都市計画論文集
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40.3 巻
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  • 愛知県豊橋市を事例に
    田村 秀樹, 広畠 康裕
    2005 年40.3 巻 p. 301-306
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    近年、社会資本整備計画においては計画段階から地域住民の参画を求めることが重要となっており、住民意識アンケート調査などの多くの試みが実施されてきた。また、市民ワークショップ (以下 WS)が地域住民の詳細なニーズや意見・要望を収集するとともに住民主体のまちづくり活動を促進させる手法として実施されてきた。しかしながら、 WSを通じて得られた住民意識とアンケート調査で得られた住民意識の間には、提供される情報の違いや住民相互のコミュニケーションの有無等に起因して、いくつかの面で差違があると考えられる。そこで、本研究では豊橋市において実施された交通マスタープラン (MP) 策定のための WS参加者を対象とした事前事後の意識調査を実施しその分析を行うことにより、 WS参加による意識変化の程度と方向について地区特性や個人属性等の違いを考慮しつつ把握することを目的としている。その結果、多くの項目において WS参加前後で一定の意識変化が見られ、その変化の方向は地区特性や WSでの議論の内容と関係していること、 WS参加による影響を把握するためには地区特性や個人属性等による影響を同時に考慮すべきことなどが示された。
  • 「2005 ふゆトピア・フェア in 旭川」における実験
    浅野 基樹
    2005 年40.3 巻 p. 307-312
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    積雪寒冷地の冬期歩道は、積雪や路面の凍結により歩行者のモビリティーを低下するとともに、転倒事故を引き起こしている。種々の対策が取られているが、昨今の厳しい財政事情などから、過度な財政負担を強いられない適切な冬期路面管理手法が求められている。本研究では、利雪・克雪に関する市民参加型イベントである「ふゆトピア・フェア」において、様々な凍結歩道を再現し、市民参加による歩行実験を行い、コンジョイント分析による冬期歩道管理水準に関する主観的モビリティー(移動しやすさ)評価を行った。その結果、すべり止め材の有無(すべりにくさ)と路面の凹凸が主観的モビリティー評価に大きく影響していることが分かった。
  • 新宿駅南口地区を対象として
    伏見 孝一, 浅野 光行
    2005 年40.3 巻 p. 313-318
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    駅前では待ち合わせなどにより混雑が発生している。これを解消するために、滞留しやすい空間を用意し、滞留者を誘導する必要がある。そこで、発生する滞留現象を分析し、滞留しやすい空間作成の一指針とすることを目的とする。対象地は新宿駅南口とする。
  • 愛知県日進市「くるりんばす」をケーススタディとして
    井上 佳和, 松本 幸正, 松井 寛
    2005 年40.3 巻 p. 319-324
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、愛知県日進市「くるりんばす」を対象に調査を行い、コミュニティバスの利用実態と利用者意識を属性別に捉えた。その結果、民営バス停圏外に居住する高齢者が通院・検診および買物を目的として高い頻度で利用していることがわかった。通院・検診および買物は高齢者にとって日常的な不可欠な活動であり、コミュニティバスは、民営バス停圏外に居住する高齢者の生活交通を確保していることがわかる。満足度分析の結果、「バス運転手の対応」や、「運賃」などに対しては、利用者のニーズを十分充たしていることがわり、無料利用者は「全コースが市役所を起発着」が、有料利用者は「全コースが日進駅を通る」が高いことがわかった。以上のことから、コミュニティバスは、利用者生活の利便性を向上させ、無料利用者の生活交通を担っていることから、その重要性が明らかになった。
  • 清水 肇
    2005 年40.3 巻 p. 325-330
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    移動に様々な制約を受ける車椅子使用者について、特に移送サービス(STS)である那覇市社会福祉協議会の「うまんちゅ号」利用者を対象に交通行動の実態とその柔軟性に関する実態調査を行った。交通行動の柔軟性とは、随時決定した交通行動や予定変更、そして不足の状況に対応できる条件のもとでの交通行動を指す概念である。車椅子使用者は、事前に計画された目的トリップが交通行動の中心となる傾向があるが、計画的目的トップの組み合わせの中に、随時決定した目的トリップを付加することで交通行動に柔軟性をもたらそうとするパターンを発見できた。交通行動全体を柔軟に組み合わせて予定変更を繰り返すパターンは少数事例として見いだされたが、今後はこのような形も含めて多様な交通手段の連続性が確保されることが課題となる。交通手段としては、STSが計画的で生活の基盤をなす交通行動の手段として使われ、モノレールが自由で柔軟な交通行動に使われる傾向が強いが、各手段は複合されて利用されるものであり、トータルな交通手段の体系によって柔軟性が確保されるものと考えられる。
  • 札幌都心部を対象として
    石田 眞二, 鹿島 茂, 久保 勝裕, 亀山 修一
    2005 年40.3 巻 p. 331-336
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、車椅子使用者が、歩道上を目的地まで走行する場合において、複数ある移動経路の中で路面の凹凸が起因している走行負荷の最も少ない経路を最適経路と定義し、札幌市都心部において、最適経路探索システムの開発をおこなった。本研究は、まず、路面の凹凸を物理量として把握するために歩道の縦断プロファイルを測定する。次に歩道の縦断プロファイルデータから路面の平坦性(以下、累積負荷高さ)を算出し、累積負荷高さから路面の凹凸に起因する車椅子の走行負荷量(以下、車椅子走行負荷量)を求めた。本システムは、歩道を評価するパラメーターとして車椅子走行負荷量を用いた。最適経路の探索方法は、ダイクストラ法のロジックを用いて経路の最適化をおこなっており、 GISのマップ上において、任意の出発地と目的地を選択することで、その間の最適経路を提示することができた。
  • 新潟駅駅舎・駅前広場計画提案競技を事例として
    高橋 知里, 岡崎 篤行, 梅宮 路子
    2005 年40.3 巻 p. 337-342
