炭化カルシウムと水蒸気とが反応する場合に,炭化カルシウムの結晶状態と反応性との間にいかなる関係があるかを明らかにするために,X線回折法と熱天秤を使ってこの反応を調べた。
炭化カルシウムは室温において3種の結晶型を持ち,いずれも正方晶系に属している。高純度の立方体形に結晶した炭化カルシウムは[100],[110],[111]方向に劈開しやすい。高温の結晶型(CaC
2IV)から低温塑に結晶転移が起るとき,くり返し双晶が現われるので,CaC
2Iでは[100]については(100)と(001),[110]では(110)と(101)が観察される。これらの各結晶面の水蒸気との反応性は(100)>(001)>(101)>(111)の順に小さくなる。また各結晶面から現われる水酸化カルシウムの結晶面は任意のものではなく,[100]からは(011),[110]からは(012),[111]では(001)がそれぞれ認められた。
炭化カルシウムと水蒸気の反応は
2=2k'(t-t
0)
で表わされるので,水酸化カルシウムの生成速度は生成層の厚さの逆数に比例するものと考えられる。ここでxは生成層の厚さ,k'は速度定数,tは時間。室温,水蒸気圧15mmHgでのk'の値は[100],[110],[111]の各切断面についてそれぞれ105,4.57,2.09cm
2/minであった。
市販用炭化カルシウムは高純度のものと結晶状態が異なり,すべて1mm以下の結晶粒の集合体からできている。水蒸気との反応においては高純度のものと同じように,反応速度は生成した水酸化カルシウムの層の厚さの逆数に比例する。その速度は概していうと結晶粒の大きいものが大きい。高純度のものにくらべてみると[100]と[110]切断面の間の値になる。
抄録全体を表示