都市計画論文集
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40.3 巻
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  • 福岡市赤坂けやき通りを題材に
    高尾 忠志, 樋口 明彦
    2005 年 40.3 巻 p. 601-606
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国における街路樹整備は道路緑化から都市緑化へ、行政管理から官民協働管理へと広がりをみせつつあるが、基本的な位置づけは道路付属物の域を超えるものではない。本論文では、文献調査とヒアリング調査から福岡市赤坂けやき通りの歴史的変遷を調査した。その結果偶然に植えられた街路樹であるけやきが、地域のシンボルとなり、五十年後にはコミュニティ再生の中心として機能していることがわかった。道路整備時には、単に緑化を目的とした道路附属物としての街路樹整備ではなく、数十年の長いスパンでの地域づくりを念頭に置き、地域イメージの中心となる街路樹を整備していくことが求められる。特に、道路整備に伴い地域のコミュニティが弱体化することが問題視されるケースには、街路樹がコミュニティの中心となりうる効果を、地域づくりの観点からは沿道地域の資産価値を高める効果も見逃すことはできない。このような街路樹の持つ効果を道路整備および改良時に取り込んでいき、より効果の高い道路整備を行なっていくためには、道路管理者と沿道地域の住民や都市計画部局との一体的な計画づくり、設計、管理を行なっていくことが重要であると考える。
  • 近年の事例を対象として
    樋口 明彦, 高尾 忠志
    2005 年 40.3 巻 p. 607-612
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、可動式歩道橋が多数建設されるようになってきている。多くは、従来の可動橋には見られない形態や動きを具備しており、景観形成上強い影響力を持った新しいタイプの景観要素として認識できる。本研究では、この状況を踏まえ、近年の可動式歩道橋に着目し、(1)従来の可動橋と比較することにより可動式歩道橋の設計思想の特徴を明らかにすること、さらに (2)可動橋の主たる属性である動きとそれを可能にする形態が景観設計上どのように機能しているかを明らかにすることを目的としている。 10事例をケーススタディーすることにより、近年の可動式歩道橋では (1)ランドマーク性・シンボル性が重要な設計要件となっていること、(2)都市再開発地域やいわゆるウオーターフロント開発地域において建設されいること、 (3)形態と動きに着目すると、閉橋時の形態から動きを予見できるものと、閉橋時の形態からは動きが予見しにくいものに分けることができることが明らかになった。
  • 空間ゆらぎを用いた街路景観の分析
    高瀬 達夫, 奥谷 巖, 長瀬 大輔
    2005 年 40.3 巻 p. 613-618
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    景観評価で一般的に用いられている主要な評価指標は個々の景観に対する人の心理的評価である。しかしながらその評価は評価者ひとりひとりの属性や嗜好に依存するところが大きく、評価者間で必ずしも一致しないという問題点が生ずる。そこで景観内の色彩や構図を定量化することによって個々の景観ごとに固有な値を計測して客観的に評価を行う方法論として近年用いられるようになったフラクタルに着目し、景観内における赤青緑の 3原色と黒色の計 4色ごとの分布形態に関してフラクタル次元を求めることとした。さらに算出したフラクタル次元と実際に景観画像を見た人の心理的評価との関係を表わすために計量的分析手法を用いてモデル化を行った。また作成したモデルの有効性を探るために本研究では街路空間を対象として推定値と人の心理的評価の値との比較検討を行ったが、その際対象とする空間内の色彩分布に変化を与えるために街路樹の葉の色や樹木の高低差や間隔に変化をつけて作成した景観画像を用いることとした。
  • 中西 康裕, 柄谷 友香, 青山 吉隆, 中川 大
    2005 年 40.3 巻 p. 619-624
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、安心して利用できるはずの公園が犯罪やいたずらの多発する場所の一つとなっている。そのような状況から、公園利用者は公園を利用する際、何らかの不安を感じているものと考えられる。そこで本研究は、まず初めに、主な公園利用者である児童の保護者の意識から、公園における不安感発生要因を探索的因子分析により「視線の欠如」、「領域性の欠如」、「秩序の欠如」の 3因子に分類した。さらに、実際の公園において「視線の欠如」に関する項目が不安感発生に大きく寄与していることを明らかにした上で、「視線の欠如」を補完する力として、「公園利用者の監視力」、「沿道人通りの監視力」、「建物からの監視力」を挙げ、それらを説明変数として、公園内における不安感喚起地点を予測するモデルを構築した。その結果、本モデルは良好な再現性を実現することができた。
  • 景観大賞受賞地区等20地区を対象として
    小杉 雅之
    2005 年 40.3 巻 p. 625-630
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    都市景観は様々なとらえ方や評価をされることから、理想とする都市景観を一言で説明することは難しいものの、良好な景観はアメニティな空間であることが多い。本稿では、理想とする都市景観の姿を明らかにするために、良好な都市景観を構成する要素・要因について、インデックス化による整理を試みた。ここでの良好な景観とは、安心できる空間、文化的な空間、調和のとれた空間を同時に実現している空間を持つ景観とする。このような空間はしばしばアメニティである。その結果、良好な景観とされる景観大賞受賞地区等 20地区において、都市景観をインデックスにより分類できた。また、研究対象地区は良好な景観であることが再確認された。
  • 山梨県身延町における沿道区画整理型事業を事例として
    惣司 めぐみ, 澤木 昌典, 鳴海 邦碩
    2005 年 40.3 巻 p. 631-636
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、土地区画整理事業のひとつである沿道区画整理型事業をベースに、道路拡幅とその沿道の建物と地区内の景観及び環境の整備に取り組んだ山梨県身延町の「身延駅前通り地区」を取り上げた。この地区では、沿道区画整理型街路事業(建物の外観のデザインや景観については整備の対象としていない)を導入する際、住民の発意によって、新しくできる町並みを地域の個性を現したものにしようと、統一感のある町並みを目指した取り組みが一般住民・商業者主導によって行われ、独自の外観ルールが作られた。そこで、本研究では、この地区で統一感のある町並みをつくることを目指したきっかけから、外観ルールを作成するまでのプロセスと、その運用の実態を把握し、実際に出来上がった町並みを検証することによって、外観ルールと実際の町並みの関係性を明らかにし、今後、地域の個性を表現する新しい町並みを作る際に必要な視点や手法に関する知見を得ることを目的とする。