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    公共施設計画の設計者選定において、最も多く用いられている方法は入札である。しかし、より優れた公共施設を計画するためには、設計者選定段階においても市民参加を取り入れることが重要である。そこで、本研究では、新潟駅駅舎・駅前広場計画提案競技における運営体制と参加の経緯、市民参加システムの実態を明らかにする。結論は次のとおりである。 1)JR東日本は消極的な姿勢であった。 2)設計者選定において市民参加組織の積極的な働きにより2回の提案前と最終審査時の 3段階で参加の場が確保された。 3)市民は公開審査と応募要項別冊の作成によって満足を得られた。 4)事業者の積極的な市民参加への取り組み、第二段階作品提案前での市民と提案者のより具体的な議論の場が必要である。
  • 蒋 恩, 中川 大, 柄谷 友香, 青山 吉隆
    2005 年40.3 巻 p. 343-348
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    近年、郊外住宅街に公共交通サービスを広げていく「ペネトレーション」の考え方が欧米で定着しつつあるが、これらの路線の多くが不採算路線なので、日本では定着していない。このため、郊外部では、高齢者・障害者等に十分な公共交通サービスが提供されていない。僅かに近年コミュニティバスが広がりを見せており、これらの一部には、これまでのバスサービス空白地域を埋める役割をするものもある。しかし、これらは必ずしも社会的な便益が計測されて実施されておらず、それらの施策を正確に評価する必要性がある。本研究では、ヘッドニック・アプローチを用い、交通ペネトレーションの役割を果たすコミュニティバス事業により発生した便益を地価上昇額として定量的計測を目的とする。
  • 野村 和宏, 森本 章倫, 古池 弘隆
    2005 年40.3 巻 p. 349-354
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    近年、コンパクトシティに代表されるように、環境問題・エネルギー・持続可能性の観点からのアプローチが盛んである。しかしながら、その中心となる容積・交通モード・人口密度・交通空間量に関する定量的分析は極めて少なく、今後展開が期待される土地利用と交通の融合に基ついた街づくりの議論への障害となる。本研究では、統計資料より我が国の都市を対象として道路面積、 DID人口密度、自動車分担率の関係を求め、 Kenworthyらが指摘した都市圏密度とモードとの関係が成立することを確認した。さらに、モード別の交通空間量と CBD床面積の関係について、交通軸を持った線形都市をもとにシミュレーションにより解析した。これより、自動車に依存した都市はトランジットに依存した都市に比べて都市圏が低密度に拡散すること、ならびに Kenworthyらの構造が成立する理由を明らかにした。
  • 内山 岳大, 円山 琢也, 原田 昇
    2005 年40.3 巻 p. 355-360
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    混雑緩和を目的とした道路整備は誘発交通を生じさせ結局混雑緩和につながらないという議論が存在する。既存の四段階推定法はこうした誘発交通を考慮に入れた需要予測が行なえないため、推計される道路の整備効果にバイアスが生じている可能性がある。この問題に対して既存研究では四段階推定法にかわる予測手法である統合需要モデルが構築されているが、このモデルにより推計された誘発交通量が現実の値に近いものなのかは検証されていなかった。そこで本研究ではモデル出力値の誘発交通量の妥当性の検証に向けた基礎的分析として統合需要モデルの予測結果について精度評価を行なう。現在のデータで構築したモデルを用いて過去の1時点の需要予測をする逆予測を行い、過去の実績値と比較した。また従来の固定需要モデルの予測値と統合需要モデルの予測値を比較することで統合需要モデルの精度を検証した。その結果、都市圏全体としては誘発交通を考慮することによる予測精度の大きな改善は見られないが、ピーク時間帯で特に道路の整備の影響を強く受けている ODペアのトリップ分布や手段分担率については予測精度の改善が生じることを示した。
  • 谷口 綾子, 藤井 聡
    2005 年40.3 巻 p. 361-366
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    モビリティ・マネジメント (MM)は、人々が車利用から公共交通機関や自転車、徒歩などの持続可能な交通へと自発的に行動変容聡することを促すためのコミュニケーションを主体としたソフト施策の総称である。我が国においても、実験的な MMが各地で実施され、その手法と効果が報告されている。しかしながら、我が国の取り組みは、未だ実験的なものに留まっており、広範に実施された事例は無い状況にある。本研究は、国策として MMの本格導入を検討している英国の現状を、文献調査とヒアリング調査により明らかにするとともに、我が国に MMを本格導入する際の課題を抽出するものである。その結果、英国では、国と地方自治体、民間コンサルタント、 NPOのいずれの主体も MMのコンセプトを深く理解して実務に携わっている現状が明らかになった。我が国においても、英国の取り組みの長所を参考にした広範な取り組みが期待される。
  • 富山県越中舟橋駅についての調査報告
    川口 宏, 桜井 康宏
    2005 年40.3 巻 p. 367-372
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    The purpose of this paper is to verify the effects of P&R where is next to the station with library.Ecchu-Funabashi station in Funabashi-village Toyama prefecture was analyzed in the following three methods.1) The analysis of the statistics date. 2) On-the-spot investigation by the observation. 3) Questionnaire to the user of Park-and-Ride system. The main results are as follows.1) The passengers of the station don't decrease.2) The use rate of the library is very high.3) Multiplier effect is admitted between both.
