日本化學雜誌
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87 巻, 12 号
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  • 小野木 重治
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1245-1260,A73
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のポリエチレン,ポリスチレソおよびポリプロピレンの分別物,未分別物および混合物の溶融状態における定常流特性および動的特性を広いせん断速度および周波数範囲にわたって測定し,レオロジー的性質におよぼす温度,分子量,分子量分布および混合の影響,定常流特性と動的特性との関係について研究した。多くの新しい結果および結論が得られたが,その主要なものをまとめるとつぎのとおりである。
    1)種々の温度において測定される高分子溶融物のレオロジー的性質のタイムスケール(定常流測定におけるせん断速度Dまたは動的測定における角周波数ω)依存性の曲線に対しては,時間一温度の重ね合わせが可能である。定常流粘度,動的粘性率プおよび剛性率0から得られる移動係数はすべて等しい。
    2)定常流における見かけの粘性率ηと動的粘性率ηを関係づけるいままでの理論および経験則の中では,Cox-Merzの経験則がもっともよく実験結果と合い,η,と複素粘性率の絶対値|η|とは,Dとωとを等価と考えるときよく一致する。このことから,ηaは純粋な粘性だけを表わさず,弾性項をも含んでいることが結論できる。Dが高いときこの弾性項は非庸に大きくな1る。
    3)低いωにおけるηは,分子量に大きく依存するが,ωが高くなるにつれて分子量の影響は少なくなり,分子量が臨界値Md(またはMe)より高いかぎり,ついには分子量とまったく無関係となる。これは,測定されたレオロジー的性質が流動領域,ゴム状領域および転移領域にまでまたがっているからである。このような事実および2)の結論を合わせ考えると,高分子溶融物および溶液の非ニュートン性または構造粘性は,分子間のからみ合いによる連続構造の破壊または高分子の崩壊のために起る現象ではなく,分子運動の型式がタイムスケールによって変化するために起るものと結論せざるを得ない。
    14)分子量がMcより低く,からみ合いによる構造がつくられないと考えられる低分子量物でも,高いωにおいて非ニュートン性を示す。すなわち,Mcは必ずしも非ニュートン性が始まる最低分子量を表わすものではない。非ニュートン性は,分子間のからみ合いだけでなく,分子内の因子によっても決定される。
    5)分子量の異なる2種の成分ふらなる混合物において,2成分の分子量差の小さいときには,余り高くない1)またはωの範囲内で,時聞一混合率(または重量牟均分子量)の重ね合わせが可能である。混合物の零せん断粘度η曲は,2成分の粘度および重量分率ωとつぎの簡単な式で関係づけられる。
    logηab1logη012logη02
    6)2成分の分子量差が大きいときには,単純な重ね合わせは不可能であるが,混合によるタイムスケールの変化と希釈効果を表わすと考えられる二つの移動係数aMおよびcMを考慮した重ね合わせが可能となる。分子量分布が異常でないかぎり,両移動係数の比は,任意の混合物および基準成分の定常流粘度の比に等しい。
    7)混合物の分子量分布が二様(bimodal)分布で・しかも高分子量成分の分子量が非常に高いときには,粘弾性の周波数依存性に異常性が現われる。この種の挙動は,緩和スペクトルが長時間側に異常に延びた2次的平坦部をもつことに対応している。ゴム状態に対応する網目構造よりゆるい構造が,分子間のからみ合いによって溶融物中につくられていると考えられる。
  • 野崎 一, 高谷 秀正, 野依 良治
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1261-1277,A73
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    カルベソ類は典型的な不安定体であり,新たな合成手段を提供する。反応性はスピン多重度,錯体形成などに強く支配される。カルベン反応の基礎的知見を蒐集,整理し,合成に利用することを目的とし,本研究を行なった。
    Bamfbrd-Stevens反応によりフェニルカルペンを発生させ,反応性,なかでも芳香族炭化水素との反応を調べた。フェニルカルベンはこの条件下では求電子的一重項としてふるまう。
    ジァゾ酢酸エチルから生じるカルボエトキシカルベンと小員環工一テルとの反応では一重項がエーテル酸素に配位したイリド体を仮定し,各種生成物が説明できることを示した。
    ジフェニルケテンの溶液内光分解では三重項の反応だけでなく,ジフェ二ルアセチル,ベシズヒドリルなどの遊離基と溶媒のそれとのラジカル対の反応が重要であることがわかった。
