日本化學雜誌
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87 巻, 9 号
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  • 浜口 浩三
    1966 年 87 巻 9 号 p. 893-908,A51
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リゾチームの溶液中の諸性質を詳細に調べて,リゾチーム分子の高次構造とその安定化の機構を明らかにしようとした。著者らの用いた方法はリゾチームの種々の物理化学的性質の環境(溶媒,温度,pHなど)による変化を調べて,もとの構造を明らかにしようとするもので,旋光分散,紫外吸収スペクトル,滴定,粘度などの方法を主として用いた。赤外吸収や溶媒による旋光性の変化から,リゾチーム分子にはヘリックス,不規則コイルの他に,逆平行β構造の存在することを明らかにし,また,1次構造上のアミノ酸残基の分布と存在状態とからこの逆平行β構造の存在する場所を推定した。この推定は最近のX線解析の結果によって確かめられた。種々の溶媒中における旋光性の温度変化から,リゾチームの高次構造の安定化には疎水結合が重要な役割を果していることが明らかとなった。また,高次構造の安定化に役立つ解離基やS-S結合の役割についても調べた。また,紫外吸収スペクトルや分光光度滴定から,トリプトファンやチロシンなどの芳香族アミノ酸残基の存在状態を明らかにした。
  • 江上 不二夫
    1966 年 87 巻 9 号 p. 909-917,A51
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    タカジアスターゼから単離されたリボヌクレアーゼT1につき発見(1957)以来いままでに,その構造と機能についてなされた研究を総括して述べた。
    リボヌクレアーゼT1は分子量11000の単純タソパク質で,そのアミノ酸配列は完全に決定された(高橋,1965)。
    その酵素作用の発現にはジスルフィド結合で維持されている高次構造が必要である。分子中の遊離のアミノ基は活性にまったく関係がない。少なくとも1個のヒスチジン残基が活性に与っていると思われる。
    本酵素はグアニル酸結合に特異的なリボヌクレアーゼであるが,グアニンの6-オキソ基が酵素との特異的結合に必要であると考えられる。グアノシン2'-リソ酸は酵素分子と1:1の分子比で結合することが分光学的に認められたので,酵素分子には1個の活性中心があると考えられる。そこでこの酵素とグアノシン2'-リン酸との結合様式について作業仮説を提出した。
  • 佐々木 和夫, 泉 生一郎, 大橋 邦夫, 上村 琢也, 長浦 茂男
    1966 年 87 巻 9 号 p. 918-921,A51
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ水溶液中のホルムアルデヒドの陽極酸化電流が,共存する陰イオンによっていちじるしく影響されることを見いだした。この原因を検討するにあたって,共存する陰イオンが電極表面に吸着し,その有効表面積を滅少させているとの前提のもとに実験結果を整理すると満足すべき結果が得られる。8種の陰イオンについて酸化電流におよぼす影響を調べ,吸着の序列を示した。インピーダンス測定によって求めたヨウ素イオンの吸着率は,上記の方法によるものと比較的よい一致を示している。
  • 塩川 孝信, 佐藤 敏郎, 近藤 健次郎, 佐藤 光史
    1966 年 87 巻 9 号 p. 922-925,A51
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    既報で臭化エチル,プロムベンゼン,および二,三のヨウ化物につき,(n,2n)反応で生成される反跳ハロゲン原子が再結合する過程において,高エネルギー反応収率は(n,γ)反応の場合とまったく同等であることを示したが,引きつづきベンゼンの反跳臭素原子に対する化学的効果を検討したのち,臭化エチル,プロムベンゼンのべンゼン溶液において(n,γ)反応および(n, 2n)反応による高エネルギー反応収率の比較を行なった。その結果それぞれ単独の場合と同様ベンゼン溶液においても高エネルギー反応収率は(n,γ),(n,2n)両反応において反跳臭素原子に与えられる初期状態の相違には無関係に実験の範囲内において同等であることが明らかになった。一方熱エネルギー反応収率は明らかに(n,2n)反応の方が(n,γ)反応の場合より高いことが認められ,異種核反応による反跳臭素原子の初期状態の相違に起因するものと考えられる。また反跳原子が関与する高エネルギー反応に関して主として気相で取り扱ったEstrup,Wolfgangのモデルの適応性の検討を試みた。
