動物臨床医学
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22 巻, 2 号
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特別寄稿
原著
  • ― DRI-CHEMを用いた測定法と酵素法との比較 ―
    丹野 翔伍, 髙島 一昭, 山根 剛, 山根 義久
    2013 年 22 巻 2 号 p. 49-52
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    6カ月齢と11カ月齢の雑種猫が,人用に市販されている乾燥スルメイカを摂食した後に嘔吐したとの主訴で来院した。富士フィルムメディカル株式会社DRI-CHEM7000V(以下,DRI-CHEM)を用いた血液検査にて,2症例ともに血中クレアチニン濃度の著しい上昇が認められた。皮下輸液および制吐処置などの治療により,翌日にはクレアチニン濃度は正常に回復し,臨床症状も消失した。 後日,健常猫を用いて乾燥スルメイカの摂食試験を行った。その結果,前述の臨床例と同様に,嘔吐およびDRI-CHEMを用いた血液検査で血中クレアチニン濃度の上昇が認められた。しかし,同検体を酵素法で測定したところ血中クレアチニン濃度の上昇は認められなかった。したがって,猫が乾燥スルメイカを摂食した場合,DRI-CHEMでは偽高クレアチニン血症を生じることが判明した。
  • 荒井 延明, 中丸 大輔, 原 康, 多川 政弘
    2013 年 22 巻 2 号 p. 53-60
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    犬のアトピー性皮膚炎(Canine atopic dermatitis:CAD)の一般的な治療法としてステロイド療法があるが,痒みに対する効果は認められているものの,長期投与に依存することにより,その副作用も多く発生している。それに対して減感作療法(アレルゲン特異的免疫療法)は,WHO見解書においてアレルギーの自然治癒を促す唯一の治療法と位置づけられ,獣医療分野でも欧米ではCADの長期療法として最善の方法とされている。そこで減感作療法実施による臨床症状や薬物治療をスコア化した評価を検討し,治療前1カ月と治療後13カ月の比較で臨床症状とステロイド投与量の減少効果を検証した。ステロイド療法で維持していたCAD症例11頭に対して,減感作療法の導入を図ったところ,ステロイドの投与量を顕著に減らすことが可能であった。減感作療法に対して有効以上の評価を得た症例は11症例中9例(81.8%)であった。薬物スコアとステロイド投与量に関して治療の前後を比較するために,ウィルコクスン検定を行ったところ,ともに有意差がみられた(p < 0.05)。
症例報告
  • 井野 寛之
    2013 年 22 巻 2 号 p. 61-64
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    ウサギの骨は骨量が少なく猫などに比べ脆く骨折しやすい。そのためにウサギの骨癒合が犬猫に比べて遅いということはないが,インプラントの選択には十分な検討を要する。特に関節内骨折や粉砕骨折は,治療そのものが困難となるケースも少なくない。今回,我々はウサギの関節内骨折を含む大腿骨遠位端粉砕骨折に対し,創外固定,髄内ピン,キルシュナーワイヤーを利用した固定を行ったところ,良好に経過した。特に関節内骨折に対するキルシュナーワイヤーを利用した固定法は有益であった。
  • 桑原 岳, 桑原 和江, 桑原 光一
    2013 年 22 巻 2 号 p. 65-68
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    症例は日本猫,16歳,避妊雌で進行性の呼吸困難を主訴に来院した。一般身体検査では喉頭部にマスが触知された。一般的に,猫の喉頭部腫瘍の予後は悪いといわれている。その理由として,腫瘍特異的な治療法が確立されていないこと,また全喉頭切除術により深刻な合併症を伴い得ることが挙げられる。本症例では永久気管切開による対症療法を実施し,喉頭部の腫瘍に対して部分切除生検を行った。病理学的検査を実施した結果,咽頭喉頭腺癌と診断された。症例は順調に麻酔から覚醒し,手術3日目に退院した。術後,飼い主による主観的なQOLは改善されたようであったが,手術54日目に嚥下困難による食欲廃絶が認められ,その後に死亡した。死亡直前まで呼吸状態は良好であった。咽頭喉頭腺癌により重度の呼吸器症状を呈する猫では,低侵襲な部分切除生検と永久気管切開術を実施して気道を確保することが,動物のQOLを改善し,なおかつ飼い主の満足度を得るための選択肢のひとつとなり得ることが示された。
  • 福島 隆治, 小宮 みぎわ
    2013 年 22 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    僧帽弁閉鎖不全症の薬物治療をしていた11歳の柴犬が,心房細動を発症した。来院時の血液化学検査で,グルコース, アラニンアミノトランスフェラーゼ, アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ, 血中尿素窒素 , クレアチニンの上昇,カリウムの低下が確認された。また,沈鬱状態であり,食欲廃絶など重度な臨床症状を呈していた.塩酸エホニジピンによる薬物療法を併用したところ,翌日には除細動され,300日を経過した現在も良好な臨床経過が得られている。
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