本研究では,鉛筆画風画像の生成法として提案されているLIC法に,クロスハッチングとブレンディングを明示的に取り入れた,鉛筆画風テクスチャの生成を提案する.まず,クロスハッチングとは一定の領域を平行な線分で描いたハッチングと呼ばれるテクスチャを,複数重ねることで絵画に微妙な濃淡や深みを与える技法である.そして,ブレンディングとはクロスハッチングされたテクスチャを指や布でこすり,線分同士を混ぜあわせることで,絵画にさらなる深みや柔らかさを獲得する技法である.従来の鉛筆画風画像の生成法にも,これらアナログの鉛筆画技法の効果を確認できるものはあったが,それらは明示的な方法で得られたものではなかった.本稿では,鉛筆画技法を明示的に取り入れることの意義も確認する.本研究で用いるLIC法は,鉛筆画技法の基本となるハッチングを明示的かつ良好に再現できる.提案法は, LIC法で輝度と方向が異なる複数のハッチングを作成し,乗算による合成でクロスハッチングを実現する.さらに,それらをガウシアンフィルタで平滑化することでブレンディングを実現する.
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