工業化学雑誌
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65 巻, 2 号
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  • 碇 醇
    1962 年 65 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    固溶体や化合物をつくらない最も簡単な2成分共晶系について,固液平衡の測定値から液相の活量を計算した。更に活量は温度によって変化しないと仮定して, 全濃度域にわたって両成分の活量を求めた。
    この活量と濃度との関係は,著者がさきに2成分定温気液平衡を取扱った時に誘導した式によってよく表わされており,この関係を示す図を使って描いた固液平衡図,ならびにこの関係式を使って求めた共晶点の計算値は,それぞれの実験値とかなりよい一致を示していることがわかった。
    係数αとηから求めたinterchange energyと,成分分子の性質との間の関係は複雑で,一般的な法則は見出し難い。
  • 斎藤 肇, 潮 真澄
    1962 年 65 巻 2 号 p. 147-150
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    構造水を含む結晶をフッ化物溶液で処理して, フッ素を含む結晶を生成させる一連の研究中, 天然の白雲母を350℃で加圧下にいろいろの濃度および時間で, フッ化カリ溶液と処理してつぎの結果をえた。この反応は結晶中の水酸イオンと溶液中のフッ素イオンの交換反応と, 結晶と溶液間の化学反応による分解反応が考えられるが, 4N 以下では分解反応はおこらず, 10N以上では完全分解反応がおこり, その中間の濃度では一部分解した。分解反応がおこらないときは, 理論量の約30% までフッ素を結晶中に導入することができ, 処理物の屈折率の測定などから, 結晶中の水酸イオンが溶液中のフッ素イオンと交換するものと推定された。また処理物は処理前に比して吸湿性を減じ, 耐熱性をますことがわかった。なお, 分解反応がおこるときの処理物中には, KAlSi3O8 , K2SiF6 , K3AlF6 などが存在することがX線回折線からわかり,分解反応式を推定できた。
  • 住吉 義博, 野田 稲吉
    1962 年 65 巻 2 号 p. 150-154
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    含フッ素ケイ酸塩溶融体の粘度をブルックフィールド型回転粘度計で測定した。試料にはフッ素金雲母(KMg3AlSi3・O10F2) , 調合原料POM2(KMg3AlSi3O9.88F2.24) , ホウ素金雲母(KMg3BSi3O10F2)を用いた。3試料は非ニュートン性流動を示し, フッ素金雲母は殊に顕著であった。単位ずれ速度における粘度は, フッ素金雲母では9.5~5.9poise (1370~1420℃), POM2で11~7.5poise(1370~1420℃) , ホウ素金雲母で35~7.7poise(1199~1381℃)であった。流動の活性化エネルギーはそれぞれ50.8, 47.5, 38.6kcal/molとなった。Eyringの粘度式から流動単位の分子容を算出すると,それぞれ雲母結晶単位格子の約30倍,10倍,1倍の大きさとなった。
  • 住吉 義博, 野田 稲吉
    1962 年 65 巻 2 号 p. 155-156
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    含フッ素ケイ酸塩溶融体の表面張力を最大泡圧法で測定した。また測定の深さを変え,同時に溶融体の密度の測定も行なった。
    試料はフッ素金霊母(KMg3AlSi3O10F2),調合原料POM2(KMg3AlSi3O9.88F2.24)およびホウ素金雲母(KMg3BSi3O10F2)をとった。
    表面張力はそれぞれ235~220dyne/cm(1390~1442℃),218~190dyne/cm(1355~1425℃),217~193dyne/cm(1177~1430℃)となった。
    表面張力の温度係数は負で,温度が高くなると表面張力は小さくなった。密度は測定温度範囲内ではほぼ一定で,平均値はそれぞれ2.49,2.44,2.45g/cm3となった。
  • 坂本 千秋
    1962 年 65 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジャモン岩を650~800℃にカ焼すれば,遊離マグネシア,ホルステライト,未分解ジャモン岩および残留ケイ酸となる。ブルサイト含有ジャモン岩を試料とし,そのカ焼物をまず炭酸水処理する。これによって十分遊離マグネシアを溶出除去した残留物中の残存マグネシア,化合ケイ酸を有効利用化するため,各種の無機酸で分解を試みた。えられた結果はつぎのようになる。
    1)炭酸水処理とその残留物の酸処理をもっとも満足する試料のカ焼温度は650~750℃である。
    2)硫酸処理において,あらかじめ,炭酸水処理することにより遊離マグネシア量に相当する硫酸消費量の節約ができる。全溶出ケイ酸は増大する。
    3)硫酸処理で,遊離硫酸を多量に残す場合と,少量残す場合とに処理過程が二つに区別できる。
    4)1~6規定塩酸処理で適当な使用量を決定し,硫酸の場合と同様な処理過程を適用しうる。
    5)硫酸,塩酸のほかに,硝酸,過塩素酸およびリン酸処理によって溶出マグネシアおよび可溶性ケイ酸の溶出状況を比較検討した。まず,各種酸の濃度による影響を求めた。つぎに,溶媒による差異については,ほぼHCl>H2SO4~HNO3>HClO4≫H3PO4の順で溶出がおこる。また,処理温度の影響については,35℃のような低温でも十分に分解し,低温処理ほど溶媒差による分解率が明瞭となる。
