアルキルフェノールの酸化エチレン付加物) に随伴するポリエチレングリコール(PEG)の定量は,最近その重要性を増してきた。著者らはペーパークロマトグラフ法における展開条件の適正な選択によって,テーリングを防止し,非イオン活性剤部分と完全に分離したPEGのスポットを得た。定量はドラーゲンドルフ試薬で発色させたP E G のスポットを切り取り, これを温水で抽出し, リンモリブデン酸バリウムによって沈殿させる。沈殿をアルカリ溶液で溶かした後,酸性とし,フェニルヒドラジンで赤色に発色させ,500mμ における吸光度を測定することによって,正確かつ容易に定量できる方法を確立した。本法は4mol以上付加モル数に関係なく,ペーパークロマトで分離し得る限り定量できることを確かめた。本法による定量誤差は約0.5%(標準偏差)であった。
  • 長瀬 邦彦, 坂口 嘉平
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1199-1203
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ラウリルアルコール, ノニルフェノール, ラウリルアミン, ラウリン酸アミドなどの高級アルキル基を一方に持つ活性,水素化合物に対する酸化エチレン付加反応において, 副生物としてポリエチレングリコールおよび類似化合物( これら副 生物を総称してPEGと呼ぶ)が副生する。
    PEG生成量は出発物質の種類,触媒の種類,および反応温度によって異なる。一般にPEG副生量はラウリルアルコールの方がノニルフェノールよりも多く, 反応温度が高いほど, また酸化エチレンの平均付加モル数が大なるほど多い。 PEG副生の機構について,PEGの生成段階と生長段階に分けて考察を行ない,種々の活性水素化合物とPEGの母体となる水,エチレングリコールなどと競争反応を行なって種々検討した。その結果,PEG副生の原因としては出発物質,酸化エチレン, 触媒などに由来する水が考えられるが, それだけでは, 実験結果を説明するには不十分で, その他になお,重要な因子が存在することが予想される。
  • 小森 三郎, 滋野 吉広, 山本 慧介, 梅沢 邦夫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1203-1208
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    マッコウ鯨油の高度利用法の一つとして,マッコウ鯨油から分子蒸留によりオレイルアルコールのオレイン酸エステルを主成分とする留分(以下マッコウO-O留分と略す)を分離し,このエポキシ化条件について検討するとともにその塩化ビニル用の可塑剤としての利用性を調べた。さらにスケソウダラ肝油分子蒸留残油,ならびに大ザメ肝油分子蒸留残油のエポキシ化物の塩化ビニル樹脂用可塑剤としての利用をも検討し,次の結論を得た。
    1)D.Swernのエーテル-塩酸法を少量試料法に変形した方法で,オキシラン酸素の分析を試み,満足な結果を得た。2)エポキシ化の触媒として塩化第一スズが良好であり,特に魚油のエポキシ化では硫酸触媒よりすぐれている。3)マッコウO-O留分およびマッコウ鯨油のエポキシ化物は耐熱耐寒性向上用の2次可塑剤としてD.O.P.に15%程度併用するとよい。4) スケソウダラ肝油および大ザメ肝油の分子蒸留残油を, エポキシ化したものは原料が安価であり, P.V.C.との相溶性もよく,耐熱性もよいが,樹脂と加熱混和するとある程度まで着色するので,1次可塑剤としては無色のものには使用出来ない。しかし,15%程度D.O.P.と混用すると着色もほとんどなく,耐熱性を向上させることができる。
  • 土田 英俊, 篠原 功, 神原 周
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1209-1213
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    水に不溶で有機溶媒にとけるスルホン酸化合物の存在の可能性を検討するために, その基礎的研究としてα , ω - ジフェ ニルアルカン-ジスルホン酸を合成し,その定数と水への溶解度を測定した。スルホン酸は,両末端のフェニルスルホン酸基に挾まれるメチレン基の数が,2,4,6,8,10,12の6種を合成した。α,ω-ジフェニルアルカン-ジスルホン酸およびその塩の赤外線吸収スペクトルは,いずれも1045~1050cm-1にνsSO2および1185~1190cm-1にνasSO2に帰属する強い吸収が認められた。ナトリウム塩,カリウム塩の水への溶解度は,メチレン基数の増加に伴なって減少し,log(mol/103H2O)対1/Tのグラフは直線になる。合成したスルホン酸塩はすべてが,有機溶媒に対してほとんどとけなかった。カルシウム塩およびバリウム塩は,水にも極めて難溶性であった。
  • 上野 隆三, 村本 康一, 平尾 一郎
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1213-1215