  • 鈴木 哲身, 管 孝男
    1966 年 87 巻 9 号 p. 926-929,A52
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シアノコバルト(II)錯体は水溶液相で[Co(CN)5]3-:CO2=2:1の化学量論を満足して炭酸ガスと定量的に反応する。得られた錯体は徐々に水素を発生してK6[Co2(CN)10CO3]を生成する。この発生期の水素を用いてのブタジエンの水素化反応においてl-ブテン,trans-2-ブテンおよび cis-2-ブテンが生成しブタンは生成しないことが見いだされた。このような水素化選択性は見かけ上既報の水素ガス存在下シアノコバルト(II)錯体によるブタジエンの触媒的水素化と類似しているが,機構的には異なっていると思われる。ずなわち水素化はこの場合,炭酸の水素が関与すると考えられる。pHの変化依存性および炭酸水素カリウム,炭酸カリウムの添加の選択性への影響について簡単に検討した。
  • 中村 賢市郎, 菊池 真一
    1966 年 87 巻 9 号 p. 930-934,A52
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリケイ皮酸ビニルの感光性をその紫外吸収スペクトルから考察した。同時にケイ皮酸の光二量化と比較した。PVAフィルムに混合されたケイ皮酸の光照射により,ケイ皮酸の273mμの吸収帯は短波長266mμに移動し,その強度は減少することが認められた。短波長への移動はtrans-cis異性によるもので,吸収帯の消失は二量体生成にともなうα,β不飽和二重結合の消失に基づくものである。ポリケイ皮酸ビニルの場合も照射前277mμにある吸収は照射により消失したが,短波長移動は起らなかった。種々の増感剤を添加した樹脂に分光増感域の光を照射しても,樹脂固有の変化と同一であった。さらに吸収帯の消失を利用して,未変化ケイ皮酸基を比色定量して量子収率を求めたところ,量子収率φは濃度依存性を有し,ケイ皮酸基濃度C(初期濃度C0)とφ=ψexp(αC/C0)なる関係が見いだされた。ここでα,ψは定数である。初期量子収率としては0.34が得られた。吸収光量子数Iabs.φと量子収率φの積で表わされる量子感度3φ=Iabs.φについて論じ,それが樹脂の感光度や最小露光時間に関係することを述べた。
  • 清水 和夫
    1966 年 87 巻 9 号 p. 934-938,A52
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CdSe+CdCl2+CuCl2の共縮を行なったのち,窒素中で600℃-10分の熱処理をすることにより,銅を加えたセレン化カドミウム縮焼結膜を得た。銅の量は0.011および0.037wt%の2種類である。試料の一部は,さらに50mmHgのイオウ蒸気中で400℃-1時間の熱処理を行なった。銅の導入により,膜の抵抗は増加し,光電流-光強度特性にsuperlinearityが現れる。しかし,加えられ銅は膜の構成粒子の界面に集中する傾向を示す。窒素気流中で処理した試料では,この表面の銅はその表面に吸着された酸素を安定化していると考えられ,暗電流-電圧特性における高電圧側での電流の急激な増加は酵素のつくる表面のドナー準位が主役であるといえる。イオウ蒸気中でつづいて熱処理を行なうと,処理試料の熱刺激電流曲線の雰囲気依存性が,含有される銅の量が少ない間は現われ,多くなると消えることから,表面の銅はイオウと結びつくことが予想される。
  • 川泉 文男, 野村 浩康, 宮原 豊
    1966 年 87 巻 9 号 p. 939-940,A52
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    超音波干渉計を用いて,陰イオンを塩素,臭素,硝酸と変えたヘキサアンミンコバルト(II)錯体水溶液の音速度を5℃から35℃の温度領域で測定した。測定超音波周波数は1Mcである。錯塩水溶液の音速度はその濃度に対して直線関係にあった。溶液の圧縮率の値から無限希釈における微分比圧縮を求めると,いずれの場合も正の値となった。この値から,水溶液中のヘキサアンミンコパルト(III)錯体の水和数を決定した。各試料の水和数は温度の上昇とともにいちように減少した。またヘキサアンミンコバルト(III)錯イオンの水和数を求めた。