    ジフェニルジアゾメタンの分解は銅錨体によって促進されるが,このときカルペンのラジカル性は完全に消失し,求電子性がいちじるしく増すことがわかった。
    カルペノイドは反応の選択性が大で,合成的に有利である。1,5,9-シクロドデカトリエンおよび関連体に適用し,大員環体の合成を行なった経過について述べる。
  • 宇津木 弘, 前田 満雄
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1278-1284,A73
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電界脱着におよぼす表面拡散の影響を無限大に拡がる面を用い,tipzoneでの拡散定数Dとshankでの拡散定数Doが,(1)等しい陽合,(2)異る陽合,とについて理論的に取り扱った。前者ではk/D<107およびk/D>1012の場合(k:電界脱着の速度定数),後者では肝ゾ万画。5.0であるなら,k/D関係なくいずれ縄界脱勧皇律速段階となる。αがIに近いときまたはそれより小さいときには,k/D<107およびk/D>1012では電界脱着が律速となるが,その中間領域では表面拡散が律速となると考えられる。また電界の小さい場合に,電界脱着の測定ができなくなるのは,αのいかんにかかわらずk:が小となるためであろうことが認められた。表面拡散,電界脱着がともに測定されているセシウム,バリウム~タングステン系の実験結果をこれらの結果と比較検討した結果,これらは合理的な一致を示す傾向が確かめられた。
  • 宇津木 弘, 横山 寿孝, 前田 満雄, 諏訪 武
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1284-1289,A74
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    モリプデンゲッターおよびBAゲージを付した封じ切り型のF.E.M.を用い,(1)p=5×10-9,(2)p=2×10-9,(3)p=3×1010,(4)p=8×10-11Torrの真空度でタングステンの仕事関数φ,EE,M.像の経時変化を測定した。(1)はtubeを封じ切ったのち装置全体を室温にたもった場合,(4)はこの状態でさらにモリブデンを蒸着させた場合に得られた。(3),(4)では軟X線による残留電流を除去して真空度を求めた。いずれもφ,F・E・M・像は3~4時間では変化しないが(3)ではtip徐熱によるbourdary diffusionがF.E.M.像に認められ,かつ徐熱後φは変化する。しかし真空度のもっともよい(4)では認められない。F.E.M.像の経時変化はtip温度が常温である(1)では均一な汚染像が認められた。tip温度が液体空気である(2)では多数の粒状輝点像が認められ・これは加熱により均一像へと変化する。いずれも汚染時の加熱により仕事関数は増加する。これはα→β,virgin→αまたはβの吸着状態の転移を示すものと認められる。残存気体の主成分は一酸化炭素,窒素,酸素であろうと推定された。
  • 宇津木 弘, 諏訪 武, 横山 寿孝
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1289-1293,A74
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    112・100方位のタングステンtipのFieldEmissionMicroscope像を清浄な場合,前者につき塩化セシウム,後者につき残存気体を吸着させた場合とについて,および従来報告されている結果について比較検討した。各結晶面の配列は通常の110方位のタングステンの場合と同じであるからF.E.M.は吸着質の結晶面への選択性を検討するのに適当である。吸着後に得られた明暗反転像の出現条件からelectmpositiveなセシウム・塩化セシウムなどの吸着質は仕事関数の高い面,(110),(112)に,dectroegadvな吸着質(残存気体)は仕事関数の低い(100)周辺に選択的に吸着するであろうことを認めた。これらは表面原子配列に基づく電気的影響によるのであろうことを推論した。
  • 柏木 陸男
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1294-1298,A74
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    X線照射したアロキサン1水和物単結晶を調べつぎの結論を得た。
    (1)照射によって水薩が一つとれ・ラジカル-NH-CO-C(OH)-CO-NH-ができる。
    (2)ラジカルの姻子の主値は2.0021(g1),2.0042(g2),2.0060(g3)であり,水醗の水素の結合定数の主値は3.1G(A1H),-5.9G(Agii),-7.4G(Agiii)である。