  • 山下 大二郎
    1962 年 65 巻 2 号 p. 163-166
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    焼結式アルカリ蓄電池等に使用するニッケル微粉末は,塩化ニッケルに塩化アンモニウムを添加した電解液を用いて電解製造すれば,かなり良好なものが得られる。しかし長時間電解すると,その組成特にpHおよびニッケルイオン濃度が変化し, したがって粉末の粒度, 性質などが変化してくる。これを防止するために電解全電流を一定とし, 主回路陽極(ニッケル板)と副回路陽極(炭素板)とに流れる電流比を適当に調節すれば,これらをほぼ一定に保つことができることをみとめた。
  • 田川 博章, 藤森 寛治
    1962 年 65 巻 2 号 p. 167-171
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    炭化カルシウムと水蒸気とが反応する場合に,炭化カルシウムの結晶状態と反応性との間にいかなる関係があるかを明らかにするために,X線回折法と熱天秤を使ってこの反応を調べた。
    炭化カルシウムは室温において3種の結晶型を持ち,いずれも正方晶系に属している。高純度の立方体形に結晶した炭化カルシウムは[100],[110],[111]方向に劈開しやすい。高温の結晶型(CaC2IV)から低温塑に結晶転移が起るとき,くり返し双晶が現われるので,CaC2Iでは[100]については(100)と(001),[110]では(110)と(101)が観察される。これらの各結晶面の水蒸気との反応性は(100)>(001)>(101)>(111)の順に小さくなる。また各結晶面から現われる水酸化カルシウムの結晶面は任意のものではなく,[100]からは(011),[110]からは(012),[111]では(001)がそれぞれ認められた。
    炭化カルシウムと水蒸気の反応は
    2=2k'(t-t0)
    で表わされるので,水酸化カルシウムの生成速度は生成層の厚さの逆数に比例するものと考えられる。ここでxは生成層の厚さ,k'は速度定数,tは時間。室温,水蒸気圧15mmHgでのk'の値は[100],[110],[111]の各切断面についてそれぞれ105,4.57,2.09cm2/minであった。
    市販用炭化カルシウムは高純度のものと結晶状態が異なり,すべて1mm以下の結晶粒の集合体からできている。水蒸気との反応においては高純度のものと同じように,反応速度は生成した水酸化カルシウムの層の厚さの逆数に比例する。その速度は概していうと結晶粒の大きいものが大きい。高純度のものにくらべてみると[100]と[110]切断面の間の値になる。
  • 中川 雅直
    1962 年 65 巻 2 号 p. 171-173
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    半導体用ケイ素の原料であるハロゲン化ケイ素中の微量ホウ素分と酸アミドとの反応を基礎的に検討するため,四塩化炭素およびクロロホルム中における三塩化ホウ素と酸アミドとの反応生成物について調べ,またその反応に及ぼす四塩化ケイ素の影響についても検討した。酸アミドにはアセトアミド,クロルアセトアミド,α-フェニルアセトアミド,アセトアニリド,N,N-ジフェニルアセトアミドおよびベンズアミドを用い,三塩化ホウ素は約1.2mol/l溶液とし,その25ccをとってこれに当量の酸アミドを常温で反応させた。その結果,反応生成物は三塩化ホウ素と酸アミドとの分子間化合物と,それから塩化水素あるいは塩化アセチルがとれてできた化合物との混合物であると考えられ,一般に幾分極性のあるクロロホルム中における反応生成物は四塩化炭素中における生成物よりも塩素が少ないものができることがわかった。また三塩化ホウ素と四塩化ケイ素が共存する場合にも,ほぼ同様のホウ素化合物ができることが知られた。
  • 田尻 弘水
    1962 年 65 巻 2 号 p. 174-177
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    染料と活性剤の相互作用をみる手段として,両者の混合液についての通常のペーパークロマトグラフィーは広範囲の溶剤が展開剤として使用できる反面Rfが似て両斑点が重なるものでは観察できない欠点があった。そこで両者の泳動が互に逆となるロ紙電気泳動を行なったところ,活性剤がCMC以上では染料は活性剤に伴なって泳動する傾向が認められた。つぎに活性剤水溶液を基質液として用いて,染料の泳動を観察したところ,染料はその荷電と同じ電極に向って大きく泳動し,染料間に泳動差があることが認められた。この泳動は塩化ナトリウムの共存で消失するのでクロマト的に塩化ナトリウムの有無における平衡定数をくらべたところ10-1程度の差があった。また陰イオン染料と陽イオン染料を同時に一浴で用いる染色に適する助剤を例示した。
  • 田尻 弘水
    1962 年 65 巻 2 号 p. 178-181
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ぺーパークロマトグラフィーを応用して色調がよく似た染料の混合物の各成分の分離定量の研究を行なった。反応性染料を例にとって実験したところ,それとその誘導体の相互の分離にはa)n-ブタノール,酢酸,水(5:3:5)とb)酢酸ブチル,酢酸エチル,酢酸,水,ピリジン(7:1:2:4:x)の2溶媒系が適していた。
