虹彩パターンは指紋や顔に比べて安全かつ高精度な認証が可能であることから生体認証要素として理想的であるが,一般に充分普及しているとはいえない.その原因として挙げられるのは,既存の虹彩認証システムが複雑な装置を用いることによる導入の難しさや,至近距離での入力画像の撮影を求めることによるユーザビリティの低さである.撮影された画像から個人の特徴を記述するには,正確な虹彩領域分離が不可欠である.しかし小型でシンプルな撮影装置を用いつつ撮影距離の制約を排除することを目標とすると,既存手法が前提とする瞳孔の絶対的明度が不安定となるために虹彩領域分離の困難さが問題となる.そこで本稿では,そのような条件でも安定な虹彩領域分離を可能にする手法を提案する.提案手法に代表的な特徴抽出ならびに照合手法を組み合わせて実施した評価実験から示されたのは,提案手法が従来対応困難な画像においても安定な虹彩領域分離を実現すること,そして既存手法に比べて全面的により優れた認証性能を有することである.また,新規に提案したノイズ除去手法を併用することで,虹彩領域の輪郭が曖昧な場合でも高精度な認証が可能となることも示されている.
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