環境問題に対する意識の高まりから,リチウムイオン電池(LIB)を搭載した電気自動車の普及が進められているが,課題の一つとして車載LIBの劣化による航続距離の低下が挙げられる.そのため車載LIBには車両と同程度の寿命が求められており,適切な寿命評価が必要である.車載LIBの寿命試験法については,国際電気標準会議(IEC)や国際標準化機構(ISO)などからそれぞれ提案されている.民生用電池の寿命試験では単純な定電流でのサイクル試験が行われることが多いが,先述のIEC等から提案されている車載LIBの寿命試験法では,走行時の負荷変動や回生充電を簡易的に矩形波で模擬した出力制御のプロファイルが用いられている.また中国では,中国標準規格(GB/T)として ,定電流によるサイクル試験と,動作サイクル寿命としてIEC等とは異なる電流制御のプロファイルを用いるサイクル試験が寿命試験法として定められている.各試験法間において手順やプロファイル等の条件に差異が見られるが,電池への影響についての報告例はなかった.そこで我々は,市販大型LIBを対象に寿命試験を行ない,試験プロファイルが性能変化に及ぼす影響について報告してきた.
本報では,車載LIBセルを対象に寿命試験を実施し,標準寿命試験法のサイクル試験プロファイルがセルの性能変化に及ぼす影響について比較・検討したので報告する.
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