    (3)13Cの結合騰からC-OHの炭素と酸素上の不樋子霰を計算した.<C-OHが平醐造をとると仮定し・<C-OHの電子離を考察して沼と水素の結合定数の主値の方向をつぎのように推定した。g1方向とが方向はラジカル平面睡直な方向,83方向はCOHの外角二等分線方向,4H方向はOH結合に平行な方向である
  • 柏木 陸男
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1298-1303,A74
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    X線照射したコハク酸アミド単結晶およびゴバク酸アミドーd4単結晶のESRの異方性を解析してつぎの結論を得た。
    (1)コハク酸アミドにα一炭素から水素が1個とれてラジカルH2NCOCH2CHCONH2ができる。
    (2)このラジカルのα一水素の結合定数の主値は一10.0G,-19.10,-31.9Gでα一炭素の2P.軌道の不対電子密度は0,90である。2個のβ一水素の結合定数の等方性項は31G,34Gである。
    (3)窒素の結合完数に軸対称で・その主値は5.3G,0.4G,0.2Gである・これは窒素の2Pπ軌道に0.10の不対電子が存在することを示す。この窒素上の不対電子はN-Hσ結合をスピン分極することによってアミド基の水素核と相互作用する。
  • 鈴木 祝寿, 宮崎 国弘
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1303-1308,A75
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グリニャール試薬によるカーボンブラック表颪の活性水素を測定するために,取り扱いが簡単で,かつ容易な測定装置を考察.試作するとどもに・二三の試料について測定を行なって従来の結果と比較検討した。この方法において,発生メタンガスの測定は従来の方法におけるような単なる容積増加ではなく,ガスクロマトグラフによる分離1定量を行なうような新たな方法を開発した。装置は・反応容器・前処理装置・ガスビュレット系の3部分からなる。通常ブラック試料0.2~1.09採取した反応フラスコ(内容約10ml)を前処理装置に接続し,110°Cの湯浴に浸して約1時間真空排気したのち,アルゴンガスを導入する。グリニャ_ル試薬(1~4m1)を注射器により孝勧・し・約5分間振動ミキサーによりふりまぜ反応させる.つぎに反応容器をガスビュ吟係に接続して・既腿(0.5~1.0ml)の一リウムを内騨として添力・混合させ,その一部をガスクロマトグラフにかけて,メタンとヘリウムの比率を測定し,全メタン量を計算する。このとき窒素などの検出も行ない,操作を確かめる。得られた結果はつぎのとおりである。空試験値はきわめて少なく安定している。ブラック試料を添加した場合の発生メタン中に,試料の種類および採取量に無関係な正のバイアスの存在が見いだされ・それを補正することにより再現性の高い安定した結果が得られる標準偏差率は約3%・検出限界は0.001m.eq/gである。本法により市販の数種のブラック試料に関して得られた結果は,既往の文献値に比較していくぶん低い値を示したが,従来の方法の検討,および本方法による測定の精度,再現性の点から考えて,従来得られている結果は過大であり,本方法による結果がむしろ確な数値を与える物と結論される。また本方法は,単にカーボンブラツクのみだけでなくて,広く表面活性水素量を測定するのにきわめて有効な方法である。
  • 柊 弓絃, 可知 祐次, 高田 利夫, 中西 典彦
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1308-1311,A75
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    炭酸カルシウムのアラゴナイトよりカルサイトへの相変態の機構を電子線回折法によって結晶学的に検討した。試料としては,人工的に塩化カルシウムと炭酸アンモニウムの溶液を,約100℃で反応させて長さ数μのアラゴナイト針状結晶を得た。また,この微結晶を450℃で30分加熱してカルサイト微粒子を得た。両者の電子回折図形から,変態の前後の方位関係は,[110]Arag.//[1210]cal,および,(001)Arag.//(0001)ca1.であることがわかった。変態の前後で結晶はともに単結晶の回折図形を示すことから,変態は少なくとも微結晶の中では単結晶から単結晶へと進行するものと考えられる。変態の前後に上記のような方位関係の存在することは,変態は(0OI)Arag.面を滑り面とする無拡散マルテンサイト型の変態であることを示唆する。この推定に基づき,変態の機構についての考察を試みた。
  • 戸田 孝道, 小菅 皓二, 可知 祐次
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1311-1314,A75