  • 渡辺 昌, 松本 陸朗, 後藤 廉平
    1966 年 87 巻 9 号 p. 941-947,A53
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一般におたがいに混じらない二液界面に電圧を印加すると界面張力が変化する。油-水界面でこの現象を適当な分極領域(+20~-20V)において起させるに必要な条件は,液体の電気伝導度が十分高いこと,および系が界面活性剤を含むことである。この条件は水相に塩化カリウムを,油相にイオン性界面活性剤を加えることによって満たされる。界面活性剤がアニオン性のときには,水相に正の分極電圧を加えたとき界面張力が減少し,カチオン性のときには負の分極電圧を加えたとき界面張力が滅少することが認められた。これをLlppmann-Helmholtzの式を使って考察すると,それぞれ界面の水相側が正または負に帯電していることになる。この電荷は界面の油相側におけるイオン性界面活性剤の吸着に対応した水相側の対イオンによるものであると思われる。
  • 大関 邦夫, 神原 富民
    1966 年 87 巻 9 号 p. 947-947,A53
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    LapidusとAmundsonはカラム内での物質移動を速度論的に取り扱い,物質収支に関する微分方程式をたてこれを解いた。その際用いられた数学的取り扱いは,ラプラス変換,ベジセル関数など複雑なものであり,得られた解もまた複雑であって実用的価値にとぼしかったのでvan Deemter,Zuidcrweg,Klinkenbergがこの解を正規分布にまるめ,実際のクロマト帯を説明できる形にした。しかしこの式の導出過程は必ずしも多くの人にゆきわたってはいない。数学的取り扱いの詳細については総説を参照されたい。著者らは基本微分方程式から出発して,van Deemtcr式にいたるきわめて簡単な導出法を見いだしたので報告する。
  • 武井 信典
    1966 年 87 巻 9 号 p. 949-953,A53
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ウラン(VI)の過塩素酸酸性溶液からのテノイルトリブルオルアセトン(HTTA),トリ-n-オクチルアミン(TOA)混合ベンゼン溶液による抽出を検討した。ウラン(VI)の分配比のHTTA,TOA過塩素酸塩のベンゼン相の濃度依存性,ならびに水素イオン濃度依存性はpH0.8付近を境にしてその趣を異にし,pHの高い領域では混合系による抽出反応は
    UO2(w)2++2HTTA(o)+TOA・HCl04(o)=UO2(TTA)2TOA・HClO4(o)+2H(w)+
    で示され,この反応の平衡定数はlogK=3.13である。この際,HTTAとTOAあるいはTOA過塩素酸塩の聞の反応は認められない。UO2(TTA)2・TOA・HCIO4ベンゼン溶液の紫外,可視吸収スペクトルはUO2(TTA)2ベンゼン溶液のそれに類似しているが,430,445,505mμ付近の各吸収はより明瞭である。pHの低い領域で反応させて得たベンゼン相の408mμ付近の吸収は水相のpHの低下にともない若干短波長側に移動する。
  • 本岡 達, 橋詰 源蔵, 小林 正光
    1966 年 87 巻 9 号 p. 953-959,A53
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    長鎖状の結晶性ポリリン酸塩―ポリリン酸ナトリウムII型とIII型(Maddrell塩),ポリリン酸カリウムおよびポリリン酸リチウムI型とII型―ならびに無定形ポリリン酸ナトリウムを磨砕し,その変化をX線回折,赤外吸収スペクトルおよび2次元ペーパークロマトグラフ分析により追跡した。その結果,結晶性で長鎖状のナトリウム,カリウムおよびリチウムポリリン酸塩は同様の変化を示す。すなわちこれらの塩は磨砕により無定形物質になるとともにP-O-P鎖の無差別な切断が起り鎖長のより短い分子となる。これらの変化は磨砕の初期においていちじるしい。