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    石炭酸カリウム塩のKolbe-Schmitt反応中間体である石炭酸カリウム・炭酸ガス複合物の炭酸ガス加圧下での反応について実験を行ない,p- オキシ安息香酸モノカリウム塩とサリチル酸モノカリウム塩が同時に生成することを認めた。石炭酸カリウム・炭酸ガス複合物の反応において,150℃以下では炭酸ガス圧力が高いほどp-オキシ安息香酸モノカリウム塩の生成が増大する。高温低圧の場合はサリチル酸モノカリウム塩の分解転位によって, p - オキシ安息香酸ジカリウム塩が生成するために,p- オキシ安息香酸の生成比率は著しく増大する。石炭酸カリウム塩のKolbe-Schmitt反応によるp-オキシ安息香酸の生成機構として,石炭酸カリウム・炭酸ガス複合物より,直接p-オキシ安息香酸モノカリウム塩の生成反応と, 同時に生成したサリチル酸モノカリウム塩の分解転位反応によるp- オキシ安息香酸ジカリウム塩の生成反応 の両者を考えた。
  • 中田 一郎
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1215-1217
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    放射線測定用シンチレーターとして直径,高さ2~3cmの円柱型のアントラセン単結晶が要求されるのであるが,こうした大きな寸法の単結晶を育成しようとすると,未解決な問題が残されているために失敗が多い。その原因を調べるためにBridgman法による研究を進めることを目的として, それに適するような電気炉の試作を行なった。
    炉は3部よりなる。それらはアントラセンが溶融する部分,固化する部分および得られた結晶の抜き取りを行なう部分である。結晶化の完了したアントラセンを未だ温度の高い間に抜き取ることによって冷却の際に器壁よりの圧力などによって割れ目の発生することを防ぐことができる。結晶化する高さの位置に横窓が設けられており,結晶の生長過程を外部から詳細に観察することができる。
    アントラセンは熱伝導度が小さいために結晶の生長速度も小さく,育成には数日を要するのであるが,その間にわたって温度制御を含めて十分に安定に働作する炉を必要とする。本報の電気炉はこうした条件も一応満たしているものである。
  • 中田 一郎
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1218-1221
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    放射線測定用シンチレーターとして,直径,高さ2.5cmの単結晶の育成を試みた。Bridgman法を採用して,まず一般に行なわれているような毛細管による自然発生方式を検討したところ,アントラセンのように分子間力が弱くしかも異方性の著しい物質には不適当であることが明らかになったので,二,三の改良を試みた。おもな点は種子結晶から単結晶を育成しようとするものであって, 一つは毛細管の代りに直径1cm程度の種子専用の結晶管を別に準備し, それに太い管を継ぎたして目標とする単結晶を得るものである。いま一つは直径1cmの単結晶種子を挿入して,これから単結晶を育成しようとするものである。種々育成を試みた結果によれば,後者の方法によって(001)結晶の育成を行なうことが,最も適したものであることが判明した。
    結晶化の完了した結晶は高温状態にあるが,これを室温に冷却する際には,著しい収縮と器壁との接触のために割れ目が発生しやすい。これを防ぐために,高温の結晶を器壁から離す操作を試みたところ良好な結果が得られた。
  • 後藤 信行, 永井 芳男
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1222-1225
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    2,4,5-および3,4,5-トリクロルナフタル-N-メチルイミドとベンゾアントロンとをNa-アルコラートを用いて縮合させ,ナフタリン核のβ位に置換した塩素の影響について検討した。2,4,5-異性体はベンゾアントロンと容易には縮合せず,125℃の反応でも7.3%の収率で塩素を含まないA型色素(BPM)を得るに止ったが,3,4,5-異性体は4,5-ジクロル誘導体よりも容易に縮合し,117℃,15分の反応条件で37%の収率でA型色素を得た。これは5.77%の塩素を含有するが, 反応時間の短縮, 反応温度の低下によりBPM のモノクロル誘導体の理論量(7.50% ) にさらに近い6.76 % の塩素含量を有する生成物を得た。この物質の赤外線吸収スペクトルを,別途で得たBPMの1-クロル誘導体と比較した結果,同一物質であることが明らかとなり,縮合過程に関し重要な知見を得た。またこの物質の染料としての諸性質についても詳細に検討を行なった。
  • 森賀 弘之, 小田 良平
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1226-1230
