日本化學雜誌
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90 巻, 1 号
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  • 安永 達也, 辰本 伸英, 井上 洋, 原田 正治
    1969 年 90 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    代表的な緩和法としての超音波法および温度ジャンプ法を併用して,10-9~10-2秒の広い時間範囲にわたり液体および溶液中の動的平衡に関する速度論的研究を行なった。液体中の平衡については液体カルボン酸の例としてプロピオン酸の超音波吸収の濃度および温度変化の測定を行ない,吸収は分子間水素結合によるカルボキシル基間のキレート環の水素結合の一つが切れる反応によることを明らかにし,反応に関する諸量をえた。また強い分子内水素結合を形成するサリチル酸メチル,サリチルアルデヒドについても超音波吸収を見いだし,類似化合物についての結果などから吸収が分子内水素結合によることを明らかにするとともに,分子内水素結合形成反応に関する速度論的諸量を求めた。溶液内動的平衡としてはまず超音波法によってプロトン移行に基づく加水分解反応をリン酸三ナトリウム,メタホウ酸ナトリウムなどの無機電解質および生体高分子の各種構成アミノ酸について吸収または分散を測定しその機構を明らかにした。また多価カルボン酸についてはPH変化から酸解離反応によることを究明した。一方,高分子については温度ジャンプ法により色素の単量体=ニ量体反応,分子の集合体としてのミセルと色素間の平衡,超音波法により界面活性剤ミセルと対イオン間の動的平衡,高分子のヘリックス= コイル相転移反応に関して研究し,その機構を明らかにするとともに反応に関する諸量をえた。金属錯体形成反応については超音波法を用いてきわめてはやい2価金属イオンの1価の配位子による配位水交換反応.温度ジャンプ法によって比較的ゆっくりした鉄イオンと配位子との錯体形成反応についても速度論的研究を行なった。
  • 中根 良平
    1969 年 90 巻 1 号 p. 17-29
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    低温においてアルキルベンゼン,フッ化アルキル,フッ化ホウ素が反応したときに形成される着色した錯体は,Friedel-Grafts反応の中間体としてのσ錯体であると一般に信じられてきた。しかし著者らがその錯体の吸収,赤外,NMRスペクトルおよび熱学的同位体効果を測定したところ,その錯体はσ錯体でなく,三分子系の配向型τ錯体〓 であることが判明した。Friedel-Graftsアルキル化反応の中間体であるσ錯体は低温においても単離されなかった。えられた配向型π錯体からフッ化ホウ素を排気抽出すると低温においてアルキル化反応が進行する。低温におけるFricdd-αaftsアルキル化反応では配向型π錯体からσ錯体への転移が反応速度を決定するということが提示されている。室温において無極性溶媒と塩基性溶媒を用いた溶液内で,トルエンとベンゼンのFriedel--Craftsアルキル化反応がフッ化アルキルを用いて行なわれた。無極性溶媒では異常な選択性が認められ,ベンゼンはトルエンより活性であった。しかし異性体分布は塩基性溶媒において見いだされた異状体分布と余り変わらず,統計値に達しなかった。フッ化アルキルを用いるフッ化ホウ素触媒アルキル化反応の部分反応速度因子,OfとPfはつぎの順に変化することが見いだされた。エチル化反応(塩基性溶媒)イソプロピル化反応(塩基性溶媒)イソプロピル化反応(無極性溶媒)=エチル化反応(無極性溶媒)この結果からアルキル化反応における親電子試薬は無極性溶媒におけるアルキル・カルボニウムイオンか,塩基性溶媒における分極性のハロゲン化アルキル・金属ハロゲン化物付加錯体のいずれかであるということが示唆されている。これら親電子試薬の親電子性は次の順序に増大する。〓アルキルカルボニウムイオンが親電子試薬のとき,〓 といった配向型π錯体がまず形成される。分極性錯体が親電子試薬のときには・分極性錯体それ自身が電子供与体となる三分子系の配向型π錯体〓が室温におけるFriedel-Cra-ftsアルキル化反応の中間体として形成される。分子間の選択性(kT/kB)と分子内の選択性(k0-:km-:kp-)はともにσ錯体を形成するに要する活性化エネルギーによって決定される.要するに室温におけるFriedel-Grafts 反応において親電子試薬の親電子性が非常に強い場合でも,σ 錯体形成の過程が律速段階となる。
