トロポロンに種々の置換基を入れた場合に,金属イオンとの反応性がどのように変化し,分析的にどのような効果をもたらすかを知る目的で,まず鉄の1:1キレートについて光度法にしたがって検討した。反応性の変化は生成定数の変化から判断した。25.O°±0.1°Cでイオン強度を2.00としたとき,トロポロンおよびその5一位にクロル,プロム,ニトロ,イソプロピルあるいはスルホン酸基を入れた場合,酸解離定数(K0)としてそれぞれ3.8×10-7,2.4x10-6,2.9×10-6,2.3×10-3,1.4×10-7.2.1×10-5をあたえた。そのさい生成定数(K1)は3.2×1010,8.3×109,5.5×109,3.7×106,4.4×1010,5.2×108と変化し,pKaと10gk1との間には直線関係が見られた。トロポロンおよび5-イソプロピルトロポロンの塩基性度定数としては,それぞれ0.02および0.7(25.0°±0.1°C)を得た。吸収曲線は5-ニトロ置換体のほかは類似した形をとり,吸収極大波長は試薬およびキレートのいずれでも置換基を入れることによって長波長側に移動した。
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