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    V204~V206系平衡状態図のうち,V~V204系は多くの研究者によって詳細に研究されているが,V204~V205系については,完全な平衡状態図は完成されていな炉。そこで著者らは,X線解析と示差熱分析とを用いて,V204~V205系状態図を決定した.その結果,V204~V205の中間に,V8O13,V307の二相が存在し,それぞれ710°,680℃の包晶温度を持つことを確認した。またV307,V205は非常に狭い固溶領域を持つことがわかった。さらにV6O13,V307,V205の比抵抗と帯磁率を測定して比較検討した。新しい相V307は,-200°~+200℃の温膵範囲で,常磁性を示し,-200°~0℃の温度範囲で・他の相より大きな比抵抗を持つことがわかった。V307がV205触媒作用に関与しているであろうことが示唆された。
  • 大杉 治郎, 水上 哲夫, 橘 忠交
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1315-1320,A75
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二硫化炭素,トルエンおよびn-ヘキサン溶液中でのアセトンおよびシクロヘキサノンのケトーエノール平衡に対する圧力効果を加圧状態で赤外吸収スペクトルを測定することにより検討した。
    ケト型およびエノール形の分子容の比較から,圧力の増加はエノール形に有利なことを推定しこの傾向を確かめた。すなわち,アセトンおよびシクβヘキサノンのケトーエノール平衡は圧力の増加とともにエノール形に移行する。
    アセトンおよびシクロヘキサノンのケトーエノール平衡におよぼす圧力効果は後者に対するものよりも前者に対するものの方が大きい。ケトーエノール平衡におよぼす溶媒効果についても検討した。
  • 松岡 温子, 佐藤 国芳, 増田 高広, 近藤 正春
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1320-1322,A75
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタノールに四塩化炭素,クロルベンゼン,p一ジクロルベンゼンなどの有機ハロゲン化合物を加えて,メタノールのγ線分解における水素の収率に対するこれら添加物の影響を速度論的に解析することによって,水素の先駆体としての溶媒和電子の収率G(e-solv)=2.0を求めた。またメタノールに硫酸を加えたときの螺の壊又率,およびハロゲン化合物を添加したときの麟イオンの生成収率から,メタノールの蘇分解においては水素を生成せず,溶質存在下では瀬により捕捉される溶辮口電子の存在を認め,かつ,その収率をG(e-solv)=0,6と求めた。
  • 清水 和夫
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1323-1326,A75
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CdSe+CdCl2+TINO3を10-5mmHgの真空中で共蒸着して得た膜を,窒素中で600°C-10分の熱処理を行ない,タリウム添加したセレン化カドミウム蒸着焼結膜を得た。タリウムは銅と違っていちように膜中に分布していると見られる。この膜の電流一電圧特性,光導電特性,熱刺戟電流を測定した結果,タリウム添加によって暗電流の増大と光感度の減少が観測された。これは,他の研究者が塩化カドミウムが共存しない膜について得た結果と異なる。ただし・各電圧における暗電流値は・印加電圧があまり高くない範囲で,タリウム量0.15~0.2wt%で極小になり,この極小が現われる濃度は他の研究者の結果と対応する。蒸着焼結膜に導入されたタリウムは1価と3価の両方の形をとり,高濃度では3価のタリウムが膜の特性を支配すると考えられる。タリウム添加によるいちじるしい伝導度の増加は,同時に多数のセレン空孔が発生することを予想させる。また,蒸着焼結膜における塩素の果たす役割を明らかにした。
  • 宗田 敏郎, 吉岡 甲子郎
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1326-1330,A76
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ク形パルス法によりデオキシリボ核酸溶液(波長260mμ)およびデオキシリボ核酸クリスタルバイオレット系(波長590mμ)の電気二色性を電場の強さの関数として研究した。さらに同じ系の電気複屈折もあわせて測定した。いずれの量も低電場では電場の強さの1乗に比例し高電場では飽和に近づく傾向を示した。デオキシリボ核酸一クリスタル・ミイオレット系の電気二色性は高分子と色素の当量比がほぼ10に等しいときに極大を経過した。二色性の符号は負であった。これはクリスタルバイオレットの分子面がデオキシリボ核酸の分子軸に対し直角方向に結合していることを示す。最後に複屈折の測定におよぼす二色性の影響を論じた。
