日本化學雜誌
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92 巻, 11 号
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  • 徳丸 克己
    1971 年 92 巻 11 号 p. 887-904
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    本総合論文は標題に示した反応を三つに大別して述べる。 1では遊離基の攻撃による過酸化物結合の開裂について,過酸化物と遊離基,求電子および求核試剤との二分子反応を根底から支配する因子を考察することにより検討し,過酸化物の開裂においては,攻撃求核試剤上の非共有電子対あるいは遊離基上の不対電子軌道と過酸化物結合の空位の反結合σ軌道との間の電荷移動相互作用が重要であることを指摘する。 2はフェニル,ビニルおよびアセチレニル遊離基のようなσ-遊離基と酸素との反応を述べ,酸素とベンゼンあるいは四塩化炭素との相対反応性がこれらの遊離基に対してはベンジルあるいはシクロヘキシル遊離基よりも低いことを遊離基の不対電子軌道の電気陰性度に基づいて検討する。またビニルGrignard試剤と酸素との反応を記し,反応中間体としてのビニル遊離基の関与示唆する。 3は酸素がひき起こす芳香核アシルオキシ化,すなわちアシルオキシル遊離基の芳香核への付加によるアシルオキシシクロヘキサジエニル遊離基とその酸素化よるフェニルエステルの生成を述べる。上の付加過程についてその可逆性を論じ,その速度定数およびエネルギー関係を推定する。
  • 黒谷 寿雄
    1971 年 92 巻 11 号 p. 905-918
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    N-C-C-N 骨格をもつ化合物としてエチレンジアミン,ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミン,および, 2, 2'-ビピリジンを選び,これにN-C-C-C-N骨格をもつトリメチレンジアミンを加えて,これらの配位した金属錯体の構造をX線法によって調べた。
    キレート環は平面状でなく,ねじれている(ただし, M-bipy錯体においてはほとんど平面状である)こと,そして, N-C-C-N 骨格は,一つを除いて,すべてゴーシュ形であることがわかった。また,キレート環のコンホーメーションに関連して,可能なる異性体の数と,現実に認められたものとの比較考察を試みた。
  • 田中 信行
    1971 年 92 巻 11 号 p. 919-937
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    1955年以来の当研究室における金属錯体の電極反応の研究の一部をまとめて報告した。電極反応に含まれる過程として,電極へのおよび電極からの物質移動および電極での電子移動過程のほかに,電極近傍における先行化学反応および後続化学反応がある。金属錯体が置換活性の場合はしばしば先行化学反応が重要な過程となる。先行化学反応の速度および機構とポーラログラフィー反応電流およびクロノポテンシオメトリーの遷移時間との関係を明らかにし,二三の金属錯体を例にとって配位子解離反応の速度定数の決定の方法および決定した結果を紹介した。電子移動過程に関しては,速度論的パラメーター,すなわち,標準速度定数,転移係数,標準電位などの決定方法,およびそれを亜鉛(II)イオンおよびEDTAならびに類似化合物を配位子とする金属錯体に適用した結果を紹介した。参照電極に依存しないパラメーターの決定方法ならびに電気二重層効果の補正に重点をおいて記述した。置換不活性錯体は還元をうけると置換不活性になる場合が多い。この場合は後続化学反応が重要である。置換不活性のクロム(III)錯体の電極反応機構を,とくに電極での電子移動過程によって生成したクロム(II)錯体の挙動の解明に重点をおいて説明した。後続化学反応の理論的取り扱いとクロム(III)錯体への適用を紹介した。
  • 中村 正志, 加納 久雄, 金塚 高次, 菖蒲 明己
    1971 年 92 巻 11 号 p. 938-941
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    25°Cで1mol/l硫酸水溶液中の白金電極触媒上における水素吸着をH+放電法を用いて研究し,以下の結果を得た。
    可逆水素電極が実現したとき,電極は水素単原子層によって被覆されており,この単原子層を構成する吸着水素には,電極電位を決定するものと,電極電位の決定に関与しないものとの2種の型が存在する。さらに,電極電位の決定に関与する吸着水素原子は常温において白金電極上でエチレンと反応してエタンを生成する。
    さらに,水素吸着過程における電気抵抗と電極電位の変化を22°Cで測定した結果,前に述べたように2種の型の原子状吸着水素からなると推定される単分子層が電極表面に存在することが確かめられた。また2種の吸着水素種の上記の性質の差異は白金に対する結合力の差異によるものと考えた。
