(1)中性硫酸銀溶液に純鐡粉を投入し銀を定量的に析さ出させ同時に溶出し溶存する硫酸第一鐵を過マンガン酸カリ溶液にて滴定し,銀を間接に定量する方法を考察し從來の容量分析法に比して簡易にして便利な方法であることを認め,更に次の定量條件を決定した。(a)反應は常温で1時間内外で充分であり長時間放置は囘避すべきである。(b)鐵粉の使用量には殆んど影響がない。(c)が試料溶液の銀濃度は0.08~0.2%の範囲が好適である。(d)硫酸アンモニウムの共存は避くべきであり硫酸ナトリウム,硫酸カリウムの共存は0.05%以下なること,硫酸亜鉛は1%程度にても影響はない。
(2)中性硫酸銀溶液に蓚酸ナトリウム溶液を添加する時蓚酸銀が定量酌に沈澱するに依リ,これを硫酸にて溶解し遊離する蓚酸を滴定して銀を算出する方法,並がに豫め濃変既知の蓚酸ナトリウム溶液を稍々過剰に加え,生成される蔭酸銀を濾別して得ら准る濾液中の蓚酸ナトリウムを硫酸酸性溶液として過マンガン酸カリにて滴定し,銀の量を算出する方法を研究した。何れに依るも次の條件内にいては満足すべき定量結果を輿え得られることを認めた。(a)沈澱反應は湯浴上で80°C内外に加熱して行い,20分位加熱を績行後,室温にまで放置冷却する。(b)沈澱洗滌後には氷冷水又は1%酷酸ナ卜リウム溶液を利用するとよい。(c)試料銀溶液の濃度は0.08~0.2%程度が適當している。(d)蓚酸ナ卜リウム溶液の添加は銀量に對して, 1.2~2倍程度がよく過剰添加の場合一は沈澱が着色し始める。この場合は定量値は低くなる。(e)硫酸カリ,硫酸ナトリウムの共存は0.1%以下なること。硫酸亜鉛の共存は1%程度でも影響はない。
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