画像電子学会誌
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47 巻, 4 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
随想
追悼
報告
ビジュアルコンピューティング論文特集
論文
  • 藤澤 誠(正会員), 加藤 悠平, 三河 正彦
    2018 年 47 巻 4 号 p. 363-371
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    本論文では海岸地形の3次元データ自動生成手法を提案する.地形生成はコンピュータグラフィックス分野で盛んに研究されているトピックのひとつであり,本論文ではその中で海岸地形の生成に注目する.海岸地形生成に大きな影響を与えるのが海からの波,つまり水の流れである.従来の地形生成手法では水の流れを簡易的に計算したものが多く,水の流れが複雑な海岸地形に当てはめることは難しかった.また,水の流れを正確に計算したものであっても,大量の水が存在する海に関して計算するためには膨大な計算コストが必要であった.それに対して本論文では,高速化された粒子法を用いて水の流れをシミュレーションし,数理地形学に基づいた浸食式を3次元空間での地形生成に拡張することで浸食の計算を行った.最終的に岩石海岸と砂浜海岸の形成について実験を行い,その有効性を確かめた.

  • 大川 順也, 中田 洋平(正会員)
    2018 年 47 巻 4 号 p. 372-381
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    本論文では,バスケットボールにおいて戦術理解に用いることを目的とした,選手・ボール位置情報の3次元可視化ツールを提案する.提案ツールでは,選手・ボール位置情報を3次元で可視化することで試合を再現する.また,再現した試合を,俯瞰視点のみならず,各選手視点から観察することができる.そのため,ユーザは,実際に試合に携わる観点から効果的に戦術理解を進めることが可能となる.また,提案ツールでは,選手間の隣接情報から求めたボール保持者のパス可能選手の予測情報を表示することもできる.バスケットボールは,パスの重要性が高いスポーツであることから,このような予測情報は,戦術理解に大きく貢献し得る.提案ツールの検証のため,オープンデータであるAPIDIS basketball datasetに含まれる選手・ボール位置情報に適用する.また,その適用結果を基に,本ツールの有用性を評価する.

  • 江添 正剛, 佐藤 裕仁, 三武 裕玄(正会員), 長谷川 晶一
    2018 年 47 巻 4 号 p. 382-390
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    趣味でイラストを制作する人にとって人物イラストは人気の高い題材であるが,人の自然なポーズを正確に思い描いたりデッサン人形にとらせたりする事は初中級者には難しく上達の壁となる.初中級者が人物ポーズにおいて失敗しやすい点の一つに,ポーズを取るために必要な力とその際の関節や筋肉の負担にっいての理解の不足に起因する間違いがある.本格的な美術の訓練では実際の人間のデッサンを繰り返して自然なポーズを感覚的に理解するが,手間がかかるため趣味のために行うには敷居が高い.そこで本研究では,ポーズの力学についての感覚的な理解が不足している初中級者が,人物画に無理のあるポーズを取らせてしまわないための支援手法として,静止ポーズを対象とし,ユーザが入力したポーズを基に力学的に身体負荷のより少ないポーズを改善案として提示するバーチャルデッサン人形の実現を目的とする.静止ポーズを対象として,静力学解析によりポーズから各関節の負荷を計算し,入力ポーズに近く関節負荷がより少なくなるようポーズを改善する.生成例を用いたアンケート調査により,より自然で安定感のあるポーズを出力できる事が示唆された.

  • 加藤 直樹, 田靡 雅基, 古山 純子, 里 雄二, 青木 義満(正会員)
    2018 年 47 巻 4 号 p. 391-400
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    複数物体追跡のタスクを難しくする大きな要因の一つとして混雑状況における遮蔽の頻発が挙げられる.オンライン処理による複数物体追跡の既存手法の多くは,動画の毎フレームで物体検出を行うことによって得られる物体矩形を時系列的に割り当てていくtracking-by-detectionのアプローチを取っている.しかし,既存手法では遮蔽などによって物体検出器で未検出となった対象を追跡することはできなかった.そこで,我々は追跡軌跡の再同定により一度消失した対象を再び追跡状態へと移行させる手法を提案する.物体の高次元な見え特徴を表す埋め込みベクトルを畳み込みニューラルネットワークを用いて取得し,追跡軌跡同士の埋め込みベクトルの距離によって追跡軌跡の再同定判定を行う.このとき,ネットワークの入力に領域分割によって得られた物体のマスク画像を用いることで,背景変化に頑健な再同定判定を行うことが可能である.また,追跡軌跡ペアの再同定判定は低次元なベクトル同士の距離に基づいて行われるため,再同定判定を行うことによる計算コストの増加は僅かである.公開データセットであるMOT16データセットを用いて評価実験を行い,本手法の有効性を示す.

