木造住宅の耐震診断における構造安全性評価は,耐力壁などの構造要素の適切な配置と性能によって行なわれる。一般に,配置は構成見取り図により確認されるが,性能に大きく影響する部材の劣化は目視による評価が困難である。そのため,本研究では,目視に寄らず,劣化測定器であるピロディン,シュミットハンマー,ファコップを用いて,103年間耐用された木造住宅の柱の強度性能劣化を測定し,その閾値を検討した。柱脚の劣化を測定器により数量化した劣化指標と,実大柱の強度試験により測定した残存強度とを比較し,得られた劣化指標の有効性を検討した。さらに,架構の劣化シミュレーションにより架構の剛性低下と劣化指標の関係を明らかにした。これらの検討結果により,木造住宅の構造要素の劣化判定にはピロディンが有効であり,スギを用いた柱の劣化判定の閾値は20mmが合理的であることを示した。
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