本論文は,C-ノル-D-ホモステロイドホルモン類の合成に関連して得られたエチオジュルバン類の立体化学,とくにC/D環の結合様式について,著者らの得た知見をまとめたものである。標題化合物はもともと,問題の変形骨格を有するアルカロイド,ジェルビンや11-デオキソジェルビン,あるいは正常ステロイド骨格を持つサボニンの一種,ヘコゲニンの転位によって得られたものである。しかしそれらのアルカロイドあるいは転位生成物のC
12が不飽和炭素であるため,具体的にはC
12-C
13位に二重結合が存在するため,それらの飽和誘導体におけるCおよびD環の結合様式およびそれらの環上の置換基の立体配置は,長い間未知のままであった。しかしこの問題はエチオジェルバン類の化学の立場からはきわめて重要なものであり,それらの立体配置が明らかになつて初めて,エチオジェルバン類の種々の反応の配座解析が可能になるであろうと考えられる。
本論文では初めに,種々のC-ノル-D-ホモステロイドホルモン類の合成および合成中間体の立体配置について述べる。つぎに,飽和のC
12を有するエチオジェルバン類のうちもっとも古くから知られており.かつ重要な化合物,ジヒドロジxルビン,および関連化合物の立体化学について,従来の考え方を批判しながら議論を進める。最後にC/D環の安定性に対するC
12-位の置換基の影響を述べるとともに,それまでに合成された多くのエチオジェルバン類のORD曲線およびNMRスベクトルの測定の結果得られた簡車な経験則について述べる。
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