  • 古茂田 瞭三, 西 泰英, 鹿野 松太郎
    1969 年 90 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水酸化炭酸鉛の熱分解および水酸化炭酸鉛が熱分解したさい生ずる塩基性炭酸鉛2PbCO3・PbOの熱分解を,窒索気流中,二酸化炭素気流中,および減圧下で行ない,等温条件下における熱分解速度を熱重量分析法により求めた。粉末X線回折および熱重量分析により,220~300°C,1atmの二酸化炭素気流中においては,つぎのような反応が起こることがわかった。2 PbCO3 . Pb (OH) 2 (s) → 2 PbCO3 . PbO (s) + H2O (g)また,減圧下における2PbCO3・PbOの熱分解では,つぎのような過程を経て熱分解が進行する。2 PbCO3.PbO (s)→ 3 PbO (s) + 2 CO2 (g)なお,この反応の他に,減圧下,270°C以上では,つぎのような過程もわずかながら同時に起こっていることが認められた。2 PbCO3 . PbO (s)→ PbCO3 . 2 PbO (s) + CO2(g)PbCO3 . 2 PbO (s) → 3 PbO (s) + CO2 (g)水酸化炭酸鉛および2PbCO3・PbOの熱分解速度は,いずれも未反応核収縮モデルで説明され,分解率(F)と分解時間(t)の関係は次式で表わすことができた。I - (I - F) 1/3 = kt見かけの活性化エネルギーはそれぞれ29.8,41.1kcal/moIであった。また,2PbCO3・Pb(OH)2相と,2 PbCO3・PbO相の結晶構造の類似性について示唆した。.
  • 森山 登, 服部 健一, 篠田 耕三
    1969 年 90 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報*2において,温度の変化に基づく非イオン界面活性剤の親水性-親油性バランス(HLB)の変化とポリエチレンサスペンションの安定性との関連性について報告したが,本報では,ポリエチレンのかわりにカーボンブラックを用いたサスペンシヨンに対し,ポリエチレンサスペンションと同様,非イオン界面活性剤のHLBの変化と分散安定性との関連性を調べた。非イオン界面活性剤によるカーボンプラックサスペンシヨンの分散安定性は,温度の上昇にともない変化し,分散最適温度(分散性がもっとも良好になる温度)が存在する。分散最適温度は親水鎖長の相違により変化し,親水鎖長の短い場合は低い温度に.長い場合は高い温度に存在する。このことは,カーボンプラックの分散性もポリエチレンサスペンシヨンと同様,非イオン界面活性剤の親水性-親油性バランスが適当な場合にもっとも良好になることを示している。温度を上昇させるとポリエチレンサスペンションの分散性は,分散最適温度以上の温度で急激に低下するが,カーボンブラックの分散性の低下は比較的緩慢である。カーボンプラックの表面の酸性度を変化させると,それにともなって分散最適温度は変化する。表面の酸性度を増大さ壷ると分散最適温度は低下し,逆に表面酸性度を減少させると分散最適温度は上昇する。表面酸性度の大きいカーボンブラックに対しては,比較的親水性の強い界面活性剤,表面酸性度の小さいカーボンブラックに対しては比較的親水性の弱い界面活性剤で分散させることが好ましいことがわかる。
  • 川井 美登子, 今中 利信, 寺西 士一郎
    1969 年 90 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ホウ化パラジウム触媒を用いて,シンナムアルデヒドの炭素-炭素二重結合(C=C)とカルボニル基(C=O)の競争水素化を行ない,その反応機構を推定した。さらにこの触媒のC=C,C=Oに対する選択性を支配する条件を明らかにするために,酸,アルカリ,ならびに金属塩の添加効果,反応温度による影響,溶媒効果などについて検討した。その結果はつぎのようである。i)酸を添加するとC=Oの水素化率とC-OHの水素化分解率が上昇する。ii)反応温度が高くなるとC=Oの水素化がC=C のそれよりも起こりやすくなる。iii)亜鉛塩の添加ではC=C 水素化が約85%・起こり.3-フェニルプロピオンアルデヒドが生成し,コバルト塩の添加ではC=Oの水素化が約80%起こり.3-フユニルプロパノールと水素化分解によってプロピルベンゼンが生成する。iv)溶媒としてクロロホルムを使用した場合はC=Oの水素化率が上昇する。