    b系展開剤の使用により得られるロ紙上の色素斑点像の-logR(R:最小反射率)は供試染料濃度とほぼ比例的関係にあり,種々の点ですぐれていた。そこで原染料および加水分解物について検量線をつくり,染料の反応性をしらべたところ,1)塩類はセルロースとの反応を促進し水との反応をよく制している。2)糖類,水およびクレゾールとの冷時反応ではクロスリンキングも顕著におこることを認めた。
  • 沼野 雄志, 北川 徹三
    1962 年 65 巻 2 号 p. 182-184
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化ビニルの製造装置に不活性ガス置換法等の防爆対策を行なうには,その爆発範囲を知ることが必要である。空気中および酸素中の塩化ビニルの爆発限界に関してはすでに報告があるが,これに他の不活性ガスを加えた3成分系混合ガスの爆発範囲は未だ報告されていない。
    著者らは,既報の爆発限界測定装置を用いて,これらの測定を行ない,常温,常圧,酸素中における爆発下限界3.6%,爆発上限界72.0%,常温,常圧,空気中における爆発下限界3.6%,爆発上限界26.4%,空気中で不活性ガスとして窒素を加えた場合の爆発臨界点C2H3Cl6.0%,Air48.1%,N2添加率45.9%,炭酸ガスを加えた場合の爆発臨界点C2H3Cl6.0%,Air59.8%,CO2添加率34.2%の結果を得た。
    塩化ビニルは,48.8%以上窒素で,または36.4%以上炭酸ガスで置換した空気中では爆発性混合ガスを形成し得ない。
  • 加藤 二郎, 伊藤 民生, 矢部 義正, 岩永 良治, 吉田 統一
    1962 年 65 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリルのオキソ反応における副反応生成物の検索を行なった。
    オキソ反応の副反応としては,オレフィンの還元,生成アルデヒドの還元,重合,縮合等の副反応が予想されているが,実際のオキソ反応の副反応について研究された例は少ない。著者らはアクリロニトリルのオキソ反応においては,オレフィンの還元によるプロピオニトリルの生成が主要な副反応であって,このほかに生成アルデヒドの還元によりγ-ヒドロキシブチロニトリル, プロピオニトリルの還元によりn - プロピルアミンが生成することを確認した。このほか, 微量のプロピオンアルデヒドの生成が認められたが, これは強酸性であるコバルトヒドロカルボニルの作用により, プロピオニトリルと溶剤のメタノールよりイミノエーテルを経て生成するものと考えられる。
    なお,反応液中にアンモニアの存在を認めたが,これはプロピオニトリルよりプロピオンアルデヒドを生成する際に生ずるものと推定される。
  • 大城 芳樹, 朝戸 健朔, 小森 三郎
    1962 年 65 巻 2 号 p. 187-191
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルキルアミンと酸化プロピレン(PO)の無触媒下における反応を中心にして検討した。この反応もアルキルアミンと酸化エチレン(EO)との反応と同様つぎの2段階にわけて考えられる。
    I〓II〓(n=p+q-2)
    (1)無触媒下では反応温度が高いほど反応Iの反応速度が増加しEOの場合と同じ傾向を示す。これに反し反応IIはいかなる反応温度でもEOの場合に比べて非常に小さい。
    (2)反応IIが非常に小さいことはOH基に対してα位の側鎖メチル基が立体障害となるためであることを確認した。(3)したがって2mol付加物を収率よく得るには無触媒反応が最適であるが,それ以上の付加物を得るには他のアルカリ触媒を使用せねばならない。
  • 宇佐美 四郎
    1962 年 65 巻 2 号 p. 192-194
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール製造工程における回収メタノール中の不純物について,ガスクロマトグラフ法,赤外吸収スペクトル法などにより検討を加え,相当量のパラアルデヒドが存在することを見出した。パラアルデヒドの微量定量には,ガスクロマトグラフ法が他の分析機器より良好な結果を示す。すなわち,固定相担体DM-13Aにジオクチルフタレートを担持させたカラムが,メタノール,酢酸メチル,酢酸ビニル,アセトン,水などの溶媒中に存在するパラアルデヒドの定量に適当であることを認めた。検出限度は注入試料量20μlの場合,記録計フルスケールの1%であるとして算出し,0.03~0.05vol%であった。
    また検出限度のくり返し実験による変動係数はメタノール中で1.93%,水溶液中で1.37%であった。
  • 福本 修
    1962 年 65 巻 2 号 p. 194-196
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリカプラミドを,リン酸等の酸またばカセイソーダ,炭酸ソーダ等のアルカリを触媒として高温度に加熱して生成する揮発成分を反応系外に追いだせば,解重合してε-カプロラクタムが得られるが,若干の不純物が副生する。リン酸による解重合の際に副生する低沸点物のうち,γ,δ-ヘキセンニトリルおよびγ-カプロラクトンの2物質を確認した。またカセイソーダ,カセイカリの混合触媒による解重合により得られた粗ε-カプロラクタムより,6-オキソウンデカメチレンジアミンの推定される物質を分離した。
  • 三木 彦一, 斎藤 真澄, 遠藤 彰, 筒井 正夫, 伏崎 弥三郎
    1962 年 65 巻 2 号 p. 197-200