  • 嘉名 光市
    2005 年 40.3 巻 p. 637-642
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、我が国における駅前景観形成の草創期である戦前期大阪における大阪駅付近都市計画事業およびそれに関連する都市計画の立案の変遷から、駅前の整備にあたって目指した都市美観形成の方向性を明らかにすることを目的とする。戦前期大阪駅前周辺の美観形成の方向性は、当初は関係者の協議・調整によって大阪駅前整理計画協議会成案が検討され、大阪駅前や御堂筋などの大阪の玄関口をなす場所の美観形成には、街路整備に加え周辺の建築敷地造成が重要であるとの考え方が示された。さらに、大阪駅前整理工事に関する建議案などのように、美観形成の観点から大規模かつ整形の建築敷地造成が重要で、その実現手法として超過収用が期待されていた。一方、大阪市のシビックセンター計畫理想案懸賞により、欧米都市の美観形成に倣った一団街区の形成やビスタ、アイストップなどの街並美観が提案された。その後、大阪駅前付近都市計画事業変更、大阪駅前第2土地区画整理追加により、それまでの大阪駅頭、御堂筋沿道の美観形成と一団の街区の美観形成という考え方がみられ、美観地区追加指定では、詳細に区分した地区として位置づけ発展していった。
  • 宮城県仙台市を題材に
    青木 俊明
    2005 年 40.3 巻 p. 643-648
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では質問紙調査を用いて、中心市街地と郊外型ショッピングセンターを訪れる人の動機を比較した。分析の結果、以下の知見が得られた。 1) 中心市街地の訪問者は、郊外型ショッピングセンターの訪問者に比べて、買い物以外の欲求の充足も重視していた。一方、郊外型ショッピングセンターを訪れる訪問者は、中心市街地を訪れる訪問者に比べて、買い物のみを訪問動機としていた。 2) 中心市街地の訪問者は、郊外型ショッピングセンターの訪問者に比べて、一回の訪問時により長い時間滞在し、より多くの場所を訪れていた。 3) 中心市街地の訪問者は、郊外型ショッピングセンターの訪問者に比べて、より高い楽しさやリフレッシュ感を感じていた。 4) 共分散構造分析の結果、市街地での滞在時間は、飲食等の非日常的体験や精神充足が重要によって増加することが分かった。
  • 下北沢駅周辺地域を事例として
    高橋 弘明, 後藤 春彦, 佐久間 康富, 齋藤 亮, 石井 雄晋
    2005 年 40.3 巻 p. 649-654
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では商業集積地における来訪者の回遊を追跡調査によって明らかにし、店舗のひしめき合いを独自に定義した店舗数密度によって評価した。来訪者の回遊行動における目的地までの回遊距離と人数割合には、出口別や、平日と休日、性別にかかわらず一般的な統計的確率分布がみられることが明らかになった。店舗がひしめき合っているほうが立ち寄り回数と通過回数が多くなり、歩行速度は遅くなる傾向が伺えること、立ち寄り回数と通過回数は歩行速度が 0.95m/sをピークにそれ以前は増加しその後は減少すること、が明らかになった。北沢二丁目において補助 54号線が現在の回遊行動にとって重要な多くの通りの上を通る計画であることが明らかになった。
  • 蔚山市を事例として
    李 映娥, 鳴海 邦碩, 澤木 昌典
    2005 年 40.3 巻 p. 655-660
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    韓国の市場は現代的商業の発展と施設の老朽化などによって衰退している。このような市場は多くの小売店が密集し、一つの領域を形成している。従って多様な立場の商人が共存している。このため市場は空間的には一つの領域であるが商業的には一つの商業空間として運営することが難しくなっていて、商業的戦略性を持つとか環境改善および活性化を図ることを防いでいる。本研究は市場領域が均衡的・主体的に持続していくための有益に知見を得ることを目的とする。このため文献調査による市場の場所的な特性をまとめ、蔚山市の全ての市場に対して、観察調査による市場の領域形成および空間構成の特性と、商人および組織へのヒアリング調査による市場の運営管理の組織の構造特性を明らかにした。その結果、市場は現代的な商業空間とは異なる公・共的な場所性を持っていることと、蔚山市の市場は建物型市場、沿道店舗、露店という空間構成要素 3つが全て共存した領域が最も多いことが分かった。また、市場の運営管理における組織構造は似た空間構成でも多様であり、権利関係によって構成員を分けない組織構造が市場領域の均衡的・主体的な運営管理を可能とすることが分かった。
  • 壺坂 廣志, 嘉名 光市, 赤崎 弘平
    2005 年 40.3 巻 p. 661-666
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    大阪・船場は太閤下水跡に存在する背割り空間や路地、船場後退建築線による歩道状空地、総合設計制度による公開空地等、私有敷地内に様々なバリエーションの空地が点在している特徴を持ち、都市空間の魅力を生み出す場所となる可能性がある。しかし、詳細には把握されていないため、本研究では私有敷地内空間で構成されるパブリックスペースに着目し、中でも複数の私有敷地によって生み出されるつながった空間は、その連続性や広がりから、都市空間の魅力に大きな影響があると考えられるため、それらの実態とつながりを明らかにすることを研究の目的とした。船場には誰もが入れて利用できる空間は多く存在するが、つながりを絶つ要因があるためにつながった空間は全体の 6.0%であった。また、船場後退建築線の指定などの様々な制度によりつながった空間は近年増加する傾向にある。しかし、その多くは都市空間の魅力を生み出す場所ではなく、歩行利用のみがなされる空間であった。船場は、地区によってその特性は大きく異なる。そこで、各地域の特性を踏まえた計画づくりと地域住民等との合意形成によるルールづくりが重要であろう。
  • 大阪空堀地区の「からほり倶楽部」を事例にして
    三角 健二郎, 土屋 敦夫
    2005 年 40.3 巻 p. 667-672
