筆者は, 東京ガスを中心として, 最近のガス事情について述べている。近時, 住宅の復興, 工業の振興に伴つてガスの需要はますます旺盛であり, ガス生産業者は鋭意生産, 供給設備の復旧, 改善につとめているが, 最近の特徴である夏, 冬の需要の著しい差に対応し, また生産設備拡充には資本繰りが容易でないため, ピーク対策として酸素発生炉ガス, 油ガスが採用されている。需要はさらに増大しつつあり, 資金面において数次の自己資本増加にもかかわらず, 借入金, 社債が膨大な額にのぼり, 銀行借入金は資本金の2倍程度に及び限度に達しており, 設備拡充のため財政資金の融資が希望される。また, ガス料金も戦後7回にわたり改訂されてきたが, 主として一般的インフレーシヨンの急進および炭価の高騰によるものであり, その改訂料金は常に低くおかれ, 設備資金の蓄積を困難ならしめており, 用途別料金の採用, ガス税の軽減が要望される。しかし, 設備並びに管理面に合理牝が実施されており, 労働生産性の著しい向上が図られた。副産物の販売は同系販売会社を設立して行われているが, コークスの需要は, 朝鮮停戦会談の特需への影響, 輪出不振などにより一時停滞したが, 再び活爐化の傾向にある。タールは, 合成化学工業の発展に伴つて新販路を開拓してきたが, 昭和26年夏を頂点として, 特に「白モノ」の需要の衰退が目立つており, 特にベンゾールは炭価を主因とする生産費の関係上米国の約倍となつており, 一層の企業合理化が要望される。
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