    白金電極上の水素の吸着および脱着において,長時間にわたり電気抵抗の変化が観察されるが,これは,それぞれ金属内部への水素の緩漫な溶解および溶出によるものと解釈した。
  • 番 典二, 菅 宏, 関 集三
    1971 年 92 巻 11 号 p. 942-948
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    Calvet型微少熱量計を用いて硝酸アンモニウムおよびレゾルシンの準安定相に蒸気を接触させると準安定-安定相転移が誘起される現象を見いだした。
    安定相が成長するためには一定の温度で最少限度の蒸気圧が必要であり,硝酸アンモニウムII,IV相-水蒸気,硝酸アンモニウムIV相-エタノール蒸気およびレゾルシン-エタノール蒸気の各系について限界蒸気圧を定め,この温度依存性を調べた。
    サーモグラムをAvrami式によって解析すると,硝酸アンモニウムIV→III転移に対しては転移開始までに要する誘導期が測定温度の上昇とともに短くなり,またレゾルシンβ→α転移では転移速度がエタノールの蒸気圧に比例することがわかった。
  • 長谷川 圀彦
    1971 年 92 巻 11 号 p. 948-952
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    原子炉内放射線(とくに6Li(n, a)3H反応の反跳粒子と60Coϒ線による過塩素酸リチウム水和物(LiClO4・H2O, LiClO4・3H2O)中の過塩素酸イオンの放射線分解を調べ,それらの放射線分解機構について検討を行なった。反跳粒子による場合,水和水に対するそれぞれのイオンの収量はつぎのようである。水和水が増加すると塩素酸イオンの収量は極端に減少する。塩化物イオンの収量は増加し,次亜塩素酸イオンおよび亜塩素酸イオンの収量は,ほぼ一定な値である。一方,60Coϒ線照射による場合は,塩素酸イオンおよび塩化物イオンの収量は水和水の増加とともに減少し,亜塩素酸イオンのそれは増加する。このような結果から,LETの異なった放射線により,水分子の放射線分解で生成したラジカル(H,OH)濃度および分子生成物(H2O2)濃度がこの水和塩の放射線分解に大きく影響していると考えた。塩素酸イオンの収量が減少することから,固相内においてOHラジカルおよびH2O2分子により,ふたたびもとの親イオン(過塩素酸イオン)にもどるつぎのような逆反応が起こる可能性がある。
    ClO3-+OH→ClO30+OH-
    ClO3-+H2O2→ClO4-+H2O
  • 吉田 秀男, 加世田 勝義, 松本 三枝子, 河口 武夫, 長谷川 貞夫
    1971 年 92 巻 11 号 p. 953-956
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    酸化亜鉛に塩化リチウムを添加すると表面の酸性度は増加する。ZnO-LiClにメチルレッド(pKa=4.8)およびニュートラルレッド(pKa=6.8)を吸着させるといずれも約530mμに光感度の極大が認められる。したがって,光増感の機構はつぎの式で説明されよう。
    ただし,SA, IおよびIadsはそれぞれ表面酸性点,指示薬および吸着した指示薬を示す。真空中,室温において光電流(J)の減衰速度は一般にJ2に比例する。また,その速度は表面酸性点に指示薬を吸着すると小さくなることから,光伝導において表面酸性点は表面トラップとして働くことがわかる。
  • 田中 信行, 金児 紘征, 白樫 高史
    1971 年 92 巻 11 号 p. 957-961
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    90%エタノール-水混合溶媒中でトリス(エチレンジアミン)コバルト(III)イオンと塩化物イオンとの間の会合定数を吸光度法で決定した。錯陽イオンと過塩素酸イオンとの間のイオン会合を避けるために,トリス(エチレンジアミン)コバルト(III)塩化物と塩化ナトリウムのみを溶質として含む溶液中で測定を行なった。イオン強度原理を仮定して,測定値から会合定数とイオン強度を同時に決定した。この方法により,過塩素酸ナトリウムでイオン強度を調整することなく濃度会合定数と熱力学的会合定数を求めることができた。この方法を適用して,90%エタノール-水混合溶媒中におけるトリス(エチレンジアミン)コパルト(III)イオンと塩化物イオンの熱力学的会合定数を求め, 1.0×104l⁄mol(25°C)の値を得た。
  • 藤沢 忠, 田中 信行
    1971 年 92 巻 11 号 p. 962-966
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    カドミウムおよぴ鉛のtrans-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)錯体は,酢酸塩緩衝溶液中において解離反応(j=0, 1,…, n, j'=0, 1, …, n', M: Cd, Pb, cydta4-: CyDTA の4価の陰イオン), dtpa5-: DTPA の5価のに基づく反応電流を示す.全反応速度定数kおよびk'は,一般にで表わされる.