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、建築主・所有者・占有者等の財産権を優先するまちづくりから、居住者の生活環境の充実という生活権を優先するまちづくりを目指し、既成市街地における生活空間の利用形態に関する検討を行なっている。まず、公共性を正当性基準あるいは人びとの間に形成される空間として検討し、まちづくり・建物・中間団体の公共性を明らかにしたうえで、人びとの活動によって公共空間が、公私・内外空間の間に創りだされることを述べ、まちづくりの理念・主体・方法を明らかにした。次に、公共性を活動の指針とする民間・非営利の中間団体で、大阪空堀地区で活動している「からほり倶楽部」の事例から、まちづくりを行なううえで備えるべき要件を示している。すなわち、それは市民とテーマを共有し、地域の資源で人びとの交流を拡げ、市民と協働で行政に依存することなく事業に取り組む方法で、中間団体・アソシエーションゆえに可能となっている。
  • 東京都港区における事例研究
    原田 敬美
    2005 年 40.3 巻 p. 673-678
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は東京都港区の環境影響調査制度運用の実態に関する分析である。港区はそのブランド力、立地の良さから都市開発が旺盛である。大規模都市開発にあたり生活環境保全配慮のため23区で唯一港区は環境影響調査制度を持っている。平成7年度制度開始から15年度までに提出された 29件の調査書を対象に、制度の評価、対象事業の特徴、環境影響の特徴、その対応策、制度上の問題点、今後の運用上の課題について分析する。環境影響調査の対象となる事業は延床面積 50、000平方メートル以上の開発である。制度は円滑に運用され、開発事業者が事業計画策定にあたり環境配慮の意識を持つようになったこと、制度として区民意見が環境対策に反映されるようになったことは制度の成果である。また、環境影響の悪化の恐れがある環境調査項目に対する様々な対応策が取られており、本制度の目的が果たせたと言える。
  • 観測点からの距離区分からの考察
    客野 尚志
    2005 年 40.3 巻 p. 679-684
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    夏期の昼間および夜間のヒートアイランド形成に対する、都市の土地被覆と土地利用の影響を評価した。土地被覆図は人工衛星データから作成し、土地利用図は 10mグリッドの土地利用図から取りまとめた。これらの影響の距離による差異について、考察する距離範囲を変位させてゆきながら検討した。その結果、周辺の人工的な土地被覆の割合が上昇するにつれて、気温が上昇する傾向にあることがわかった。特にその傾向は夜間の気温において顕著で、近い距離の土地被覆が大きな影響を及ぼしていた。さらに、観測点周辺の詳細な土地利用の内訳も夜間の気温形成に重要な影響を及ぼしており、気温上昇に寄与する土地利用のタイプは考慮する時間(夜間および昼間)で異なるという結果が得られた。
  • 南 正昭, 中嶋 雄介, 安藤 昭, 赤谷 隆一
    2005 年 40.3 巻 p. 685-690
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    津波災害の発生が想定される地域では、避難場所や避難路の設置が地域防災計画に位置づけられ、整備が進められてきている。当該地域における自然地形や居住地分布等の諸条件により、これらの整備に求められる機能的要件は多様であり、地域の特性に応じた避難計画あるいは施設整備計画の立案が求められる。本論文では、岩手県田老町を対象に、沿岸部特有の地形条件に起因する避難経路の高低差に着目し、測量による現地調査をもとに実態の評価を行った。避難を開始する場所によっては、過度な登坂を余儀なくされる経路があり、避難時に大きな身体的負担が生じる可能性のあることを明らかにした。避難者の身体状況と避難経路の状況を考慮した避難場所の指定や救護手段の準備などの避難計画を立案する必要を指摘した。
  • 江東区地域防災計画における広域避難計画の安全性向上に関するケーススタディ
    高橋 洋二, 兵藤 哲朗
    2005 年 40.3 巻 p. 691-696
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    大震災時の広域避難計画の安全性は避難経路に関わるものと広域避難場所に関わるものの双方に依存する。これら2つの安全性を同時に取り扱った研究は少なく、実際の地域防災計画においても必ずしもこれらの点を十分検討していないのが実態である。本研究では地域内の各地区の避難経路の安全性(居住地から広域避難場所に至るまでの安全性)と、広域避難場所の安全性の両方の観点から、各地区の避難計画上の安全性および避難場所相互の安全性をできるだけ平均化することを考える。こららの検討を GISの手法を用いることにより視覚的に表現し、避難区域の設定、避難経路の設定をより合理的に進める方法を提示する。具体的地域として江東区南部地域を取り上げ、江東区地域防災計画の問題点を分析するとともに、代替案を比較検討することにより改善策を示している。
  • 静岡県の木造住宅耐震補強支援制度(TOUKAI-0)の事例を対象に
    池田 浩敬
    2005 年 40.3 巻 p. 697-702
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    新耐震基準適用以前に建てられた既存の木造住宅の耐震化を促進する事は我が国における地震被害を軽減する上で最も緊急な課題である。近年、都道府県や政令市等では民間の木造住宅の耐震診断や耐震補強に対する助成等の支援制度を整備しつつある。しかし、その利用者数は、自治体の計画値に比べ著しく少ないのが現状である。これは、利用者のニーズが制度に十分反映されていないからであると考えられる。そこで、本研究では、静岡県の木造住宅耐震化支援プロジェクト TOUKAI-0の事例を対象に、当該制度の利用者及び制度の非利用者の両者の視点から需要者のニーズを把握・分析する事を目的とし、静岡市、富士市を対象としてアンケート調査を行い、より正確なニーズの把握を行うとともに、それらに対応した制度の改善点に関する提案を行った。
  • 照本 清峰, 王 雪ウン, 中林 一樹
    2005 年 40.3 巻 p. 703-708
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    台湾で起こった集集地震の後、震源断層である車籠埔断層の沿線区域において建築制限が実施されている。断層線沿線区域の土地利用のあり方は地震後の復興における課題の一つとなっている。本研究の目的は、集集地震後に台湾で実施されている車籠埔断層沿線区域の建築制限の現況の制度内容を整理するとともに住民の対応について調査した結果をもとに、断層線沿線区域の建築制限と土地利用の課題について検討することである。本研究から、断層線沿線区域の土地利用規制に関する制度は整備され建築制限が実施されていること、建築制限は住民の私権を制限する内容にもかかわらず反対されていないこと、台中市において断層線沿線区域からの移転計画が実施されたのは住民の活動が要因であることが明らかとなった。
