環状ケトン類の還元の立体化学的研究の一環として,3-フェニル-1-テトラロン(III)および3-メチル-1-テトラロン(IV)の接触還元と化学還元を行なった。III,IVは接触還元および金属水素化物で還元すると,それぞれ3-フェニル-1-テトラロール(VII)(mp100°~101.5℃),3-メチル-1-テトラロール(V)(mp96,5°~98℃)をおもに生成し,Meerwein-Ponndorfの還元では,アセトンを留去しないで還流したときIIからは,3-フェニル-1-テトラロール(V)(mp96°~98℃)のみを得,IVからは3-メチル-1-テトラロール(VII)(mp113°~115℃)を主生成物として得た。またIVをナトリウムとエタノールで還元したときはVIを過剰に生成した。
V,VI,VIIおよびVIIIの赤外吸収によるOH伸縮振動スペクトルの検討,また,VI,VIIについては,N-プロムスクシンイミドによる酸化速度の比較およびアルミニウムイソプロピラートアセトンーイソプロピルアルコール溶液中での平衡異性化の検討から,V,VIIはcis体,VI,VIIはtrans体と決定し,III,IVの還元の立体化学を考察した。
つまり,接触還元ではフェニル基またはメチル基側でより多く水素化されるため,また金属水素化物による還元では,Stcric apProach controlの影響をうけて反応が進むためにtrans体をおもに生成し,Meerwein-Ponndorfの還元では生成するアルコールのエピマーが比較的容易に平衡状態に達するため安定系のcis体を多く生成するものと推定した。またIIのナトリウムとエタノールによる還元でも安定系のcis体を多く生成することがわかった。
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