過酸化ベンゾイルの氷酢酸溶液を20℃において, 2537Åの紫外線により光分解し, 反応生成物としてコハク酸, ホモフタル酸, ホモイソフタル酸, ホモテレフタル酸, 安息香酸, かフェニル安息香酸,安息香酸フェニル, ビフェニル, ベンゼン, 炭酸ガスを得た。熱分解における生成物とのおもな相違はつぎのとおりである。 (1) 熱分解では全く生成しないコハク酸が多量得られた。 (2) 炭酸ガス, ベンゼンが少なく, 安息香酸が多い。 (3) ホモイソフタル酸の生成が認められた。 (4)ビフェニルが多く, 安息香酸フェニルが見出された。以上の結果からつぎの結論を得た。 (1) 過酸化ベンゾイルの分解によって生じるベンゾイルオキシ基とフェニル基は, 20℃においても熱分解の場合と同様に, 酢酸分子から水素原子を引き抜いて遊離基・CH
2COOHを生じる。 (2) 遊離基・CH
2COOHは, 熱分解においては全部が安息香酸, ベンゾイルオキシ基, 過酸化べンゾイルのいずれかと反応しつくすが, 低温ではこの反応の速度が減少し, 80%以上が2量体化する。 (3) 低温ではベンゾイルオキシ基のフェニル基と炭酸ガスへの分解が少ない。 (4) ホモフタル酸類の生成は遊離基・CH
2COOHによる核置換反応の可能性が大きいことを意味する。 (5) 低温においては遊離基の会合がおこる。
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