理論と方法
Online ISSN : 1881-6495
Print ISSN : 0913-1442
ISSN-L : 0913-1442
18 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集 秩序問題への進化ゲーム理論的アプローチ
  • 大浦 宏邦, 数土 直紀
    2003 年 18 巻 2 号 p. 129-131
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
  • 大浦 宏邦
    2003 年 18 巻 2 号 p. 133-152
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
     本論文では、秩序問題へ進化ゲーム理論的にアプローチする方策について考察する。
     人間社会で観察される秩序現象はゲーム理論的には、調整ゲーム型の秩序現象、チキンゲーム型の秩序現象、社会的ジレンマ回避型の秩序現象の3つに大別することができる。このうち、もっとも解決が困難なのは、社会的ジレンマ回避型の秩序現象である。
     社会的ジレンマ回避については、二人囚人のジレンマゲームで協力状態をもたらす究極要因や、N人囚人のジレンマゲーム(NPD)で協力状態をもたらす至近要因についての研究はすすんでいるが、これらの至近要因の進化を可能にする究極要因についての研究は不十分である。本論文では、従来の進化ゲーム理論を拡張したn人選択的相互作用型の進化ゲームモデルの開発によって、NPD回避の究極要因を明らかにできる可能性があることを紹介する。
     このような進化ゲーム理論的アプローチは、秩序問題について従来提案されてきた規範解やゲーム論解の不十分な点を補うことができると期待できる。
  • 金井 雅之
    2003 年 18 巻 2 号 p. 153-167
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
     社会的ジレンマをはじめとする協力の成立可能性問題を進化ゲーム理論的に分析する際、ランダム・マッチングを仮定するとうまくいかない。ランダム・マッチングでない相互作用、すなわち選択的相互作用を扱う代表的モデルとして、格子モデルと多水準淘汰モデルが挙げられる。本稿ではこのうち多水準淘汰モデルについて、理論上の基礎づけを確認し、代表的な2つの数理モデルについてその意義と課題を検討する。理論上の基礎づけに関しては、淘汰の単位をめぐる論争が焦点となる。ここではヴィークルという概念を導入することにより、自己複製子淘汰と矛盾することなく多水準淘汰が考えうることを示す。そして多水準淘汰の先行モデルは、絶滅型モデルと離合集散型モデルに大別できるが、それらは分析する対象によって使い分けることが適切であることを示す。
  • 七條 達弘
    2003 年 18 巻 2 号 p. 169-183
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
     進化ゲーム理論には、「生物系」「経済系」、「文化進化系」の三つの理論体系がある。「文化進化系」は、「経済系」の進化ゲーム理論を発展させたものである。「経済系」の進化ゲーム理論では、利得が高い戦略が広まっていくと仮定するが、「文化進化系」では、この仮定が成立しない場合についても取り扱うことができ、多数派同調の効果や、戦略表明の効果が存在する場合も考慮する。本論文では、それぞれの効果をもちいて、社会的ジレンマ状況における協力の発生を示すモデルを作成する。このモデルにより、繰り返しゲーム特有の戦略を考慮しなくても、協力が進化しえることが示される。
  • Beyond Solving the Prisoner's Dilemma
    Yoshimichi SATO
    2003 年 18 巻 2 号 p. 185-196
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
         Although evolutionary game theory has been popular in social sciences, we have seldom checked its utility as a tool in sociology. In this paper I argue that evolutionary game theory is a good tool with which we study evolution of certain types of social order, but that it has a limitation when we apply it to the study of evolution of the division of labor. To prove the argument, I first adopt a working definition of social order as a self-enforcing relationship between action and expectation. Then I adopt the fictitious play and best reply assumptions rather than the hardwired strategy and replicator dynamics assumptions, because the former are fitter for analysis of the self-enforcing relationship. Third, I claim that the core of the division of labor is the creation of new roles and build an evolutionary game theoretic framework of evolution of the division of labor. Finally, I point out that a limitation of evolutionary game theory in the study of evolution of the division of labor as social order is that it assumes a finite set of possible actions, while evolution of the division of labor accompanies new actions. This limitation, however, shows us where to attack to make a breakthrough.
  • 志田 基与師
    2003 年 18 巻 2 号 p. 197-209
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
     進化ゲーム理論を(数理)社会学に応用する際の有効性と限界とについて方法論的な議論するのがこの論文の目的である。進化ゲーム理論の特徴は古典的なゲーム理論とは異なり、プレイヤーにたいして「合理的な主体」としての解釈ないし理解を行わない点にあり、進化ゲーム理論の応用を行うことの利点も限界もそこから生じている。一方で、進化ゲーム理論には既存の社会学・社会科学の静学性や演繹予測能力の低さなどの弱点を指摘し、それを補強するという建設的な役割も期待できる。しかしながらこのような方法を社会科学にそのまま導入するならば、以下のような限界が存在することが指摘できる。(1)進化ゲーム理論の応用は社会科学における実証性という点で問題がある。少なくともそれは実証の問題を、伝統的な社会科学のそれと異なるレベルに移行させる必要がある。(2)進化ゲーム理論が想定している状況は「制度」を説明するには不十分な道具立てにならざるをえない。それは制度にたいしてアドホックな説明にしかならないからである。(3)社会科学における「合理性」の位置づけから見る限り、社会科学的な問題構成を十分に体現していない。
原著論文
  • ―スキャニング打ち切り条件を課したFKモデル―
    石田 淳
    2003 年 18 巻 2 号 p. 211-228
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
     階層イメージならびに階層帰属意識にかんするFKモデルは,「中」意識肥大現象などの人々の階層イメージ,階層帰属意識の傾向性を見事に説明している.しかしながら,FKモデルは同一客観階層内での階層帰属意識のばらつきをうまく説明することができない.本稿は,FKモデルに新たな公理を加えた修正モデルを提唱する.新たな公理は,スキャニング・プロセスの打ち切り条件を定めるものであり,行為者の階層イメージ形成過程において,他者の階層的地位の認識にかかるコストを軽減するための「認識の効率性」を仮定したものである.この修正モデルによって,同一客観階層内での階層帰属意識のばらつきが表現されるとともに,経験的データとの適合性も改善される.また,認識の効率化によって生じる意図せざる結果としての「格上げバイアス傾向」が生じる条件も修正モデルによって明らかになる.
研究ノート
  • 七條 達弘, 西本 真弓
    2003 年 18 巻 2 号 p. 229-236
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
     近年、我が国では少子化が急速に進行している。国立社会保障・人口問題研究所の『日本の将来推計人口―平成13(2001)~62(2050)年―』(2002)では、出生力低下の主な原因として、有配偶率の低下に加え、若い世代の夫婦における出生児数の減少が新たに認められている。
     そこで本稿では、若い世代の夫婦がどのような要因により子供数を決定するのかについて明らかにすることを分析目的としている。推定には、総務省統計局が1996年に実施した『平成8年 社会生活基本調査』のうち、妻が20歳以上40歳未満のサンプルを用い、若い世代の夫婦において子供数を減少させる要因について考察する。
     推定結果から、若い世代の夫婦が、非就業あるいは就業時間が比較的短い母親と同居している場合に子供数が多くなる傾向があることが示された。よって、家事や育児に関する外部サービスの充実が子供数上昇を促すと考えられる。
入門セミナー 実践講座社会調査 (3)
書評
feedback
Top