    また,比較的鎖長の短い無定形ポリリン酸ナトリウムでは,これらの変化は結晶性のものよりゆるやかに進むことが明らかとなった。
  • 小沢 竹二郎
    1966 年 87 巻 9 号 p. 959-962,A53
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    温泉地域,とくに酸性泉を湧出している地域には噴気活動の見られることが多く,その温度は水の沸点付近であって,噴気中には塩化水素は含まれていないが,水蒸気のほかに炭酸ガス,硫化水素,窒素および少量の亜硫酸ガスが含まれている。これらのガスを既報で分析すると完全であるが,多くの試料を分析するのには時間がかかるので簡便法として水以外のガス成分を簡単に定量する方法を検討した。噴気孔ガスを注射器中に採取し,常温まで冷却したのち採取体積を読み,ただちに水酸化カリウム溶液を加えて酸性ガスを反応吸収させ残留したガス(主として窒素)の体積を測定する。塩基性炭酸カドミウム懸濁液中に水酸化カリウム溶液を加えて混合し硫化水素を硫化カドミウムとして分離したのちヨウ素滴定法で定量する。亜硫酸ガスはロ液をヨウ素滴定法により定量する。炭酸ガスの体積は試料採取体積と残留ガス,硫化水素および亜硫酸ガスの体積との差として計算される。合成試料をつくり検討した結果,亜硫酸ガスの含有量が1%以下であれば十分実用に適することがわかった。温泉ガスの場合には通常亜硫酸ガスは共存しないので,塩基性炭酸カドミウム懸濁液による分離操作は不要であり,水酸化カリウム溶液を直接ヨウ素滴定法にょって硫化水素を定量する。これらの方法を現地で適用した結果,比較的再現性もよく,簡単で迅速で20~30分間ぐらいで一試料を定量することができた。
  • 後藤 秀弘, 柿田 八千代, 一瀬 典夫
    1966 年 87 巻 9 号 p. 962-964,A54
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガリウムおよびインジウムについて,各種酸性溶液からメチルイソプチルケトンによる抽出の基礎実験を行なった。
    ガリウム(II)またはインジウム(III)の10mgを含む塩酸溶液または他の酸を添加した混酸溶液にメチルイソブチルケトンを加えて抽出し,水溶液層中に残ったガリウムまたはイソジウムをそれぞれオキシン法で光度定量して抽出率を求めた。
    ガリウム(II)は塩酸溶液の濃度6~8Nで抽出を行なえば100%の抽出率が得られる。また塩酸に硝酸,硫醗または過塩素酸をおのおの適当の割合で添加した混酸を用いると,比較的塩酸の濃度が低くても高い抽出率が得られ,とくに過塩素酸の添加は抽出率を高める。
    イソジウム(II)は,塩酸の濃度が8N付近で抽出すれば95.6%の抽出率を示す。また硫酸を適当な割合で添加した混酸を用いると99.0%の抽出率を示すが,硝酸および過塩素酸の存在は,抽出率を低下させる傾向がある。
  • 藤沢 忠, 田中 信行
    1966 年 87 巻 9 号 p. 965-969,A54
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カドミウム-EDTA,亜鉛-EDTAおよび鉛-EDTA錯体は,酢酸塩緩衝溶液中で解離反応
    CdY2- + jH+ ↔ Cd2+ + HjY(4-j)- ( 1 )
    ZnY2- + jH+ ↔ Zn2+ + HjY(4-j)- ( 2 )
    PbY2- + jH+ ↔ Pb2+ + HjY(4-j)-( 3 )
    に基づく反応電流を示す。
    EDTAと多量のカルシウムイオンを含む酢酸塩緩衝溶液中で,ハロゲンイオンあるいはチオシアン酸イオソを加えて反応電流を測定し,Korytaの式と各錯体の安定度定数から(1),(2),(3)式の解離反応の速度定数を決定した。いずれも水素イオンの1次の項が支配的でそれぞれ,(1)1.1×103[H+]sec-1,(2)7×102[H+]sec-1,(3)3×102[H+]sec-1(25℃)を得た。他方,共存陰イオンの影響を補正して得たカドミウム-EDTA錯体の解離反応の速度定数とKorytaの式を用いて安定度定数を決定する方法を提案し,臭化カドミウムおよびヨウ化カドミウムの安定度定数の決定に適用し,逐次安定度定数としてそれぞれlogKcoBr=1.83,logKcuBr1=0.93およびlogKcdj=2.83,logKcdl2=1.47,logKcdl3=1.38を得た。
