JARI Research Journal
Online ISSN : 2759-4602
2019 巻, 6 号
JARI Research Journal 2019年6月号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
研究速報
  • 堺 温哉, 伊藤 剛, 伊藤 晃佳
    原稿種別: 研究速報
    2019 年2019 巻6 号 論文ID: JRJ20190602
    発行日: 2019/06/10
    公開日: 2025/09/03
    研究報告書・技術報告書 フリー
    自動車交通に由来する大気汚染物質(Traffic - related air pollution: TRAP)の排出は,様々な技術革新などによって劇的に減少している.しかしながら,世界各地の都市において,TRAPによる健康影響への関心は高く,重要な課題となっている.シンガポール,ロンドン,ストックホルム,ミラノなどの都市では,自動車交通量の抑制による局所的な大気環境の改善,ならびに交通渋滞緩和を目的として,道路の使用に対する課金・課税(ロードプライシング)を実施している. 現在の東京都内を含めた日本では,大気中の汚染物質濃度は減少傾向もしくは環境基準に近い値で推移している.大気環境が比較的良好な日本を含む先進国の都市部において,交通量抑制による大気質への効果がどの程度あるのか見積もることは重要である.しかし,シミュレーションによる検証はいくつか報告されているものの,実測による検証は十分ではない.また,日本国内での実測による検証報告はない.一方,大気環境への影響評価を目的とした,社会実験的な交通規制の実施は現実的には難しい.そこで本研究では,都内で交通規制を行う大規模なイベントに注目して,交通量抑制による大気環境への影響の検討を行うこととした.  交通規制を伴う都内の大規模なイベントとして,隅田川花火大会などの花火大会,浅草サンバカーニバル,東京マラソンがある.花火大会は燃焼発生物質による大気環境への影響がありえること,浅草サンバカーニバルでは交通規制が行われる範囲が限定的であること,などから大気環境への影響の検討には不適と判断した.東京マラソンは2007年から実施されている3万人規模のランナーが参加するイベントで,毎年2月下旬から3月上旬のいずれかの日曜日に開催されている.大会当日は東京都区内の広い範囲を対象に,のべ約 7 時間の交通規制が実施される.本研究では,現在の東京の大気環境において,交通量抑制による大気環境改善効果を検討することを目的に,東京マラソンの交通規制に伴う交通量抑制と大気環境への局所的な影響について検討をする.
  • 早崎 将光
    原稿種別: 研究速報
    2019 年2019 巻6 号 論文ID: JRJ20190604
    発行日: 2019/06/10
    公開日: 2025/09/03
    研究報告書・技術報告書 フリー
     日本で環境基準が定められている大気汚染物質6種のうち,現在でも環境基準が未達となっているのは,PM2.5と光化学オキシダント(以後,光化学Oxと表記.現在主流のUV測定法では,オゾン(O3)と同義)である.このうち,PM2.5は2009年に環境基準が新設され,設定後の数年間は環境基準達成率が低く,また時折発生するPM2.5高濃度現象がメディア等で取り上げられるなどしたため,大きな話題となった.ただし,環境基準達成率は次第に改善され,平成29(2017)年度ではほぼ9割の測定局で環境基準が達成されている.  その一方で,光化学Oxについては,環境基準の設定(1973年)時から高濃度日が多発しており,近年でも環境基準達成率がほぼ0%で推移している.光化学Ox環境基準未達の要因は,大気中のOx濃度が基準の閾値を満たせないほど高いことであるが,判定の基準となる平均化時間と濃度閾値の両方に大きな原因があると考えられる.光化学Ox以外の大気汚染物質は,年間で環境基準の達成・非達成を判定する場合,日平均値が主に用いられる.それに対し,光化学Oxは1時間値をそのまま使い,たとえ1年間で1度でも閾値濃度(60 ppb)を超過するだけで基準未達となる.設定されている閾値濃度 60 ppb は,世界保健機関のO3閾値 (8時間平均値で100 ?g/m3; 50 ppb)よりは高いものの,平均化時間で大きな隔たりがある.また,米国環境保護庁(US-EPA)が用いる閾値 (8時間平均値で70 ppb)と比べれば,平均化時間・濃度レベル共に厳しい条件である.国外で利用される環境基準と比べ,平均化時間が短く閾値濃度が世界的に見ても低い水準で設定されていることから,日本の光化学Ox環境基準は世界的に見て最も厳しい環境基準であると言える.  このような,現状では著しく達成が困難と思われる光化学Oxの環境基準は,大気環境学会からの指摘などを受け,環境省でも改善に動き出しており,新たなる指標値を用いた光化学Ox動態調査がおこなわれている.新たな評価で用いられる光化学Ox指標値(以後,光化学Ox新指標値)はUS-EPAのO3環境基準とほぼ同一であり,現行の環境基準による評価とは別に試行適用した解析などもなされている.それら試行適用では,全測定局対象の新指標値での環境基準達成率や環境基準未達局のおおまかな地理的分布などが明らかとなっているものの,その季節性や経年変化などには言及されていない. 本研究では,これら試行適用例だけでは明らかでない項目を検討し,新指標値が新たな環境基準として導入された場合の我が国の光化学Oxの一般的動態を明らかにすることを目的とする.