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々の条件で1-メチルシクロペンテン-1の自動酸化の速度を測定し,それより自動酸化の機構を動力学的に調べ,すでに行なった種々のテルペン炭化水素の自動酸化について得られた結果と比較し,分子構造の反応性におよぼす影響を考察した。1-メチルシクロペンテン-1はヘキサノールよりシクロヘキセンを経て合成したものを使用し,装置ならびに反応条件は今までに行なった場合に準じた。酸化は40~70℃の範囲で酸素分圧を50~750mmHg,試料濃度を0.47~2.48mol/l,BPO濃度を試料1mol当り0.005~0.05mol,紫外線の強度を18~100%の間で変えて行なった。得られた反応生成物からこの自動酸化反応では主として3の位置にヒドロペルオキシド(HPO)が生成されていることが明らかになった。そしてその生成量は酸化の初期では酸素の吸収量に比例することが認められた。酸化の速度式はBolland,Batemanらの提出したオレフィンのそれと一致する。このものの反応中心における水素引抜きのエネルギーは7kca/molであり,反応速度はテルピノレンよりも低いが,リモネン,シクロヘキセンに近く,α-ピネンよりも大きいことがわかった。
  • 中村 寿太郎, 峰岸 順二, 表 雄一
    1962 年 65 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化シクロヘキシルの合成を目的とし,シクロヘキサンの光化学的塩素化反応を研究した。シクロヘキサンおよびその塩素誘導体,(塩化シクロヘキシル,ジクロルシクロヘキサン,トリクロルシクロヘキサン等)は,いずれも反応系において光化学的に塩素化されるが,シクロヘキサン核に塩素原子が1個導入されるごとに,塩素化反応の速度は1/1.7に下がる。塩化シクロヘキシルの収率を高くするためには,反応系において塩素と塩素化誘導体とが衝突する機会を少なくする必要があり,それ以外の反応条件は効果がないことを知った。塩素-シクロヘキサン溶液を暗所で調製し,これを光の照射されている傾斜面に流下させる方法,あるいは,反応生成液中に急速に流入する方法,あるいは,塩酸中に2相に分かれるままに供給する方法が,いずれもよい成績を示した。15%の塩素を含むシクロへキサン溶液をこれらの方法によって処理し,シクロヘキサン基準で,塩化シクロヘキシル収率95%をえることができる。
  • 中村 寿太郎, 峰岸 順二, 表 雄一
    1962 年 65 巻 2 号 p. 206-209
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フェニルシクロヘキサンの合成を目的とし,塩化シクロヘキシルとベンゼンとのフリーデル・クラブツ縮合反応を,工業的見地から研究した。フェニルシクロヘキサンの収率に及ぼす反応の条件,たとえば反応系に加えられる塩化シクロヘキシル対ベンゼンのモル比,触媒の濃度,温度,時間などについて検討した。また,この反応の副生物であるジシクロヘキシルベンゼン, トリシクロヘキシルベンゼンなどを, ジスプロポーショネーション反応によって, フェニルシクロヘキサンに変換することができるので,その反応条件を検討した。
  • 中村 寿太郎, 表 雄一
    1962 年 65 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フェニルシクロヘキサンを液相で,常圧あるいは加圧の下に酸素または空気で酸化し,フェニルシクロヘキサンヒドロペルオキシドを得る方法について研究した。フェニルシクロヘキサンは,クメンに比較して酸化を受け難く,またそのヒドロペルオキシドも不安定であるが,水酸化カルシウムあるいは炭酸水素ナトリウム等の弱アルカリ性物質の存在の下では,ヒドロペルオキシドが95%以上の収率でえられた。反応温度は120~100℃の範囲がよいが,反応系のヒドロペルオキシドの濃度の低いうちは,温度は幾分高い方がよい。反応開始剤として,ヒドロペルオキシド自身が役立つ。フェニルシクロヘキサン液相と酸素を含むガスとの接触面を大きくする必要があり,反応系のかきまぜは特に重要である。反応液中のヒドロペルオキシド濃度は10~20%にとめる。これ以上ヒドロペルオキシドの濃度を高くすると,その分解反応が激しくなり,高い収率を得ることが困難であった。
  • 古家 義朗, 小田 良平
    1962 年 65 巻 2 号 p. 214-217
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    p-ニトロソフェノールとエタノールとの反応によって,p-ニトロソフェネトールが生成することはHavingaらの発見したところであるが,本反応を収率よく行なわせるための反応条件,ならびに触媒の検討を合成的方法および分光学的方法を併用して行なった。
    その結果,触媒は有機,無機の強酸は良触媒であり,弱酸は不良であった。強酸性イオン交換樹脂およびルイス酸も不良であった。また,本反応は脱水を伴なう可逆反応であるから,反応物の乾燥は収率を向上させる。したがって脱水剤の併用は有効であり,脱水力の強いものほど収率も高い。反応温度は20~30℃が最適であり,50℃では副反応が先行する。また,反応時間は20~30℃では150分で平衡に達する。本反応はエタノール大過剰ではつぎのようにあらわされる。v=kc[H2SO4][HOC6H4NO]。反応速度はp-ニトロソフェノールと硫酸濃度とに比例し,反応の活性化エネルギーは13.5kcal/molであった。
  • 山瀬 威郎, 北尾 弟次郎, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1962 年 65 巻 2 号 p. 217-220
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    繊維と共有結合により染色する,いわゆる反応性染料の反応基としてβ-クロルエチルスルホンアミド基を有する二,三の染料を合成し,絹,ナイロン,ビスコースレーヨンに対する反応性染料としての適用性,色調,堅ロウ度などを調べた。なお既報のβ-クロルエチルスルホン基を有する反応性染料との比較をおこなった。