  • 樋口 秀, 澤田 雅浩, 中出 文平, 小野木 祐二
    2005 年 40.3 巻 p. 709-714
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    新潟県中越大震災で大きな被害を受けた長岡市を対象として、住民に対してヒアリング調査を行い、ライフラインの復旧状況と住民の避難行動の関係性を明らかにした。さらに、避難場所として利用された街区公園について利用実態を調査し、地方都市における震災時の公園利用の課題を明らかにした。その結果、ライフラインの復旧は市街地区分により大きく異なること、電気の復旧が避難行動に大きく影響したこと、公園の利用では平常時の利用状況により住民の避難や避難の長期化に対する対応に差が見られたこと、が明らかとなった。
  • 長岡市と小千谷市におけるアンケート調査を通じて
    澤田 雅浩, 樋口 秀, 中出 文平
    2005 年 40.3 巻 p. 715-720
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    平成 16年 10月 23日 17時 56分に発生した新潟県中越大震災は、中山間地域を含む広範な地域に大きな被害をもたらした。 1995年に発生した阪神・淡路大震災に比べ倒壊建物や焼失建物、そして死者数が少なかった一方で、今回の震災においては避難者数の多さと避難行動の多様性が注目された。そこで本研究では被災地である小千谷市と長岡市の計 7地区を対象に、アンケートによって避難行動に関する悉皆調査を行った。その結果から自家用車での避難に代表される避難行動の多様性を子細に把握するとともに、地域の被災状況などがそれらの行動選択に及ぼす影響を考察した。加えて必ずしも避難所に避難しない可能性があるとの結果から、今後の防災対策のあり方にも言及している。
  • 紅谷 昇平, 室崎 益輝, 北後 明彦
    2005 年 40.3 巻 p. 721-726
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    阪神・淡路大震災から 10年が過ぎたが、被災地において未だに残された大きな課題として、地域の商店街や中心市街地における地域商業の復興の遅れが指摘されている。本研究では、まず商業統計より市区別の商業復興の状況を概観した後に、被災の大きかった市区における大規模店舗の進出実態と、震災前後の土地利用の変化について分析を行う。また、大規模店舗の進出が著しいエリアと、そうでないエリアとを比較し、大規模店舗が地域の商店街等に対して与える影響について検証することを目的とする。
  • 仮想市街地における市街地整備効果
    岩見 達也
    2005 年 40.3 巻 p. 727-732
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国には、地震時に大規模な火災が発生する危険性が高く、早急に対策を講じる必要のある市街地が約 8、000ha存在する。対策の実施には、従前の市街地の防火性能を把握し、対策の効果を把握することが重要である。本研究では、地震時の市街地防火性能指標を定式化し、その上で仮想的な市街地を対象として、延焼シミュレーションを用いた防火性能評価及び市街地整備の効果を把握する。
  • アユタヤ・アーカンソークロッコミュニティの事例より
    秋谷 公博, 藤井 敏信
    2005 年 40.3 巻 p. 733-738
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、 CODIの支援のもと住民主導で行われたアーカンソークロッコミュニティのオンサイトによる住環境整備事業の事例をもとに、コミュニティネットワークの活動及びコミュニティ開発のプロセスを検証した。その結果、 1)貯蓄グループ及び協同組合は、住民のエンパワーメントの向上及び新たな住宅の取得において活動の中心的な役割を果たしたこと、 2)住民は、プロジェクトを通じてコミュニティ活動に対する自信を得ることが出来たこと、 3)住民組織は、プロジェクトの過程において動的に変化したこと、 4)同コミュニティで実施されたオンサイトによる住環境改善事業プロジェクトは、ひとつの成功事例としてコミュニティ開発の一つの可能性を示唆していること、の 4点が明らかとなった。
  • 千葉県を事例として
    吉田 友彦, 齋藤 雪彦
    2005 年 40.3 巻 p. 739-744
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    千葉県内には放棄住宅地が 11地区存在する。立地上は、線引き自治体の郊外側に隣接して、比較的都市計画歴の浅い自治体で多くの放棄住宅地及びその予備軍とも言える2次抽出地区が立地している。これらの住宅地は県の条例や自治体の指導要綱によって確認(または協議)され、建築可能性が担保されているものの、ビルトアップを促進するような施策は特にない。線引き自治体内にも放棄住宅地はあるが、これらは将来的な建築可能性が無く、自治体の監視下にあり、前者との意味合いの違いに注意する必要がある。また、土地所有上は、大きく分けて「少数業者所有・不良債権型」と「多数個人所有・休眠資産型」の2つがある。後者には、「+抵当権残存型」といったバリエーションが存在する。前者は総面積が大規模で、かつ東京や神奈川等の県外地権者が多い。後者は小規模で千葉県内地権者が多い。放棄形態としては、これに関係なく、部分放棄と全部放棄が混在している。また全体として、坪単価 10万円程度の資産価値を有していると推察され、全体としてはおよそ 82億円程度となる。
  • 家族世帯用宿舎における空き住戸の分析を通して
    小山 雄資, 吉田 友彦
    2005 年 40.3 巻 p. 745-750
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    筑波研究学園都市では 2005年 8月の鉄道開通にともない、分譲マンションの供給が活発化しつつあるなか、都市建設の当初に大量供給された公務員宿舎において空き住戸が発生している。この空き住戸の増加に対応して、宿舎の一部廃止が始められているものの、廃止方針と宿舎需要の関係は必ずしも十分に検討されていない。そこで本研究は、多様な形式で構成される宿舎の居住状況について、宿舎が立地する地区と住戸の規格を分析軸に設定し、入居率と転出入の状況を指標として経年的に分析した。その結果、1)空き住戸は転入世帯の減少を要因として郊外部の宿舎において増加していること、 2)中心部の宿舎の中には、近年になり継続居住率が上昇し、定住化の傾向がうかがえるところがあること、の 2点を明らかにした。つづいて、すでに実施された廃止措置の方針と今回明らかにした居住状況との関係について考察を加えた。今後は居住世帯の流動性に着目して宿舎の役割を検討しなおし、空き住戸だけでなく転出入の動向にも注目した廃止住戸の選定を提起した。
  • 山本 茂, 鳴海 邦碩, 澤木 昌典