  • 柿本 竜治, 溝上 章志
    2005 年40.3 巻 p. 373-378
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    平成14年の道路運送法の改正により、バス路線の需給調整規制の廃止とともに地方バス補助制度も改定された。これにより、これまでの内部補助を前提とした事業者への補助措置ではなく、生活交通確保のために地域にとって必要な路線に対する路線毎の補助制度に改められた。補助金投入に際し、従来、路線を評価する指標として営業係数や輸送密度が用いられてきたが、これらの指標による評価には営業費用を最小にする投入や産出がなされているかという企業努力は不問としている。そこで本研究では、生産性と集客性で構成される「企業努力面」と、公共性と収支性で構成される「経営・環境面」とにより路線を分類し、さらに運行サービス水準等の路線の特性による主成分分析を行い、路線改善策の抽出する方法の提案を行った。この方法により、公的補助投入対象路線を効率的に絞り込むことが出来るとともに、補助対象外の路線を維持するための具体的な改善策を示すことが出来た。
  • 札幌市のバス路線を事例として
    東本 靖史, 岸 邦宏, 佐藤 馨一
    2005 年40.3 巻 p. 379-384
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    公共交通サービスの質の向上が問われる中、路線バス事業は年々、利用者数が減少しており経営悪化は深刻な問題となっている。さらには平成 14年の需給調整規制の撤廃にともない、不採算路線からの撤退や運行便数の減少など、地域のバスサービス水準の低下が懸念されるところである。今後、バス事業の公共性を維持していく上で、廃止する路線や補助金の適用路線の選定は採算性だけの直接的な評価だけではなく、各路線の特徴を総合的に考慮することが必要である。本研究では包絡分析法(Data Envelopment Analysis)を用いて、バス事業者とバス利用者の視点から総合的な効率性評価方法を構築し、札幌市内の各バス路線の効率性を評価した。さらに効率性が低いバス路線については具体的な改善案を示した。
  • 長田 哲平, 森本 章倫, 古池 弘隆
    2005 年40.3 巻 p. 385-390
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    2000年 6月に施行された大規模小売店舗立地法では、評価に用いる指針が全国一律の基準であるため、地域都市の特性が反映されていない。これにより多くの地方都市では、大規模小売店舗により生じる問題に悩まされている。特に駐車場容量不足や渋滞など、交通関連の問題である。そこで本研究では、より地域の実情を反映した指針とはどうあるべきなのか考察し、地方都市における地域の実情を反映したの独自基準の策定方法の提案を行った。特に、地域の実情を反映する為に 2000年と 2004年に栃木県の大規模小売店舗に対して実施された調査結果を用いた。これにより、大規模小売店舗立地法に示されている指針に対して、地域性を考慮した独自基準のあり方を提案する事が可能となった。
  • 福岡市と呉市を事例に
    渡辺 直
    2005 年40.3 巻 p. 391-396
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は、 1990年代半ば以降、公共空間上の屋台営業に対して施策整備に取り組んだ2市、福岡市ならびに呉市の屋台政策を、対象事例として取り上げ、公共空間利用の可能性を探る視点から、屋台政策の背景および方針、ならびに実現された施策内容について比較・分析を行った。両市の屋台政策比較からは、公共空間利用を図る上で、1)ルールと利用許可をセットで制度整備することの有効性、2)特例化するのではなく、利用機会が公平に用意される制度の必要性、3)「組合」のような受け皿的機能・組織の必要性、の3点が抽出できた。
  • 新潟県の白地方針の市町村案に対する修正過程を通じて
    岩本 陽介, 松川 寿也, 中出 文平, 樋口 秀
    2005 年40.3 巻 p. 397-402
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、新潟県の区域マスで示される白地方針の市町村案と県修正案に着目して、都道府県が広域的、客観的見地から計画白地で策定される市町村の土地利用計画への関与する際のあり方について論じている。県が開発想定地を過大に指定した市町村案に対し、大幅な修正を加えていることを確認し、県と市町村の計画白地に対する考え方に隔たりがあることを明らかにした。その隔たりのために、県が想定していた白地方針の運用が実現に至らなかったことを指摘した。結論として、市町村の意識の向上、また適切に提示された白地方針に対する制度面の補完の必要性を論じた。
  • 市街化調整区域での開発許可条例による開発コントロールを中心に
    塚本 太一, 和多 治
    2005 年40.3 巻 p. 403-408
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、地方都市の今日的状況の考察を通しての法改正の背景の把握をもとに、調整区域を抱える地方都市のうち 65都市を対象(1)に、調整区域に焦点を当てて区域区分制度の運用実態を分析した。また調整区域での開発許可条例について、県レベルでの制定方針を概観したうえで、市レベルでの条例活用状況の把握を行った。さらにその中で典型的な自治体を取り上げ制定の経緯・運用及び問題点についての分析を行った。以上を通して、今後の調整区域での 34・8・3条例を中心とした開発コントロール手法への有効性や問題点を評価することを目的とする。
  • 田中 洋, 中出 文平, 樋口 秀
    2005 年40.3 巻 p. 409-414
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は、地方都市における区域区分の当初指定に着目し、その指定の実態と経緯について明らかにすることを目的としている。地方都市 89都市と、指定に特徴のある都市を対象とした分析により、当初の市街化区域の指定は全体的に広めに指定される傾向があり、その後の市街化区域の拡大や市街化の動向にも影響していることを定量的・空間的に明らかにし、また、指定の経緯についても明らかにすることができた。これらの結果を整理し、市街化区域を適正な規模へ変えていく必要性について述べ、本研究の総括とした。
  • 都市再生大学校の取組と評価
    芦野 光憲, 浅野 光行
    2005 年40.3 巻 p. 415-420
