画像電子学会誌
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50 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
随想
ビジュアルコンピューティング論文特集号
論文
  • 小林 菜穂子, 高橋 裕樹
    2021 年 50 巻 4 号 p. 541-549
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    本論文では,不動産ポータルサイトにおいて直感的に希望の物件が検索できるよう,感性語を用いてリビングルーム画像の検索を行う感性検索手法を提案する.提案手法はConv-DCCAE(Deep Canonically Correlated Auto-Encoders)とランキングモデルを組み合わせた二段階の学習モデルを用いる.学習の際には,アンカー画像,アンカー画像の印象を表す感性語の正例とアンカー画像の印象と異なる感性語の負例を一組にして入力する.まず,Conv-DCCAEを用いて感性語と画像の関係性を学習し,共通空間に射影する.次にランキングモデルを学習し,共通空間上でアンカーに対して正例の距離が小さく,負例の距離が大きくなるように補正した感性検索空間を構築する.また,適合性フィードバックを用いてランキングモデルを再学習することで,感性検索空間をパーソナライズする.検索精度はランキングの精度を評価する指標であるnDCG(normalized Discounted Cumulative Gain)を用いて評価し,従来手法と比較してnDCG@1,5,10の値により評価したところ,提案手法が最も精度の高いランキングを提供できることがわかった.また適合性フィードバックを用いることで,初期検索結果が不適切であったユーザに対してより適切な検索結果を提示することができた.

  • 徳永 恵太, 長澤 彦己, 藤代 一成
    2021 年 50 巻 4 号 p. 550-557
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    井阪らは,2枚の汎用ディスプレイモニタを直交配置し,単眼性の錯視表現であるアナモルフォーシスにユーザの視線追跡を組み合わせることで運動視差を誘発し,裸眼立体映像を提示するシステムを開発した.しかし,小型のディスプレイモニタを利用する際に,このシステム上では両眼視差の影響が無視できず,ユーザの感じる立体感が低下する可能性がある.そこで本論文では,空間の構図を認識する両眼の貢献度の差異を特定し,アナモルフォーシスの効果を先鋭化する手法を提案する.利き目を追跡するよりも,両眼位置の適正な内分比の位置に「サイクロープスの眼」をおき,それに対してアナモルフォーシスを計算することで,効果の先鋭化と臨場感の向上が可能なことを実証した.さらに,折畳み式ディスプレイを搭載する商用ラップトップPCへの提案手法の移植例も示す.

  • 黄 宇航, 金井 崇
    2021 年 50 巻 4 号 p. 558-567
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    ガラスやコンクリートなどの平面板オブジェクトの脆性破壊は,現実世界においてよくみられる.剛体の破壊アニメーションは,物理シミュレーションを用いることで印象的な効果を得ることができる.しかし,物理シミュレーション手法によるリアルな破壊アニメーションは計算コストが高くなる傾向にある.一方で,ゲームなどのリアルタイムアプリケーションでは,衝突時にボロノイ図を用いたセグメンテーションを適用するなど,あらかじめ破壊されたパターンが使用されることが多い.このようなパターンの形状はしばしば単調となり,複雑な亀裂の形状をリアルに表現することは難しい.したがって,計算コストを抑えつつ,リアルな破壊形状を実現できるトレードオフの手法が求められている.本論文では,深層学習ベース脆性破壊シミュレーションに向けた第一歩として,平面オブジェクトを対象に,ボロノイベースのセグメンテーションに代わる,剛体エンジンに適用可能な条件付き敵対的生成ネットワーク(cGAN)に基づく脆性破壊形状の予測手法を提案する.学習のためのデータセットは,境界要素法に基づく破壊シミュレーションによって生成される.ボロノイ図生成を用いたセグメンテーションと比較して,我々の手法は合理的な計算コストでよりリアルな破壊形状を生成することができる.

  • 高橋 初来, 金井 崇
    2021 年 50 巻 4 号 p. 568-579
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,弾性体シミュレーション手法の一つであるProjective Dynamicsにおけるスモールステップ法について,その計算量を削減する手法を提案する.インタラクティブなシーンにおけるComputer Graphicsでは,シミュレーションの質と計算量のトレードオフが常に課題となっている.スモールステップ法は,求解のための繰り返し計算を途中で打ち切る代わりに,描画フレーム間の時間発展を細かいサブステップに分割することにより,数値ダンピングの軽減という形でシミュレーションの改善を図るものである.ここでは,スモールステップ法が,描画されないサブステップの計算を暗に前提としている点に注目し,その時間方向の冗長性を省略する.具体的には,加速度を用いる前進オイラー法で時間発展を行うDummyStepを導入し,Projective Dynamicsのサブステップの半分をDummyStepで代替する.結果として,非常に小さい誤差でスモールステップ法を代替することができ,さらに計算量を約半分にすることができる.ただし,DummyStepは一部安定性の問題が存在するため,本研究ではさらに手法の安定性を高める修正手法を2つ提案する.例題を通じて,本手法が計算量を大幅に削減しながら安定してスモールステップ法を代替できることを実証する.

