Journal of the Japan Petroleum Institute
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54 巻, 5 号
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総合論文
  • 都留 稔了
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 5 号 p. 277-286
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル フリー
    シリカ水素分離膜の耐水蒸気性の向上は極めて重要な研究課題である。金属ドープシリカ膜を提案し,ニッケルとコバルトが耐水蒸気性向上に有効であることを明らかとしてきた。コバルトドープシリカ膜は,500 ℃,水蒸気圧300 kPで安定性を有し,水素透過率1.8 × 10−7 mol/(m2 · s · Pa),H2/N2透過率比730を示した。耐水蒸気性シリカ膜を用いて,水素,ヘリウムおよび水蒸気の透過特性を検討したところ,水素透過の活性化エネルギーはHe/H2透過率比と良い相関にあった。また,水素の動的分子径(0.289 nm)は水蒸気(0.265 nm)よりも大きいにもかかわらず,H2/H2O比は常に1以上であった。シリカ膜をメソポア細孔(γ-アルミナ)とマクロ細孔(α-アルミナ)からなるバイモーダル支持体にニッケルを担持し,さらにシリカ膜を製膜することでバイモーダル触媒膜を作製した。メタン水蒸気改質に応用し,シリカ触媒膜型反応器が水素製造に有効であることを明らかにした。
  • 赤松 憲樹, 中尾 真一
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 5 号 p. 287-297
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル フリー
    CVD法を用いて調製した水素分離アモルファスシリカ膜を搭載した水素引き抜き型膜反応器を開発し,水素キャリヤーとして期待されている有機ハイドライドの脱水素反応系に適用した。脱水素反応は平衡反応であるが,水素分離シリカ膜を反応系に組み込むことで,選択的に水素を引き抜き,これにより平衡シフトによる高転化率の達成と高純度水素の安定供給を同時に実現した。膜反応器開発のキーポイントとなるのは水素分離膜の性能であり,CVD法を用いた水素分離シリカ膜の開発において新規な細孔径制御技術を確立した。また,本研究で開発した膜反応器は,キャリヤーガスやスイープガスを用いない実用的な運転条件の下で,純度99.9 %以上の水素を安定して製造できることを実証した。
  • S. Ted Oyama, 山田 真理子, 菅原 孝, 高垣 敦, 菊地 隆司
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 5 号 p. 298-309
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル フリー
    膜の気体透過に関する主要なメカニズムとその表現式について記述した。透過メカニズムは透過するガス分子径と膜の細孔径との相互サイズに依存する。細孔径が小さくなるにつれて,透過メカニズムはバルク拡散,クヌーセン拡散,表面拡散,活性化拡散,固相拡散へと変化する。それぞれの透過メカニズムにおいてガス分子は以下のような振る舞いを示す。(1)バルク拡散では膜の大きなサイズの細孔内を分子が層流にて透過する。(2)クヌーセン機構では分子が中間サイズの細孔と衝突し通過する。(3)表面拡散では分子が比較的小さな細孔の壁のポテンシャル場にトラップされつつ細孔内を通過する。(4)活性化拡散では分子はポテンシャル場をのがれるが,小さな細孔に束縛される。(5)固相拡散では固体内部へ溶解し,拡散によって輸送される。これらのメカニズムについて,例として中間サイズの細孔径を有するアルミナ膜と緻密(ちみつ)な構造からなるシリカ膜の二つの膜を用いて示した。
  • 田川 智彦
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 5 号 p. 310-319
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル フリー
