画像電子学会誌
Online ISSN : 1348-0316
Print ISSN : 0285-9831
ISSN-L : 0285-9831
50 巻, 3 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
随想
報告
年次大会論文小特集号
論文
  • 植西 一馬, サンドバル ハイメ, 岩切 宗利, 田中 清
    2021 年 50 巻 3 号 p. 351-361
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    3次元形状情報処理の根幹技術の1つである特徴点抽出は,再現性と弁別性の高い点をいかに見つけ出すかというアプローチで研究されている.弁別性確保の観点から,突出した形状の先端の点を探索することに主眼が置かれてきたが,このような形状は再現性が確保しにくいという問題がある.これとは逆に,平面形状から得られた方程式の高い再現性に着目し,仮想的な位置に特徴点を見出すVKOP(Virtual Keypoint Of Polyhedron)は,従来の方式よりも再現性が高いことが確認されている.一方で,VKOPは平面推定法や用いたパラメータに強く依存するという課題があった.本稿では,推定された平面方程式の尤度を指標化することで,平面推定法への依存度低減及びVKOPの再現性向上を企図した方式を提案する.この尤度には,センサの特性やランダムノイズの付加によって生じた,平面の厚みに基づいて算出する新たな指標を用いる.実験結果から,尤度の導入によりVKOPの再現性が向上するとともに,従来の特徴点と比較して短い処理時間で4倍以上の再現性を示すことを確認した.

  • 齊藤 陽平, 植西 一馬, 岩切 宗利, アギレ エルナン, 田中 清
    2021 年 50 巻 3 号 p. 362-369
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    3次元点群のレジストレーションは複数視点から得られた3次元点群を1つの座標系に統合する問題であり,モデリングやオブジェクト認識の前処理として利用される.高精度なレジストレーション手法では,その点群の点数に比例した処理が行われるため計算量が大きい.計算量を削減するために,特徴点の周囲の点のみを抽出した点群(キーポイントパッチ)を使用するキーポイントパッチ抽出法が提案されている.しかしこの手法では点群の点数が少ないため,重ならない部分にキーポイントパッチを抽出してしまうとレジストレーションの精度が悪化するという問題が存在する.そこで,キーポイントパッチ位置を適応的に変化させる3次元点群レジストレーション手法を提案する.提案手法ではあらかじめ余分なキーポイントパッチを抽出し,その中から重なる部分のみを選び出す.この操作で選択したパッチのレジストレーション結果から点群間の重なりを評価し,遺伝的アルゴリズムによって最適化を実現した.実験結果では提案法は従来法と比較して,重なる領域が小さな点群のペアに対して,高精度なレジストレーションが可能なことを確認した.

コーヒーブレイク
論文
  • 筒口 拳, 秋山 滉太, 品田 紗弥花, 米村 俊一
    2021 年 50 巻 3 号 p. 373-382
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    大地震や水害などの災害が発生した場合,被災者に素早く正確に災害情報を伝達する必要があり,様々な手法が検討されている.一方,手話を第一言語としているろう者の中には,テキスト系システムを介して日本語の情報を取得することに認知的負担を感じる人も多く,緊急情報を素早く正確に読み取ることは容易ではない.このため,手話映像を用いて情報を伝達できる映像システムが有効であると考えられるが,災害時のように通信帯域が圧迫されたり,制限されるような状況においては,大容量の映像ファイルを伝達することは困難である.我々は,手話映像の伝達内容をできるだけ保持したまま映像の容量を削減し,緊急情報を伝達することができるシステムの構築をめざしている.本論文では,手話映像の空間的特徴が強く表れているフレーム(キーフレーム)のみで構成する低容量の映像(キーフレーム映像)を提案し,情報伝達方式としての有効性について実験的な検証を行った.災害発生を想定した手話緊急映像についてキーフレーム映像を作成し内容理解度に関する評価実験を行った結果,映像データ量および映像の可読性においてキーフレーム映像の有効性が確認された.

  • 帯金 駿, 青木 義満
    2021 年 50 巻 3 号 p. 383-391
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    Convolutional Neural Networks(CNN)の発展により広く画像処理分野において目覚ましい成果が挙げらている.一方で,これらの多くは大量の教師データの存在が前提である場合が多い.加えて,データのドメインに依存する場合が多く,データの入手環境が異なると安定的な精度が保証されない可能性がある.これは多くのデータのドメインが想定される実社会の問題に応用する際に大きな障壁となる.そのようなドメイン差があるデータに対して再アノテーション,再学習をすれば,再び同程度な精度を期待できるが,ピクセル単位の細かい正解データを大量に用意する必要性のある領域分割(semantic segmentation)においては再アノテーションすることは大きな労力を要する.創薬支援や医療診断に期待される病理画像の解析は,専門家の必要性,検体のバリエーションの広さ故にそのような解決策は現実的ではない.そこで,本稿はドメイン適応の考えを用いて,新環境のデータの再アノテーションコストを抑えることを目的とする.それらに加えて,特にドメイン間におけるデータセットのクラス不均衡が大きな障壁となりやすい.本研究では,クラス不均衡問題に焦点を当てたドメイン適応を特に着目して行う.その際,クラス不均衡なデータではラベルの少ないクラスの出力が不安定になりやすい傾向がある.そのことを考慮し,新たに新環境のデータ(target data)に対して病理画像ならではの新しい損失関数を提案する.実験の結果,提案手法ではその問題に対し目的とする改善を施すことができた.これにより病理画像のsemantic segmentationにおけるドメイン適応においてデータセットのクラス不均衡を抑えたモデルを作成することを可能にした.

