環境感染
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19 巻, 4 号
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  • メタアナリシス
    白石 正, 仲川 義人
    2004 年 19 巻 4 号 p. 437-440
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    欧米ではVancomycin (VCM) の不適切な使用によるVCM resistant Enterococcus (VRE) の出現を抑制することやVCMの適正使用を目的に, インフェクションコントロールドクター (ICD) と臨床薬剤師が連携した取り組みがなされている. そこで, Pub-medによりICDと臨床薬剤師によるVCM適正使用への介入について検索し, 適合した7編についてメタ分析を行った. 7編はICDと臨床薬剤師がCDCのガイドラインを改変したり, 独自のガイドラインを作成するなどして, それに基づいたスタッフへの教育介入を実施した. さらに臨床薬剤師はVCM処方をチェックする方法で介入した. その結果, VCM適正使用への介入後にガイドラインにそぐわない不適正使用の処方は減少した. また, 介入後のコスト回避では, 4編の比較において, $173/2ヵ月から$1,417/4年の範囲で減少し, 使用量では4編の比較で, 109/1000患者日数から499/1000患者日数の範囲で減少した. VCMの適正使用にICDと臨床薬剤師が介入することは, 耐性菌の出現防止だけではなく, 経済効果のあることが認められた.
  • 茅野 崇, 岩井 友美, 吉田 敦, 奥住 捷子, 人見 重美, 森屋 恭爾, 木村 哲
    2004 年 19 巻 4 号 p. 441-446
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    医療用器具の高度消毒薬である過酢酸 (PA) について, サイトメガロウイルス (CMV) を用いたウイルスゲノムに対する抑制効果を検討した.
    0.3%PA (実用濃度) と感染価105 TCID50/mLのCMV (AD169実験株) 懸濁液を等量作用させ, 時間経過による細胞変性効果 (CPE) の有無を観察した. その結果, 30分後の感染価は101.69TCID50/mLを示し, 初期感染価に対し103.31 TCID50/mLの減少が認められた.
    次に, CPEの観察で用いたPAおよびCMV作用液からDNAを抽出し, 定性PCR法およびReal-Time PCR法により特異領域のPCR産物を検出した.定性PCRにおけるウイルス初期濃度時のPCR産物に対し, 742bpサイズの増幅領域では30分後に50%, 2,952bpサイズの増幅領域では10分後に100%, それぞれ消失が認められた.Real-Time PCRにおけるCMV懸濁液に対し, 1,000倍量の0.3%PAを作用させた結果, 5分後にCMV-DNA量が検出限界以下を示した.しかし, 同じ割合で作用させた2%グルタラール (GA) では, 時間経過やCMV濃度に依存することなくCMV-DNA量が残存した.
    以上より, PAはGAに比べ短時間でCMVゲノム破壊作用が示され, ウイルスゲノムに対して抑制効果があることが認められた.
  • 北目 文郎
    2004 年 19 巻 4 号 p. 447-450
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    手指用消毒剤であるエタノール単独のゲル剤 (ゴージョーMHS, GJ-MHS) とグルコン酸クロルヘキシジン含有エタノールゲル剤 (ヘキザックハンドゲル0.2%, HHG-0.2) のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) に対する殺菌力および殺菌力の持続性, 並びに使用感について比較した.
    両製剤共に, 手指表面に付着させたMRSA (200~300cells) をほぼ消失させる殺菌力を示したが, GJ-MHSの殺菌力が消毒直後の手指表面には残存していなかったのに対し, HHG-0.2の殺菌力は約120分間持続した (対照菌数の約1/100-1/10に減菌).
    使用感に関するアンケート調査では, GJ-MHSに比べ, HHG-0.2の乾燥速度が遅く, べたつきを感じ, 手指へのなじみが悪く, 手指の違和感があると回答した者の割合が有意に高かった.一方, GJ-MHSの冬期間の使用時に手荒れ感を訴えた者と夏期間の使用時に手指への刺激感を訴えた者の割合がHHG-0.2使用時に比べ, 有意に高かった.また, 手指の痒みや発赤および使用時の異臭を訴えた者の割合は両消毒剤間で差は認められなかったが, GJ-MHS使用時にハンドクリームの使用を余儀なくされた者の割合はHHG-0.2の使用時に比べ, 有意に高かった.