  • 佐野 イスミ, 植野 泰夫
    1969 年 90 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸ナトリウム水溶液をネビュライザ_から噴き出して霧化し,これを容量約0.8m3のスモークチャンバーに導き・放置して老化させ,粒度や個数濃度が時間とともに変化するようすを観察した。粒度および個数濃度の測定法は塩化バリウムを含ませた寒天ゲル膜上に粒子を受けてそこに硫酸バリウムの白色のスポットを生じさせ,その大きさおよび個数を光学顕微鏡で読みとるものである。この方法では直径0.5μ 程度の粒子を検出することができたが,実際に試料霧の粒子は直径1μ 以上であった・粒度は溶液の濃度やネビュライザーの圧力などに種々影響されるが,生成直後の粒度を実験結果から外挿して求めると・溶液の濃度が増すにつれて大きくなり,またネピュライザーの圧力が増すにつれて小さくなることがわかった。老化の間に粒度分布も個数濃度も変化するが,この情況を実験的に追及し,その結果に基づいて粒子の凝結速度定数および器壁付着速度定数を決定した。前者については,Smoluchowskiの理論値と一致することが認められた.
  • 杉谷 嘉則, 粕谷 久, 長島 弘三, 藤原 鎮男
    1969 年 90 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    層状構造をもつリンカイウラン石Ca(UO3)2(PO4)2・ηH2Oの結晶水のNMRを天然の単結晶を用いて行ない,水分子中の二つの陽子を結ぶ軸は結晶主軸に平行に配列していることを見いだした。また上記の化学式においてカルシウムイナンをナトリウム・カルシウム・マグネシウム,バリウム,銅,その他のイオンで置換したもの,およびリンをヒ素で置換したものなど数種類の試料を合成し・これらについて-150~+100℃の温度範囲でNMR測定を行なった。スペクトルは約-55℃以下の温度では,広幅のもので,結晶水は完全に静止した状態にあることに対応しているが温度の上昇とともにnarrowingを示し,置換イオンが1価の場合は約一10 °Cで,2価の場合は約+100℃で1本の鋭い吸収線となる。結晶構造が正常リンカイウラン石型である場合,層間の金属イオンに水分子が水平方向から水和するモデルを想定し,二次モーメントを求めると,理論徳と実測値はよく一致することが判明した。
  • 田中 信行, 白樫 高史
    1969 年 90 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレンジアミンテトラアセタトマンガン酸(III)錯体(以下MnIIIEDTAと略す)は水溶液中では不安定でマンガン(II)に分解する。その分解反応諫度をポ-ラログラフ法を用いて追跡し,その初期速度を(i)~(v)式を考えることによって説明した。(i)式の平衡は他の反応と比較して非常にはやく成立すると考え,(iv)および(v)式のMnlvedtaOH-に定常状態法を適用して速度式を導き,各反応の速度定数を求めた。えられた結果はつぎのとおりである。μ=0.2(酢酸塩緩衝溶液),0・005%ゼラチン。
  • 森田 弥左衛門, 小暮 幸全
    1969 年 90 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Kjeldahl法をすべての有機i窒素化合物の窒素分析に適するように改善するため,もっとも重要な試料の分解における化学反応について実験を行ない,つぎの結果をえた。(i)熱濃硫酸で有機窒素化合物を分解した場合,硫酸の消費量(x)と試料の量(躍)の間には,次式が成立する。x/W=K1α=K1'式中のK1は与えられた化合物の組成から計算される定数で,またα は個々の化合物の分解反応様式に依存する因子である。このK1'を測定することによって分解の反応様式が推定でき,かつKjeldahi法のその化合物への適用の可否を論じうる。(ii)分解中における硫酸消費量(xt)とアンモニア生成量(yt)の相互関係によって,アンモニアの生成反応あるいは分解過程の反応を推定した。すなわちニトリルおよび酸アミド類は酸加水分解反応で,アミン,オキシム,ニトロ化合物,アゾ化合物および複素環化合物などは酸化還元反応で,それぞれアンモニアを生成する。またヒドラジン類は分解の初期に脱アミノ化反応をともなう。(iii)従来適用性が不明確であった芳香族ニトロ・アゾおよびヒドラジノ化合物については,それらがメチル基,アミノ基あるいは水酸基などのような電子供与基を有する場合にはKjeldahl法が適用できる。