  • 真鍋 和夫, 久保 輝一郎
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1331-1336,A76
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸カドミウム2水和物の熱分解の機構を,示差熱分析,熱テソビン,X線回折,質量分析,赤外分光分析およ炉化学分析などの方法で追跡した。結果はつぎのとおりである。
    2分子の結晶水の脱離は約60℃からはじまるが,脱水する前に融解する。脱水過程に申聞水和物の生成はなく一段脱水で無水物となる。
    無水物は,230℃以上の温度で1酸化カドミウムに分解するが,分解の過程に二つの中間化食物を経過する。二つの中間化合物はいずれも文献などにまったく記載のないX線回折図形を有し,化学分析により26Cd(CH3COO)2・CdOおよび2Cd(CH3・COO)2・CdOの組成をもつ新化合物と推定される。
  • 加藤 安彦, 平尾 一郎
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1336-1339,A76
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    既報に準じて,3-(5-ニトロ-2-フリル)-2-フェニルアクリル酸から5-[2-(5-ニトロ-2-フリル)-1-フェニルビニル]-1,3,4-オキサジアゾロン(1)を得た。1をアルキル化剤や活性ハロゲン化合物とともにナトリウムメトキシドーメタノール中で加熱して,3-置換5-[2-(5-ニトロ-2-フリル)-1-フェニルピニル]-1,3,4-オキサジアゾロン誘導体を得た。また1を,酸無水物と加熱すると3-アシル-5[2-(5-ニトロ-2-フリル)4-フェニルビニル]-1,3,4一オキサジアゾロン誘導体を生じた。既報にしたがい,1に37%ホルマリンおよび第ニアミソ類を,触媒としてのジメチルホルムアミド存在下に反応させて,3-アミノメチル置換5[2-(5-ニトロ-2-フリル)-1-フェニルピニル]-1,3,4-オキサジァゾロソ誘導体を得た。
  • 吉弘 芳郎, 橋本 二郎
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1339-1343,A76
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    糖類からフラン化合物を生成する反応についてはまだ不明の点が多い。果糖から5-オキシメチルフルフラール(以下HMFと略す)が生成しやすいことに着目し,果糖の酸性溶液を加熱して生成する物質を検索したところ,数種のケイ光物質の存在することを認め,これについてはすでに速報した。これらケイ光物質のうち,緑色ケイ光物質(以下GFSと略す)について,その薄層クロマトグラフィーにおけるRf値が果糖とHMFの間にあることから,当該ケイ光物質がHMFへの一つの中間体ではないかとの疑問をいだき,これとHMFとの関係を調べた。
    ケイ光エネルギーとGFSの量が一定の測定条件下で比例関係にあることを確かめ,これを利用して経時的にGFSの生成量を求めた。その結果,GFSの生成はHMFの生成と同様に反応の初期において,希酸を用いたときには酸量に比例するが,HMFの最大生成量にいたる時間はGFSのそれにくらべて短く,GFSが溶液中に存在してもHMFの量は急激に減少することが判明した。したがってこの点から考えるとGFSはHMFへの中間体の一つと考えることは妥当でないことが判明レた。
  • 蜷川 栄作, 安部 昭夫, 永森 弘之, 金子 良一, 竹本 正和槻, 斎木 義和
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1343-1346,A76
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    尿素とアセトアルデヒドを水溶媒中で塩基性で反応してモノおよびジエチロール尿素を生成する条件が見いだされ,それぞれ結晶として取りだされた。これらを種々のアルコールと混合し,強酸型イオン交換樹脂の酸型を加えると容易に反応して溶ける。反応が進行するとエチロール尿素アルキルエーテルを析出するが,沈殿の析出前または沈殿を溶解後にイオン交換樹脂を除き,ロ液を冷却しエーテルを沈殿する。沈殿は相応するアルコールから再結晶して純粋なメチル,エチル,プロピル,ブチル,アリルおよびシクロヘキシルーエーテルを得た。しかしモノエチロール尿素イソプロピルエーテルは単離が困難である。とくにシクロヘキシルエーテルは単離の途申で樹脂化物となりやすいので生成および再結晶までの全操作を窒素気流中で行なう必要があった。
