気候変動影響の緩和を目的として，2050年のカーボンニュートラルが世界各国で目標設定されている．中でも，比較的短期間で効果が期待できる緩和策として，短寿命気候強制因子（Short-Lived Climate Forcers (SLCFs) ）の削減が重要視されている．SLCFs の実態把握及び効果的削減のために，人工衛星からの遠隔計測（衛星リモートセンシング）を用いた大気環境監視が世界的に実行されている．従来の衛星リモセンでは，地球全体での温室効果ガス・SLCFsの濃度の空間分布・時間変動の実態把握が主対象であったが，技術発展や未解決問題の解明などを理由として，点源からの大規模排出が計測可能な衛星･センサーが活用されつつある．これら衛星リモセンデータは，大気質モデルの入力値として使用する排出インベントリの高度化・精緻化にも寄与するうえ，従来の地上観測網を補うような時空間密度の観測データが利用可能になる可能性がある．

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