筆者は日本の石炭研究者間で論議が交わされている石炭組織学の原則論のみについてのべた。石炭を一種の変成岩 (有機変成岩) と規定し, 石炭組織学的研究には, 石炭を沈積物としての研究と, 石炭化過程についての研究がなされなければならない。前者においては, その基礎は石炭の岩石学的分類であり, 有機物の沈積について取扱わねばならぬ。有機質の沈積では, 比重や粒度による選別よりも, 腐朽分解がより強く影響するから, この分類は腐朽分学解を基礎につくらねばならぬ。石炭化度の研究は変成作用の究明に効果的である。これは顕微鏡による種々の成分の反射率の測定が最も有効であり, この点に関しては, 本研究は石炭物理学とくに石炭光学の分野にすぎぬ。
石炭は種々のマセラル混合物からなつており, 狭義の石炭組織学とはこのような混合物の状態の分類にもとずき系統的記述を行う科学の一分野である。マセラルはそれぞれの光学性を有しているから, 石炭組織学の基礎はマセラル光学といえる。
石炭組織学は, 狭義の石炭組織学に基づいている一方, 石炭物理学および石炭化学にも基づいている。日本における石炭化学者は一般に石炭が一種の岩石であるという認識をしていない。もしこの認識に重要性を感じなければ, 石炭化学は発展しないといつても過言でない。
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