臨床神経生理学
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原著
  • sLORETAによる視覚誘発電位の信号源推定
    後藤 和彦, 杉 剛直, 池田 拓郎, 山﨑 貴男, 飛松 省三, 後藤 純信
    2024 年 52 巻 4 号 p. 243-253
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル フリー

    本研究では, オプティックフロー (OF) と視差勾配を伴うランダムドットステレオグラム (RG-RDS) を組み合わせた視覚刺激に対するVEPの信号源を解析し, 自己運動知覚への両眼視差の影響を検討した。対象は若年健常成人14名である。視覚刺激はOF, RG-RDS, OFとRG-RDSを同時に呈示したRG-RDS&OFの3種類で, 頭皮上61部位からVEPを記録した。RG-RDS&OFに含まれるOFの要素を抽出するために, RG-RDS&OFとRG-RDSの差分波形を作成した。各刺激に対するVEPと差分波形の信号源はsLORETA により推定した。RG-RDS&OFのN190潜時はRG-RDSよりも有意に遅くなった。このことからRG-RDS&OFでは両眼視差に関する活動が遅くなる可能性がある。また, OFと差分波形の刺激後200 ms付近では,楔部と楔前部が活動した。さらに, 差分波形では, 上前頭回と中心前回,中心後回にも活動が見られた。活動の見られた領域は, 自己運動知覚に関連する部位であり, 先行研究を支持していた。そして, RG-RDS&OFではOFよりも情報処理が活発になる可能性がある。

投稿総説
  • 飛松 省三
    2024 年 52 巻 4 号 p. 254-264
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル フリー

    「デジタル脳波の記録と判読」の3回目として, “読める脳波”を取り上げる。前回指摘した“読めない脳波”とは, まず記録開始の1頁目をチェックすると, 1) 電極接触抵抗を表示させると計測していない, 2) 交流フィルタをデフォルトでオンにしている, 3) 基準電極導出で19 ch表示していない, 4) 電極ポップが混入している, 脳波記録を指す。逆にこれら4点を担保し, かつ1) 基準電極導出と縦・横の双極導出を組み込んでいる, 2) 患者の条件にもよるが開閉眼, 光刺激, 過呼吸を行っている, 3) 心電図を記録している, 4) 眼球運動を記録している, ことが“読める脳波”の要件となる。

特集 「Neuromodulationのリハビリテーション医療への応用」
  • 大田 哲生
    2024 年 52 巻 4 号 p. 265
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル フリー
  • 川上 途行
    2024 年 52 巻 4 号 p. 266-270
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル フリー

    強力にLTP/LTD様の変化を誘導できるとしてpatterned rTMSが一般的になってきている。その代表的な刺激法がTheta burst stimulation (TBS) とQuadripulse stimulation (QPS) である。TBSは50 Hzの3連発の刺激を, 5 Hz (θ周波数) で繰り返す刺激パターンであり, 刺激に有する時間の短さなど, 研究や臨床への応用に適した刺激として普及が進んでいる。脳卒中患者の様々な機能障害に対し, meta-analysisを含む多くの先行研究で効果が報告されている。QPSは本邦で開発された単相性TMSを4発, 5秒ごとに30分間与える刺激法である。効果の個人間変動が少ないことが特徴であり, 脳卒中後の運動麻痺に対する介入としての症例報告も出てきている。今後, 疾患を有する患者への応用が期待される。

  • 山口 智史
    2024 年 52 巻 4 号 p. 271-273
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル フリー

    経頭蓋電気刺激 (transcranial electrical stimulation: tES) は, 頭蓋上に貼付した電極から微弱な電流を通電することで, 中枢神経系の活動を変調できることから, リハビリテーションの効果を促進する手法として期待が持たれてきた。一方で, tESによる効果の個人差が大きいことが指摘されており, 臨床応用の妨げとなっている。この効果の個人差が生じる理由として, 各個人の脳活動状態や脳構造の相違を考慮せず, 全対象者に対して画一的な刺激設定で介入していることが問題である可能がある。そこで我々は, tESの効果を高めるために, 各個人の神経生理学的な生体情報をtES刺激設定に応用したアプローチを提案し, その効果を検証している。本稿では, この神経生理学的な生体情報に基づくtESについて紹介する。

  • 藤原 俊之
    2024 年 52 巻 4 号 p. 274-276
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル フリー

    脊髄刺激等のneuromodulationは脊髄に存在する歩行中枢, いわゆるlocomotor circuitの賦活を図り, 歩行機能の改善を目指すものである。リハビリテーション医学で応用され, 脊髄損傷患者や脳卒中患者の歩行障害に対する治療に用いられ始めている。本稿では, 歩行制御の神経回路につき解説するとともに, 脊髄刺激を用いた歩行機能再建のためのリハビリテーション治療への応用について解説する。

  • 牛場 潤一
    2024 年 52 巻 4 号 p. 277-281
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル フリー

    脳卒中片麻痺上肢は治療抵抗性が高いことが知られている。しかし脳には依然として神経可塑性が保存されており, 外部からの刺激によってこの性質を利用することで脳内に代償回路を形成し, 機能回復につなげることができる。ブレイン・マシン・インターフェース (Brain-Machine Interface, 以後BMI) は, 治療標的となる体性感覚運動野の興奮性を実時間検出し, 患者の運動意図にともなって興奮性増大が確認されたときだけ, 麻痺手の運動補助を与えるものである。BMIの継続利用によって, 患者の脳内に強化学習やタイミング依存的可塑性が発動し, 機能代償領域が次第に形成される。国内外の多様な研究グループによる研究蓄積の結果, その臨床有効性が複数のランダム化比較試験とそのメタアナリシスによって明らかにされた。国内外でもBMI技術を応用した医療機器が販売され, 実臨床における治療ツールの1つとして認知されてきた。

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