    CyDATまたはDTPAと多量のカルシウムイオンを含む酢酸塩緩衝溶液中で,塩化物イオンを加えて反応電流を測定し,Korytaの式と各錯体の安定度定数値から(1)および(2)式の解離反応の速度定数を決定した.いずれも測定したpH範囲においては(3)式中の水素イオンの一次の項が支配的で,25°Cにおけるカドミウムおよび鉛-CyDTA錯体のkの値はそれぞれ3.7[H+]sec-1およぴ0.4[H+]sec-1であり,カドミウムおよび鉛-DTPA錯体のk'の値は,それぞれ 2.5×10[H+]sec-1および 2.9×102[H+]sec-1であった.
  • 村井 良吉, 関根 達也, 井口 昌亮
    1971 年 92 巻 11 号 p. 967-973
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    1mol/l過塩素酸ナトリウム水溶液中のコバルト(II)をアセチルアセトン(AA),ペンゾイルアセトン(BZA),トリフルオルアセチルアセトン(TFA),ペンゾイルトリフルオルアセトン(BFA)およびヘキサフルオルアセチルアセトン(HFA)錯体として四塩化炭素またはトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)を含む四塩化炭素に抽出するさいの平衡を25°Cで測定した。
    まずキレート剤初濃度が約0.1mol/1のときのコパルトの分配比と水素イオン濃度の関係を放射性をトレーサー法で測定し,これから分配比と水相中のキレート陰イオン濃度の関係をプロットして図式的に解析し,水相内のキレート錯体の安定度と無荷電錯体の分配定数を定めた。また四塩化炭素相中のTOPO濃度とキレート抽出の増大の関係から, TOPO付加錯体の安定度定数を求めた。その結果,水相内にはBZAの系では第三次錯体までが,他の系では第二次錯体までが生成し,そのうちの第二次錯体が有機相に分配することで抽出曲線をよく説明できた。またAAおよびBZA錯体は第一次の,他の3種のキレート錯体は第一次と第二次のTOPO付加錯体を生成することが結論された。さらに得られた錯体の安定度定数および二相間分配定数と配位子の性質との関係について考察を行なった。
  • 安田 研爾
    1971 年 92 巻 11 号 p. 974-978
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    フェノール類を3-メチルベンゾチアゾリノンヒドラゾンと酸化剤の存在下に反応させて,生成した有色誘導体を薄層クロマトグラフィーの試料とする方法を検討した。この方法: 1)他の誘導体合成法にくらべて反応副生物の数が少なく,単純なクロマトグラムが得られる, 2)異性体の相互分離が良好である, 3)検出感度も高く,しかもp-置換フェノールも同時に検出できる,などの特徴をもつことが認められた。
    p-置換フェノールからの誘導体のRf値は他の異性体からのものにくらべて小さく,色も一般に深いことが認められた。これは,誘導体の若干を単離し,その構造について検討した結果,この誘導体がシリカゲル上で錯体を形成することによる,と推定した。
  • 上田 俊三, 藤原 菊男, 宮川 博雄, 山本 善一
    1971 年 92 巻 11 号 p. 979-982
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    微量の鉛をトリウムの水酸化物を捕集剤として共沈分離し,ポーラログラフ法により定量する方法を検討した。鉛に対する水酸化トリウムの共沈能力は非常にすぐれており,鉛の完全な捕集が可能である。
    すなわち,鉛20-500μgを含む50-2000mlの溶液にトリウム25mgを加え,塩化アンモニウムとアンモニア水を加え, pHを10.5に調節して水酸化トリウムを沈殿させて鉛を捕集する。この沈殿を60°Cに加熱,1時間放冷したのちロ過分離し,濃塩酸12.5mlに溶解し,0.05%ゼラチン溶液0.5mlを加え,全容を25mlに水で希釈する。これに窒素ガスを通して溶存酸素を除去したのちポーラログラムをとる。
    本法によれば微量の鉛を5%以内の誤差で定量することができ,アルミニウム,マンガン(II),ニッケル,亜鉛,ヒ素(V)など19種のイオンがそれぞれ10mg共存しても妨害しない。また,多量の銅と共存する微量の鉛の定量を試みたところ,満足すべき結果が得られた。