  • 夜久 富美子, 松島 祥夫
    1966 年 87 巻 9 号 p. 969-971,A54
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アニオン交換樹脂,Dowex1-X4(遊離塩基型)を用いる吸着カラムクロマトグラフィーにより,まず予備的に2種類の糖アルコール(グルシット,マンニット)の分離が可能であることを確かめ,ついでキシリット,アラピット,リピット,ガラクチット,グルシット,マンニット,マルチットの分離を行なった。少量の水に溶解した糖アルコール混合物をカラムに吸着させ,っついて水で溶出することにより;各糖アルコールを分離することができた。糖アルコールの検出,定量に,銅(II)錯体の青色を650mμで比色する方法の可能性について検討し,0.25~5mg/lの糖アルコール溶液の定量に用いられることを認めた。
  • 漆原 敏之, 佐藤 弘, 後藤 幹保
    1966 年 87 巻 9 号 p. 972-975,A54
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然プテリジン化合物の構造研究に質量スペクトルを利用しようと試み,その一端として,合成で得た簡単なルマジン誘導体の質量スペクトルを測定した。そのフラグメントの解析を行ないルマジン,1,3-ジメチルルマジン,6-メチルルマジン,7-メチルルマジンおよび6,7-ジメチルルマジンではピリミジン環のRN3C2Oから開裂がはじまり,つぎにC6Oが脱離することを推定し,また6-オキシルマジンではピリミジン環のHN8C2O脱離とともにピラジン環からC6Oの脱離が約50%の割合で起ることがわかった。これに対し,6-オキシ-7-メチルルマジンではピラジン環のCH3C7N8から開裂がはじまることを見いだした。
    各化合物の質量スペクトルを図示して,それらの開裂順序を推定し考察を加えた。
  • 小田 良平, 林 良之, 吉田 武四郎
    1966 年 87 巻 9 号 p. 975-977,A54
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    三フッ化ホウ素を触媒とするDMSOとエポキシドの反応によりケト-アルコールが生成することが知られている。DMSOと類似の反応性を有するアミンオキシドとエポキシドの反応においても同様な反応の起ることが考えられる。
    著者らはDMSOとスチレンオキシド(I)の反応を150℃で15時間行なった場合には触媒の三フッ化ホウ素が存在しなくてもかなりよい収率(46%)でケト-アルコールが得られることを見いだした。また,シクロヘキセンオキシドとDMSOの反応においてはケト-アルコールとともにシクロペンテン-l-アルデヒド(II)(収率3%)が生成することを見いだした。アミンオキシドとエポキシドの反応によりケトアルコールも得られたが,主生成物はエポキシド環の炭素-炭素結合が酸化開裂して生成したカルボニル化合物であった。たとえば,Iからフェナシルアルコール(4~11%),ベンズアルデヒド(4~47%)およびホルムアルデヒド(II),シクロヘキセンオキシドから2-オキシシクロヘキサノン(1~14%),II(3~17%)および微量のアジボアルデヒド,α-メチルスチレンオキシドからアセトフェノン(17%),およびn,1,2-ブチレンオキシドからプロピオンアルデヒド(10%)およびバラホルムアルデヒド(13%)が得られた。
  • 小田 良平, 林 良之, 吉田 武四郎
    1966 年 87 巻 9 号 p. 978-980,A55
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミンオキシドあるいはスルホキシドによるハロゲン化アルキルおよびアラルキルの酸化は選択的酸化法として注目すべきものである。この反応は中間体のアルコキシアンモニウム塩あるいはスルホニウム塩を塩基で分解してカルボニル化合物とするものである。著者らはこの反応においてエポキシドが塩基として非常に有効に働くことを見いだした。たとえば,エピクロルヒドリンの存在下,塩化ペンジルをピリジソ-N-オキシド(I)あるいはDMSOにより酸化してベンズアルデヒド(82~87%)と1,3-ジクロル-2-プロパノール(62~66%)を得た。塩化アルキルの酸化は困難だが,臭化アルキルは容易に酸化される。二塩化エチレン中で1とエポキシドの反応を行なった場合,クロルヒドリン(22~41%)が得られた。一置換エポキシドから生成したクロルヒドリソは大部分RCH(OH)-CH2Clの構造である。この事実からエポキシドはかさ高い中間体であるアンモニウム塩あるいはスルポニウム塩からハライドアニオソを引き抜いて生成するものと思われる。ハライドアニオン受容体としてのエポキシドとしてはエピクロルヒドリンがもっとも有効であった。