ショートペーパー
  • 長谷川 鋭, 下馬場 朋禄, 角江 崇, 伊藤 智義
    2021 年 50 巻 4 号 p. 580-583
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    ディジタルホログラフィは撮像素子を用いて3次元情報をホログラムとして記録し,コンピュータ上で可視化する技術である.計算によって試料の振幅と位相を得ることが可能である.しかし,現在の撮像素子は解像度が十分ではなく,より高精細な再生像を得るために,平面波によるインラインホログラフィを用いることが多い.ただし,インラインホログラフィは所望の3次元情報に不要な光情報が重なるという難点がある.また,平面波を作るためにはコリメータレンズ等を必要とするなど,光学系が大がかりになる.そこで,本論文では平面波よりも光学系を簡素化できる球面波参照光を用いたインラインディジタルホログラフィに最適化計算を適用したシステムを提案する.さらに,反復計算を必要としない新たな推定法を見出し,数値実験で定量評価を行ったところ,代表的な画質回復手法であるGerchberg-Saxton法に比べて,50倍の速さで同程度の画質を得た.

  • 手島 裕詞, 関 航平, 志久 修, 村木 祐太, 小堀 研一
    2021 年 50 巻 4 号 p. 584-588
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,点群モデルから算出されるパラメタをもとに突起部分を鮮鋭的なモデルに変換する手法を提案する.従来の点群モデルの編集処理では,曲面モデルやポリゴンモデルに変換することが多かった.しかし,点群データにノイズや欠損が生じている場合,信頼性のある点の接続情報や曲面が生成できない等の課題がある.提案手法では,点群データを直接処理することとし,具体的には点群モルフォロジー演算を用いて各点にパラメタを求め,それを用いて点を移動させることでモデルを鮮鋭変換する.また,構造要素のサイズを変更した際のパラメタ算出実験と鮮鋭変換の実験により提案手法の有効性を検証する.

コーヒーブレイク
論文
  • 今田 博之, 河村 尚登, 姜 玄浩, 岩村 恵市
    2021 年 50 巻 4 号 p. 595-603
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    不可視の電子透かし法において,画質,耐性,埋め込み量は互いにトレードオフの関係にあり,すべてを満たすことは通常困難である.グリーンノイズ拡散型電子透かし法は,埋め込みパターンが視認され難く,印刷/スキャン耐性を有す.しかし,ブロック単位で埋め込むため,ブロックサイズを小さくして埋め込み情報量を増やそうとすると,誤検出が増大する.そこで抽出パターンの判定に機械学習を導入し識別精度の向上を図り,埋め込み情報量と印刷耐性を確保する可能性を探った.その結果,512×512の画像に16×16のブロックサイズで2048ビットを埋め込み,電子データで99%,印刷/スキャン画像において200ppiの画像で91%以上(175ppi以下の画像では94%以上)の高い判定正答率を得ることができ,耐性および埋め込み量の向上を達成することができた.

  • 吉田 大海
    2021 年 50 巻 4 号 p. 604-613
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    立体画風変換の最も簡易的な実現方法の一つが,ステレオ画像を一枚の静止画と見なして画風変換することである.しかし,画風変換によるデフォルメはステレオ画像の視差情報を劣化させるため,画風変換の改良には変換後の画像を適正に評価する手法が求められる.本論文では,ステレオ画像を対象とした立体画風変換のための視差情報評価画像とそれに基づく数値評価法を提案する.提案する評価画像は,画風変換された画像から三つの領域を特定するものとし,それらは「視差情報を維持した領域」「視差情報を損失した領域」「不正な視差情報を出力した領域」である.また,各領域における数値評価法は,それらの面積を正規化したものを用いる.評価実験においては,評価画像のパラメータについて考察し,また各該当画像の基本的な性質を明らかにする.最後に,立体画風変換に対する有効性について鉛筆画風変換を用いることで確認する.

ショートペーパー
  • 坪田 颯生, 岡部 誠, 工藤 隆朗, 由良 俊樹, 本間 祐作
    2021 年 50 巻 4 号 p. 614-618
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,いずれも既存手法であるSiamMaskと動画修復技術を用いることで,動画内の物体やロゴ,文字,ノイズなどの消去をなるべく人手をかけずに行うシステムを開発した.ユーザは動画の最初のフレームにおいて,目的物体をバウンディングボックスで囲むことで指定する.バウンディングボックスはSiamMaskへの入力となる.SiamMaskは目的物体を追跡しつつ,各フレームにおいて大雑把なマスクを生成する.生成されたマスクを入力として動画修復技術を用いることで修復結果が生成される.本研究が目指すのは,バウンディングボックスを描いたら即座に修復結果が生成されるようなシステムだが,現状ではSiamMaskによって生成される大雑把なマスクが必ずしも完璧に目的物体を捉えない場合もあり,そのような場合はユーザによる手作業での修正(フレームごとの画像編集作業)が必要となる.また本手法の応用として,入力動画と修復結果の差分に基づいて目的物体の高精度なマスクを生成する手法も提案する.

  • 澤田 清仁, 細野 峻司, 孫 泳青, 北原 正樹, 島村 潤
    2021 年 50 巻 4 号 p. 619-624
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル 認証あり

    監視カメラのような広域映像から行動を検出する場合,映像から行動の発生が予想される位置・時刻を行動候補領域として推定した後に,各行動候補領域について行動の種別を分類するという枠組みが一般に採用される.このとき,行動分類の難しさの一つとして,物体の移動方向,物体の位置関係の多様性による‘見え’のパターン変化への対応が挙げられる.本稿では,この問題に対処するため,行動候補領域中の物体の移動方向もしくは物体の位置関係が一定になるよう,事前に行動候補領域を回転,反転する行動正規化を提案する.実験により,ActEV/VIRATデータセットにおいて,ベースライン手法に行動正規化を組み込むことで行動分類精度が向上することを示す.

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