本論文では,新任教員の授業の質の向上を目指すために,新任教員と経験者教員の行動を解析し,その違いを定量的に評価(点数化)することを目的とする.小学校・中学校・高等学校の新任教員は,初日から「先生」として教壇に立ち授業を行うが,授業力が十分に備わっていない状態である.新任教員の授業力を向上させるには,(1) 授業の客観的な振り返りを行い気づきを得ること,(2) 現場に近い環境で訓練を行うことが重要である.本論文では,(1) に着目する.新任教員が気づきを得るためには,経験者教員の授業との違いを客観的に振り返る必要がある.具体的には,模擬授業中の新任教員と経験者教員の行動パターンをSpatial Temporal Graph Convolutional Networksを用いて抽出し,それぞれの行動パターンデータセットを作成する.生成した行動パターンデータセットに基づいて,教員行動を定量的に評価する.実験として,新任・経験者教員の計44個の模擬授業データに対して,交差検証法により,模擬授業のスコア計算を行い評価した.結果として,新任・経験者教員にラベルづけしたデータに対して,スコアリングした結果,81.8%の分類精度が得られ,教員の授業行動を定量的に分析することができた.また,新任教員は「板書をする」動作を含むパターンが多く,経験者教員は「立って話す」動作と他の動作を組み合わせて授業を構成しているが分かり,新任教員が経験者教員の授業への違いについて気づきを得られる可能性があることを示した.
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