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    4-クロル無水フタル酸や3-アセトアミド無水フタル酸,4,5-ジブロム無水フタル酸,さらにジアルキル無水フタル酸などを合成し,これらの置換無水フタル酸を原料とし,ジメチルアニリンとの反応によって文献に記載されていない新フタライド化合物および新らしい反応生成物を得た。さらにこれらの反応生成物について検討した結果, 置換基の位置を決 定,構造を確認した。またこれらのフタライド化合物の物理的性質についても簡単に報告する。
  • 小田 良平, 林 良之
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1230-1233
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    長鎖アルキル基を有するヘテロ環状化合物として,(1)2-(β-ラウリルアミノエチル)-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン,(2)α-ラウリルイミダゾリドン,(3)1-ケト-4-ラウリル-ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン,(4)1-チオケト-4-ラウリル-ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン,(5)2,5-ジメチル-N-メチル-N-ラウリルピロリウムアイオダイド,(6)4-メチル-6-ラウリルウラシル,(7)2-チオ-4-メチル-6-ラウリルウラシル,(8)1-ヘプタデシル-3,4-ジヒドロイソキノリン, ( 9 ) 2 - ウンデシルキナゾロン- (4) の9 種を合成し, これらの中で若干のものがホルマリンでメチロール化されて,人絹布上で硬化させるとよく撥水性を人絹布に与える性質を有することをみとめた。
  • 滝本 雅祥
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1234-1238
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メラミンの加水分解により生成されるアンメリン,アンメリド,シアヌル酸とメラミンの分離定量について検討した。s-トリアジン環を有するこれらの物質は水に難溶性であり,また適当な発色剤がないため,比色分析が出来ないが,紫外領域に強い吸収を有し,ベールの法則に従うのでこれを利用して定量することができる。
    先ずこれらの物質の分離については, これらがすべてアミノ基または水酸基を有している塩基性, ないし酸性物質であるので,イオン交換クロマトグラフィーによる分離が可能と考え,アンバーライトIR-120を用いて樹脂に吸着したアンメリド,アンメリン,メラミンをそれぞれ0.05N~0,5N-および2N-塩酸で完全に分離させた。メラミンが非常に多量に存在する場合には,この分離法では容易でないので,滅圧昇華法(300℃,5mmHg,1時間)でメラミンを除去したが,シアヌル酸もメラミン同様完全に昇華することを知った。残留したアンメリン,アンメリドを更に簡易に定量するため,混合物のまま波長の2点における吸光度を測定し,方程式より求めた。
  • 長谷川 俊勝
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1239-1241
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フルフラール水溶液からフルフラールを抽出する溶剤抽出法は,従来種々試みられてきたが,著者は新しい溶剤としてTBPをフルフラールの抽出に用いて良好な結果をえた。
    TBPはフルフラールよりも高い沸点をもつので,蒸留によりTBP溶液からフルフラールを回収するのは容易である。その回収率は約8 7 % であり, 留出されたフルフラールは高純度のものであった。
    フルフラール希薄水溶液とTBPとの間のフルフラールの分配率を測定した結果,7.36という高い値をえた。またフルフラール,水,TBPの3成分系の平衡組成を求めた。TBP層には水は6~7%溶解してゆくが,水層にはTBPはほとんど溶解しない。TBPによりフルフラール水溶液からフルフラールを抽出する際,TBPの損失がほとんどないことを示している。さらにほとんどの組成範囲で2層に分離することがわかる。
  • 清水 寿夫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1241-1244
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トウモロコシデンプンとジャガイモデンプンについて,エピクロルヒドリンによる橋かけ条件を検討した。また,橋かけデンプンの乾電池用電解液中での膨潤特性を測定し, 乾電池用電解液保持剤として用いた場合の耐酸性, 耐塩化亜鉛性 を検討した。