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本稿は都市再生合意創出プログラムとその主要部分を担う都市再生大学校の仕組みを紹介するものである。都市再生を必要とする多くの都市では、それを解決する明確なシステムが確立されていない。そのため著者らの都市再生の取組(沖縄県うるま市安慶名地区)が都市再生本部事務局等からの評価を受け、都市再生合意創出委員会が開催された。沖縄県うるま市の取組みをモデルとし、愛知県安城市、滋賀県大津市をケーススタディーとして、著者らは委員会への提案を行い、都市再生合意創出プログラムの提言を得た。その提言のなかで、都市再生大学校は三つの原則(公正・中立性、総合性、触媒性)等に基づき行われることになった。都市再生大学校は委員会提言に著者の考察を加えて四日市市で試験的に取り組み、参加者へのアンケートを通じて、大学校の三つの原則や効果等の評価を行った。
  • 地方都市郊外の大規模商業開発を例として
    明石 達生
    2005 年40.3 巻 p. 421-426
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    この小論は、都市の土地利用コントロールにおいて、立地制御の対象となるべき開発案件と、土地利用規制を所掌する行政主体との間における空間的スケールの不一致から、都市計画制度が機能不全に陥る事態があり得ることの、実証的考察である。題材には、地方都市郊外に立地展開する大規模商業施設の実例をとりあげた。著者は、市街化調整区域において広域的影響のある巨大商業施設の開発許可が専ら一市の判断で行われた事例、大型店の郊外出店を規制した市の周辺市町において大型商業開発が相次いで行われた事例等を示し、広域計画の基本に影響する裁量的許可の判断権は、広域行政庁自身が掌握する必要があること、また、広域的な目的からする土地利用規制は、各市町村に決定権をおくことでは機能しない場合があることを実証した。さらに、近年の開発許可の市町村への分権化が、空間計画のスケールとは無関係に自治体の事務能力論で整理されたことの問題点、用途地域の補完でなく上位の位置付けとなる広域的視点の用途規制制度を整備することの必要性を指摘している。
  • 大澤 昭彦, 中井 検裕, 中西 正彦
    2005 年40.3 巻 p. 427-432
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    近年、建物高さを巡るマンション紛争などを背景に法的な強制力のある高さ規制の必要性が増している。高さ規制は財産権への影響も大きいためにその内容に正当性や合理性が要求される。本研究では、絶対高さ制限による高度地区を事例に高さ制限の正当性を考察した。本研究では高さ制限の正当性を、 1.高さ制限指定の必要性、2.高さ制限の技術基準の合理性、3.手続きの適切性の三つによって確保されると定義した。その結果、指定の必要性は上位計画よりマンション問題に依存する傾向が強かった。また、技術基準の合理性については、上位計画での位置づけや具体的な設定理由、継続的な取組みなどの合理的な説明があれば、経済的 (法定容積率 )負担が大きい制限値が可能となることが確かめられた。その一方で、制限値は現況の建物高さや利用容積率の状況と比べて大きく、新たなマンション紛争が起きる可能性があることから、目的を達成しうる適切な基準値の検討が求められる。また、住民意向を高さ制限の実施や内容に反映させる手法は、高さ制限の正当性を持たせる上で重要であることが確かめられた。
  • 江戸川区を事例として
    鶏内 久之, 大村 謙二郎, 有田 智一
    2005 年40.3 巻 p. 433-438
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、住宅地における敷地の狭小化に対応するための敷地規模規制運用上の課題を明らかにするため、江戸川区の 2地区をケーススタディ対象として、現況ストックの分布・立地状況を調査することにより、敷地規模規制制度の実効性を確保する手法を検討している。主な結果は以下の 3点である。 1)広域かつ一律な敷地規模規制導入では、一定規模敷地での細分化容認、街区単位で既存不適格の発生、を引き起こす場合があり、多様な地区特性に対応できない。 2)地区の合計としては既存不適格敷地が多く発生する規制値であっても、街区レベルでみると一定規模敷地の連担がある。 3)狭小敷地での道路斜線緩和措置は、延床面積増加、街区単位でのまとまった空地確保に効果的である。敷地規模規制の実効性を確保するには、既存ストックを街区単位で詳細に把握し、街区レベルでの計画を策定すること、が必要と考えられる。
  • 中西 正彦, 長嵐 陽子, 中井 検裕
    2005 年40.3 巻 p. 439-444
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    建築協定において様々な要因により有効期限到来時に失効してしまう地区が多い。本研究では失効要因を探り、継続可能性向上の方策を検討している。まず建築協定の締結及び継続状況を把握した結果、有効地区数は増加傾向にあるものの、一人協定・合意協定の分類を問わず失効した地区が過半数を占めている。また失効地区と継続地区における建築物に関する制限についてはいくつかの項目で差が見られたものの、制限の程度までを考慮すると制限の厳しさと失効率には特に関係があるとは言えなかった。次に更新時の実態把握から、主な失効要因として、協定の目的に起因するもの、住民の意識や属性の変化に起因するもの、煩雑な更新手続きに起因するもの、住民の利害の一致の難しさに起因するものの 4点にまとめられた。これらを踏まえて、建築協定が今後継続可能性を上げるための考察を行った。
  • 台東区、谷中・上野桜木地区を対象として
    長谷川 智志, 中井 検裕, 中西 正彦
    2005 年40.3 巻 p. 445-450
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    近年、歴史的木造住宅の価値が再認識されてきているが、改修資金が捻出できず歴史的木造住宅が消失しつつある。地域にとって重要な資源を保全していく上で、その改修資金を捻出する方法を検討することは重要な課題である。本研究は、歴史的木造住宅を保全するための方法として、不動産証券化手法に着目するものである。まず、歴史的木造住宅保全のために有効な証券化スキームを検討し、成立する条件を示した。次に、寺社、金融機関、不動産会社へ意識調査を行い、証券化を進めるための問題点を把握し、その解決策を検討した。
  • 大場 亨
    2005 年40.3 巻 p. 451-456
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    地籍調査により一筆毎の土地の所有者等を調査し、境界の測量と面積の測定を行っておくことが、公共事業や災害復興を円滑に進める上で有益であると考えられている。しかし全国の地籍調査の進捗率は約 46%に止まる。その問題を明らかにすることを本稿の目的とする。地籍調査の実施主体として土地所有者と直に接して土地の境界を確認している市区町村の担当者を対象に、無記名式アンケート調査を実施した。因子分析の結果から構造方程式モデルを構築した。区域区分毎の平均・共分散構造分析により、市街化調整区域と比べて市街化区域において頻繁な土地の取引やマンションの存在が地籍調査遂行上の問題となっていることを確認した。しかし過去の耕地整理事業や土地区画整理事業等において創設された境界を確認するには、現在の所有者が頻繁に移転することなどよりも、それを確認するための技術や体制の方がより重要な問題であると考えられた。都市部であるほど少ない位置誤差で境界を測量しなければならないこと、その多くの部分を市区町村職員が直営で行わなければならないことが地籍調査遂行上の大きな問題であると思われる。