    モノおよびジエチ繋一ル尿素ならびにそのエーテル類は室温で漸次変化するが,エーテル類は比較的安定である。エチロール尿素は水・メタノールに可溶であるがエーテル類は二三の有機溶媒に可溶となる。これらの多くは溶融前またはあとに分解し,加熱をつつけると多少粘くなりゲル化し,約290℃で固化する。
  • 庄野 達哉, 吉村 完, 小田 良平
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1346-1349,A77
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    trans-1,2-シクロプロパンジカルボン酸ジメチルエステルからグリニャール反応を経由して得られる2-(α-オキシイソプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチルエステルを脱水して2-イソプロペニルシクロプロパンカルボン酸メチルエステル(III)を合成した。つぎにIIIとヨウ化メチルマグネシウムとの反応でtrans-(2-イソプロペニルシクロプロピル)ジメチルカルビノール(IV)を71%の収率で得た。一方,cis-1,2-シクロプロパンジカルボン酸ジエチルエステルとヨウ化メチルマグネシウムとの反応ではラクトン,すなわち2-ケト,3-オキサ-ジメチルビジク導[3.1.O]ヘキサンが48%の収率で得られた。trans-1,2-シクロプロパンジカルボン酸クロリドと過剰のヨウ化メチルマグネシウムとの反応ではtrans-1,2-ビス(α-オキシイソプロピル)シクロプロパン(X),およびIV,ならびに2,2,4,4-テトラメチル3-オキサピシクロ[3.1.0]ヘキサンが得られた。Xを脱水すればIVあるいはtrans-1,2-ジイソプロペニルシクロプロパンが得られると期待されたが,実際にはα,α-ジメチルα1イソプロペニルテトラヒドロフランおよび2,6-ジメチル3-オキシヘプタ-1,5-ジエンが生成した。
  • 去来川 覚三, 川合 昌路, 吉田 淑則, 伏崎 弥三郎
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1349-1354,A77
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一連の2-メチル-5-エチルピペリジシ(I)誘導体に関する研究を行なうため,Iのシアンエチル化反応を行なった。Iから導かれるいくつかの新しい化合物は,Iのシアンエチル誘導体から合成された。アクリロニトリルにより1をシアンエチル化すると87%の収率でN-(β-シアンエチル)-2-メチル-5-エチルピペリジン(II)が得られた。IIを加水分解するとN-(β-カルバモイルエチル)-2-メチル-5-エチルピペリジンあるいはN-(β-カルボキシエチル)-2-メチル-5-エチルピペリジンとなり,数種の脂肪族アルコールを用いてiiをエステル化すると,相当するN-(β-アルコキシカルボニルエチル)-2-メチル-5-エチルピペリジンが得られた。IIから得られるこれらの化合物は,Iとアクリルアミド,アクリル酸あるいはアクリル酸エステル(メチルエステルあるいはエチルエステル)などとの付加反応生成物と一致した。IIとグリニャール試薬(CH3MgIあるいはC2H5MgI)との反応では,N-(β-チルカルボニルェチル)-2-メチル-ひエチルピペリジン(XII)ならびにN-(β-エチルカルボニルエチル)-2-メチル-5-エチルピペリジンが得られ,XIIはIとメチルピニルケトンとの付加反応生成物と同一物が得られた。ラネーコパルト触媒あるいは水素化アルミニウムリチウムによりIIを還元するとN-(γ-アミノプロピル)-2-メチル-5-エチルピペリジンが得られた。
  • 山本 育宏, 滝沢 武夫, 萩原 信衛
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1355-1359,A77
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シクロヘキシルイソシアニドやブェニルイソシアニドを三フッ化ホウ素エーテル付加物や塩化スズ(iv)などのカチオン重合触媒で処理すると白色ないしは淡黄色のポリマーが得られる。このポリマーは,赤外吸収スペクトル,NMR,化学反応性,およびモデル物質との比較から,ポリシップ塩基構造をもっていることがわかった。また,アニオンやラジカル重合触媒では,重合はほとんど起らない。一方,金属カルボニルやシクロペンタジエニル金属誘導体などの遷移金属錯体を触媒として用いた。いわゆる配位重合を検討した結果,コバルト,およびニッケル系の錯体が大きな触媒活性を有することが認められた。この際得られたポリマーの構造は,カチオン重合によって得られたポリマーと同一であった。
    なお,tert-ブチルイソシアニドやβ-ナフチルイソシアニドのように大きな置換基をもつイソニトリルは,カチオン重合,醗位重合のいずれもポリマーを与えなかった。
