Convolutional Neural Networks(CNN)の発展により広く画像処理分野において目覚ましい成果が挙げらている.一方で,これらの多くは大量の教師データの存在が前提である場合が多い.加えて,データのドメインに依存する場合が多く,データの入手環境が異なると安定的な精度が保証されない可能性がある.これは多くのデータのドメインが想定される実社会の問題に応用する際に大きな障壁となる.そのようなドメイン差があるデータに対して再アノテーション,再学習をすれば,再び同程度な精度を期待できるが,ピクセル単位の細かい正解データを大量に用意する必要性のある領域分割(semantic segmentation)においては再アノテーションすることは大きな労力を要する.創薬支援や医療診断に期待される病理画像の解析は,専門家の必要性,検体のバリエーションの広さ故にそのような解決策は現実的ではない.そこで,本稿はドメイン適応の考えを用いて,新環境のデータの再アノテーションコストを抑えることを目的とする.それらに加えて,特にドメイン間におけるデータセットのクラス不均衡が大きな障壁となりやすい.本研究では,クラス不均衡問題に焦点を当てたドメイン適応を特に着目して行う.その際,クラス不均衡なデータではラベルの少ないクラスの出力が不安定になりやすい傾向がある.そのことを考慮し,新たに新環境のデータ(target data)に対して病理画像ならではの新しい損失関数を提案する.実験の結果,提案手法ではその問題に対し目的とする改善を施すことができた.これにより病理画像のsemantic segmentationにおけるドメイン適応においてデータセットのクラス不均衡を抑えたモデルを作成することを可能にした.
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