炎はコンピュータグラフィックス(CG)分野においてエフェクトとして多用される自然現象の1つである.しかし,その複雑性から燃焼過程を考慮しない単純なモデルが用いられることが多い.中でもこの現象を扱うために重要な“酸素との反応”はこれまでの研究ではほとんど考慮されていない.そのため,酸素供給で燃焼が激しくなる挙動や,不完全燃焼による温度のゆらぎなど炎が持つ独特な挙動を扱うことができない.そこで本論文では“酸素との反応”の概念とその過程に生じる化学的な現象をモデル化し,それらを用いた新しい炎のシミュレーション手法を提案する.提案手法では,炎を粒子法,酸素を格子法で独立にシミュレーションし, 2つのシミュレーション間で物理量をやりとりすることで,化学反応を考慮した燃焼を扱う.また,高速に並列計算ができるGPUで実装を行い,提案手法の有効性を検証した結果,空気中の酸素を含む燃焼過程を考慮した炎のシミュレーションを10~20fpsで実行できることを確認した.
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