    プロセス強化(PI)の一環として反応と分離を統合化させる試みが注目されている。触媒反応中に水素吸蔵材料を併用することで脱水素反応を促進する実験的検討について紹介した。吸蔵材料の飽和とともに促進効果が消滅するため,減圧にして吸蔵材を再生し,再び反応を行う必要がある。圧力の上下を周期的に操作するため,圧力スイング反応器(PSR)あるいは圧力スイング吸着型反応器(PSA Reactor)と称される。シクロヘキサンの脱水素,n-ヘキサン,プロパン,メタンの脱水素芳香族化反応について検討した。反応に最適な温度域が異なるため,触媒-吸蔵材の組合せも反応に依存し,Pt/Al2O3–CaNi5,Zn/H-ZSM-5–Mg51Zn20,Zn/H-ZSM-5–Ti微粒子,Mo/H-ZSM-5–Ti微粒子がそれぞれ高い促進効果を示した。不活性ガスでパージする分圧スイング操作によって効果は繰り返し再生され,PSRの可能性が実証された。
一般論文
  • 坂下 幸司, 木村 俊之, 芳野 真実, 浅岡 佐知夫
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 5 号 p. 320-330
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル フリー
    重質な直鎖パラフィンを高オクタン価な軽質イソパラフィンへ転換するための水素化分解・異性化反応に有効な触媒開発を実施した。γ-アルミナ担持NiMo触媒に,ナノサイズアルミナとBEAゼオライトを組み合わせた触媒をn-C16を原料とした反応系で触媒性能を検討した。単元系から多元系へと触媒を組み合わせることで転化率およびイソパラフィンへの選択性が向上した。BEAゼオライトの骨格SiO2/Al2O3比の触媒性能に与える影響を検討したところ,SiO2/Al2O3比25が転化率,選択性ともに最適値であった。BEAゼオライトのUSY化には酸洗浄が有効であり,この脱アルミナBEAゼオライトとナノサイズアルミナを組み合わせた系は転化率,選択性ともにさらに向上した。しかし,この系のナノサイズアルミナの代わりにナノサイズシリカを組み合わせても転化率,選択率の向上は見られなかった。このことは,酸洗浄によってゼオライト表面に生成したSi–OHとナノサイズアルミナのAl–OHの間で形成される新たな酸点が分解および異性化の活性点として作用し,n-パラフィン転化率,イソパラフィン選択率を向上させると推定できた。結果として,多元系に組み合わせることで触媒性能に与える相乗効果,すなわち分解性能と異性化選択性の向上が明確となった。
  • 佐藤 勝俊, 伊東 亜希子, 河野 公亮, 瀧田 祐作, 永岡 勝俊
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 5 号 p. 331-337
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル フリー
    担持Ni触媒を用いてエタノールの酸化的水蒸気改質反応を低温で駆動させることを試みたところ,800 ℃でH2還元したNi/Ce0.5Zr0.5O2,Ni/CeO2,Ni/MgAl2O4が酸化的水蒸気改質反応を100 ℃で外部加熱なしに駆動させることが可能であった。これはCe3+とNi0が酸化される際に発生する酸化熱によって触媒が反応開始温度まで加熱されたためであると示唆された。特に,Ni/Ce0.5Zr0.5O2は再還元を行わなくとも酸化的水蒸気改質反応を繰り返し駆動させることが可能であったが,これはNi/Ce0.5Zr0.5O2の優れた還元 · 酸化特性と,酸化的改質反応の開始温度の低さに由来するものであることが明らかとなった。
  • 阿部 幸太, 狩野 祐介, 大嶋 正明, 黒川 秀樹, 三浦 弘
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 5 号 p. 338-343
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル フリー
    Fe–Ce–KおよびFe–Ce–Mo–K系複合酸化物触媒を用いてエチルベンゼン脱水素反応を試み,選択的水素燃焼プロセスに用いられる触媒の高温耐性の試験として,Kが不足した組成でのMoの添加効果を研究した。Kが不足した組成では,Fe–Ce–K触媒は副反応生成物の量が顕著に増加したが,Mo添加触媒は活性が低くなるとともに,副反応も大幅に抑制した。Mo添加によって,K不足の組成で表面積が縮小した。X線回折により,モリブデン酸塩(K2MoO4,KCe(MoO42,Fe2(MoO43)の生成が確認できた。これらの酸化物は表面積が小さく,触媒活性が低かった。Mo添加によって,触媒表面がモリブデン酸塩に覆われ,副反応の活性点を有効に阻害することから,Kが減少した場合に生じる副生成物を大幅に抑制できるものと結論した。
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