活性炭坦持白金族触媒を用い,酢酸およびシクロヘキサン溶媒中で常圧,常温付近におけるアニリンの水素化について検討した。はじめにパラジウム-炭素触媒を用いて坦体活性炭について検討し,活性および選択性にほとんど影響のないことを認めた。触媒調製法を変えた場合には,それらのものにいくぶんの相違がみられた。調製法の違いによる活性相違の原因をさぐるため,坦体上のパラジウム表面積測定,X線回折を行ない,電子顕微鏡写真をとった。X線および電子顕微鏡観察の結果と活性を関連づけることはできなかったが,一酸化炭素吸着によって求めた表面積と活性の順はほぼ一致した。坦体上の金属を変えて行なった実験では,用いた条件下で白金がもっとも活性があり,ロジウム,パラジウムの順であった。シクロヘキシルアミンへの選択性は,ロジウム.パラジウム.白金の順であった。酢酸溶媒中ではどの金属を用いた場合も1N-フェニイルシクロヘキシルアミン(以後NPCと略す)を経て遂次的にジシクロヘキシルアミンが生成した。しかし,シクロヘキサン中で遊離アミンの水素化を行なった場合,パラジウムや白金上ではNPCの生成が認められたが,ロジウム上ではNPCがまったく生成せずに20%ものジシク群ヘキシルアミンが生成した。したがってロジウム上ではイミンとシクロヘキシルアミンの結合によってジシクロヘキシルアミンが生成すると考えられる。最後に酢酸溶媒中,酢酸アンモニウムの存在下においてNPCが水素化分解し,シクロヘキシルアミンを生成する反応経路について検討した。パラジウム,ロジウム上では分解が起るが,白金上ではまったくこの反応が起こらず,定量的にジシクロヘキシルァミンを生成した。
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