アクリルアミド・ゲルを支持体とするディスク泳動法によって180例の患者血清を泳動し,各分画の濃度百分率を自記濃度計によって測定し,健康人血清の結果と比較検討した。
1) 肝疾患のうち肝炎,肝硬変,ヘパトーマ,Banti氏症候群,Wilson氏病,hemochromatosis等の肝実質性障害では大多数でhaptoglobinに相当する分画が消失し,出現分画数が著しく減少していた。γ-globは多くの場合増加し,2峰性を示した。閉塞性黄疽,胆嚢炎では出現分画数の減少はなく,haptoglobinに相当する分画は濃い分画として明瞭に認められた。またprealb,alb,α
L,α
1'α
2',F
α2,およびβ
2'の減少があり,βγ,S
α2およびS
βは増加していた。Transferrinは急性肝炎の重症例,Banti氏症候群,Wilson氏病,hemochromatosisでは著しく減少していたが,他の場合は不定であった。
2) 腎疾患では出現分画数は正常血清と同様きわあて多く,haptoglobinは多くの場合明瞭な濃い分画として認められた。急性腎炎,ネフローゼ症候群では一般にγ-globの減少が認められた。またalbの減少が著明であり,βγ,S
α2およびS
βの増加が認められた。ネフローゼ症候群ではα
Lが増加し,transferrinの著増をみた。
3) 悪性腫瘍のうち胃癌,癌性腹膜炎では正常血清に類似の泳動像を示したもの,haptoglobinをはじめとする分画が消失し,出現分画数の減少したもの,あるいはhaptoglobinが明瞭な濃い分画として認められたもの等があり,一定の傾向は認められなかった。子宮癌,乳癌,頭頸部癌では多くの場合正常血清の泳動像に類似していた。白血病ではhaptoglobinの減少が明らかであった。また一般にalbの減少,βγ,S
α2およびS
βの増加があり,transferrinは胃癌,癌性腹膜炎で著しく減少していた。Postalb(σ分画)が高率に出現し高い値を示した。
4) 肝疾患,腎疾患,悪性腫瘍以外の疾患では泳動像および濃度百分率の変化は全般に著明でなかった。ただしリウマチおよび炎症性疾患では,しばしばhaptoglobinが濃い分画として認められた。
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