    2005 年 40.3 巻 p. 751-756
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    財団法人大阪府千里センターは、 1962年、大阪府による千里ニュータウンの開発を支援する機関として、当初は財団法人大阪府千里開発センターの名のもとに設置された。ニュータウンの開発後は、我が国のニュータウンの管理組織に一般的に見られる商業施設や駐車場などの公益施設の管理に加えて、コミュニティ紙の発行や市民のまちづくり活動の支援などを通じたコミュニティの育成、成熟期のニュータウンのまちづくりに関する調査研究や国際会議の開催など、千里ニュータウンの管理に関する役割を果たしてきた。千里センターの組織と事業は大阪府の機構改革によって今後、縮小・再編されようとしているが、千里センターが長年にわたって果たしてきたまちづくりや管理に関わる役割を誰が、どのような形で担うかが千里ニュータウンの今後のまちづくりにとって課題である。
  • 岡山市とその周辺地域を事例として
    森 泰三
    2005 年 40.3 巻 p. 757-762
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    都市域においては、住宅団地は点在しており、開発主体、形成された時期や規模、所有の形態も様々である。本研究では、それぞれの住宅団地における人口高齢化の動向を分析し、まちづくりについて考察した。研究対象地域は岡山都市圏の岡山市・倉敷市・旧山陽町における 14住宅団地、 47町丁である。各住宅団地の年齢別人口構成からクラスター分析を用いて、6つのグループに分類した。各グループで特化した世代を見出すことができた。さらに、次の2つのことが明らかになった。1つは、市街地周辺の賃貸住宅を多く含んでいる住宅団地の問題である。利便性などから継続して居住する場合が多く、子どもの世代は流出し、急激な人口高齢化を招いている。もう1つは、都市郊外の持ち家の住宅団地の問題である。将来、人口高齢化が進展した場合に、市街地とのアクセスや丘陵地の地形など不便な面が発生してくることが考えられる。人口減少時代に向かう中で、人口高齢化に対応した社会資本整備の必要性がさらに高まっている。
  • 塚田 伸也, 湯沢 昭
    2005 年 40.3 巻 p. 763-768
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、近隣住区の原単位である地域(町)の満足度について市街地の成立要件(都市近郊、郊外、土地区画整理事業の有無)から捉えて調査、分析を行ったものであり、特に地域コミュニティの視点を踏まえて、以下の知見を得た。(1)地域の満足度について、社会基盤整備からコミュニティ面を総括的に捉えた住民意識調査結果を因子分析することによって、満足度に影響を与える代表的な4つの因子「コミュニティ」、「防犯対策」、「商業機能」、「風致環境」を抽出した。(2)市街地の成立条件別に得られた因子得点をマッピングすることにより、都市の成立条件による地域の特性を把握した。さらに地域に対する総合満足度を重回帰分析により分析することで、因子の与える影響について定量的に明らかにした。(3)コミュニティ評価から捉えたコミュニティ活動、コミュニティ環境の特性を共分散構造分析により定量化した。結果、区画整理未施行市街地における「コミュニティ評価」と「風致環境」の特異性が明らかになった。
  • 東京都中央区第2ゾーンの事例研究
    川崎 興太
    2005 年 40.3 巻 p. 769-774
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都中央区はこれまで先駆的に多様な都心居住施策を展開してきた基礎自治体であるが、本研究はそれらの諸効果を検証するための研究の一環として、平成5年に用途別容積型地区計画が施行され、平成9年に街並み誘導型地区計画が追加施行された第2ゾーンを対象として、それらによる住宅供給の誘導効果を考察することを目的とする。本研究での分析を通じて、以下の3点が明らかになった。第一に、用途別容積型地区計画が施行された平成5年から併用型地区計画が施行される前の平成8年までの4年間において、用途別容積型地区計画による住宅供給の誘導効果は限定的なものであった。第二に、平成9年に施行された併用型地区計画は、道路斜線制限等の緩和によって共同住宅の供給促進に大きな効果を発揮した。しかし第三に、併用型地区計画の施行後に供給された共同住宅のストックとしての質は、延べ面積と階高の点からみて必ずしも高いとは言えない。
  • 江戸川区街づくり宅地資金貸付制度を例として
    勝又 済
    2005 年 40.3 巻 p. 775-780
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    既存小規模敷地において相隣環境の保全に配慮しながら居住面積を拡大するには、隣接敷地の買い拡げによって敷地規模を拡大する方法がある。東京都江戸川区では、一定規模以上への敷地の隣地買い拡げや土地の新規購入に際し低利融資を行う「街づくり宅地資金貸付制度」を創設し、運用を行っている。本稿では、同制度の適用事例の特性を分析し、敷地規模拡大の効果と今後の制度運用上の課題を整理し、低利融資による既存小規模敷地拡大のためのインセンティブ手法のあり方について考察している。分析の結果、持家1次取得層による土地の新規購入事例が多く隣接地買い拡げ事例は少ないこと、隣接地買い拡げ事例においても購入後の実質的な一体的利用は進んでいないことが明らかとなった。同制度の運用改善策として、隣接地買い拡げ後の敷地の一体的利用実現に期限を設ける、隣接地買い拡げ事例を増やすため需給のマッチングに向けた公的支援を行う(供給敷地のリザーブ、半隣地買い・1/3隣地買いの支援、土地税制の優遇、土地売却時の事前相談)、「面」的整備につなげるため地区計画や密集事業の補助ツールとして地区を重点化し本制度を活用する、等を提案した。
  • 川島 崇, 平居 直樹, 村橋 正武
    2005 年 40.3 巻 p. 781-786
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    戦後の高度成長に伴う人口と産業の大都市への集中は居住環境悪化や地価高騰による都心部での住宅地取得を困難とした。その結果、大阪都心部では居住者の減少により都市活力の低下などの様々な問題が引き起こっていた。そのため、都心居住施策の実施が求められ、近年都心回帰現象の兆しがみられるようになった。しかし、このような人口回復が都心部の定住人口に繋がるのかは明らかにされていない。そのため、本研究では、都心居住が必要であるという観点から、大阪都心部における人口動態を捉えるとともに、都心居住者の転居意向や居住環境整備の優先構造を明らかにすることで、人口動態からみた都心部の居住環境整備のあり方を提案することを目的とする。そして、この研究において都心居住者が必ずしも長期定住型ではないこと、都心部の人口増加には地域レベルに応じた居住環境整備が効果的であることを明らかにした。