    エピクロルヒドリンで橋かけすることにより, 可溶性還元物を含有しない, 耐酸性, 耐塩化亜鉛性にすぐれたデンプン粒が得られた。したがって, 重放電による乾電池の漏液現象に関しては, エピクロルヒドリンで橋かけしたデンプンはホルマール化デンプンより,更にすぐれた乾電池用電解液保持剤と考えられる。この橋かけデンプンの利用によって,乾電池の漏液現象を化学的に防止できる可能性がある。
  • 清水 寿夫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1244-1248
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    各種の未処理デンプン,加工デンプンおよびそれらに含まれる微量物質について,乾電池陰極亜鉛防食性を重量減少法で測定し,つぎの結果を得た。
    (1)未処理デンプンはすべて顕著な防食性を有する。この防食性はデンプン中に含まれる微量不純物によるものではなく,主としてデンプン分子の防食性によるものと考えられる。
    (2)グルコース,ショ糖等の糖類はほとんど腐食に影響しない。
    (3)小麦タンパク質あ防食性は僅かに認められるが,従来経験的に考えられていたほど顕著ではない。
    (4)橋かけデンプンは未処理デンプンより防食性が少ない。これは橋かけ剤等の腐食性に基因するものであろう。
    (5)橋かけ剤中ではホルムアルデヒドが最も強い腐食性を示した。
    (6)デンプン濃度が高くなると腐食は減少するが,デンプン濃度20%以上では亜鉛板表面からゲルの部分的な剥離が起り,局部腐食が急増する。したがって,高デンプン濃度のゲルではタンパク質含有量の多い少麦粉を多量混用し,ゲル強度の低下と亜鉛極への粘着性の増加をはかるべきである。
  • 清水 寿夫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1248-1251
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    乾電池の陽極電位におよぼす各種の未処理デンプン, 橋かけデンプン, およびそれのデンプン中に含まれる有機不純物の影響を検討し,つぎの結果を得た。
    (1)塩化アンモニウム25%,塩化亜鉛10%,水65%の3成分系電解液中での陽極電位は,初期の5~7日間で約0.1V低下し,7日以後はほぼ一定の平衡電位(0.61Vv.s.S.C.E.)を維持する。
    (2)未処理デンプンを添加した電解液中での陽極電位は,電解液中での平衡電位より0.01V高くなる。
    (3)市販の精製デンプンをさらに精製すると,陽極電位への影響はほとんど認められなくなる。したがって,純デンプンそれ自体は陽極電位に全く影響しないと思われる。
    (4)コムギ粉は陽極の平衡電位を約0.15V低下させる。この電位低下は(6)の結果から推定されるように,コムギ粉中に含まれる還元糖によるものであろう。コムギタンパク質であるグリアジンは影響がない。
    (5)ホルムアルデヒドやエピクロルヒドリンで橋かけしたトウモロコシデンプンは陽極電位を低下しない。
    (6)D-グルコース,マルトース,エピクロルヒドリンは陽極電位を著しく低下させる。
  • 清水 寿夫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1252-1255
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    白金黒電極を用い,交流法(1,000c/s)で乾電池用デンプンゲルの電気抵抗ρGを測定した。また,各種デンプルを用いてUM-1型乾電池をつくり, I R 降下法で乾電池の内部抵抗R1 を求めた。その結果, つぎのことを認めた。(1)ρGはデンプン濃度の増大,糊化の進行につれて増大する。(2)各種未処理デンプンのρGはほぼ一定の値を示し,デンプン種類の差は僅少である。橋かけデンプンのρGは未処理デンプンのρGより小さい。(3)ρGR1の間には相関性が認められ,低デンプン濃度のゲルを用いた場合,あるいは橋かけデンプンを用いた場合R1は低下する。
  • 牧野 輝男, 曽根 敏麿, 高野 玉吉
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1255-1261
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    粉体食品の吸湿性と包装皮膜による粉体食品の防湿効果との関係を得るために, 40℃ ,90%R.H.の条件で粉乳, 穀粉,粉末チーズ,紅茶など11種類の粉体食品の吸湿速度定数(K)と,それぞれの粉体食品にポリエチレン,硬質塩化ビニル,防湿セロファンなど6種類の皮膜をかぶせた時の粉体食品の吸湿速度定数(K'),および皮膜の粉体食品に対する透湿度(Q')を求めた。KK'はそれぞれ(340~1820)×10-4,(0.87~50)×10-4(hr-1)の範囲であって,logKとlogK'の間には直線的関係が存在する。また,粉体食品の吸湿速度定数(K)の小さくなるにつれて,それらの粉体を被ふくしたときの皮膜の透湿度(Q')は,平衡値に近づき,K=0でQ'はJIS Z 0208による透湿度(Q)にほぼ一致することがわかった。
