野村総合研究所委託事業で実施したヒータ加熱試験(H30年度実施分)に関する成果の報告である.電動車両の駆動用リチウムイオン電池には様々な保護機能があるが,内部短絡だけは保護機能で防ぐことが出来ない事象であるため,内部短絡した1セルが熱暴走に至った場合,隣接セルに熱連鎖する可能性がある.現在,電動車用リチウムイオン電池の熱連鎖試験法が国際標準の場において議論されており,その場において日本は熱連鎖試験法の目的を,“パック内の1セルに内部短絡が発生した際のパックの挙動を評価すること”と主張している.単セルを内部短絡させる手法としては,強制内部短絡(FISC : Forced internal short circuit)試験が代表的な試験であり,当該手法では1~2層程度の短絡層数が得られるものの,自動車用電池パックにおいて任意の単セルに対して試験をすることは難しいため,釘刺し,加熱等による手法が検討されている.本研究では,熱連鎖試験の起点作成手法として,板状窒化珪素ヒータを用いてセル製造時の異物混入程度の内部短絡を生じさせることが出来るか否かを検証したので報告する.
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