シスーおよびトランスージニトロ・オキザラト・エチレンジアミン・コバルト(III)酸カリウム(K[Coenox(NO2)2]・H20)から4種の異なった配位子を含むつぎのアコおよびチオシアナト錯塩を合成した。1)α-ニトロ・オキザラト・アコ・エチレンジアミン・コバルト(III)([CoenH20oxNO2]),2)β-ニトロ・オキザラト・エチレンジアミン・コバルト(III)([CoenH200xNO2]),3)α-ニトロ・オキザラト・チオシアナト・エチレンジアミン・コバルト(III)酸カリウム(K[Coen ox NCSNO2]・H20)。このうち1)と2)は非電解質錯塩である。水溶液における吸収スペクトルの極大位置(γ1013 sec-1)は,1);59.8,85.5,121.0,2);59.8,89.0,123.5,3);59.5,90.4,94.3,122.0,126.1であり,この結果と1)と3)がシスージニトロ塩,2)がトランスージニトロ塩からそれぞれ誘導されることから,1)はニトロ基とアコ基にかんしてシス,2)はトランス型であろうと推定した。赤外吸収スペクトルの測定結果は配位したシコウ酸基とチオシアン基の吸収が明瞭に現われ,1)と2)の差異は1700~1600 cm -1と800cm-1付近に明瞭に現われる。アコ錯塩1),2)は希アルカリにとけてヒドロオクソ錯塩となり,酸性でふたたびアコ錯塩となる。この反応過程で2)は1)へ変わる。また1),2)は亜硝酸カリウムにより容易にジニトロ錯塩に変わるが,得られたものはシス型のみでほとんどトランス型はできない。したがってこの反応過程には,トランスからシスへの転移が存在するものと考えられる。
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