解説
  • 福田 圭佑
    原稿種別: 解説
    2019 年2019 巻6 号 論文ID: JRJ20190603
    発行日: 2019/06/10
    公開日: 2025/09/03
    研究報告書・技術報告書 フリー
    自動車から排出される粒子状物質(PM: Particulate Matter)は,1990年代から主にディーゼル車に対して規制されてきた.その後の段階的な規制の強化やディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF: Diesel Particulate Filter)の普及によりディーゼル車からのPM排出量は大幅に減少した.そのため,車両単体で考えると,ガソリン直噴車(燃料を筒内に直接噴射する方式のガソリン車)から排出されるPMは,DPF付きのディーゼル車よりも相対的に多くなってきており,近年はガソリン直噴車のPM排出実態に注目が集まっている.欧州では,2009年からガソリン直噴車に対する粒子重量の規制が始まった.日本でも,2009年からリーンバーン方式のガソリン直噴車に対して粒子重量の規制が開始され,2020年12月からはストイキ燃焼方式のガソリン直噴車に対しても規制が適用される.  国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラムUNECE/WP29傘下の排出ガスとエネルギの専門部会GRPE(The Working Party on Pollution and Energy)内に設立されたPMPインフォーマルグループ(PMP-IWG: Informal Working Group on the Particle Measurement Programme)は,PMの新たな測定法として粒子個数(PN: Particle Number)を対象とする固体粒子数計測法(PMP-PN法)を開発した.欧州では,2011年9月にディーゼル乗用車に対して,2012年12月にディーゼル重量車のエンジンに対して,それぞれPN規制を導入しており,欧州に準拠した規制を設ける国々でもPN規制を導入する動きがある.また,PMP-IWGは現在,PMP-PN法の更なる改訂について議論を進めている.  本報では,固体粒子数の計測法の概要と各国の規制の動向について,欧州でのPMP-IWGの活動を中心に解説する.
研究活動紹介
  • -実交通環境および運行管理データによるトラックとバスのエクスポージャ事例検討-
    金子 貴信, 長谷川 信
    原稿種別: 研究活動紹介
    2019 年2019 巻6 号 論文ID: JRJ20190601
    発行日: 2019/06/10
    公開日: 2025/09/03
    研究報告書・技術報告書 フリー
    自動車の電気/電子システムの機能安全国際規格ISO 26262は2011年に発行され,2018年12月に改定された第2版では商用車も対象に含まれた.ISO 26262のPart3に記載されているハザード分析およびリスクアセスメント(以下,「HARA」という)を商用車,特に重量の大きいトラックとバス(以下,「大型車」という)に適用する場合には,エクスポージャ(E),コントローラビリティ(C),シビアリティ(S)の適切な評価が自動車安全度水準(以下,「ASIL: Automotive Safety Integrity Level」という)の決定において重要な要素となる.エクスポージャは電気/電子システムの故障により危険な運用状況(オペレーショナル シチュエーション,以下,「シチュエーション」という)になりうる確率を表わす要素であり,大型車のエクスポージャを評価することはシチュエーションのデータが少ないため乗用車と比較し容易ではない.そのため,本調査では,大型車特有のシチュエーションを明らかにするために交通調査や運行管理データを解析し,その中から大型車の走行に関わるデータを収集,解析した.本稿ではエクスポージャ導出に必要となる基礎的なデータ項目やエクスポージャの調査事例を示す.
feedback
Top