  • 任 莅棣, 高木 真人, 仙田 満
    2005 年 40.3 巻 p. 787-792
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    中国の庭園は大きく分けると、歴代の皇帝によって営まれた皇家庭園と役人や商人などに造られた私家庭園がある。皇家庭園の造営は清朝時代に特に盛んであり、本研究はその代表としての避暑山荘、頤和園、北海公園の3園を対象として、これら3園に共通してみられる湖に沿った長い廊的空間における利用者の歩行特性を分析した。この廊的空間は利用者を視覚的に誘導しながら景観を楽しませる重要な空間である。この廊的空間の利用者に対して、追尾調査を行うことにより、3園における利用者の主動線や副動線などの歩行動線、歩行速度、歩行距離などを比較分析した。また、滞留回数、特に座っての滞留回数が歩行速度に与える影響について明らかにした。
  • ロンドン、東京との比較による北京緑化隔離帯計画に関する研究
    劉 暢, 赤崎 弘平
    2005 年 40.3 巻 p. 793-798
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は北京緑化隔離帯の計画及びその実現可能性に着目した。具体的には、計画策定の流れ、計画内容及び緑化隔離帯として指定された地域の実態を把握した。そして形状、計画内容、実現手法についてロンドン、東京のグリーンベルトとの比較により、北京緑化隔離帯の問題点及びその実現に向けて、ロンドンと東京の事例から参考すべき点を探り出す。本研究から得られた結論は以下の通りである。1、ロンドングリーンベルトと北京第二緑化隔離帯は「都市構造」のひとつであることに対して、ロンドンのグリーン・ガードル、東京の環状緑地、北京の第一緑化隔離帯は形状、位置から見れば「都市基盤施設」として位置づけることができ、道路、公園などと同じレベルの都市施設であり、レクリエーション機能が重要でる 2、北京では、「第一緑化隔離帯」は都市構造としてのグリーンベルトと認識されたため、レクリエーション機能が重視されず、林地の建設と農地・農村の保全が行われた。 3、しかし実際に建設された林地は景観・レクリエーション機能が果たせずに孤立し、農地・農村の保全は後追い的な関連法は効果がなく、市街地化及びスラム化が進行した。
  • ワシントン州キング郡のマスターガーデナープログラム参加者へのアンケート調査から
    平田 富士男
    2005 年 40.3 巻 p. 799-804
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    緑は住民主体のまちづくり活動を誘発する上で効果的な素材であるため、各地で緑化・園芸ボランティア育成活動がおこなわれてきている。しかし、そのプログラム構成についてのノウハウがわが国ではまだ蓄積されておらず、各地で手探りのプログラム検討が行われている。そこで、先進事例としてアメリカのマスターガーデナープログラムの参加者へアンケート調査を行い、その意識と活動の実際を調べ、わが国でのプログラム検討にあたっての参考情報を得ることとした。その結果、アメリカでは壮年女性の参加意識も活動も活発であること、参加の動機の違いによって学びたい項目も異なってきており、参加者はプログラム全体を見通して受講してきていること、そのような意識や活動は、講座だけでなく修了後の活動支援も含めた一連のプログラムとして運営されて醸成されていることなどがわかった。
  • 武田 史朗, 増田 昇
    2005 年 40.3 巻 p. 805-810
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    英国の自然葬地の計画が受けている社会的な評価の景観的な側面について、英国の開発統制制度のひとつである計画許可申請において計画小委員会が作成する報告書の記述内容から分析した。その結果、NBGの開発許可の審査過程では、NBGの景観的価値のひとつが地域の景観的文脈に沿った自然景観の保全保護、向上、あるいは再生に対する寄与の度合いにあり、人工物や地域になじみのない植栽の導入などこれに反する計画は否定的な評価を受ける場合のあること、また既存自然景観の向上はその更新が前提だが、一時の大幅な改変は景観的価値の低下とみなされる場合のあること、また、景観設計の内容だけでなく樹木定植や植栽の段階的計画や管理団体の設立なども含む樹林の長期的な管理計画が評価の対象となっていることがわかった。一般に NBGでは記念樹の定植などによって植物景観の改変を伴う場合が多いことを考慮すれば、地域景観の文脈を踏まえた上での長期的な景観の育成・管理の視点が、敷地選定や計画の初期段階から重要になると考えられる。
  • 自然再生緑地整備事業を対象として
    阿波根 あずさ, 中山 徹, 宮川 智子
    2005 年 40.3 巻 p. 811-816
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本は急速に都市化が進んだため多くの自然環境が失われてきた。それに伴い過去に損なわれた自然環境や生態系を取り戻す事を支援する自然再生推進法が平成 15年に施行された。しかし自然環境を再生する場合に地域によって具体的な目標が異なり、実際に良好な状態を保つために定期的にモニタリングを行うなどの対策が必要であるため時間と費用がかかる事が課題となっている。これらの事を考えると地域の力を生かし、計画策定から管理体制まで一貫したシステムづくりが必要である。本研究では自然再生緑地整備事業を対象に住民参加による自然環境再生の手法を検討する事を目的とする。結果として 1)具体的な自然再生の手法は事例によって様々であるが、共通して地域性を感じる事のできる自然環境を再生するという方針を立てていた 2)計画策定段階での 3つの手法について検討し、住民参加を行う事で維持管理体制まで考慮した取り組みができるという知見を得られた。また計画策定時の十分な議論のためにファシリテイターの役割と人選が重要である 4)維持管理団体のためのサポータークラブ等の設置する事が望ましい、という事が明らかになった。
  • 歴史的な絵図、地籍図、土地台帳を用いた農地のランドスケープの歴史的変遷分析
    ダリオ パオルッチ マッテオ, 宮脇 勝
    2005 年 40.3 巻 p. 817-822
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、群馬県山村集落六合村の文化的景観に関するものである。その歴史的なルーラル・ランドスケープは、特別に際立った性質のものではないけれども、本研究のアプローチは、その歴史的な農地景観について注意深く考察したものである。研究の最初は、江戸、明治、昭和、現代、それぞれの時代の景観について、絵図、土地台帳、地籍図からその土地利用について分析を行った。こうした過去における土地利用分析は、現代の地図の上に、古い絵図をデジタルデータ化し、重ね合わせることで作成することで、実施できた。こうした過去の地図との比較によって、220年間にどのようにランドスケープが変化したのかを理解することができる。本論の結論では、赤岩地区全体の文化的景観資源の分布を地図上で明らかにすることができた。また、その結果から、歴史的なランドスケープの保全とマネージメントに必要な配慮と提案を行っている。