  • 広田 致
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1262
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ペクチンの中和に伴なう解離性状および粘性の変化を調べるため,エステル化度66%の遊離ペクチニン酸のN/200溶液についてカセイソーダ,または塩酸添加を行ない,pH測定により解離度,オストワルド粘度計により粘性を調べ,また食塩添加(ペクチンに対し2倍当量)の影響を見た。その結果は次のとおりである。
    (1)アルカリ添加により,一般高分子酸同様解離度は増し,解離能は低下する。そしてpHと解離度との間には,Katchalsky式,pH=pKm-nlog[(1-α)/α]があてはまる。本実験条件ではpKm3.8,n1.2であった。他の研究者のデータと比較するとペクチンのエステル化度が低くなる, すなわち電離基密度が大になるにつれてpKm,nともに増すことが示された。(2) 食塩添加により解離度, 解離能ともに増し, Katchalsky式のpKm,nともに低下した。(3)一般の高分子酸同様中和が進み,解離度が増すにつれて粘度は増加する。食塩添加によりこの傾向は著しく抑制される。(4)解離度(またはカルボキシレートイオン濃度)と還元粘度との対数値間に直線関係が成立した。この関係は他の研究者による高分子弱酸のデータについてもあてはまる。
  • 東出 福司
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1266-1269
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硝酸繊維素の重合度分布をMorey-Tamblynの濁り度滴定法で求めた。この方法では重合度Pの均一高分子溶液に非溶剤を添加したとき, 高分子の沈殿が析出する沈殿点における沈殿剤の容量百分率Pγと, そのときの高分子の濃度CγとはPγ=KlogCγ+f(P)の関係にあることをもとにしている。
    Kは一定の高分子では溶剤-非溶剤できまる定数で重合度に関係なく一定値をとるとされている。しかしアセトン-水で分別をおこなった硝酸繊維素試料に関する著者の実験結果では,Kは重合度の大きい試料では大きく,重合度の小さい試料では小さいことが認められた。この結果,濁り度滴定からMorey-Tamblynの計算式で計算される重合度分布曲線は大なるKを用いると重合度の小さいほうにずれ,小なるKを用いると重合度の大きいほうにずれることを既知重合度試料で示した。したがってこの方法で硝酸繊維素の未知重合度試料の重合度分布を求めるときには,試料に対して適当なK値をきめておく必要がある。
    最後に重合度未知試料の分別沈殿法で求めた重合度分布と,濁り度滴定法で求めた分布との比較をおこなった。
  • 東出 福司
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1269-1272
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    極性可塑剤を含むニトロセルロース溶液の誘電損失率を25℃ で測定した。損失率と可塑剤添加量の関係を求めると,ポリエチレングリコール-ジ-(2-エチル)ヘキソエート,フタル酸ジブチルおよびリン酸トリブチルのいずれも,ニトロセルロースの溶液に対して, 3~5×10-2mol/l 程度の添加量で損失率は溶液自体の損失率よりもかなり増加し, さらに可塑剤を添加してゆくと,いずれの場合も損失率は次第に低下し,可塑剤自体の損失率に近づいた。
    この増加の程度はポリエチレングリコール-ジ-(2-エチル)ヘキソエートを添加した場合が,他の二つの場合より大きかった。40℃ で測定すると,損失率は25℃ の曲線と相似のまま増加した。また可塑剤を含むニトロセルロース溶液を超音波で処理すると,損失率は低下して溶液自体の損失率に近づいた。
    これらの結果は,既報でのべたように,溶液中に可塑剤とニトロセルロースとの相互作用によって,ミクロの凝集体が形成されるという議論を支持するものと考えられる。
  • 三宅 泰治
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1272-1274
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジビニルホルマールが, 頭尾結合により環化重合すれば, ポリビニルホルマールのモデル化合物の合成が期待されるので,ラジカル重合およびイオン重合を試みた。重合物はオリゴマー以外は3次元化した。酢酸ビニルとの共重合物を加水分解してえたポリビニルアルコールの1,2 グリコール結合量は多く, またオリゴマーの加水分解によりえたポリビニルアルコールの重合度は約20であり,同じく多量の1,2グリコール結合を持つことを知った。
  • 高橋 正夫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1274-1276