  • 永井 外代士, 松田 十四夫
    1969 年 90 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    四酢酸鉛を酸化剤として用いる電位差滴定法をヒドロキシルアミンの定量に適用した。40~5Ovai%酢酸中の四酢酸鉛溶液を被滴定液として,ヒドロキシルアミン溶液を滴下する滴定法により,0.5~0.08Nの濃度範囲のヒドロキジルァミンを標準偏差パーセント±0.2%,誤差±1.0%以内で定量できることがわかった。本滴定法は従来の滴定法にくらぺ直接法であり,操作上の複雑さも少なく,ヒドロキシルアミンの標定法としても有用であろうと考えられる。さらに四酢酸鉛の酢酸溶液中での白金電極の電位平衡は,白金黒付白金電極によって促進されることが見いだされた。また,滴定条件の変化と滴定誤差との関係について推察を行なった。
  • 去来川 覚三, 川合 昌路, 植嶋 陸男, 伏綺 弥三郎
    1969 年 90 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゼン環にメトキシル基を有する一連のケトンのN-(ピリジンカルボニル)ヒドラゾン24種類を合成した。ピリジンカルボン酸ヒドラジドと芳香族ケトンとを混合したエタノール溶液を,酢酸の存在下で4~14時間還流すると,14.5~94.4%の収率でそれぞれ相当するヒドラゾンがえられた。ピリジンカルボン酸ヒドラジド類としてはピコリン酸ヒドラジド,ニコチン酸ヒドラジド,6-メチルニコチン酸ヒドラジドおよびイソニコチン酸ヒドラジドを使用し,芳香族ケトン類としては,o-,m-およびp-メトキシアセトフェノン,3,4-ジメトキシアセトフェノン・3.4.5-トリメトキシアセトフェノンおよびP-アニシルアセ,トンを使用した。N-(ピリジンカルボニル)ヒドラゾン類は紫外吸収スペクトルにおいて・一般に214~225mμ および267.3~326mμ の領域に二つの極大吸収をもつが.o-メトキシアセトフェノン.N-(ピリジンカルボニル)ヒドラゾン類は,272~280mμ の領域にただ一つの極大吸収のみを示した。
  • 迫田 直一, 小稲 則夫, 大北 耕三
    1969 年 90 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アシル基にベンゼン発色団を含むようなN-アシル-α-アミノ酸の旋光分散,および円二色性曲線をUV波長領域で測定した。フニニルプロピオニル-L-バリンとペンジルオキシカルボユル-L-バリンとは,芳香族吸収帯において円二色性極大もGatian効果も示さなかった・しかし・測定したトシノレ-L-アミノ酸の全部と,ベンゾイノレ-L-バリン,およびフニニルアセチル-L-バリンとは・260mμ 領域に弱いCattan効果とこれに対応する比較的強い多重円二色性極大とを示した。これらの結果から,N-アシル-α-アミノ酸のアシル基中のベンゼン発色団が・ペプチド基からメチレン基2個あるいはメチレン基1個とヘテロ原子1個とで隔てられているときは光学活性を示さないことを知った,
  • 戸井 康雄, 去来川 覚三, 伏崎 弥三郎
    1969 年 90 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸性触媒を含んだ氷酢酸中で・2-アミノ-5-クロルベンゾフェノンと脂肪族ケトン類CH3COCH2Rとの縮合反応を行なって,3-置換-2-メチル-4-フェニル-6-クロルキノリン類を60~96%の収率でえた。塩基性触媒の存在下で,2-アミノ-5-クロルペンゾフェノンと脂肪族ケトン類をエタノール溶液中で反応させると2-置換-4-フェニル-6-クロルキノリン類がえられた。生成物は三つの紫外吸収極大を有し,325~329,283~317および231~238・5mμ の領域に認められた。231~238.5mμ の領域に存在する極大吸収に対する分子吸光係数は48100~67000であった。キノリン環の2-位蓄よび3-位に存在する置換基プロトンに対する化学シフトをNMRスペクトルで測定した。また質量スペクトルでフラグメンテーションについて検討した。