    本染料はアミノ基を有する水溶性アゾ染料と,β-クロルエチルスルホン酸クロリドとの縮合によって合成した。これらの染料を用いて上述の繊維をアルカリ染色により,あるいは酸性染色後アルカリ処理(リン酸第三ナトリウム)により反応させ,未固着染料はソーピングにより除去した。
    一般にこれらの染料の染色性は非常に良好であったが,固着度はβ-クロルエチルスルホン基を有するものよりもはるかに劣っている。色調は黄,だいだい,赤,紫,青色系統である。堅ロウ度は,洗たく,摩擦,日光とも一般にすぐれていた。
    染料-繊維間の共有結合生成に対する証拠は既報と同様の方法で確かめた。
  • 山瀬 威郎, 北尾 弟次郎, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1962 年 65 巻 2 号 p. 221-223
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    繊維と共有結合により染色するいわゆる反応性染料の反応基として, β-クロルクロトニルアミノ基を有する二, 三の染料を合成し,絹,ナイロン,ビスコースレーヨンに対する反応性染料としての適用性,色調,堅ロウ度などを調べた。なお既報のクロルアセチルアミノ基,クロルプロピオニルアミノ基を有する反応性染料との比較をおこなった。
    本染料はアミノ基を有する水溶性アゾ染料とβ-クロルクロトン酸クロリドとの縮合によって合成した。これらの染料を用いて,上述の繊維をアルカリ性あるいは酸性染色後アルカリ処理(リン酸第三ナトリウム)により反応させ,未固着染料はソーピングにより除去した。
    これらの染料の染色性は非常に良好であり,固着度も一部を除いては既報よりもすぐれていた。色調は黄,だいだい,赤,紫,青色系統である。堅ロウ度も,洗たく,摩擦,日光ともに非常にすぐれていた。染料-繊維間の共有結合生成は既報と同様の方法で確かめた。
  • 草野 邁, 鈴木 恒雄
    1962 年 65 巻 2 号 p. 223-226
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    長鎖アルキルベンゼンの各種誘導体を合成して,合成条件ならびに生成物の性状を検討する目的で,まずそのクロルメチル化を試みた。アルキルベンゼンとして分枝ドデシルベンゼン(Alkane)を用い,試薬(ホルムアルデヒド-ホルマリン,パラホルムアルデヒド),触媒(塩化亜鉛,塩化アルミニウム,リン酸,氷酢酸)の種類,量,反応温度および反応時間について,好収率でクロルメチル化物を得る条件を検討した。長鎖アルキルベンゼンのクロルメチル化はかなり困難で収率が低いことが報告されているが,アルケン0.08molに対しパラホルムアルデヒド0.16mol塩化亜鉛0.15mol,氷酢酸1.67mol,塩化水素吹込み,80℃,6~8時間の最適条件において75%以上の好収率で蒸留モノクロルメチル化物を得ることができた。IRスペクトルから生成物は主にパラ体で若干のオルト体を含むことが認められた。
    また炭素数4,8,10,12,14,16および18の直鎖アルキルベンゼンのクロルメチル化を行なった。
    反応速度はアルキル鎖長の増大につれて漸減する。
  • 草野 邁, 三雲 次郎, 寺尾 良夫, 阿部 良治
    1962 年 65 巻 2 号 p. 227-230
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩酸,硫酸および硝酸溶液中の軟鋼の溶解に対する各種の界面活性剤添加の影響をしらべ,界面活性剤の構造と作用との関係を検討した。酸食抑制効果は界面活性剤個々の分子構造により異なるが, むしろより大きくその荷電種に支配される。塩酸および硫酸では陽イオン活性剤がすぐれ,陰イオン活性剤はあまり効果がなく,非イオン活性剤は両者の中間に位する。硝酸中では逆に陰イオン活性剤がすぐれた抑制能を示し,陽イオン活性剤はまったく効果がない。電子顕微鏡写真により抑制能に対応して特徴的な腐食像が得られた。
  • 酒井 鎮美
    1962 年 65 巻 2 号 p. 230-233
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    炭素数4~8のアルキルビニルエーテルと,無水マレイン酸またはマレイン酸ジメチルとの共重合体のケン化,およびケン化物の表面活性におよぼすビニルエーテルのアルキル鎖長および共重合体重合度(P)の影響を検討し下記の結果を得た。
    (1)オクタデシルビニルエーテルのケン化は困難である。(2)Pの減少とともに,ケン化共重合体の起泡力および乳化力は増大し,表面張力は低下し,モノソープの値に収れんする。かつ短鎖アルキルビニルエーテル共重合体ケン化物の表面張力は,長鎖同族体より小である。(3)重合度数十と推定される無水マレイン酸共重合体ケン化物の可溶化物の可溶化能は極めてすぐれているが,Pの減少とともに急激に低下する。またドデシルビニルエーテル共重合体ケン化物は掛け上最大の可溶化能を示す。(4)ケン化共重合体水溶液の還元粘度は高温ほど,かつエチルベンゼンの添加により減見少し,見掛けの可溶化熱は約3.0kcal/molである。
  • 高味 康雄
    1962 年 65 巻 2 号 p. 234-239
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    R4SnとTiCl4の反応について検討し,Rの相違による反応性の大小は,
    CH2=CH>C6H5>CH3>C2H5>n-C3H7>n-C4H9>i-C3H7
    の順で表わきれることを述べた。またR-Ti結合は不安定であるが,Rがメチル,フェニル,ビニルの場合はエチル以上のアルキル基の場合よりもかなり安定であろうことを推察した。