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アクリル繊維の結晶化度を測定する方法について検討し,この方法を用いて種々の試料の結晶化度および結晶配向度について検討した。延伸倍率の増加とともにわずかずつ結晶化度は大きくなる。熱処理による比重の変化に対しては配向度の影響が大きく,低延伸倍率試料では熱処理によって比重はかえって小さくなる。弛緩熱処理によれば配向度は少し小さくなる。乾熱と蒸熱処理の間には差は認められない。結晶化度に対して紡糸浴種類もまた影響する。糸条形成過程における試料を膨潤状態のままで測定することによって配向度を比較することが可能である。
  • 高橋 正夫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1277-1279
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々の共重合体を共通の紡糸条件を用いて紡糸した。乾引張強度および伸度,乾結節/乾引張強度比および伸度比,湿引張/乾引張強度比および伸度比の六つの性質と共重合組成の関孫から次のことが見出された。
    (1)アクリロニトリルの含有量は,N%が23.8%以上のこの実験範囲において強伸度的性質に明瞭な影響を与えない。
    (2)Mnが7~12万程度の場合には分子量の影響よりも原液濃度の影響が著しく,濃度が大きい方がよい結果をあたえる。Mnが著しく大きくなれば強度が増大する。
    (3)アクリル酸メチル系3成分共重合体およびアクリル酸エチル2あるいは3成分系共重合体が最も良好な強伸度的性質を示し,一般に少量のアクリル酸低級エステル類の共重合は良好な機械的性質をあたえるものと考えられる。
    (4)一般に伸度の大きいものが総合的によい結果をあたえている。
    (5)共通8条件を用いて紡糸した繊維の乾引張強伸度の総平均は2.90g/dおよび12.6%であり,伸度が小さい。これは弛緩熱処理が行なわれていないこと,凝固条件が強すぎることなどによるものである。
  • 福本 修
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1280-1282
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ヒドロキシルアミンジスルホン酸塩の加水分解はまず比較的急速な酸接触反応で進行してヒドロキシルアミンモノスルホン酸塩となり, つづいて比較的ゆるやかな第2 段の加水分解が行なわれて硫酸ヒドロキシルアミンとなる。第1 段の加水分解に際しては反応が進行するにしたがってH3+Oが増加するので分解速度が加速されるが,第2段の反応は見掛け上1次反応にしたがう。モノスルホン酸塩とシクロヘキサノンとの反応は硫酸ヒドロキシルアミンに比較して反応速度が遅く,反応熱が大であるが全く同一の生成物を与える。
  • 福本 修
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1283-1285
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ヒドロキシルアミンモノスルホン酸塩とシクロヘキサノンとの反応を,紫外線吸収スペクトルにより検討した。この反応は硫酸ヒドロキシルアミンを用いる場合に比較して反応速度が遅い。強酸性では幾分速かにオキシムが生成し,平衡状態に達する。このときモノスルホン酸塩はほとんど消費されている。中性ではシクロヘキサノンはほとんど消費されない。オキシム化反応の機構についても考察した。
  • 福本 修
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1285-1289
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    工業的条件下のシクロヘキサノンオキシムの連続ペックマン転位反応の速度を解析する目的で,種々の条件下における反応速度を追跡した。硫酸-ε-カプロラクタム系での反応速度も1次であり,温度,モル比によりかなり反応速度が異なる。また水の存在下で著しく反応速度は小となる。槽連続反応における未反応オキシムの実測値と動力学的計算値はよく一致する。反応はオキシムおよびラクタムのイオン化および脱水の過程を含み,反応の律速段階についても考察した。硫酸-ラクタム系ではHammett式は成立しないようである。
  • 佐々木 和夫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1289-1291
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硬質塩化ビニルをある種の導電性の材料に貼り合わせて作った積層板では,単一の樹脂板にくらべて静電荷の蓄積が少ない。その原因は主として,積層板において放電速度が格段に大きいことに帰せられる。本報においては,多数の試料について放電過程を検討し
    1)放電速度は積層板と単板で明瞭な相違があること,
    2)ただし積層材料の種類(金属,ガラス綿,紙)の相違による放電速度の相違は認められない.