  • 東京都心部をケーススタディとして
    岡村 祐, 北沢 猛, 西村 幸夫
    2005 年 40.3 巻 p. 823-828
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市におけるいくつかの空間要素が空間的に密接な関係性を持つことによって、それら総体としての価値が新たに生まれるという都市空間遺産に着目し、その一例として、神社境内地とその境外における参道(=境外参道)の組み合わせによる空間を取り上げる。東京都心部においては、現在境外参道は 20事例に留まり、また、現状の物的側面に関する分析や歴史的な空間の変容及びその背景の探求から、痕跡空間、サイン空間、そしてアプローチ空間という空間の特性が明らかになった。
  • 「中津川の好きな景観」をテーマに撮影された写真を通じて
    菅原 崇史, 三宅 諭
    2005 年 40.3 巻 p. 829-834
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、中心市街地を流れる河川景観整備および保全に資する知見を得るために、「中津川の好きな景観」をテーマに撮影した写真を分析対象として、中津川の河川景観について以下の 2点を明らかにする事を目的とする(1)撮影された写真の主対象、視点場、構図の3点から中津川の景観の特徴を明らかにする。(2)(1)で得られた中津川の景観を保全していくために必要な指針を明らかにする。
  • 三尾 尚己, 上甫木 昭春
    2005 年 40.3 巻 p. 835-840
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、木質バイオマスは、地球環境や地域振興に貢献するとして注目を浴びている。本研究では、国内において木質バイオマスに関わる取り組みを行う団体を対象にアンケート調査を行った。そのアンケート調査から、木質バイオマスを利用したエネルギー事業は、わずかしか行われていないことが明らかとなった。また、団体属性別の解析から、官を主体とする団体は里山管理を、産を主体とする団体は地域産業の振興を、民を主体とする団体は地域コミュニティの活性化をよく行っていることが明らかとなった。そして、先進事例の調査から、各主体が得意とする活動を精力的に行い、それとともに、様々な主体と連携していくことが重要であることが明らかとなった。
  • 専有空間のもつ公共性に対する地域共同管理の可能性に関する研究
    林 尚貴, 川合 史朗, 浦山 益郎
    2005 年 40.3 巻 p. 841-846
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、宅地内の庭木や生垣が連担することで、潤い豊かな緑の景観を日常的に享受している地域住民が、その緑の景観に対してどのような評価を行い、また、どの程度の経済価値を見出しているかについて探ろうとするものである。名古屋市の東部地域に位置する緑被率が異なる表山、滝ノ水、名東の各小学校区に居住する地域住民に対して住民意識調査を実施した。その結果、庭木や生垣などによって形成される緑の景観が地域の共有財産として地域住民から一定の評価が得られている表山小学校区について、仮想市場評価法を用いて緑景観に対する支払意思額を算出した。その結果、宅地内にある庭木や生垣で形成される緑の景観であっても、緑被率が高く一定の緑量が確保されていれば、地域の公共財として認識される可能性が高くなること、また、その公共財を保全するために、受益者たる地域住民が一定のコストを負担する可能性があるという結果が得られた。
  • 小布施オープンガーデンを事例として
    野中 勝利
    2005 年 40.3 巻 p. 847-852
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、小布施オープンガーデンを事例として、日常的に公開しているオープンガーデンにおける観賞者の属性や行動特性を明らかにすることを目的としている。分析の結果、次のような結論を得た。回答分で全体の 9割弱の公開庭が観賞され、特に観光拠点のない地域も含め、広範囲に観賞者が行動していること、観賞者の要求に応える多様な公開庭が提供されていることがわかった。観賞者の行動では、「立ち寄り型」「地域集中型」「目的移動型」「広範囲網羅型」の四つに類型化することで、その行動を特徴づけることができた。観賞者は「オープンガーデンブック」の地図を頼りに移動している。しかし地図の改善、周辺の公開庭を示す案内板や公開庭の入口を示す表示板の設置など、移動を円滑にするための要望が多く出されている。オープンガーデンの運営主体となる自治体や公開庭のオーナーは、こうした観賞者の行動を理解し、これらの要望に対する適切な対処が必要である。
  • 札幌市における大規模公園を事例として
    愛甲 哲也, 柴田 まち子
    2005 年 40.3 巻 p. 853-858
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    公園緑地への障害者のアクセスおよびユニバーサルな公園のデザインが求められている。本研究では、車いす使用者の公園の利用実態・意識を明らかにするとともに、公園利用を妨げている園路の物理的要因を明らかにすることを目的とした。その結果、公園利用の頻度は少なく、身障者のための駐車場やトイレの整備、舗装された園路、緩やかな園路などが求められていた。札幌市の3つの公園を事例として園路の傾斜、幅員、舗装を調査した結果からは、そのいずれかの要因が満たされていても組み合わせによって、車いす使用者の利用が不可能になる場合があることが示された。園路の傾斜、幅員、舗装を関連付けて整備し、連続性を確保することの必要性が明らかとなった。
  • ミチゲーションを導入した条例の課題と解決策の検討
    宍倉 正俊, 横内 憲久, 岡田 智秀
    2005 年 40.3 巻 p. 859-864
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、埼玉県志木市で試行されている「代償ミチゲーション制度」を、促進させる方策を提案する。調査では、志木市が実施する緑地保全策の運用実態を、文献調査、ヒアリング調査より捉え、「代償ミチゲーション制度」の課題点に対する解決策を導いた。その結果、円滑な「代償ミチゲーション制度」を実施するための支援策として、「土地貸借型ミチゲーションバンキング」を提案し、実現可能性を検討した。
  • 鎌倉市滑川流域を事例として
    山下 英也, 片桐 由希子, 石川 幹子