    またこの反応で反応中発生するガス,および反応終了後加水分解により生成するガスについて分析し,R-Ti結合の分裂により生じるR遊離基はかなり多様に変化して安定化すること,またチタンに結合するRは一部他のR'に変化することがあること,またR-Ti化合物の加水分解機構は主として
    R-Ti〓+H2O→R-H+HO-Ti〓
    のように起るが,こればかりではなく他の機構も関与していること,などを明らかにした。また,これと関連してグリニャール試薬の加水分解による発生ガスについても検討を加えた。
  • 山下 岩男, 古川 淳二, 三枝 武夫, 川崎 明裕
    1962 年 65 巻 2 号 p. 239-244
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    周期表Ib族,およびVIII族の金属塩または錯塩を通常のブタジエンのラジカル重合反応系に添加することによる重合率,および生成ポリマーのミクロ構造に及ぼす影響について検討した。(1)溶液重合系では,溶剤不溶の金属塩を添加した場合(不均一系)には,塩化パラジウムと硝酸銀がミクロ構造中,1,2-結合の増加傾向を示した。また硝酸銀は著しく重合を促進し,不溶,不融の固体ポリマーをあたえた。その他の金属塩は重合率を低下させ,ミクロ構造に影響を及ぼさなかった。(2)乳化重合系でも硝酸銀は不溶,不融のポリマーをあたえ,1,2-結合を増加させた。(3)ブタジエンの硝酸銀とnujolの混合物の赤外スペクトルの観測により,1554cm-1に新吸収を見出した。これは硝酸銀表面にブタジエンが吸着して,ブタジエンのC=C伸縮振動がシフトしたためであると考えられる。この吸着が溶液重合における生成ポリマーのミクロ構造に影響を及ぼすものと考えた。
  • 石塚 修
    1962 年 65 巻 2 号 p. 244-246
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    結晶性ポリプロピレン-希釈剤系の比容-温度関係から,希釈剤によるポリプロピレンの融点降下を求めた。この結果から結晶性ポリプロピレンの融解熱と融解エントロピーを計算し,それぞれ1700cal/molと1.95cal/deg/bondの値を得た。また,同重合体にカーボンブラックを混入してもその融点は変わらない。
  • 石塚 修
    1962 年 65 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    結晶性ポリプロピレンは高分子物としては結晶化速度が大きいが,希釈剤を添加すれば結晶化速度は減少する。また,結晶化速度の温度依存性は,120~140℃の範囲内で,結晶化速度定数の対数は温度に対して直線的に低温ほど増大し,希釈剤の混入にともなって直線関係は低温側に平行にズレる。Avramiの提出した式についてプロットすると,n=3で同式が成立する。10%程度の希釈剤の混入では同じくn=3で変わらないが,希釈剤が多量になればn=2で合うようになる。また,1.5%のカーボンブラックを含むポリプロピレンでは,これを含まない場合よりも結晶化速度は大きくなり,他の場合と同様に結晶化温度と結晶化速度定数の対数との関係は直線であり,ポリプロピレン単独系よりも高温側にズレる。カーボンブラックの微粒子が結晶核生成に役立つためと考えられる
  • 早乙女 和雄
    1962 年 65 巻 2 号 p. 252-254
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    エチレンと四塩化炭素のテロメリゼーションにより,生成するテロマーの一成分である1,1,1,5-テトラクロルペンタンを原料として,チオジバレリアン酸を合成し,それよりチオジバレリアン酸の高級アルコールエステルおよびポリエステルを合成した。反応は1,1,1,5-テトラクロルペンタンを硫酸の存在にて加水分解を行ない,δ-クロル吉草酸を誘導し,これに硫化ソーダを水溶液中にて反応させてチオジバレリアン酸を合成した。δ-クロル吉草酸と,硫化ソーダの反応を動力学的に測定し,活性化エネルギーは22.5kcal/molと求められた。
    次にチオジバレリアン酸のn-ブチルおよびオクチル(2-エチルヘキシル)エステルの生成条件について調べた。またチオジバレリアン酸と多価アルコールとして, グリセリンおよびエチレングリコールを縮合させ, 含イオウポリエステルを合成した。これらのポリエステルの生成反応を動力学的に測定し,活性化エネルギーはそれぞれ,グリセリンの場合は17.4kcal/mol,エチレングリコールの場合は10.5kcal/molと求められた。グリセリンの場合は生成するポリエステルは反応の進行に伴ない硬化するが,エチレングリコールの場合はベンゼンに可溶な粘調なポリマーが生成する。凝固点降下法より求めた分子量と酸価より求めた分子量を比較したが,反応時間の増加とともに著しい差異が認められた。
  • 古川 淳二, 三枝 武夫, 三瀬 教利
    1962 年 65 巻 2 号 p. 254-257
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジケテンを昇コウ,塩化アルミニウム,フッ化ホウ素(エーテラート),有機金属化合物または金属アルコキシドで処理すると重合し,触媒の種類によってことなる二つの型のポリマーをあたえることを見出した。またアルミニウムアルコキシドがβ-プロピオラクトンを容易に重合し,比較的高重合度のポリマーをあたえることをあきらかにした。
  • 東出 福司, 中島 純治
    1962 年 65 巻 2 号 p. 258-262