  • シャワーベッドによるMRSA接触伝播経路の遮断
    大湾 知子, 高良 武博, 玉那覇 利江子, 仲村 富江, 呉屋 高広, 室岡 美和子, 宮城 今日子, 備瀬 敏子, 佐久川 廣美, 新川 ...
    2004 年 19 巻 4 号 p. 451-457
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    当院の感染対策室は平成13年度にMRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) が多く分離された泌尿器科・皮膚科混合病棟の看護職員に対して感染対策を強化した. しかし, 一時的に対策が良きにせよ継続できず, 平成15年3月以降にはMRSA分離患者数が増加した. 今回, 医師と看護師の業務上使用頻度が多いシャワーベッドによるMRSA接触伝播経路を遮断し, 皮膚疾患患者の身体清潔診療看護を安全に行うことを目的に感染防止対策を行った. 意識調査から診察・治療・ケアの前や他患者の処置に移る前には手洗いが少ない. また約70%以上が感染症及び易感染患者のケアや処置時, 感染性排泄物接触時, 粘膜・傷接触時に手袋を使用していた. 経時的参与観察に基づいて身体清潔ケア及び診療行為時の問題点を把握し, 薬浴室内で包交中の動線確保が困難である87.5%が最も多かった. そこで, シャワーベッドを用いる皮膚疾患重症例に対して, 接触伝播防止策として感染症患者専用薬浴室における身体清潔チェックリストを作成した. 環境調査では薬浴室で洗剤・洗浄後の使用直前のシャワーベッドから2回MRSAが分離された.シャワーベッドに消毒用エタノールを瞬間的に噴霧して拭き取る方法はMRSA接触伝播経路の遮断に有効であった. 感染防止対策後, 職員が標準予防策に対する意識を高め, MRSA院内感染対策ガイドラインの内容と遵守を再認識し, MRSA新規分離発生患者数が全く無くなり安全に活動ができた.
  • 坂田 宏
    2004 年 19 巻 4 号 p. 458-461
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    対象は2002年9月から2003年2月までに喘息や気道感染症のために当院を受診し, 上咽頭スワブが採取された0歳から14歳までの児から検出されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 10株である. 臨床症状および経過からMRSAが感染の原因と考えられる児はなく, すべて保菌者と考えられた. 検出されたMRSAのパルスフィールドゲル電気泳動 (PFGE) の成績では7種のパターンが認められ, 2種が同一ないし類似していると考えられるパターンであった.そのうちの1パターンでは同一の保育施設に通園している3名から得られたものであり, 17種類の抗菌薬における感受性パターンでも2名ではすべて一致, 1名で1剤のみ異なるという成績であった. 2名が類似していたもう一つのパターンは, 抗菌薬感受性において3剤で差があり, その2名の生活圏に接点は認められなかった. 今回の対象にNICU出身の0歳の児も含まれていたが, PFGEも抗菌薬感受性も他の児とは異なっていた.
    市中に拡散しているMRSAの伝播の要因の一つに保育施設での接触感染が疑われた. NICUから退院した児がその感染源になっているという根拠は得られなかった.
  • CDCガイドラインとの整合性
    本田 順一, 北島 清子, 松村 美香, 畑 由美子, 徳永 美和子, 木下 絹代, 兵動 加代子, 河野 彩子
    2004 年 19 巻 4 号 p. 462-465
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    平成15年6月~9月までに久留米大学病院の7部署においてCVカテーテルを挿入した患者を対象として, 中心静脈カテーテル関連血流感染サーベイランスを施行した.対象7部署で調査期間中に挿入されたCVカテーテルの本数は532本であった. 延べCVカテーテル挿入日数 (Devicedays) は5621日であった.閉鎖式輸液回路使用の有無でのCRBSI率は1000device daysあたり, 閉鎖回路未使用で2.1, 閉鎖回路使用で4.2であり, 閉鎖回路の使用で有意に減少していた. マキシマルバリアプレコーションの施行の有無, インラインフィルターの有無による感染率の変化はなかった. 週一回と週二回の点滴ルートの定期交換で比較検討したが有意差は認められなかった. 今回, サーベイランスを実施することにより, 当院でのCRBSI発生率のエビデンスを出すことができた. また, CDCガイドラインでは言及していないが, 閉鎖式輸液回路の使用することでCVカテーテル関連血流感染を減少させることが可能であった.
