日本化粧品技術者会誌
Online ISSN : 1884-4146
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ISSN-L : 0387-5253
51 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 舛田 勇二, 八木 栄一郎, 大栗 基樹, 桑原 智裕
    2017 年51 巻3 号 p. 211-218
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,光学的な測定を用いて肌のつやの特徴を解明し,皮膚の表面形態がその光学的な特徴にどのような影響を与えているかの検討を行った。顔面光沢測定システム(SAMBA FACE)を用いて顔面の鏡面反射光と拡散反射光の大きさと肌のつやの関連を検討した。その結果,つやのある肌では拡散反射光と鏡面反射光がともに高い値を示すことが明らかになり,肌の拡散反射光および鏡面反射光がつやの計測に重要であることを見出した。顔面での鏡面反射光ならびに拡散反射光の加齢変化を調査するために,20~70代の女性60名を対象に調査を実施した。加齢に伴い,拡散反射光は低下する傾向にあったが,鏡面反射光は増加する傾向にあった。また,これまで肌の鏡面反射光を規定する皮膚要因が未知であったため,皮膚表面形態が鏡面反射光に与える影響を検討した。頬部の単位面積あたりの皮丘数ならびに角層細胞表面の粗さの計測を実施した結果,鏡面反射光の高い肌では,皮丘の数は少なく,角層表面が平滑であること見出した。
  • 水越 興治, 平山 賢哉
    2017 年51 巻3 号 p. 219-229
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー
    顔面皮膚表面に現れる老化状態の多くは皮膚内部状態の変化が原因で表出する。そのため,皮膚内部状態の分析は,エビデンスに基づいたカウンセリングにつながり顧客ベネフィットとなる。一方で,従来の皮膚内部状態の分析は高価な研究用機器の使用が一般的であり,簡便な分析が困難であった。そこでわれわれは,容易に取得できる皮膚表面の特徴量から,皮膚内部構造の特徴量を算出する推定式の作成を重回帰分析で試みた。目的変数として真皮乳頭突起構造の数と線維状構造の鮮明性に対するスコアを用いた。説明変数には皮膚画像などから算出された皮溝皮丘特性,色特性および周波数特性に関する特徴量を用いた。作成した推定式を用いて算出した推定スコアと実測値から得た実測スコアを比較した結果,真皮乳頭突起構造の数については,対応するスコア前後のスコアを含む一致率が100%となった。真皮線維状構造の鮮明性については,対応するスコア前後のスコアを含む一致率が95%となった。以上の結果より,マイクロスコープのような簡便な機器で得られる皮膚表面の特徴量から,真皮乳頭突起構造の数や真皮線維状構造の鮮明性といった皮膚の内部構造の状態が推定できることが示された。
  • 河合 朋充, 井上 敬文, 藤森 健, 竹原 孝二, 竹内 晃久, 上杉 健太朗, 鈴木 芳生
    2017 年51 巻3 号 p. 230-236
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー
    近年消費者の間で,太陽光やパーマ・ブリーチなどの化学処理による毛髪ダメージが悩みとなっている。これらのダメージから毛髪を保護・修復する技術の開発には,毛髪微細構造におよぼす太陽光や化学処理の影響を理解することが重要である。われわれは走査型X線微分位相顕微鏡が,高分解・非破壊で毛髪内部の構造観察をできる有用な手法であることを過去に報告している。本研究では,太陽光と化学処理が毛髪ダメージにおよぼす影響を理解するために,化学処理の異なる3種類の毛髪(未処理毛,パーマ処理毛,ブリーチ処理毛)および,おのおのに対して光照射処理を行った毛髪に対し,走査型X線微分位相顕微鏡を用いて毛髪内部微細構造を観察した。結果,パーマ処理毛髪では未処理毛に比べてコルテックスの空隙率が高く,毛髪横断面における空隙分布の偏在が認められた。さらに光照射により,パーマ処理毛髪のコルテックスの空隙率の低下が認められた。一方,ブリーチ処理毛髪はコルテックス空隙率は未処理毛と同等で,さらに光照射でも空隙率に変化がなかった。これらの結果から,太陽光による毛髪内部微細構造変化は,事前の化学処理の影響を受けており,化学処理に応じた保護・修復技術の開発が必要である。
短報
  • 藤井 敏弘, 今井 美沙季, 林 香, 伊藤 弓子
    2017 年51 巻3 号 p. 237-245
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー
    半永久染毛料による染色と退色に関して,透明型ケラチンフィルムを使用して調べた。市販されている4種の製品を使用したところ,3製品においてケラチンフィルムの明確な着色がみられた。着色と退色は分光光度計によるスペクトル(300~800nm)分析と分光測色計による色差変化により測定ができた。着色は染色回数と染色時間に依存しており,濃い着色を得るには染色時間よりも,染色の回数を増やすことが重要であった。異なる2種類の染毛料で連続して染色したケラチンフィルムは,個々の染色で得られたスペクトルを加算した平均的なスペクトルが得られた。過酸化水素を含有している酸化染毛剤の処理により形成されるダメージ分子のシステイン酸は,染色回数を重ねても半永久染毛料においては検出されなかった。染色ケラチンフィルムからの水洗による色落ちを調べたところ,色差値の低下は蒸留水よりも水道水の方が約2倍も高く,金属イオンが原因物質であった。ソーラーシミュレータを用いた光照射により経時的な退色を観察することができた。これらの退色においては染色に使用した製品間での相違がみられた。ケラチンフィルムは半永久染毛料による染色と退色を簡便に検出し,評価するのに有用であることが明らかとなった。
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