    3)静電荷の放電は2次の化学反応速度式にしたがう
    ものであることを確認した。
  • 島崎 昭夫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1291-1294
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    含浸注形用有機酸無水物硬化エポキシ樹脂の硬化途中,硬化後の内部応力やひずみに関する問題を検討するため,それらと深い関係にあると考えられる硬化樹脂の熱膨張,転移点等を酸無水物の配合量,エポキシ当量,二塩基酸添加との関係において測定した。酸無水物の配合量がエポキシ基1molに対し1molよりも少ないところでガラス転移点は極大値を示し,転移点以上での膨張係数は極小値を示す。酸無水物とエポキシ基を等モルに配合した場合にはエポキシ当量の増加にともなってガラス転移点および転移点より上での膨張係数は漸増する傾向を示す。二塩基酸の添加量の増大につれてガラス転移点は降下し, 転移領域はせまくなる。これらの傾向に関し二塩基酸を同モル数添加する場合には, メチレン直鎖の長い方が効果的であり, 硬化樹脂中の二塩基酸からくるメチレン基の濃度が同一な場合にはメチレン直鎖の短い方が効果的である。
  • 島崎 昭夫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1295-1298
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂は硬化収縮が少ないので,注形,含浸用に賞用されている。樹脂は硬化反応,冷却時に収縮をおこし,自由な収縮が束縛される場合には,内部応力が発生し,時には,きれつを生じる。このような問題を解くためには,硬化収縮に関する研究を行なう必要があり,本報では硬化収縮と酸無水物の配合量,エポキシ当量,二塩基酸の添加量との関係について述べる。
    酸無水物の配合量は, モル% で1:1~0.9より多くても少なくても反応収縮は減少し, 冷却による収縮, これらの和としてあらわされる全硬化収縮は増大する。エポキシ当量の増加により, 反応収縮, 冷却による収縮, 全硬化収縮は減少する。二塩基酸の添加量の増加により,反応収縮は減少し,冷却による収縮,全硬化収縮は増大する。このような傾向に関し,二塩基酸の同一モル%の添加に対しては,メチレン直鎖の長いものの方が効果的なのに対し,二塩基酸の同一メチレン基濃度についてみるならば,メチレン直鎖の短いものの方が効果的である。
  • 大鹿 隆男
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1299-1302
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アイソタクチックポリプロピレン(Iso.P.)の不均一系(無溶剤で希釈剤に食塩粉末を使用した)における塩素化反応については先に報告したが,今回はこれと同じ方法を用いて(Iso.P.)の不均一系におけるスルホクロル化反応を研究した。
    さらにアイソタクチック, ステレオブロックおよびアタクチックポリプロピレンを用いて均一系におけるスルホクロル化反応を行ない,反応速度におよぼす立体特異性の差について検討した。
    a)(Iso.P.)の不均一系におけるスルホクロル化反応では,生成ポリマー中のlog(Cl%)あるいはlog(SO2Cl%)はlog(反応時間)に比例する。
    b)(Iso.P.)の不均一系におけるスルホクロル化反応では塩素ガスの流量を一定にし,亜硫酸ガスの流量を増加した場合, 生成ポリマー中のSO2Cl% は増加し, 一方単独Cl% は減少する。
    c)均一系におけるスルホクロル化反応では立体特異性の上昇とともにその反応速度は低下する。
  • 野呂 健, 滝田 博
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1302-1304
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    軽度にクロトン酸を含む数種の酢酸ビニル- クロトン酸共重合体の分別物溶液について, 粘度および浸透圧の測定を行ない, 次の関係式の成立することを認めた。( 30℃,c=g/l)
    アセトン溶液[η]A=4.67×10-4P0.68ピリジン溶液[η]p=5.72×10-4P0.69
    また上記分別物をアルカリケン化してえられた試料のN/10-NaOH溶液の粘度測定から,ケン化の前後において,重合度およびカルボキシル基量は変化しないものと仮定して, 次の関係式の成立することを認めた(30℃ )。
    [η]=KPαファ K=2.25×10-3・x-0.80 α=4.68×10-1・x0.25 (x:-COONamol%)
    更にこれらの溶液について,若干の検討を行なった。
  • 野呂 健, 滝田 博