  • 福井 憲二, 中山 充, 松井 隆尚
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1359-1361,A77
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セザモール(i)およびそのギ酸エステル(vii)とベンぞいル酢酸エチルとのPechmann反応で4-フェニルエアピン(vi)を合成した。一方,2,4,5-トリオキシベンゾフェノン(ix)から中間体である6,7-ジアセトキシ-4-フェニルクマリン(x)を経て,6,7-ジオキシ-4-フェニルクマリン(xi)を得た。ついでxをメチシン化ぶすてviに誘導した。
  • 藤田 安二, 溝端 広治, 岩村 淳一
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1361-1363,A77
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シソ(Perilla nankinensis Decne)とエゴマ(P.frutescens Brit.)との雑種と考えられるものの精油をガスクロマトグラフィーにより再検討した。
    精油の収率生草の0.02~0.03%,油分はα-ピネン0.4~1.8%,β-ピネン0.0~0.9%,リモネン0.7~1.O%,p-シメン0.0~1.2%,3-オタタノール3.7~4.2%,1-オクテン-3-オール5~6,6%,β-ナギナテン(?)0.0~1.4%,2-アセチル-3-メチルフラン0.9~1.5%.リナール8.4~1.5%,リナリルアセテート0.0~3.2%,エルショルチアケトン7.5~20.9%,リナゾルセネシエート0.9~2.8%,未決定物質2.7~19.3%,ツワブキ酸6.1~8.8%,ゲラニオール0.0~2.8%,ナギナタケトン22.5~5.O%,セスキテルペンアルコール0,0~3.1%からなる。
    さらにこれらの成分の出現様式について若干の考察を行なった。
  • 菊池 一成
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1363-1364,A78
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 菊池 一成
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1364-1366,A78
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 犬飼 吉彦, 間瀬 孝一
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1366-1368,A78
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 丸山 和博, 村上 克也
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1368-1370,A78
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 竹中 章郎, 山崎 健一郎, 山本 孜, 古崎 昭雄, 仁田 勇
    1966 年 87 巻 12 号 p. 1370-1371,A78
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1966 年 87 巻 12 号 p. 1371a
    発行日: 1966年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1966 年 87 巻 12 号 p. 1371b
    発行日: 1966年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1966 年 87 巻 12 号 p. 1371c
    発行日: 1966年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1966 年 87 巻 12 号 p. 1371d
    発行日: 1966年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1966 年 87 巻 12 号 p. 1371e
    発行日: 1966年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1966 年 87 巻 12 号 p. A73-A78
    発行日: 1966/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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