第1報で報告したように, ブチルベンゼンの異性体を気相空気酸化すると,
n-および
sec-プチルベンゼンは安息香酸, 無水マレイン酸のほかに無水フタル酸を生成し,
tert-ブチルベンゼンは無水マレイン酸だけを生成する。この特異な反応の機構を調べ, つぎのことがわかった。
1.
n-ブチルベンゼンは大部分がまず側鎖のC
4が酸化されてγ-フェニル酪酸となり, つぎに閉環してテトラロンとなりさらに酸化されて無水フタル酸を生成する。すなわち, 第2報で報告した
n-プロピルベンゼンの気相空気酸化機構と同様で, 液相空気酸化や無触媒気相酸化機構と全く異る経路をとるものである。
2.
tert-ブチルベンゼンは, 反応中ブチル基とベンゼン核とに熱分解するため, 無水マレイン酸だけしか生成しない。
3. ブチルフェノン, ベンジルエチルケトンは空気酸化で無水フタル酸を生成しないが, ベンジルアセトン, γ-フェニル酪酸は無水フタル酸を生成する。
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