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ニトロセルロース薄膜にあらわれる不均一な光沢斑点に及ぼす可塑剤の溶解力の影響を調べた。第1にニトロセルロース-酢酸イソアミル-可塑剤3成分系のn-ヘキサンによる濁りの析出点を測定し,このn-ヘキサン量からMooreの方式により,混液のニトロセルロースに対する溶解パラメーターδmを計算し,可塑剤の溶解力について考察した。
    第2に数種の可塑剤についてn-ヘキサン希釈価と,Hugginsの定数k'および極限粘度[η]との関係を検討した。第3に可塑剤を含むニトロセルロースフィルムのヤング率を測定し,溶解力のよい可塑剤を含むフィルムは溶解力の悪い可塑剤を含むフィルムよりやわらかく,フィルムのかたさが光沢斑点と関係のあることを確かめた。
    以上の実験結果から,可塑剤がニトロセルロースに吸着されること,および可塑剤の溶解力が低いほど薄膜が形成される過程で,光沢斑点を生じやすいことを推論した。
  • 石井 正雄, 陶山 英成
    1962 年 65 巻 2 号 p. 262-266
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    部分ジメチルアミノアセタール化PVAを製造する際,触媒として使用した硫酸は,PVAと反応して一部硫酸エステルを生成する。したがって,硫酸エステル量の異なる各種紡糸用原料PVAを製造し,繊維性能に及ぼす硫酸エステルの影響を検討した。
    (1)紡糸用原料PVA中の硫酸エステル量に比例して熱処理時繊維は着色するが,硫酸エステル量に対しほぼ当量のカセイソーダを添加すれば着色は防止できる。
    (2)硫酸エステル量の多いPVA繊維ほど強度,結節強度は低下し,伸度は増大する。また耐熱水性は低下する。
    (3)硫酸エステルは繊維の染色性に影響し,硫酸エステル量が多いほど,酸性染料による染着速度,染着率は低下する。
  • 水谷 清, 鈴木 正作
    1962 年 65 巻 2 号 p. 267-269
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリアクリロニトリル系繊維は,そのポリマーの酸性を呈することに基く塩基性染料の染色性以外は,一般の染料に対して染色性に乏しいが,その堅牢度はよく,特に乾式紡糸繊維の場合に甚だ大きいといわれている。この塩基性染料の二,三のものについて,ポリアクリロニトリル,あるいは2-ビニルピリジン,2-メチル-5-ビニルピリジン,アクリル酸メチル,メタクリル酸メチル,またはアクリルアミドの共重合物等の粉砕物への染着性を検討し,いずれも相当の染着性を示すが,ビニルピリジン系およびアクリルアミド共重合物は,その塩基性を示すモノマーの存在のために,染料を反撥し,大きく染着性が減少することを認めた。またこれを紡糸,延伸すると繊維構成分子の配列結晶化性の大きいポリアクリロニトリル繊維は急激にその染着性を減少するが, ビニルピリジン系共重合物繊維は延伸により, それほど染着性を減少せず,高延伸度ではその染着性の順位が逆転する。またポリアクリロニトウル繊維の場合は,過度の延伸によって染色性が逆に増加する現象がみられたが,延伸効果のそれほどよくないビニルピリジン共重合物には,塩基性,酸性両染料に対し,かかる現象がはっきり現われないことが認められ,延伸効果の悪い比較的低温の水蒸気中の延伸繊維が割に染色性のよいことを認めた。
    また,染色性の乏しい高延伸ポリアクリロニトリル乾式紡糸繊維を,65%の硫酸で100~110℃で数分後処理すると,強伸度の低下なく,塩基性染料の染着性が著しく増大することが認められた。
  • 渡辺 治昭, 加藤 嘉則, 西岡 篤夫
    1962 年 65 巻 2 号 p. 270-273
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    核磁気共鳴と赤外線吸収との二方法によって,ポリメチルメタクリレートの立体規則度を定量した結果,次のことがわかった。
    1)二方法によって算出した重合体の立体規則度(S%,I%,D%)は相互にかなりよく一致する。
    2)立体規則度の重合温度依存性より求めたsyndiotacticに付加する活性化エネルギーEsと,isotacticに付加する活性化エネルギーの差(Es-Ei)は二方法による場合ともかなりよく一致する。
    3)トルェン溶液中の遊離ラジカル触媒による重合体のS成分と,重合温度との問の実験式を導いた。
    4)重合温度およびS成分とf5,f10,f20との関係を実際に求めた。
  • 渡辺 治昭, 園 靖之助
    1962 年 65 巻 2 号 p. 273-275
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々の重合溶媒中でラジカル触媒によりメチルメタクリレートを30~160℃の重合温度範囲で重合した。重合体の立体規則度の定量を赤外線スペクトルによって行ない,立体規則度の温度依存性に対する溶媒の影響を検討した。重合が均一に,または不均一に進行する場合ともに,出来た重合体の立体規則度の相互間には次の式が成立すると見なされる。
    S/100=β2 I/100=(1-β)2 D/100=2β(1-β)
    isotacticとsyndiotacticに付加する活性化エネルギーの差-(Es-Ei)は重合溶媒に固有な二つの因子によって左右される。一つは透電定数であり,他の一つは重合体に対する親和性である。後者の方が前者よりも大ぎな影響を与える。
    60℃付近で得られる重合体の立体規則度は溶媒の種類にかかわらず,ほとんど同じであった。それ以上または以下の温度でつくられる重合体の立体規則度は溶媒によって多少異なる。しかし,これらの溶媒は特別にS%またはI%を大きくする効果はなかった。
