樹令1821年の屋久杉年輪を用いて,大気中の二酸化炭素中の
14C濃度の過去における変動を測定した報告である。初めに
14C濃度の測定法とその誤差が述べられ,また木材年輪中の炭素が過去の大気中の炭酸ガスを集めた試料と見なしうるか否かについての考察が行なわれている。測定結果は,現在から1800年前まで大気中の
14C濃度が大体連続的に減少し,その減少量は約2%近いことが示されている。この変動の傾向は,地磁気強度の経年変化に基づいて算出された大気中の
14C濃度変動と一致し,さらにこの計算値から予測される5000年前までの大気中の
14C濃度変動は,他の研究者によるエジプトなどの試料についての実測値とよく一致し,大気中の
14C濃度の経年変化が主として地磁気強度の経年変化に関連していることが示されている。大気中の
14C濃度の変動の原因として,気候および気団の性格の影響が考察され,前者については,1℃の平均気温の上昇が
14C濃度を0.5%低下させる可能性のあること,後者については,海洋性の気団が大陸性のものより0.5~1%低い
14C濃度を示す可能性のあることが結論されている。
抄録全体を表示