腸内細菌学雑誌
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29 巻, 1 号
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総  説 <平成25年度日本ビフィズス菌センター研究奨励賞受賞>
  • 新 幸二
    2015 年 29 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/27
    ジャーナル フリー
    消化管粘膜は常に病原性微生物の侵入の危険にさらされている.同時に腸管内腔には多くの腸内常在細菌が生息している.そのため腸管は高度に発達した免疫システムを備え,免疫細胞は病原性微生物を迅速に排除するとともに有益無害な腸内細菌に対しては過度な応答をしないように制御されている.この高度な腸管免疫システムの形成には腸内細菌の存在が重要であることが知られていたが,その詳細なメカニズムについてはあまりよくわかっていなかった.近年,ある特定の腸内細菌のみが存在するノトバイオーマウスを用いた解析により,個々の細菌種が特定の免疫細胞の活性化を行い全体として統率のとれた免疫システムの構築を担っていることがわかってきた.細胞外寄生細菌や真菌の感染防御に重要なヘルパーT細胞の一種であるTh17細胞は腸内細菌の一種であるセグメント細菌(SFB)によって誘導され,経口的に侵入してきた病原体の感染防御に貢献していることが明らかになった.一方,制御性T(Treg)細胞も腸管粘膜固有層に多く存在し,食餌成分や腸内細菌に対する過剰な免疫応答の制御に関与している.SPFマウスと比較して無菌マウスの大腸ではTreg細胞が顕著に減少しており,クロストリジウム属細菌を無菌マウスに投与すると大腸Treg細胞が強く増加したことから,腸内細菌のうち主にクロストリジウム属細菌が大腸Treg細胞の誘導を担っていると考えられた.また,ヒトの腸内にもTreg細胞の誘導を担うクロストリジウム属細菌が存在していることも明らかになった.
総  説 <特集:腸内細菌叢Microbiotaの分子生物学的解析法の成果と未来>
  • 野本 康二, 辻 浩和, 松田 一乗
    2015 年 29 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/27
    ジャーナル フリー
    我々は,複雑な微生物生態系である腸内フローラの精細な定量的解析のために,定量的PCR法および定量的RT-PCR法を組み合わせた,“Yakult Intestinal Flora Scan (YIF-SCAN®)”を確立した.YIF-SCAN®により,従来の分子生物学的解析方法に比べて幅広いdynamic rangeを有する腸内フローラの高感度定量が可能となり,標準的な日本人の腸内フローラ構成および年代間の差異,さらには大腸がんや糖尿病といった疾患における腸内フローラ異常(dysbiosis)が明らかにされてきた.YIF-SCAN®による高感度微生物解析は,臨床における敗血症診断や消化器手術中のBacterial translocationの診断にも適用可能であること,さらには,腸管のみならず,膣など固有の菌叢生態の高精度な解析にもYIF-SCAN®が有用であることが示唆されている.今後は,腸内細菌の機能解析への展開が期待される.
  • 山田 拓司
    2015 年 29 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/27
    ジャーナル フリー
    ヒト腸内細菌解析は近年の次世代シーケンサーの爆発的な進歩により飛躍的な発展を遂げている.本稿では菌叢解析法としてメタゲノム解析に焦点を当て,実験的及び情報解析のパイプラインの概要を紹介する.現在まさに発展途上の技術であり,様々な側面においてその利点と問題点を紹介していく.
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