  • 宮崎 元伸, 畝 博
    2004 年 19 巻 4 号 p. 466-470
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    在宅医療廃棄物の処理方法について医療機関や自治体等へ調査を実施した結果, 処理における障害・問題点が明らかになった. 在宅医療廃棄物のなかで注射針など鋭利な物は, 医療機関や院外薬局が回収して感染性廃棄物として処理し, バッグ等の非鋭利物は市町村が一般廃棄物として処理するという役割分担の拡充が求められる. さらに処理体制の確立のために処理方法を記載した行政主導の指針および一般市民の啓発など, 関係者が連携した仕組みの構築が必要である.
  • 真砂 州宏, 吉永 正夫, 西 順一郎, 宮之原 弘晃, 前野 伸昭, 小田 紘
    2004 年 19 巻 4 号 p. 471-474
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    本大学医学部医学科では感染対策の一環として学生の麻疹, 水痘, 風疹, ムンプスの既往歴アンケート調査を実施した. その後医療系キャンパス内で麻疹の流行がみられたため, 各疾患の抗体検査も実施した. 抗体検査は麻疹, 風疹, ムンプスはHI法, 水痘はEIA法IgGで実施し, 麻疹, 風疹は8倍以上, ムンプスは4倍以上, 水痘はEIA価2.0以上を抗体陽性とした. 今回, アンケート調査および抗体検査を実施した医学科学生461名 (麻疹は発症者を除く453名) を対象に, 抗体保有状況を調査するとともに, 抗体保有状況の把握にアンケート調査が有用かを検討した. 各疾患の抗体陽性率は, 麻疹77.9%, 水痘97.6%, 風疹86.8%, ムンプス51.6%であった. アンケートで「既往歴あり」あるいは「予防接種歴あり」を既往歴・接種歴陽性, その他を既往歴・接種歴陰性とし, アンケート結果と抗体検査結果を比較したところ, 既往歴・接種歴陽性で抗体陰性者 (偽陽性) が, 麻疹12.8%, 水痘1.1%, 風疹1.3%, ムンプス23.4%であった. アンケート調査のみでは偽陽性者を見落とす可能性があり, 抗体検査が必要であると考えられた. また, 各疾患とも抗体陰性者が存在しており, 医療系学生は臨床実習前に, 医療従事者は就職前に抗体検査を実施し, 抗体陰性者にはワクチン接種を実施するべきだと考えられた.
  • 菌の採取法と分離培地の比較
    沼田 昇, 吉田 菊喜, 加藤 はる, 荒川 宜親
    2004 年 19 巻 4 号 p. 475-482
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    院内感染の原因となる環境中のclostridium difficile汚染の調査法を確立するため, 分離培地を比較するとともに, 芽胞検出に最も適した条件を検討した. 分離培地の中では, Na taurocholateを加えた自家調製cycloserine-cefoxitin-mannitol-agar培地 (T (+) HM-CCMA) が市販の分離培地よりも高感度に芽胞の検出が可能であった. 菌の検出に影響する処理条件を検討したところ, T (±) HM-CCMAを用いた場合, Na thioglycolate処理などの菌の処理方法にかかわらず, 検出感度が高かった. 芽胞をプラスチック平板上に塗布・乾燥した模擬環境を作成し, 菌の採取法の比較検討を行ったところ, T (+) HM-CCMAで作成したロダックプレートを予備還元し, スタンプ直後に嫌気培養を行う方法により, 検査表面が曲面の場合でも, 検査面積中に極少数の芽胞があれば検出が可能であることが明らかとなった. また, T (+) HM-CCMA製ロダックプレートは, 他の感染症原因細菌や環境中の細菌を検出せず, 環境中のC.difficileの分離を選択的に行うことが可能であることが示され, その検出感度も半年以上維持されることが明らかとなった.