  • 劉 嘉茵, 竹内 伝史
    2005 年40.3 巻 p. 457-462
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    都市計画法の改正などで、都市計画を基礎的自治体である市町村自らが考え、柔軟に活用していく可能性が広がった。一方、地方分権を進めるにあたって、地方政府(市町村)に十分な行政能力が備わっているかどうかが懸念されている。そこで、本研究は中部 7県下の市町村都市計画実態について調査分析した。地方分権型都市計画の進展の状況を明らかにするため、 2001年度と 2003年度の都市計画審議会の委員構成・運営実態と都市計画マスタープランの策定状況を分析比較した。
  • 大沢 昌玄, 岸井 隆幸
    2005 年40.3 巻 p. 463-468
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    土地区画整理事業の施行にあたって「施行者」の貢献度が大きく、施行者の「資金調達能力」「事業執行体制」等が土地区画整理事業の円滑かつ有意義な事業展開に結びつく。また、近年の社会経済状況の変化により保留地処分金収入の確保に問題を生じ収入欠損を来たしている例が発生し、「施行者」の経営能力の重要性が再確認されるようになった。このように「施行者」は、土地区画整理事業推進上、極めて重要であるにもかかわらず、これまで施行実績との関連も含めてその実態や特性についてはあまり議論されず、しかも「施行者」の資金調達力は、事業の成立性を左右する最重要な要因でありながら、これまで事業資金計画構成の特性、実態すら必ずしも十分に明らかにされていない。そこで本研究では、全国の土地区画整理事業を対象として、1)地域別に事業実施状況を分析して、「施行者」の実態と地域特性を明らかにする、2)事業の資金計画、特に収入の構成要素とその導入パターンを類型化して「資金計画構成」の特性を明らかにする、3)1)と2)から施行者と資金計画の関係に着目した事業施行実態を分析するとともに先進地域の特性を明らかにする。
  • 若狭 徹, 村木 美貴
    2005 年40.3 巻 p. 469-474
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    1999年の民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 (PFI法)施行後、 PFI事業が増加している。一方で、地方自治体において、 PFIの認識の不足や行政内の推進体制の未整備といった問題が明らかにされてきている。本研究は地方自治体により実施された PFI事業において、どのように PFI手法が導入されるのか、その実態を明らかにすることを目的とする。本研究は、まずアンケート調査をもとに PFI手法導入の実態を調査し、千葉県における事業を対象に簡易シミュレーションによる PFI導入可能性の検証を行う。結論として、手続き簡略化を実現し得るガイドラインの策定と、地方自治体レベルにおける PFIの専門部局の設置が重要である。
  • ベルリン州道路事業を事例として
    室田 昌子
    2005 年40.3 巻 p. 475-480
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は、事業化段階での決定手続きに位置づけられるドイツの計画確定手続きに着目し、ベルリンでの道路事業を1つの事例として、事業化段階での住民からの異議や要望と、それに対する結論の出し方を分析した。分析にあたっては、当事例の地域的特色や住民反対運動を含めた事業経緯をふまえつつ、住民から異議や要望として出された事業の必要性、路線選定や土地利用、周辺地域への影響として大気汚染、騒音、景域保護、居住環境など、また用地取得や手続き全般などの異議の幾つかを具体的に取り上げた。結論としては、必要性や路線選定や土地利用などは、変更することなくこれまでの事業経緯を説明し、周辺地域などは、基本的には詳細な法制度に基づき判断しているが、法制度にはないものの便宜を図るなどの工夫をしていることもある。この制度を念頭に置きつつ日本において事業化段階で、異議や要望の内容、それに対する判断の仕方や、結論をまとめて公表する仕組みの必要性を論じた。
  • 組織の特徴及び組織間の連携とネットワークを中心に
    李 三洙, 小林 重敬
    2005 年40.3 巻 p. 481-486
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は大都市都心部におけるエリアマネジメント活動を行っている地域類型別の事例を中心に実態分析を行い、エリアマネジメントの推進組織の設立背景と特徴、組織間と地域間の連携とネットワークについて明らかにし、今後大都市都心部における効果的なエリアマネジメントの展開と運用を行う推進組織のあり方について知見を得ることを目的とする。研究対象は大都市都心部における一定の広がり以上の規模 (5ha以上)でエリアマネジメント活動を行っている事例を中心にした。対象事例は地区の開発特徴に従って成熟市街地型、混在市街地型、大規模跡地型の3つの類型で分類し、類型毎に地域規模により大・中・小の3つの規模から9地区を選定した。まず研究方法は事例地域について既往研究の累積と関連組織担当者のヒアリングによる具体的な研究内容は地域類型別にエリアマネジメント関連組織の設立概要と背景 (2章)、各組織における組織形態、活動機能とマネジメント場などの特徴分析 (3章)、そして組織間と周辺地域間の連携とネットワーク化 (4章)について分析し、それらに基づいてエリアマネジメント活動タイプ別の特徴と課題 (5章)について考察した。
  • 公益施設の外部効果に着目して
    山下 英和
    2005 年40.3 巻 p. 487-492
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は、総合設計制度に着目して、容積率割増しの運用の実態を分析するとともに、その効果及び合理性を検証することを通じて、容積率割増しをインセンティブとした建築規制手法のあり方等について考察するものである。このため、主要な特定行政庁における許可基準等を分析した結果、割増容積率の算定は、公開空地の整備状況に関連付けられた部分と、これとは独立に、特定の施設整備に対応する部分とに分かれ、後者については、公益施設等について、その床面積相当の容積率割増しを行う場合が多く、また、特定行政庁によって対応には相当の幅があることが判明した。次に、公益施設等に着目した容積率割増しの合理性を検証するため、ヘドニック法を活用して、対象施設の外部効果について分析したところ、その外部効果の影響の範囲や表れ方には様々な類型があることが推定された。例えば、歴史的建造物は近隣の比較的限定された区域内で、明確な正の外部効果を示すが、一定広がりのある地域内において集積していることにより正の外部効果を示す施設も存在すること等の推計結果が得られた。
