鳥取県三朝温泉ヒスイの湯において,水田の灌漑水,降雨ならびに雪が湧出量におよぼす影響について述べた。1)湧出量の増加が,降水量に比例すると仮定すると,水田の灌漑水はその増加の効果を示し,かつその効果を降雨に比較して量的推定が可能となる。2)降雨は湧出量に対して余効を呈し,降雨があってから,その後全然雨が降らない場合,湧出量が自然に減少するときの自然逓減指数は,α
0=0.214×2.30/月と推定される。すなわち12ヵ月後には,最初の月の降水量の0.3%の効果しか示さないであろう。3)水田の灌漑水による影響は,1955年ならびに1956年においては,6月=-165~289mm,7月=414~475mm,8月=316~400mm,9月=114~204mmの降水量に相当することが推定される。4)12月から翌年3月の間の降雪は,普通の降雨とは趣を異にするために影響が大きく,降雨に対して2.18
6倍の効果があるものと推定される。5)降水量,灌漑水ならびに雪の影響を加えた各月の推定効果降水量から求めた湧出量の推定値と,実測値とが平均誤差3.9%で,比較的よい一致を示した。6)雨の余効を考えに入れて, 降水量から湧出量を算出する際の比例定数は
k=2.70
3cc/min・mmと推定される。7)湧出量の増減にくらべて,Cl
-濃度がさほど減増しないのは,灌漑水が実質的に浸透して温泉水中に混入するよりも,地下水圧を大きくして温泉水がもれるのをふせぎそれによって温泉水圧も大になり,湧出量を増加するものと考えられる。
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