    2005 年 40.3 巻 p. 865-870
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    「緑の基本計画」などの都市環境に係わるマスタープランの見直しは、計画立案時に検討する機能論的な緑地の配置計画だけでなく、計画の進行実績に対する評価を踏まえることが必要となる。一方、都市や自然環境に関する調査や計画策定では、近年 GISが普及し、業務の効率化が進められている。しかしながら、緑地配置計画に係わる説明性が十分でないなど、客観的な論拠を提供するものとはなっていない。詳細な都市環境マネジメントの前提として、適切なスケールの基礎的環境情報の整備と分析単位の設定、説明性を考慮した分析プロセスの整備が必要である。本研究では、鎌倉市滑川流域を対象に、地域分析の原単位として谷戸レベルの小流域を設定し、都市・地区レベルの基礎的環境情報に基づいた、時間軸を踏まえた地域環境の把握、法規制による緑地の担保性評価の手法を検討し、GISを用いた都市環境マネジメント手法としての展開の有効性を論証することを目的とする。
  • 横須賀市田浦・長浦地区を対象として
    森 貴規, 横内 憲久, 岡田 智秀
    2005 年 40.3 巻 p. 871-876
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、通称地名を活用した谷戸の景観保全を促すために、通称地名の対象景観とその特徴を明らかにするものである。そのため、本調査では、横須賀市田浦・長浦地区において、文献調査、地域の歴史に詳しい方々へのヒアリング調査、現地踏査および図面分析を実施した。 その結果、現在でも継承されている 12箇所の対象景観を明らかにし、その構図的特徴と視覚構造を把握した。そして、それらを通じて対象景観の保全策を提示した。
  • 首都圏中央連絡道路(幸手市区間)を対象として
    伊東 英幸, 福田 敦
    2005 年 40.3 巻 p. 877-882
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、埼玉県幸手市を対象地域とし、首都圏中央連絡自動車道(以下、圏央道)で消失する水田などの湿地環境に対する代償ミチゲーションを想定し、休耕田や空地などのオープンスペースを活用した場合のミチゲーションバンクサイト候補地がどの程度確保できるのか分析を行った。また、休耕田を所有している農家に対し休耕田ビオトープに関するアンケート調査を実施し、我が国へのミチゲーションバンク導入可能性について検討を行った。
  • 近岡 祐太, 十代田 朗, 津々見 崇
    2005 年 40.3 巻 p. 883-888
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、東京 23区におけるギャラリーの空間的特性を明らかにした。結論は以下の5点である。1)現代美術家の作品発表の場は、約9割が何らかの形でギャラリーを利用している。2)東京 23区におけるギャラリーは、特に銀座・京橋エリアと青山エリアに集中している。集中エリアは他業種との比較から、全体として「高級品」を扱うエリアであることが推察された。3)銀座・京橋エリアと青山エリアのギャラリーは、立地特性から「大通り沿い型」「隠れ家型」「裏通り店舗型」の3つに分類される。4)銀座・京橋では青山に比べて【閉鎖的ギャラリー】が多い。一方、いずれのエリアにも【開放的ギャラリー】が集中する通りや街区は見られない。5)店主の意識とギャラリー同士の協力次第では、人々が気軽に参加できるイベントを行うなど工夫をすることで、ギャラリー集合が文化発信拠点となり得る可能性は垣間見える。
  • 籾山 真人, 十代田 朗
    2005 年 40.3 巻 p. 889-894
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は商業統計を元に、買回り品率の高い商業地域を「広域集客型エリア」と位置づけ、広域集客型エリアが東京都全域にどのように拡がっているかを明らかにしている。主な結論としては以下のとおり。1)東京には広域集客型エリアは 36エリアが存在したこと、2)立地タイプは大きく「連携型」「内包型」「クロス型」「逆内包型」「繁華街なし型」5つのタイプに分けられること、3)また「連携型」エリアの形成には、「越境型」の買回り行動の増加及び、メディアによって複数エリアが取り上げられるといったことが背景となり、要因となっていたことの 3点である。
  • 渋谷駅ハチ公前広場を対象として
    岡本 淳, 後藤 春彦, 李 彰浩, 関口 信行, 植田 竜司
    2005 年 40.3 巻 p. 895-900
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    The purpose of this paper is clarifying how to place effectively a billboard for centering people's eyes in a station square and to accumulate billboards for creating liveliness. On this paper, first, we clarify how people's eyes move to a horizontal and vertical direction, second we clarify the relationships between the gaze rate and the size of an appearance of the billboard by a gaze experiment with an eye-mark recorder. I demanded the gaze rate and relation of size (an appearance area rate) of an appearance of an advertisement thing. There was an advertisement thing to deviate from this relation greatly, and it became clear that influence appeared to the gaze rate in a neighboring building and mutual relations with an advertisement thing. Third, we clarify the characteristic of billboards included in a group of billboards creating liveliness recognized by an impression evaluation.
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