  • 梶原 文男, 吉武 哲信, 新城 龍成, 出口 近士
    2005 年40.3 巻 p. 493-498
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本論文は、 2000年の都市計画法改正により市町村都市計画審議会を強化した背景のなかで、九州地方の市町村都市計画審議会の学術委員の構成を調査・分析した上で、学識経験者の構成から見た今後の市町村都計審のあり方に関する考察を行うことを目的にしている。アンケート調査は、 264の自治体で実施し、アンケート項目は 1)学術経験者の構成、 2)学術経験者の選定の際の問題点、 3)その他の特別委員の選定状況の把握と理由など、である。主な結果は:教員委員を持っている都計審の数が少ないこと、多くの自治体が大学との距離が大きいため、委員指名に課題があること、また大学との距離が短いにもかかわらず教員委員を選定していない自治体があることなどがわかった。これらは、各自治体が、教員委員を確保しようとするインセンティブが不足していることを意味していると考えられる。今後、市町村都計審の「専門性の向上」が必要であると言えよう。
  • 公園計画を題材としたPBL方式のまちづくり学習の実践と評価
    篠部 裕
    2005 年40.3 巻 p. 499-504
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は、地域社会と連携した小学校でのまちづくり学習の実践のあり方を探るために、公園計画を題材としたまちづくり学習のプログラムの立案とその実践を通して、PBL方式のまちづくり学習の有効性と諸課題を明らかにすることを目的としている。まちづくり学習の実践と評価を通じて、 1)実現へと繋がる学習題材の設定により、児童の意欲的な学習を促し、教育上大きな達成感や満足度を得ることができる、 2)校外のワークショップなどと連携させることで地域住民との間接的・直接的な対話が可能となり、住民の意見を聞くことの大切さへの理解が高まる、 3)学習内容としては、住民の意見を考慮した計画案の再検討や模型作りが特に有効である、 4)学習成果である図や模型をワークショップで活用することでスムーズなワークショップの運営が可能となる、などの有効性を検証できた。一方、課題としては、 1)短時間でも対応できる学習プログラム、 2)PBL方式となる学習題材の選定、 3)ワークショップの参加者の主体性に配慮したプログラムの検討などが、今後の検討・改善すべき課題として挙げられる。
  • 全国的状況と愛知県犬山市の事例について
    梅宮 路子, 岡崎 篤行
    2005 年40.3 巻 p. 505-510
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    近年、全国的に歴史的資源の活用によって活性化がなされているが、都市計画道路の拡幅により歴史的町並みが失われている。拡幅を巡っては、住民間で意見対立が生じる恐れがあり、円滑な合意形成を図る必要がある。調査により、全国の約 8割の都道府県が道路を見直す意向があることがわかった。また、愛知県犬山市の事例に基づき、以下の点を明らかにした。 1.犬山市における合意形成過程を 4期に分類した。 2.住民間の議論より、意見対立の要因が交通面などの“暮らしやすさ”であることがわかった。 3.目標都市像が具体化されたことによって合意が促進された。
  • 社会的排除論からの観点を中心として
    全 泓奎, 城所 哲夫
    2005 年40.3 巻 p. 511-516
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は、社会的排除論からの観点を中心として韓国・ソウル市の居住貧困地域における地域効果とそれによる居住貧困化のプロセスとメカニズムを明らかにし、社会的包摂の課題を探るための基礎的知見を得ることに目的がある。都市における特定地域への剥奪の集中は社会的・経済的機会に何らかの影響を及ぼし、ひいては社会参加に対して制約をもたらす。本研究では、社会的排除と地域効果に関する文献研究から得た知見に基づき、代表的な地域効果を「貧困の集中及び立地」、「サービス」、「社会化及び社会的ネットワーク」の3つに大きく分けた。そしてソウル市の居住貧困地域の居住者に対するライフ・ヒストリー調査を実施し、地域効果による居住貧困化のプロセスとメカニズムを分析した。その結果、居住貧困地域は社会的制度へのアクセスや地域ネットワークへの統合の具合によっていくつかの類型に分類できることがわかった。それらから、居住貧困地域の再生においては、物理的空間の整備だけではなく、それぞれのニーズに対応するための関連制度等の変更を通じた、地域社会と居住者に手段を保障するリソース・アプローチへの転換が必要であることを提示している。
  • 文 釵
    2005 年40.3 巻 p. 517-522
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    韓国では都市周辺の非市街化地域で行われている乱開発の問題に対処するために2003年1月から国土計画法を施行している。国土計画法の施行により今まで計画無しで行われていた非市街地の管理が体系的な枠組みを整えたが、このような外形的な枠組みと異なり実際には様々な限界を持っており、これは現在、国土計画法の新たな指針により一部の都市で策定中である都市基本計画に現れている。これにより本研究では国土計画法上の非市街化地域の管理制度の運用実態と限界を広域都市計画、都市基本計画、都市管理計画、地区単位計画などの計画類型別に把握し、これに基づいて改善方向を提示した。
  • Rumah Sederhanaの成立過程についての考察
    斉藤 憲晃
    2005 年40.3 巻 p. 523-528
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    シンプル住宅は、ほぼ 30年にわたってインドネシア住宅政策の枢要プログラムとして存在してきた。これは政府の定める規格に適合するローコスト住宅供給と、当該住宅の購入資金融資に対する公的支援措置からなる。このプログラムの特徴として、1)住宅分野における自らの役割を限定的とする政府の公的立場にもかかわらず、大きな財政負担を伴うプログラムであること、2)利用者に占める公務員等の割合が高いこと、3)インドネシアの自然的、文化的多様性にもかかわらず、供給される住宅が画一的であること、を掲げることができる。本稿はシンプル住宅プログラムの形成過程を検討し、上記特徴を有するに至る背景を考察しようとするものである。