  • 御園生 晃, 長 哲郎, 山岸 敬道
    1966 年 87 巻 9 号 p. 980-985,A55
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α,β-不飽和アルデヒドたるアクロレインをp-トルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩(McKee塩)水溶液中およびp-トルエンスルホン酸(p-TSA)水溶液申で電解還元し,生成物として単量体の還元物,二量体,三量体以上のオリゴマー,ポリマーおよび水銀化合物を得た。二量体は単量体のβ-炭素間で結合したhead-head型が主であり,p-TSA水溶液中ではhead-head型のほか,水和二量体も生成した。MeKee塩水溶液中における二量体生成機構は,主として,電極界面で生成する単量体アニオンがほかの単量体のp-炭素へ求核的に付加する反応であり,一方p-TSA水溶液中におけるそれは,単量体のプロトン付加物(共役酸)を経て電極界面で生成するラジカルのカップリングによるものであることを認めた。
  • 植村 栄, 鬼頭 良造, 市規 克彦
    1966 年 87 巻 9 号 p. 986-990,A55
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸タリウム(III)による種々の不飽和化合物の酸化を酢酸溶媒中で行なった。出発物質と生成物をおよその反応のはやさの順につぎに列挙する。酢酸イソプロペニルからアセトンとアセトキシアセトン。酢酸ビニルからアセトアルデヒド,1,1,2-トリアセトキシエタンとアセトキシアセトアルデヒド。プロピレンから1,2-ジアセトキシプロパン。エチルピニルエーテルからアセトアルデヒド,1,1-ジエトキシ-2-アセトキシエタンと1-エトキシ-1,2-ジアセトキシエタン。ブタジエンから3,4-ジアセトキシ-l-ブテンと1-プテン-3,4-ジオールの酢酸モノエステル。酢酸アリルから1,2,3-トリアセトキシプロパン。塩化アリルから1-クロル-2,3-ジアセトキシプロパンと1-クロル-2,3-プロパンジオールの酢酸モノエステル。エチレンからアセトアルデヒドと1,2-ジアセトキシエタン。エタノール溶媒では酢酸ビニルから1,1-ジエトキシ-2-アセトキシエタンと1,1,2-トリエトキシエタン。エチルピニルエーテルから1,1-ジエトキシ-2-アセトキシエタンが得られた。エタノール溶媒では反応は遅かった。強酸を加えると反応ははやくなったが,生成物の組成およびその量に変化が見られた。ハ採ゲン置換オレフィンのω-プロムスチレン,アクリロニトリル,α,β-不飽和カルボニル化合物は反応しなかった。メチルピニルケトンでは酢酸付加反応が起るが,その際多量のタリウム塩により,2~2.5倍収率がよくなった。酸素置換オレフィンは少量のタリウム塩により短時間でカルボニル化合物へ変化した。酢酸ビニル,エチルピニルエーテルからアセトアルデヒドが,酢酸イソプロペニルからアセトンが生成した。
  • 花屋 馨
    1966 年 87 巻 9 号 p. 991-994,A55
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    環状ケトン類の還元の立休化学を研究する目的で,2-メチル-1-テトラロン(IV)の化学還元および接触還元を行ない,生成物の立体配置を決めるとともに,生成物の割合を調べた。IVは化学還元するとtrans-テトラロール(VI)を主生成物として与え,ラネーニッケル,パラジウム-炭,酸化白金触媒による接触還元では,いずれの触媒でも,2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタリソ(VIII)の生成をともなったが,ほぼcis-テトラロール(V)とVIの等量混合物を生成した。
    V,VIの立体配置は,2-メチル-3,4-ジヒドロナフタリン(VII)のハイドロボレーション-過酸化水素酸化によるVIの合成およびV,VIIの核磁気共鳴吸収スペクトルの検討から決定した。
