本研究では年次の異なる衛星画像からテンサイ生育を把握し,その年次変動から,生育不良区域の要因を解析した.十勝地域鹿追町において,5~6月の積算降水量が多雨(2016年),少雨(2020年)の7月上旬の衛星画像を用いた.低地土2圃場を対象とし,テンサイ生育はNormalized Difference Vegetation Index(NDVI)で評価した.圃場Aでは両年のNDVIの間に1%水準で有意な正の相関関係が見られた.このことから,本圃場の生育不良区域は,両降雨条件がどちらも生育に悪影響を及ぼす土壌特性を持つと考えられ,既存文献等に基づき有効土層不足と判定した.圃場Bでは一部の区域において多雨年にNDVIが低くなり,その要因を排水不良と推定した.一方,その他区域では,圃場Aと同様に両年のNDVIの間に1%水準で有意な正の相関関係が見られ,生育不良区域を有効土層不足と判定した.判定結果を土壌断面調査,聴き取り調査,化学性分析等から検討した.その結果,各調査地点の土壌断面は全層で膨軟であり,土壌硬度が生育に及ぼす影響は低いと判断した.また,有効土層不足と判定された区域では作土直下より砂礫層が出現し,排水不良区域は聴き取り調査と符合した.一方,有効土層不足,排水不良区域の土壌化学性を他区域と比較した結果,生育に及ぼす影響は小さかった.以上のように衛星画像は栽培管理だけでなく,本論文のような年次変動解析によって排水対策の必要な箇所の推定などにも利用できる.