  • 宮本 比呂志, 池野 貴子, 吉村 博子, 谷口 初美, 松本 哲朗
    2004 年 19 巻 4 号 p. 483-490
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    レジオネラによる院内感染の主な感染源は病院の給水・給湯設備である. しかし, 我が国では病院給湯設備のレジオネラ汚染と除菌についての詳細な報告はなく, その実態さえ不明である. 産業医科大学病院において2003年7月に病棟の特別浴槽シャワーヘッドよりLegiomella pmeumophilaが検出され, 追加調査で貯湯槽からもL.pneumophilaが検出された. 中央循環式の給湯設備であることより設備全体の汚染があると判断し, 1年間に渡り汚染調査と除菌作業を繰り返した. この調査・対策期間中に合計52箇所でのべ119回の培養検査を行い, 迅速な除菌対策のため必要に応じPCR法も併用した. 培養検査で15箇所のべ18検体から汚染が検出され, その内訳は貯湯槽3箇所, 末端給湯栓8箇所, シャワーヘッド4箇所であった.これらからの分離株はパルスフィールド電気泳動により3つの遺伝子型にしか分類できず, 汚染が給湯水の循環により施設全体に拡がっていたことが示唆された.除菌対策として (1) 給湯水を75℃ で24時間循環させながら末端給湯栓類 (983箇所) で放水を1年に1回行うこと (2) 貯湯槽の清掃 (3) 給湯水温を66℃ に上げて維持管理することを実施した. その結果, 汚染は検出限界以下 (5CFU/100mL) に除去できた.この期間中にレジオネラ肺炎の院内発生は認めず, 水道料金や灯油料金の負担が除菌対策に伴って増えることはなかった. 給湯水の昇温循環運転と末端給湯栓類からの放水作業は安価で有効な除菌法であった.
  • 大槙 昌文, 頼岡 克弘, 尾家 重治, 神谷 晃
    2004 年 19 巻 4 号 p. 491-493
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    0.025%塩化ベンザルコニウム綿の微生物汚染とその対策について検討した. 病棟で医療従事者が取り扱っていた0.025%塩化ベンザルコニウム綿では, 調査した46検体はいずれも微生物汚染は認められなかった. しかし, 外来患者が使用していた0.025%塩化ベンザルコニウム綿では, 調査した6検体のうち4検体が106-1010生菌数/mLレベルの細菌汚染を受けていた. 汚染菌種はPseudomonas fluorescensなどのグラム陰性桿菌であった. 汚染原因としては, 0.025%塩化ベンザルコニウム綿を手指で直接つかんでいたことがあげられた.
  • 小田原 涼子, 前野 さとみ, 村田 富美子, 岳下 和子, 上峯 和子, 小山 由美子, 中村 ます子, 亀割 成子, 吉永 正夫
    2004 年 19 巻 4 号 p. 494-497
    発行日: 2004/11/18
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    看護師の手洗いが適切か検討を行うため, 洗浄剤と手洗い器具を使った手洗いの評価を行った. 対象は平成12年度308名, 平成13年度348名, 平成14年度361名の計1,017名. 専用ローションを手指にまんべんなく塗布後, 洗浄剤にて10秒以上20秒以内で手洗いを行い, Glitter BugTMを用いて効果的な手洗い法について評価を行った. 専用ローションが全て洗い落とされている場合を合格とした. 合格率は平成12, 13, 14年がそれぞれ12.0%, 16.7%, 23.0%であり, 平成14年は12年, 13年に比し有意に上昇していた (それぞれp=0.0003, p=0.0385). 洗い残し部位は従来報告されているとおり, 爪, 手荒れ部, 指先, 指間などであり, 合格率の上昇は部位別には手首, 手背部, 手掌部の洗い残し部位の減少, 部署別には外科系病棟看護師の合格率の上昇によるものであった. 爪, 手荒れ部, 指先, 指間などが洗い残し部位の上位を占めているのは, 同部位の洗浄が難しいことを証明しており, 手洗い方法の普及, 啓発を継続的に行う必要があると考えられた.
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