    以上のことから,接触還元では2位の擬エカトリアルのメチル基は触媒への吸着に際してあまり立体障害にならず,メチル基側でも,その反対側でも触媒に吸着して水素化されたものと考えた。金属水素化物による還元ではProductd development controlの影響をうけて安定系のVIを多く生成し,Meerwein-Ponndorf還元およびナトリウムとエタノールによる還元でも安定系のVIを多く生成することがわかった。
  • 花屋 馨
    1966 年 87 巻 9 号 p. 995-999,A56
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    環状ケトン類の還元の立体化学的研究の一環として,3-フェニル-1-テトラロン(III)および3-メチル-1-テトラロン(IV)の接触還元と化学還元を行なった。III,IVは接触還元および金属水素化物で還元すると,それぞれ3-フェニル-1-テトラロール(VII)(mp100°~101.5℃),3-メチル-1-テトラロール(V)(mp96,5°~98℃)をおもに生成し,Meerwein-Ponndorfの還元では,アセトンを留去しないで還流したときIIからは,3-フェニル-1-テトラロール(V)(mp96°~98℃)のみを得,IVからは3-メチル-1-テトラロール(VII)(mp113°~115℃)を主生成物として得た。またIVをナトリウムとエタノールで還元したときはVIを過剰に生成した。
    V,VI,VIIおよびVIIIの赤外吸収によるOH伸縮振動スペクトルの検討,また,VI,VIIについては,N-プロムスクシンイミドによる酸化速度の比較およびアルミニウムイソプロピラートアセトンーイソプロピルアルコール溶液中での平衡異性化の検討から,V,VIIはcis体,VI,VIIはtrans体と決定し,III,IVの還元の立体化学を考察した。
    つまり,接触還元ではフェニル基またはメチル基側でより多く水素化されるため,また金属水素化物による還元では,Stcric apProach controlの影響をうけて反応が進むためにtrans体をおもに生成し,Meerwein-Ponndorfの還元では生成するアルコールのエピマーが比較的容易に平衡状態に達するため安定系のcis体を多く生成するものと推定した。またIIのナトリウムとエタノールによる還元でも安定系のcis体を多く生成することがわかった。
  • 小竹 宏志, 斎藤 智夫
    1966 年 87 巻 9 号 p. 999-1002,A56
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-ベンジルキシカルボニルグリシン無水物(mp122°~123℃)(IIa)はジオキサンやテトラヒドロフラン中,第三アミンたとえばトリエチルアミンの作用で転位反応を起し,N'-(N-ベンジルオキシカルボニルグリシル)N'-ペソジルオキシカルボニルグリシン(mp135℃)(収率85%)(IIIa)になることを見いだした。IIaのパラジウム黒による接触還元でグリシルグリシン(収率100%)(IVa)が得られるので,この反応はジペプチドの合成法でもある。本法をN-ベンジルオキシカルボニル-L-アラニン無水物(mpl33℃)(IIb),およびN-ベンジルオキシカルボニル-L-バリン無水物(mp103°~104℃)(IIc)に適用したところ予期どおり良好な収率(それぞれ74および75%)でL-アラニル-L-アラニン(IVb)およびL-バリル-L-バリン(IVc)が得られた。IVbおよびIVcは光学活性であり,この転位反応では不整炭素原子の立体配置は変わらない。
  • 藤田 安二, 滋野井 淳
    1966 年 87 巻 9 号 p. 1002-1004,A56
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 森本 行洋
    1966 年 87 巻 9 号 p. 1004-1005,A56
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1966 年 87 巻 9 号 p. A51-A56
    発行日: 1966/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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