  • 地方都市郊外における居住の継続性に関する基礎的研究
    木村 慶一, 桜井 康宏
    2005 年40.3 巻 p. 529-534
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本論文は、以下の 3つを目的としている。 1)福井市北部郊外における住宅団地開発の実態を明らかにすること。 2)典型 11住宅団地における居住者特性を「地縁性」と「居住経歴」という視点から明らかにすること。 3)上記の居住者特性を立地別に明らかにすること。この目的を実行するために 2004年 11月にアンケート調査を実施し、 765世帯の有効回収を得た。主要な結論は以下のとおりである。 1)郊外住宅団地の地縁性は極めて強い。 2)圏外近郊のみ地縁性が弱い。 3)居住経歴は居住地選択に影響を与えている。
  • 松行 美帆子, 城所 哲夫, 大西 隆, 西浦 定継
    2005 年40.3 巻 p. 535-540
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    タイにおいては、 1992年の民主化運動を前後して、コミュニティを重視した参加型に都市・地方発展のための戦略が方向転換しつつある。具体的には、民主化運動と前後して、参加型で都市・地方を発展させていこうとする NGOが誕生し、それに続いて政府による制度化が行われ、この方策はタイにおいて根付きつつある。本研究は、このタイにおける参加型の都市・地方発展方策の展開を概説し、その特色とその変遷に影響を及ぼしたであろう要因を明らかにし、今後の展開と課題に関して考察を行うことを目的としている。分析の結果、タイの参加型の都市・地方発展方策の展開に影響を与えた要因として、以下の3点が指摘された。1)仏教的思想の影響、2)開発援助機関の支援、3)政府による制度化(とくに戦略の持続性に対して)。また、今後の課題として、1)都市計画とコミュニティ・レベルでの活動の連帯、2)省庁間の連携、をあげた。
  • 「社区営造センター」を事例として
    村田 香織, 吉村 輝彦, 渡辺 俊一
    2005 年40.3 巻 p. 541-546
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    近年、社区営造(まちづくり)が展開されている台湾においては、まちづくりの人材育成・活動支援システムが整備されつつある。 2002年に台湾全土に8つ設立された「社区営造センター」は、リーダーとなる住民を育成しながら社区(コミュニティー)のまちづくり活動の支援を行う公設民営の新しいシステムである。 2003年には、新たに「県市社造センター」が各県市に設置され始め、「社造センター」は台湾全土に急速に広まっている。本研究では、まず、台湾におけるまちづくりの歴史的展開を整理する。そして、「社造センター」の事例を通して、台湾におけるまちづくりの人材育成・活動支援システムの特徴及び課題を明らかにすることを目的とする。その上で日本のまちづくりへの示唆を行う。日本においてもまちづくりの人材育成・活動支援のあり方は重要な課題であり、相互にまちづくりの経験を学ぶ観点からも意義がある。
  • ベルリン州とノルトライン・ヴェストファーレン州を事例に
    保立 透, エルファディング スザンネ, 阿部 成治, 前川 和彦, 橋本 政史
    2005 年40.3 巻 p. 547-552
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は、道路と建物とを立体的に整備した多くの事例を持つドイツを対象に、実例を検討した上で制度面を明らかにすることにより、今後の我が国で「立体道路制度」を発展させる方向を考えることを目的としている。ドイツでは、幹線道路による市街地の分断や交通騒音を解消するなどの目的で、道路と建物の立体化が行われている。我が国の「立体道路制度」に比べ、市町村が街づくりの観点から個別事情に応じた柔軟な対応をしていることが特徴的である。そのための法制度としては、道路の計画確定、特別利用許可(又は契約)などとともに、特に Bプランで各種利害を衡量した上で立体的な用途指定を行えることが重要な役割を果たしている。
  • 大阪府の大規模住宅地における空地および高齢化を中心とした町丁字別分析
    青木 留美子, 多治見 左近
    2005 年40.3 巻 p. 553-558
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    高度経済成長期を中心に大量に開発された郊外住宅地の中には、居住者の高齢化問題あるいは空地・空家化等空洞化問題に直面している地域も多い。これらの問題はコミュニティ形成や治安維持に困難を来す可能性がある。非婚・晩婚化によるファミリー世帯の減少や都心回帰現象など郊外型住宅の需要減少が予想される中で郊外住宅地の現状を把握し、今後の動向を探ることは重要である。郊外住宅地の問題構造を解明するためには、各地域特性を把握し全体的系統的な認識をすることが必要である。本稿では大阪府の郊外一戸建て住宅地を対象に、都市の中での各住宅地の位置づけを明確にし、居住者高齢化や空洞化に対する今後の方策を検討するための基礎的資料を得ることを目的として、町丁字別分析を行った。住宅地の性格を特徴づけると考えられた開発時期、立地条件によるグループ化を行い、グループの空地状況と高齢化状況による特性を調べた。結果、開発時期が初期であるほど高齢化率が高くなる傾向があること、高齢化率は居住者の加齢による高齢化と若年層の離脱により急速化すること、初期開発の住宅地のなかでも条件によっては高齢化が抑制されていることが明らかになった
  • 全国人口1万人以上の自治体主催のまちづくりリーダー・コーディネーター養成講座を対象に
    野澤 千絵
    2005 年40.3 巻 p. 559-564
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は、人口 1万人以上の自治体・都道府県を対象による 2003年度に開催したまちづくりリーダー・コーディネーター養成講座を対象にしたアンケート調査を実施し、講座修了後の受講生のまちづくり活動状況を視点に、まちづくり学習の効果と課題を明らかにすることを目的としたものである。まちづくり講座の開催状況は、全国 2425部署のうちわずか 58部署( 2.4%)、講座数では 70講座と、全国的には開催する自治体が極めて少なく、大都市と中小市町村で開催状況に大きな格差が見られた。講座修了生のまちづくり実践に対する効果は、全体の約 7割の講座で「既に所属していた団体でのまちづくり活動の継続」であったが、全体の 3割近くの講座で、各地域のまちづくりを考える会等の結成・活動や公共施設の緑化支援や遊休地における花壇づくり・管理といった修了生による新たなまちづくり活動が生まれていた。修了生による新たなまちづくり組織が生まれた要因は、ヒアリングによる調査分析より、地域密着型の積極的な受講呼びかけ、修了生によるまちづくり活動に対する支援制度や場の設定、人的ネットワークの形成が関係していることがわかった。