  • 堀野 博
    1969 年 90 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-および5-フェニルトロポロンに臭素化,ニトロ化などの親電子置換反応を行ない,えられた生成物の構造を決定した。その結果,これらのフェニルトロポロン類は対応する位置にアルキル置換基を有するトロポロンに類似の反応性を示し,トロポロン核の反応から,フェニル基に特別な影響が認められないことが判明した。また置換反応でえられた生成物の二三の化学的性質を検討した。5,7-ジニトロ4-フェニルトロポロンおよび3,7-ジニトロ-5-フェニルトロボロンはアルコール類と反応し,既知のジニトロトロポロン類と同様に転位生成物を与えるが,3,7-ジニトロ体は他のジニトロ化合物と異なりアミン類と縮合生成物を与えないなどが確かめられた。
  • 池舘 和江, 鈴木 貞雄
    1969 年 90 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性炭坦持白金族触媒を用い,酢酸およびシクロヘキサン溶媒中で常圧,常温付近におけるアニリンの水素化について検討した。はじめにパラジウム-炭素触媒を用いて坦体活性炭について検討し,活性および選択性にほとんど影響のないことを認めた。触媒調製法を変えた場合には,それらのものにいくぶんの相違がみられた。調製法の違いによる活性相違の原因をさぐるため,坦体上のパラジウム表面積測定,X線回折を行ない,電子顕微鏡写真をとった。X線および電子顕微鏡観察の結果と活性を関連づけることはできなかったが,一酸化炭素吸着によって求めた表面積と活性の順はほぼ一致した。坦体上の金属を変えて行なった実験では,用いた条件下で白金がもっとも活性があり,ロジウム,パラジウムの順であった。シクロヘキシルアミンへの選択性は,ロジウム.パラジウム.白金の順であった。酢酸溶媒中ではどの金属を用いた場合も1N-フェニイルシクロヘキシルアミン(以後NPCと略す)を経て遂次的にジシクロヘキシルアミンが生成した。しかし,シクロヘキサン中で遊離アミンの水素化を行なった場合,パラジウムや白金上ではNPCの生成が認められたが,ロジウム上ではNPCがまったく生成せずに20%ものジシク群ヘキシルアミンが生成した。したがってロジウム上ではイミンとシクロヘキシルアミンの結合によってジシクロヘキシルアミンが生成すると考えられる。最後に酢酸溶媒中,酢酸アンモニウムの存在下においてNPCが水素化分解し,シクロヘキシルアミンを生成する反応経路について検討した。パラジウム,ロジウム上では分解が起るが,白金上ではまったくこの反応が起こらず,定量的にジシクロヘキシルァミンを生成した。
  • 志村 敏男, 斎藤 税, 小泉 操, 里中 初
    1969 年 90 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-(2-フリル)-2-メチルアクリル酸メチル,3-(2-フリル)アクリル酸メチルを電解酸化して,2.5-ジメトキシ-2.5,ジヒドロフラン誘導体を合成し.さらに硫酸酸性メタノール溶液中で加熱分解することにより3-(5-メトキシ-2-フリル)-2-メチルアクリル酸メチル・3-(5-メトキシ2-フリル)アクリル酸メチルを合成した。これらの3-(5-メトキシ-2-フリル)アクリル酸エステルおよびその誘導体は・アルカリ性溶液中では安定であるが酸性メタノール溶液中では非常に不安定で,容易にフラン環の開裂を起こし,それぞれ4-オキソ-2-ヘキセン-2,6-ジカルボン酸ジメチル,3-オキソ1-ペンテン-1,5-ジカルボン酸ジメチルをほとんど定量的に合成することができた。これらの事実から3-(2,5-ジメトキシ2,5-ジヒドロ-2-フリル)アクリル酸エステルおよびその誘導体が・酸性環開裂によって不飽和ジカルボン酸エステルを生成するとき,まずアルコールのI.4離脱によって3(5-メトキシ-2-フリル)アクリル酸エステルおよび誘導体を生成し,これらの化合物が酸に対して不安定のため容易に加水分解を起こして不飽和二塩基酸エステルを生成する分解機構を確認することができた。
  • 竹原 将博, 吉田 良之助
