歩行は人間の基本動作の1つであり,個人の特徴や感情を表現する動作としても捉えられる.近年,歩行から人間の感情を認識する研究は盛んになっている.特に,骨格データを用いた時空間グラフ畳み込みネットワーク(Spatial-Temporal Graph Convolutional Network: ST-GCN)による感情認識において,歩行ごとに関節間の関係性を考慮することにより,高い認識精度が報告されている. 一方で,人間の感情によって注目すべき歩行動作が異なるため,各関節点の重要度が異なる.そのため,本研究ではベースラインモデルであるST-GCNにグラフノード(関節点)方向とチャンネル方向にそれぞれAttention機構を導入した,Dual Attention時空間グラフ畳み込みネットワーク(ST-GCN DA) を新たに提案し,感情ごとに重要な関節点と特徴に自動的に注目させ,重要な関節点または特徴に大きな重みをかけ合わせることによって認識精度の向上を目指す.提案手法は,感情-歩行データセット(Emotion-gaits)を用いてその有効性を検証し,既存法より高精度であることを確認した. また,ノード方向のAttentionの重みにより,各関節点がどの程度各感情ラベルに寄与しているかを確認した.感情ラベルが幸せの場合,歩行は全体的に軽快な動きであり,特に下半身の動きが重要視されていることが確認された.感情ラベルが怒りの場合は歩幅が短く,全身が激しい動き,悲しい場合は前のめりの弱々しさなど,歩行に対するイメージや歩き方が顕著に反映されていることを提示した.
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