  • 区議会本会議討論に基づく政策形成の事例研究
    原田 隆子, 原田 敬美
    2005 年40.3 巻 p. 565-570
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    東京都港区は付置住宅制度(以下「要綱」と称す)を 1985年東京で初めて制定した。その後要綱は 1991年、2003年に社会経済状況の変動に対応すべく改正された。その間、付置義務住宅の供給、住宅の家賃補助の面で大きな成果が生まれた。本研究は付置義務住宅制度が政策として政治の場で立案された経過を、港区議会速記録を基に明らかにし、区議会での要綱制定に対する評価、問題指摘を分析し、どのように区長が答弁し、制度が改正されたかの経過を明らかにし、今後の政策立案に役立てることである。付置住宅制度の要綱が制定されるまで、また、社会経済変動に対応するため要綱が改正されるまでに、議会で関連の提案発言が初めてされてから2年以上を要した。区議会で要綱に関して問題指摘など多くの議論が真摯になされたことが明らかになった。
  • 愛知県特定優良賃貸住宅居住者調査の分析
    谷 武
    2005 年40.3 巻 p. 571-576
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    我が国では借家の居住水準が著しく立ち後れており、特に、世帯人員が 3_から_5人の中堅層向けの良質な賃貸住宅のストックが不足している。このような状況を踏まえ、平成5年に特定優良賃貸住宅法が制定された。本研究は、筆者らが実施した愛知県特定優良賃貸住宅居住者調査の結果から、入居者の属性および入居までの経緯を明らかにすることで、どのようなニーズを持った世帯が特優賃に入居しているのか、また、特優賃が市場でどのように機能しているのか分析することを目的とした。また、公的主体だけでなく民間業者等も管理主体になれる点にこの制度の特徴があることから、管理者主体の違いによる差異を検討した。分析の結果、現住宅の選択に際して住宅の広さや間取りを評価していた世帯は 71.1%と多く、特優賃の特徴である住宅の広さはある程度評価されていたが、特優賃を選択する決め手にはなっていなかった。実際、入居者には新婚世帯を中心とする2人世帯の入居が多く、この制度が主たる入居対象と想定している世帯と実際の入居者にずれが生じていた。また、住宅を探し始めた当初から特優賃制度を知っていた世帯は2割に留まっており、制度の周知が進んでいなかった。
  • 特例容積率適用区域の選定及び移転後譲受地の量的変化における問題点の考察
    片山 律
    2005 年40.3 巻 p. 577-582
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    日本では、特例容積率適応区域制度が2000年に創設されたが、何処にどの程度の未利用容積移転が起こり得るかは予測されていない。よって都市内部においては、実際に起こり得る未利用容積移転によって街路景観面などに悪影響を与えないようにする都市計画的役割とその規制方策が今後重要になると言われている。そこでこの研究では、この制度における特例容積率適応区域の選定及び未利用容積の譲渡地と譲受地を具体的に設定して、未利用容積移転による譲受地側の量的変化の把握から問題点を考察し、その改善策としてどのような規制方策及び課題が考えられるかを検討することを研究目的として研究を展開した。
  • 平成16年度用途地域見直しに伴う東京都下自治体の地区指定状況から
    藤井 さやか, 大塚 真, 小泉 秀樹, 大方 潤一郎
    2005 年40.3 巻 p. 583-588
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、市街地の景観や環境を構成する最も基本的な要素について暫定的な基準を緊急避難的に設定し、著しく問題のある開発を予防しつつ、より詳細な地区の計画・基準を逐次検討していくといった対応が必要との観点から様々な手法を整理し、暫定基準策定ツールとして絶対高さ型高度地区の活用が有効であることを指摘した。そして平成 16年度用途地域見直しで当該地区を導入した東京都下自治体 7区 4市の指定状況から、当該制度の活用可能性を検討した。 MP等で市街地目標が明示されている自治体では、絶対高さ型高度地区を目標実現の第一段階として広域的に活用していた。一方、これまでのまちづくりの中で、市街地整備の目標が明確になりつつあるが、地区計画策定ほどは合意が高まっていない、または制限内容が具体化されていないといった理由で地区基準が検討途上にあった地区では、地域合意を具体化する初めの一歩として高度地区を活用しており、暫定基準としての絶対高さ型高度地区指定が有効であることを示している。また行政からの地区指定の提案がきっかけとなって、地元からより厳しい基準策定が要望された地区もあり、地区基準策定を誘発する役割も期待される。
  • 植竹 俊光, 川上 光彦, 宇津 徳浩, 亀山 博司
    2005 年40.3 巻 p. 589-594
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、金沢市の「まちなか定住促進事業」を取り上げ、実績の調査分析によりその評価を行っている。その結果は以下のようにまとめられる。まちなか区域における建築活動の多くは建替えであり、中高齢で高収入の世帯が中心で、核家族だけでなく「夫婦のみ」や「夫婦と子供と両親」といった世帯タイプも多い。これらの世帯は従前住宅の問題を建築活動理由とし、建物のみの取得を行っている。一方、区域内および外から転居を伴う世帯は、収入が少ない若い世帯が多く、核家族が中心である。この世帯は従前住宅の狭さや世帯の変化を建築活動理由とし、建物だけでなく土地の取得活動を行っている。建築された住宅および住環境については、住宅の設備・外観・広さといった項目全てに対し半数以上の世帯が満足している。転居を伴い、若く年収の少ない世帯において制度を利用する傾向があり、現在地の建替えでは借入金が無いため制度を利用しない中高齢世帯が多い。また、補助による効果としては、住宅設備や外観の向上があげられている。区域設定や外観への建築条件に対しても必要性があると評価しているが、建物内部への建築条件は不必要と考える世帯が多い。
  • 小池 則満
    2005 年40.3 巻 p. 595-600
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    愛知県瀬戸市には、窯垣(かまがき)と呼ばれる古い窯道具を利用した塀や壁がみられる。観光ルートとしての整備やまちづくりのための資源として活用されているが、歴史的な構造物としての調査・研究は行われていない。そこで本研究では、窯垣の特徴、成立時期や背景について考察するとともに、まちづくり活動に対して、いくつかの提言を行った。
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