  • 堀田 健仁, プリマ オキ ディッキ アルディアンシャー, 今渕 貴志, 亀田 昌志
    2021 年 50 巻 3 号 p. 392-401
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    視野異常とは,視覚経路の疾患によって視界の一部や全体の視能力が低下する障害である.GoldmannやHumphreyなどの視野計では,被験者の主観申告による視認可否をもとに視野の広さや視力感度が判断されるため,検査精度の信頼性に課題がある.一方,アクティブ視野計はスクリーンに提示した視標を探索した際の不随性のある眼球運動の特徴から客観的に視認判定を試みたが,視野異常の患者に対して視線キャリブレーションを行うことが難しい,検査可能な視野が60°と狭い,そして頭部固定による身体的負担が大きいという課題がある.本研究では,ヘッドマウントディスプレイ(HMD)型の高速眼球運動計測システムを開発してアクティブ視野計を改良した高性能視野計を提案する.提案の視野計には,頭部の固定が不要,90°の視野範囲で検査が可能,高精度の瞳孔抽出,一点視線キャリブレーション,サッケードの潜時と回数による視認判定などの特徴がある.検証実験では,視覚健常者10名を被験者として,90°の視野内に配置された76点の検査視標に対して視認判定を自動的に行うことができた.なお,被験者1名当たり約14分で検査を終えることができ,身体的負担を軽減できることを確認した.

  • 高橋 岳之, 下馬場 朋禄, 角江 崇, 伊藤 智義
    2021 年 50 巻 3 号 p. 402-410
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    ランダム位相を使わずにホログラムよりも大きな再生像を得ることができるランダム位相フリー法は,ホログラフィックプロジェクションへの応用が期待されている.ランダム位相フリー法は振幅型ホログラムでは有用性が示されているが,キノフォームでは有効に機能しないことが知られている.一方,キノフォームで良好な再生像が得られるダウンサンプリング手法は,ホログラムサイズより大きな再生像を得ることができない.本論文では,ランダム位相フリー法とダウンサンプリング手法を併用することで,大きな再生像を得ることができるキノフォームの画質改善手法を提案する.シミュレーションによる実験を行った結果,キノフォームの再生像画質が向上することを確認した.

  • 丸山 哲, 鶴野 玲治
    2021 年 50 巻 3 号 p. 411-418
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    CG向けに最適化された安定性の高い既存の流体シミュレーション手法は美しくリアルな視覚結果をもたらすが,それらは特定の物理的条件を満たすように作られており,幾何学的に不自然な視覚結果を出力することがある.これを解決するために,流体の挙動を幾何学的手法で近似する考え方に基づき,適切な数理モデルを開発することが考えられ,視覚的・幾何学的に自然な流体挙動を少ない計算量で得られるメリットが見込まれる.本研究ではシミュレーションされた流体の渦場を局所的に二次形式の関数で近似する手法と,近似結果を利用した渦場の様々な幾何学特徴の抽出手法を提案する.本手法で流体内の1点の近傍での二次形式の幾何学(楕円,放物線,双曲線)の構造を判別し,結果が楕円である場合に渦の形状と相性の良い特徴(楕円の中心位置,縦横比など)を抽出する.また,その幾何学特徴と流体の物理的特徴の関連性も調査し,楕円なら渦の中心付近,放物線または双曲線なら流れの歪みの関連性が高いことを示す.さらに本手法の応用として流体の渦の細部を上げる既存手法を修正し,よりリアルで幾何学的整合性が良い渦場を作ることに成功した.

ショートペーパー
  • 菅原万梨夏 , 田村崚 , 北直樹 , 斎藤隆文
    2021 年 50 巻 3 号 p. 419-424
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    近年様々な分野で自動化が進む中で,手土産などのラッピングは手作業で行われることが多い.手作業で行われる箱型ギフトのラッピングは,見栄え良く仕上げるためには個人の経験や技術が必要になる.経験のない人でも見栄えの良いラッピングができるようにするため,本研究では包装の終了時に模様の連続性を保つような包装紙デザインを自動生成するアプリケーションを制作した.本手法では生成するテクスチャを無地ストライプとし,包装の対象は直方体の箱,技法は斜め包みを扱うことを前提とした.まず,必要な用紙の大きさを求める.ここでは,斜め包みが破綻しない条件を満たす最小の大きさの紙のサイズを算出した.次に,ストライプの生成を行う.包む箱の縦と横からなる大きな面のうち一つを「メイン面」と定義し,メイン面に対してストライプを生成する.このメイン面の模様を,包装紙面におけるメイン面と対面する部分に鏡映させる.最後に側面部分を生成し,包装紙の生成を終了する.制作した機能を用いて包装紙を生成し,包装した.その結果,底面や側面で模様の連続性を保つことができた.今後は,より複雑な模様の生成や,デザインの生成手法の見直しが課題である.

報告
技術解説
講座
グループ紹介
スキャニング
図書紹介
feedback
Top