    1969 年 90 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    β-ハロゲノブロピオンアルデヒドァセタールとアセトニトリルを,液体アンモニテ中でアルカリ金属アミドを用いて縮合させ,γ-シアノブチルアルデヒドァセタールを合成し,ついで,リシン,N6,N6-ジメチルリシンおよびラミニンを合成した。また,対応するハロゲン置換アセタールとアセトニトリルとの縮合物から同様にして,β-またはγ-メチルリシンおよびβ-またはγ-メチル-α-アミノアジピン酸を合成した。
  • 鈴木 仁美, 中村 貴代美
    1969 年 90 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メシチレン・1・2・3・4-・1・2,3,5-および1,2,4,5-テトラメチルベンゼンおよびペンタメチルペンゼンから12種のsym-およびunsym-ポリメチルジフェニルメタンを合成した。これらの炭化氷素はギ酸溶液中でパラホルムアルデヒドと容易に縮合してsym-ポリメチルジフェニルメタンを与えるが・1,2・4・5-テトラメチルベンゼンのみは例外で,塩化亜鉛触媒の共存下ではじめて縮合を行ない・多量の高次縮合体をともなってオクタメチルジフェニルメタンを与える。unsym-ポリメチルジフェニルメタンは,塩化ポリメチルベンジルを過剰の炭化水素中でトリフルオル酢酸触媒により縮合させてえられるが,特定の構造をもつものに対しては・トランスペンジル化反応を防ぐために酢酸ベンジルを用い,ギ酸触媒で反応させるのが好ましい。ポリメチルジフェニルメタンのプロトン化学シフトおよび赤外吸収スペクトルを測定した。
  • 膳 昭之助, 安田 晶子, 橋本 治子, 武田 安代
    1969 年 90 巻 1 号 p. 110-111
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは,前報においてジアルデヒドとニトロ酢酸エステルとの環化反応から環状ジヒドロキシニトロカルボン酸エステル類が生成し,これを還元して環状アミノ酸が合成できる新合成法について報告した。ジアルデヒドとしてグルタルアルデヒド4〔1〕を用いフェニルニトロメタンとの反応を炭酸ナトリウムを加えたアルカリ性50%メタノール溶液で試みたところ,6-ヒドロキシ-2-(α-ニトロベンジル)テトラヒドロピラン(mpl23~123.5℃)(3a)がえられた。通常ジアルデヒド類にニトロメタンを反応させると,炭素数が1個増加する環の形成が行なわれるものて,この一連の研究がLichtenthalerにより報告されている.前報においても同様の環化反応が進行した。今回のように安定なヘミアセタール体が生成することは,Baerらのが非水酸基系溶媒中におけるフタルアルデヒドとニトロメタンとの反応の場合にのみ生成すると報告している。
  • 長谷部 英雄, 菊島 けさ恵
    1969 年 90 巻 1 号 p. 112-113
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきに著者らは酸化亜鉛に室温で水蒸気を吸着させたさいに起こる暗電導ならびに光電導性の増加について報告したが,今回はとくに水蒸気吸着温度の電導性に対する影響を調べたので報告する。
  • 左藤 志摩夫
    1969 年 90 巻 1 号 p. 113-114
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    既報1において2-フェニル-1-アジリンと酸塩化物との反応を検討し,環拡大を起こし対応するオキサゾール誘導体を与えることを報告し,その生成機構として中間体(I)を仮定し説明した。また,酸無水物との反応でも同じオキサゾル誘導体を与えるが,この場合は適当な条件を選ぶことにより中間体と考えられる7ジリンの澱寧ご重結合に酸無水物の付加した化合物(3)を単離することができた.
  • 羽田 宏, 松崎 秀夫, 田村 幹雄
    1969 年 90 巻 1 号 p. 115-116
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1969 年 90 巻 1 号 p. A1-A6
    発行日: 1969/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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