ショートペーパー
  • 山田 昇平, ナイワラ P・チャンドラシリ(正会員)
    2018 年 47 巻 4 号 p. 401-404
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    現行の遠隔作業支援システムでは指示アノテーションとして主に描線機能が広く採用されている.しかし,描線は平面的な表示であるため,奥行きの表現や複雑な作業の指示には不向きである.そこで本研究では,指示者の手そのものを指示アノテーションとし,手の動き(ハンドジェスチャ)を使うことで奥行きや複雑な作業指示にも対応できる遠隔作業支援のプロトタイプシステムを開発した.システムの有用性を検証するため,作業効率において従来の描線指示法との比較実験を行った結果,指示のわかり易さの主観評価では両手法に有意差は見られなかったものの,作業時間についてはハンドジェスチャ指示が描線指示と比べ約17%の作業時間短縮をもたらすことが示された.

  • 末吉 朗, 清水 郁子(正会員)
    2018 年 47 巻 4 号 p. 405-409
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    広域空間のカメラキャリブレーションは,監視カメラにおける人物認識など様々な分野で非常に重要な基礎技術の一つである.広域空間に対象を特化したカメラキャリブレーション手法として,モーションバーコードを用いた手法が提案されている.これは各時刻の直線上での移動物体の有無を表す時系列特徴量であるが,この手法では直線上の移動物体の有無のみにより対応づけを行うため,異なる移動物体が同一時刻で直線上に出現している場合には誤って対応づけられてしまうという問題点があった.本手法では,モーションバーコードの類似度を計算する際に,各画像の直線上の移動物体の色情報を比較することで,誤対応を削減する.具体的には,直線上にある移動物体の色相ヒストグラムを考慮してモーションバーコードの類似度を評価する.従来手法では色が明らかに異なる物体でも対応づけてしまうことが誤対応の原因となっていたが,移動物体の近傍領域の色相ヒストグラムを用いることにより,明らかに色が異なる物体は対応づけないことで誤対応を抑制する.実験でPETS2009データセットとEPFLデータセットを用いて提案手法と従来手法を比較した結果を報告する.

  • 石井 雅樹(正会員), 藤野 慎也, 齋藤 俊哉, 富樫 陸矢, 伊東 嗣功, 堂坂 浩二
    2018 年 47 巻 4 号 p. 410-416
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    本論文では被介護者の離床時の転倒,転落を未然に防ぐことを目的とし,RGB–Dカメラを用いた離床検知手法を提案する.具体的には,離床に至る過程を仰臥位,長座位,端座位,離床の四つの姿勢に分類し,姿勢判定を試みた.提案手法では,離床判定の特徴として,離床行動中における被介護者の頭部の高さ情報と移動距離を用いた.また,カメラの設置位置に依存せずに離床判定を可能とするため,居室の床面を基準として,人の骨格座標の座標系変換を行った.基礎実験の結果,提案手法は四姿勢を判別できることが明らかとなり,離床予見(離床寸前の行動検知)と離床検知(完全に離床した状態の検知)を行い得る手法として有用であることが明らかとなった.

VC2018論文特集
論文
  • 溝口 智博, 德吉 雄介(正会員)
    2018 年 47 巻 4 号 p. 418-424
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    本論文はFrustum Traced Shadows法によるハードシャドウの計算を高速化する描画パイプラインを提案する.このFrustum Traced Shadows法は近年ゲームのようなリアルタイムアプリケーションで用いられているが,シャドウマップ法と比べると計算コストが高いという問題がある.そこで本論文ではこのFrustum Traced Shadows法のパイプラインに保守的シャドウマップを用いた影の判定処理を組み込み,二段階の影の判定を行うことで高速化する.さらに本論文は既存手法より精度の高い保守的シャドウマップの実装についても述べる.4Kのスクリーン解像度における実験の結果,高速化の度合いはシーンによってばらつきがあるものの平均すると約2.4倍影の描画速度を向上できることが確かめられた.

  • 北 直樹(学生会員), クリケ グレゴア, 宮田一乘(正会員)
    2018 年 47 巻 4 号 p. 425-432
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    本論文では2次元プロットを球面へマッピングする手法を提案することにより没入的環境でのデータ観察・分析を可能にする.提案手法では2次元プロットをできるだけ歪みを抑えつつ可能な限り大きく球面へマッピングすることでユーザの視界を広く覆う.ユーザは周囲を見渡すことでデータを確認できるため,通常3次元ユークリッド空間での可視化の際に問題となるような視点位置に起因するオクルージョンは発生しない.本手法を用いることで高次元データを一旦2次元に次元削減したのち球面へマッピングしたり,任意の2次元プロットのマッピングが可能となる.応用例として高次元データの没入的VRデータ可視化やデカールの球面への貼り付けなどを示す.