  • 菅家 惇, 林 康久, 熊丸 尚宏, 山本 勇麓
    1971 年 92 巻 11 号 p. 983-986
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ジチゾンは比色法において多年にわたり利用されてきており,その反応性や金属錯体の抽出挙動については数多くの知識の集積がある。また,有色の錯体を生成するので試薬量の過不足の判別がきわめて容易であるなどの有利な特徴を具えている。著者らはこのような点に着目して,カドミウム,亜鉛,鉛,銅の原子吸光分析の感度向上の手段として,ジチゾン抽出による濃縮法を併用する方法を検討した。その結果,抽出溶媒として抽出能,ジチゾンの安定性,バーナーでの燃焼状態のいずれも良好なニトロベンゼンを用いることにより,これら4元素の簡便なppb程度の徴量分析法を確立できた。方法の概略はつぎのとおりである。検水50~100mlを分液漏斗にとり,これに酢酸塩緩衝液(pH 5.3) 5mlを加える。ついで,この溶液に0.03%ジチゾン-ニトロベンゼン溶液25mlを加えて抽出する。この抽出液を装置の最適条件のもとで原子吸光分析に供試して逐時4元素の定量を行なう。
  • 小野 葵
    1971 年 92 巻 11 号 p. 986-990
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    多くの置換芳香族化合物をガスクロマトグラフィーの固定相液体に使用して,テトラメチルベンゼン,トリメチルベンゼンの異性体およびモノアルキルベンゼンに対する分離傾向を研究した。 118°Cにおいて1, 2, 4, 5-テトラメチルベンゼンを標準とする分離因子(Jonesらの)を求めると,分離因子とJafféのσpとの間に, 1, 2, 4, 5-テトラメチルベンゼンと1, 2, 3, 5-テトラメチルベンゼンの分離についてHammett法則に似た関係が成立し,またトルエンを基準として相対保持時間を求めKargerのσcを用いるとトリメチルベンゼン異性体の分離にはHammett法則が成立し,さらにJafféのσを用いると,トリメチルベンゼン異性体, 1, 2, 4, 5-テトラメチルベンゼン,および1, 2, 3, 5-テトラメチルベンゼンの分離にはHammett法則が成立する。
  • 佐分 義正, 善本 知孝, 南 享二
    1971 年 92 巻 11 号 p. 990-994
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    α-フェノキシプロピオフェノン〔1〕,α-フェノキシ-α-フェニルアセトン〔2〕およびα-フェノキシ-α'-フェニルアセトン〔3〕の光分解反応を調べた。
    ケトエーテル類は,ベンゼンあるいは2-プロパノールいずれの溶媒中でも分解反応が進行した。しかし, 2-プロパノール中の方が分解が顕著であった。
    どのケトエーテル類も,分解生成物中にかなりの収量でフェノールが得られたことから,カルボニル基のβ-位のエーテル結合での開裂反応が起こっていることが明らかとなった。
    しかし,相当ケトンの収量は全般的に悪く,ケトエーテル〔2〕におけるベンズアルデヒド生成,ケトエーテル〔3〕におけるビベンジル, 1, 2-ジフェノキシエタンの生成から,カルボニル基のα-位の炭素-炭素結合での開裂反応もかなり起こっていることが認められた。
    さらに, 2-プロパノール中で分解が促進した原因を究明する目的で,溶媒効果,消光剤効果についても検討した。
  • 岡本 正義, 高橋 不二雄, 鈴木 周一
    1971 年 92 巻 11 号 p. 995-998
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    既報でイミダゾールとテトラシアンエチレン(TCNE)は,各種溶媒中で電荷移動錯体を形成することおよび錯体形成により導電率が増加することを報告した。本報では,この系の反応式(1)を確かめることを目的とし,電気化学的に検討した。
    イミダゾール-TCNE系は400, 417mμに吸収極大を示し, PCNP-の吸収極大と一致した。 NMRスペクトルでは, 6.58, 5.45ppmに化学シフトを示し,ペンタシアンプロペンのイミダゾール塩(ImH+PCNP-)のそれと一致した。このシグナルは電解還元とともに高磁場に移行し,イミダゾールの化学シフト(Ò=5.63, 5.07ppm)に近づく傾向を示した。イミダゾールカチオンは電解還元により(2)式に示すようにイミダゾールを生成すると推定した。