  • 御船 昭
    1962 年 65 巻 2 号 p. 276-278
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1,4-シクロヘキサンジメチロールとジメチルテレフタレートからエステル交換,重合の2段階でポリエステルを合成し,これがポリエチレンテレフタレートと異なりチタン酸エステル触媒を用いた方がより高重合度のものが得られることを確かめた。またその重合体について溶液粘度を測定しk'がほぼ0.35~0.45になることを見出した。なおこの重合体は濃硫酸に溶解すると濃赤色に着色し,ポリエチレンテレフタレートとまったく異なる色を示す。なお本研究に先立って合成繊維“Kodel”を分析し,それがシクロヘキサンジメチロール(trans約3:cis約1)とテレフタル酸成分からなることを確認した。
  • 槇本 勉, 鶴田 禎二, 古川 淳二, 和才 剛
    1962 年 65 巻 2 号 p. 279-284
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究は結晶性ポリマーを得ることを目的とし,アクリル酸ブチルエステルの主として有機金属化合物による重合を試みたものである。モノマーとしてn-ブチル,イソブチル,sec-ブチル,tert-ブチルェステルと順次構造の変わるものを選び,触媒のタイプをラジカル重合触媒,均一性陰イオン重合触媒および不均一性陰イオン重合触媒と変化させ,各モノマーについて重合反応性および立体特異性重合のおこり易さを定性的に検討した。
    有機金属化合物からなる不均一性陰イオン重合触媒(たとえばストロンチウム-亜鉛テトラエチル)による低温重合において,結晶性ポリアクリル酸イソブチルェステル,sec-ブチルェステルおよびtert-ブチルェステルが得られた。このうち,結晶性ポリアクリル酸イソブチルェステルがえられたことは新しい事実である。さらに,ポリアクリル酸n-ブチルエステルにおいては,同じ重合条件で立体規則性ポリマーが得られ,エステルの形ではX線的に非晶性であったが,加水分解してポリアクリル酸に変えると結晶性ポリマーになった。
  • 府川 幸資, 高殿 純雄, 松井 基治, 大門 宏
    1962 年 65 巻 2 号 p. 284-288
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル(PVC)の塩素化機構を赤外吸収スペクトル(I.R.)測定より検討した。塩素化PVCはPVCを四塩化炭素懸濁液中で,その沸騰状態で,塩素を通すことにより作成した。塩化ビニル(VCl)-ジクロルエチレン(DCE)共重合物と,VCl-トリクロルエチレン(TCE)共重合物を比較試料として作成した。塩素化PVCとVCl-DCE共重合物のI.R.は非常によく似ている。塩素化PVCのI.R.にはポリ塩化ビニリデンのような吸収バンドは認められない。CCl伸縮振動領域では島内らの法則を適用してわかる構造を考察した。塩素化PVCはおもにポリ1,2-ジクロルエチレン型であり,PVCはおもにCH2基で塩素化されると結論できた。
  • 浅原 照三, 三橋 啓了
    1962 年 65 巻 2 号 p. 289-292
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    数種の脂肪酸ビニルエステルと塩化ビニルとの共重合体を調製し, その融点および平行板型プラストメーターによる軟化度試験から, ビニルエステルの内部可塑効果を検討した。これらの結果, 高級脂肪酸のビニルエステルほど軟化効果は大きく,また可塑化成分の同一含有wt%に対しては,フタル酸ジオクチルで外部可塑化したポリ塩化ビニルより共重合系の方が可塑効果が大きいこと,特に軟化度の温度依存性が著しく大きいことを明らかにした。これらの相違は,共重合系の場合は各ポリマー鎖がすべてビニルエステルを含み,これが長い側鎖を張り出してポリマー鎖間の結合を弛めるのに対し,外部可塑系では可塑剤がただ単にポリマー鎖の集団の間隙に入り込むだけで個々のポリマー鎖を可塑化するものではないためと考えられる。
  • 井波 章, 森本 和久
    1962 年 65 巻 2 号 p. 293
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 小田 良平, 馬場 隆造
    1962 年 65 巻 2 号 p. 294
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 田畑 恒夫, 藤島 勝美, 末広 吉生
    1962 年 65 巻 2 号 p. 295
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 1962 年 65 巻 2 号 p. A11-A20
    発行日: 1962/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    These abstracts are prepared for the benefit of our readers abroad to assist them, to form a general idea of the contents of the present issue, written in Japanese by the respective authors. Readers are recommended to refer to the tables, the figures, the formulae etc. in the original papers. Editor
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