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1305-1307
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    数mol%以内のクロトン酸を含む酢酸ビニル-クロトン酸共重合体のアルカリケン化によりえられた試料につき,解離定数,粘度的挙動,熱処理効果および溶解速度等を検討し,-COONa量約1mol%以内においては,ポリピニルアルコールと大差のない性質を有するが,約2.5mol%を越えると著しい相違を示すことを認めた。
  • 古川 淳二, 鶴田 禎二, 竹田 凱光
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1307-1312
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    四エチル鉛を1成分とし,これに種々の金属塩を組み合せた2元系を用いて,メタクリル酸メチルほか8種の極性ビニル化合物の重合を行なった結果,四エチル鉛単独では重合が進まない室温暗黒下でも十分に高い触媒活性を有する多くの2元系を見出した。
    メタクリル酸メチルの重合の場合に,四エチル鉛の共触媒として有効であった化合物は,ほとんど例外なしにその金属元素のイオン半径が1Å以下で,かつ電気陰性度が1.5~2の範囲に含まれるものであった。次にこれらの2元系から10種の系を選び,種々の条件下で各種モノマーの重合を行なった結果,各系の触媒挙動は,おおむね共触媒化合物の金属元素の周期律表上の族にしたがってそれぞれに特徴的であるが,重合機構については,いずれの場合にもイオン重合を支持する根拠は得られず,ラジカル重合である可能性が大きい。なお,二,三の触媒系による低温重合によって得られたポリメタクリル酸メチルは,赤外吸収スペクトルによって,結晶性ポリマーであることが見出された。
  • 古川 淳二, 鶴田 禎二, 伊藤 一男
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1312-1315
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジエチルカドミウムを1成分とし,これと種々の金属化合物との混合触媒によるビニル化合物の重合をしらべた。メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルの場合, 三塩化バナジル, 三フッ化ホウ素エーテラート, 三塩化鉄, 塩化第二水銀,三塩化バナジウム,二塩化白金などが特に著しい助触媒作用を示した。酢酸ビニルに対しては,三塩化バナジル,硝酸銀, 塩化カドミウムなどが有効であり, アクリロニトリルの場合には三塩化バナジルがかなり有効な助触媒作用を示し た。一般にこれらの混合触媒による重合において溶媒の影響が顕著にあらわれ,また各成分の添加順序も重合収率に著しい影響をおよぼすことがわかった。次に上記混合触媒によるスチレン-メタクリル酸メチルの共重合曲線も溶媒により変化し,極性溶媒中では陰イオン重合が起っていることがわかった。
  • 根来 一夫, 八木 三郎, 工楽 英司
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1316-1317
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 上野 隆三, 村本 康一
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1317-1318
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 村松 広重, 岩崎 万千雄, 馬場 甫
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1319-1320
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 祖父江 寛, 石川 博
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1320-1321
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 祖父江 寛, 斎藤 吉民
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1321-1322
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 鹿間 幸一
    1961 年 64 巻 7 号 p. 1322-1323
    発行日: 1961/07/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
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