    またこの系は, ImH+PCNP-と同様-0.7V(vs. Ag-0.1N AgClO4)に還元電位を示した。
    以上の結果から,イミダゾール-TCNE系にはイミダゾールカチオンとPCNP-が存在すると推定した。
  • 古賀 城一, 伊原 靖二, 井倉 忠雄, 黒木 宣彦
    1971 年 92 巻 11 号 p. 999-1002
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    水中での芳香族アミノ酸とマンデル酸の相互作用を考察し,つぎのような結果を得た。
    水中の光学活性芳香族アミノ酸の溶解度はマンデル酸の存在でいちじるしく増加した。チロシン,トリプトファンについてはマンデル酸の光学異性体間の溶解効果に差は認められなかった。L-フェニルアラニン(L-Phe)についてもマンデル酸濃度が低い範囲ではマンデル酸の立体構造に関係なくその溶解度は増加したが, L-マンデル酸濃度が0.35mol/l, D-マンデル酸の場合は0.85mol/l以上でL-Pheとの複合体が沈殿し,溶解度の増加はなかった。 L-Pheの水溶液にDL-マンデル酸を加えるとL-マンデル酸を多く含んだ沈殿が析出した。 L-Phe:マンデル酸の混合比を変化しても,マンデル酸の分割率は一定で約70%であった。この複合体は元素分析の結果1:1の組成比であることがわかった。 L-PheとD-, L-マンデル酸のジアステレオマーの赤外吸収スペクトルは全波数領域で異なり,複合体形成の容易さは立体化学的にL-Phe-L-マンデル酸が有利であることを推定した。
  • 鈴木 仁美, 佐脇 幹夫, 野村 修三, 先本 礼次
    1971 年 92 巻 11 号 p. 1002-1005
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    フェノール類と水酸化アルカリを金属銅粉の共存下に四塩化炭素と反応させて対応するヒドロキシ安息香酸類の合成を試みた。 2-および4-クロルフェノール, 2, 5-ジクロルフェノール, 4-クロル-3-メチルフェノール, 6-クロル-2-メチルフェノール, 4-クロル-3, 5-ジメチルフェノールの6種の化合物からは対応するヒドロキシ安息香酸が比較的好収率(38~79%)で容易に得られるが,メチルフェノールのような反応性の高いフェノール類の場合には大部分樹脂状物質に変わり,逆に反応性の低いトリクロルフェノールの場合には通常の条件下でほとんど反応しなかった。また2, 4, 6-トリクロルフェノールや4-メチル-2, 6-ジクロルフェノールのように活性化位置の2-, 4-および6-位が置換基で占められている場合にはKolbe-Schmidt法の場合と同様にカルボキシル化反応がまったく起こらなかった。水酸化アルカリ-四塩化炭素法はKolbe-Schmidt法のように煩雑な条件を必要とせず,クロルフェノールから対応するヒドロキシ安息香酸が容易に得られる。
  • 古元 貞好
    1971 年 92 巻 11 号 p. 1005-1007
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    N,N'-二置換チオ尿素と塩化シアヌルとの反応について研究を行なった。置換基として第一級,第二級,第三級または脂環基をもつチオ尿素類3 molに,無水二塩化メチレン中,室温で1 molの塩化シアヌルを反応させると発熱をともなって生成物〔A〕が得られる。この生成物〔A〕を過剩の10%水酸化ナトリウム溶液で処理すると使用したチオ尿素類に対応するN,N'-二置換カルボジイミドが約70%の收率で得られた。カルボジイミドを分離したのちアルカリ溶液を塩酸酸性にするとトリチオシアヌル酸が約80%の收率で得られた。これらの反応中いずれの場合も使用したチオ尿素に対応するN,N'-二置換尿素類が少量生成した。
  • 速報
    小田 敏之
    1971 年 92 巻 11 号 p. 1025-1026
    発行日: 1971/11/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
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