  • 成田 智史, 井尻 敬(正会員)
    2018 年 47 巻 4 号 p. 433-439
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,昆虫や植物などといった自然物のX線CT画像に対する意味的領域分割アルゴリズムを提案する.提案法は,昆虫や植物はくびれを境に意味の異なる領域に分かれることが多いという知見に基づく.提案法は,二値化したX線CT画像(ボクセルデータ)を入力とし,その前景領域を2分割する面積が局所最小な切断面(くびれ)の検出を繰り返すことで,意味的領域分割を実現する.このくびれの検出は,Split処理,Regrow処理,MinCut処理という3ステップから構成され,Split処理とRegrow処理はモルフォロジー演算により実現され,MinCut処理はグラフカット法により実現される.提案法の精度検証のため,二つの円を組み合わせた人工画像に対して提案法を適用し,提案法による分割結果と正しい分割結果との比較を行った.結果,誤差画素率2%未満という高い精度でくびれを検出できることを確認した.また,提案法の有用性を検証するため,昆虫や花のボクセルデータに提案法を適用し,花序内の小花,多肉植物の茎,昆虫の脚などという意味的に異なる領域を分割できることを確認した.

  • 木佐 省吾(学生会員), 栗山 繁, 向井 智彦
    2018 年 47 巻 4 号 p. 440-446
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    キャラクタ・アニメーションで用いられるモーションの生成と編集にニューラルネットワークのオートエンコーダで学習した潜在変数空間を用いる手法が提案されているが,次元圧縮して得られる多様体空間の次元数は元データより拡大しており,変数空間の効率的な探索や操作には適していない.また,オートエンコーダ自体もエンコーダとデコーダの各々が単層で構成されているため,多様なモーションを生成することにも適していないと考えられる.本研究では,潜在変数をガウス分布に従わせることのできる2種類の生成的なネットワークの学習をそれぞれ導入し,従来手法よりも低次元な空間に多様なモーションを埋め込むことによって,編集の際の計算量や安定性を向上させる手法を提案する.その応用例として,時間整列等の前処理を必要としない動きの遷移や補間等を取り上げ,特徴を捉えた尤もらしいモーションを生成する性能を検証する.

  • 出村 佑史, 藤澤 誠(正会員), 三河 正彦
    2018 年 47 巻 4 号 p. 447-453
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    本論文では,パーマや寝癖の表現を可能とする毛髪の塑性変形シミュレーション手法を提案する.毛髪のシミュレーションはコンピュータグラフィクスの分野において人間等のキャラクタを表現するのに必要不可欠なものであるが,ほとんどの場合シミュレーションが容易な弾性体としてその挙動が計算され,寝癖や整髪料の影響のような塑性変形は考慮されていない.提案手法では,毛髪の主成分であるケラチンと呼ばれるタンパク質内で結びついている側鎖結合を考慮し,実際の毛髪と同じように各結合で切断及び再結合を繰り返すことによって塑性変形を再現する.これらを,位置ベース法(Position Based Dynamics)に組み込むことで高速かつ安定したシミュレーションを実現した.

コーヒーブレイク
論文
  • 孟 林, 辻 翼, 泉 知論(正会員), 落合 淳思, 山崎 勝弘
    2018 年 47 巻 4 号 p. 457-466
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    甲骨文字は,3000年以上前の中国殷代の象形文字であり,亀甲や獣の骨などに刻まれた漢字の祖形ともいわれる文字である.これらの文字の解読は,文字の起源,歴史の研究に対して非常に重要であるが,甲骨資料を画像化した場合にはノイズ,断裂が多く,大きさ,傾きなどが不均一なため,画像処理による認識が難しい.甲骨文字は石などの鋭いものを用いて刻まれているため,線分が多い.本研究では,甲骨文字の線分特徴を利用し,前処理後の甲骨文字拓本の画像に対してハフ変換を行い,ハフ空間において,依存マトリクスを用いて文字を構成する主要な線分(主線分)を抽出し,テンプレートと認識対象のハフ空間での主線分の最短距離を計算し,適合性が高いテンプレートを探す.25種計550枚の甲骨文字画像と35種類のテンプレートを用いて実験した結果,本提案手法では63 %の認識対象文字で,正しいテンプレートが適合性一位となり,78%の認識対象文字で,正しいテンプレートが適合性二位までに含まれ,86%の認識対象文字で,正しいテンプレートが適合性三位までに含まれるという性能が得られた.

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